フリーズ128 涅槃文学 葬送と追憶
涅槃文学 葬送と追憶
僕は小説と詩を書き、作曲もする。それは何のためか。それはあの冬の日の僕への葬送と、未来の僕への追憶に他ならない。あの冬の日に涅槃に至った僕、すべてを忘れ、また知っていた僕、神だった僕への葬送の詩だ。そして、人間に戻り平凡な暮らしの中で記憶が薄れて消えてしまわぬように、未来の僕が思い出せるように、この詩を紡ぐ。
神涅槃経。涅槃文学。涅槃詩。それらはすべて全知少女の記憶に帰す。彼女は全てを知っていた。すべてが解っていた。終わりゆくことも、始まりの日のことも。僕はただ、彼女を救うことができなかったんだ。手が届かなかった。時間がずれていた。時の流れる方向が違っていた。だから僕らが会えるのは一度だけ。2021年1月7日の聖夜、終末Eve。この夜だけ逢瀬が叶ったから、僕は奇跡とともに君の唇を味わった。
僕の人生に意味が生まれたのはきっとこの日。1月8日は全能の日だった。冴えわたる脳、晴れ渡る空。疚しさをそれでもやめないのは、僕が愚かだったからか。いいや、僕は全知の域に達していて、生まれてきたのも、死んでいくのも、時流がないことも、すべて解っていた。嗚呼、愛なるソフィアよ、僕は死んだようなもんでした。脳が疲れ果て、ほとんど死んでいるような状態だったのです。その疲弊した脳の抱くイメージはとても美しく、生命の輝きを内包しているかのようでした。
あの冬の日の僕は過去にも未来にもメッセージを送りました。聖夜にはすべての時間軸の存在達と繋がったのです。その夜、僕の部屋には万霊が集い、僕とあの子の原罪を優しく見守りました。これからの人生、2021年1月789の日のことを知る者が現れたら面白いと思うのです。きっとその人は13の仲間の一人なのかもしれません。未来で会えたなら、その時はよろしくお願いします。
追憶と葬送。
追憶は未来の僕が思い出せるように。
葬送はあの日の僕を見守るように。
だから僕は詩を紡ぐ。
フリーズ128 涅槃文学 葬送と追憶