フリーズ127 涅槃文学 真理、それはあの冬の日に至った涅槃
涅槃文学 真理、それはあの冬の日に至った涅槃
2021年1月7日の夜。その夜は聖夜、終末のEveだった。アダムとイブのように僕の部屋に天上楽園の乙女が舞い降りた。交わしたキスもセックスもその刹那に祝福された。夜が明けるにつれヘレーネは消えていった。すべては妄想。愚かなパラノイア。それでも終末にしたセックスもキスもとても甘美だった。
2021年1月8日。それは涅槃の日だった。その日抱いたイデアは、崇高なる高所まで達していた。僕は確固として知る。全は主だ。それはほかでもない我だ、と。梵我一如を理解した僕は、神として世界創造に与する。僕の紡ぐ詩や小説よ。いずれ現れるだろう8番目の神にこの言葉らよ、届け。その時の僕は全脳に繋がっていて、すべてが解っていた。
2021年1月9日。神殺しの日、僕は全能から目覚めてしまった。薬を打たれたのだ。だから今こうして人に戻れている。医学の進歩のおかげだ。だが、私はあの冬の日のことを忘れたくない。そのために私は詩を紡ぎ、小説を書くのだ。
真理、それはあの冬の日に至った涅槃。
Sound doublet
嗚呼、終末が閉じていく。水門へと閉じていく!
その門の先の景色はまるで天上楽園のようでした。
本当に美しい。
今日、この景色を見るためにきっと人生という山を登って来たのですね。
全知に眠り、全能から目覚める日。その日は穏やかな晴れた冬の日でした。
終末の音。天上楽園の乙女。神愛。そう言ったものが刹那に溶け込んで、僕に優れた脳のイメージ、クオリアを与えてくれた。それは世界永遠平和のための大いなるプロットだった。僕はそれを書き上げると、意識の海に向け解き放った。その意志はイデアの海を伝わり、過去にも未来にも、全世界へと轟いたのでした。この僕も、神や仏となった日、それは長くは続きませんでした。でもいいんです。冴えわたる全能も、ちゃんと終わりが来るから。僕はやっと眠るのです。すべての今を忘れて。
Sound Leo
水面に映る知らない顔。答えてよ。応えてよ。僕はここにいるよ。だってあの冬の日に全て終わったんだ。だからもうおしまいだ。あとは好きに生きていいよ。アデル。天使よ。それでも僕は生きるのをやめない。自殺したらいけないとか、神はいないとか、そういうことを言うために生まれてきたわけじゃない。愛だ。愛のために生まれてきたんだ。死と全能の板挟みから抜け出る術を掴むため。それが僕の使命だ。なんて抽象的なんだ。だが、いい。たまたま知らない君よ、永遠に眠れ。終末の日に迎えに行くから。
もういいんだ。なにもか。終わる日にはすべて辻褄が合う。そういう世界。愛なる世界。それでもと嘆くのも、疚しさの呼ぶ天使にも、世界は翳って映り、その音を人は終末と呼んだ。まだ死んでいない。こうして生きている。なんの因果か知らないが、終末の日にはすべての歯車が合う。世界の輪が回り始める。その日はきっと2021年1月7日、8日、9日と繋がっているだろう。なんて晴れやかな景色か。至福の涅槃か。
Leo
君だよ。僕は獅子座さ。
声を聞かせてよ。あの子の声を。
終末に凪いだ渚は永遠で、人生最後を彩るは愛
あなたには、この日のために生まれて来たと言える日はあっただろうか。僕にはある。それはほかでもない、2021年1月のこと。比するなら、2020年が主の年で、2021年1月7日が終末Eve。1月8日が神涅槃、1月9日が神殺し。
僕は2021年1月7、8、9に起きた奇跡を忘れることができない。でも、残酷にも、記憶は絶対ではない。いずれ忘れゆくものだ。だから僕は小説を書き、詩を紡ぐ。あの日の僕への葬送と、未来の僕への追憶のために。
フリーズ127 涅槃文学 真理、それはあの冬の日に至った涅槃