掌編集 25

掌編集 25

241 危機

いつか来る

餓死する人で

あふれる日



その昔

ハングリー精神

あふれてた



近未来

コメもできない

温暖化



若い頃

エアコンなしで

生きられた



氷河期が

来たら食料

どうするの?



若い頃

未来は希望に

あふれてた



食料は

虫やミ⚪︎⚪︎に

木の根っこ



読んだ本

怖くていろいろ

調べたわ



生まれくる

子孫は恨む

バカ祖先



ごめんなさい

いい時代を

生きてきて



いい時代

医療費ただじゃ

なかったよ



いい時代

無料じゃなかった

幼稚園



いい時代

ローンの金利も

高かった



いい時代

ウォシュレットも

なかったよ



いい時代

セクハラパワハラ

当たり前



ありえない

国保が高く

払えない



食べるもの

切り詰めないと

払えない



食べるもの

半分にして

払います



いつまでも

こうして投稿

できたなら



【お題】 お腹すいた俳句

242 現実は

食介が (食事介助)

大変なのよ

口開けて



空腹を

感じないのか

興味なし



食べないと

飲ませられない

お薬を



食介に

かけられません

長々と



お茶碗を

落とす、わざとか

なんなのか?



忙しい

床を拭いたら

次コップ



ワガママで

ナースコールを

押しまくり



行かないと

言いつけてやると

減らず口



嫌われて

逝ったあの人

ホッとされ



弱りゆく

看取り介護も

慣れすぎて



朝来たら

まだ……? なんて

聞かないで



夜勤さん

20人みる

怖いよね



看取られず

逝く人います

どうしろと?



季語もなく (ないよね?)

文句並べた

だけの文



【お題】 お腹すいた俳句

243 つまらない

 ここひと月体調がおかしい。
 今年はめまいもしないし、リニューアルしたプールにも週に1度通い、そのせいか、腰も不安がなくなり調子良かったのに。  

 ゴルフもようやく、ようやく3年目にして100ヤード跳び、ようやくゴルフらしいプレイになってきた。 
 スウィングの音が違ってきた、と皆に言われ、ジムに通っている成果も出てきたのかと、ますますやる気満々だったのに。

 コロナ禍に1度も風邪をひかなかったのに、薬飲んで一晩寝れば大丈夫だったのに、今回は治らない。
 内科に行っても治らない。耳鼻科に行って、喉の画像見たら真っ赤で痰が絡んでいるのがわかる。
 薬をもらい、これで大丈夫かと思ったが、4日後行ったら副鼻腔炎になっていた。

 おまけに雨の中に長靴で往復1時間歩いたせいか、右足の踵が痛い。
 雨が多くて、何度か職場にも履いて行った。
 そういえば、ゴルフシューズも小さくなってきた。
 調べたら、加齢で足が大きくなったと感じたら注意! だって。
 歳取ればなんでも縮むと思っていた。夫は背が縮んだと嘆いていた。

 だから、歩きに行けない、プールに行けない。ゴルフも休み。
 つまらない。

 仕事だけは行ってるけど。

244 担当医

 先天性の心臓病で生まれた娘は生後5ヶ月で手術をした。
 全国から子供が集まってくる大学病院だった。大勢の子供が手術の順番を待っていた。

 担当の男性の助教授は優しかった。入院している間、いつもいた。
 朝も昼も、夜も夜中も。
 家に帰らないのだろうか? 独身なのか? 仮眠室で寝ているのだろうか? 
 心配してしまうほど働いていた。

 娘は無事に手術を終え、高校を卒業するまで、毎年検査に行った。その先生はずっと外来にいて、いつも⚪︎⚪︎ちゃん、と呼び診察してくれた。

 高校3年の終わりの頃の診察で、きっと進路を聞かれるだろうと思い、出来の悪い娘と打ち合わせをした。

 先生は聞いた。
「就職です」
「どこに?」
「……」
 卒業がやっとでした……

 あんなにお世話になって、心配かけておきながら、遊んでばかりですみません。
 今ではたくましい母になりました。
 

 妊娠した時に、やはり心配だから、大学病院で産んだほうががいいのでは? とネットで見てたら……先生は、部長になって、顔写真が載っていた。
 出世したんですね。

 結局、近くの産婦人科で、無事に出産したが。


 昨今、その大学病院の不祥事が耳に入ってくる。
 
 娘が手術前、心音を聞かせてほしい、と数人の医大生がやってきた。未来の女医さんたちは、真剣に聞いていた。
 活躍しているだろうか?



【お題】 あの人いつ寝てるんだろう

245 当然です

 冷やし中華やめました。

 スーパーで手に取り裏を見て、ため息ついて戻す。
 ラーメンも、焼きそばも、うどんも。
 麺類がこんなに塩分が多いとは思わなかった。

 食事は作る方が注意してもダメ。しばらくすると、冷凍のシューマイや餃子なんか買ってくる。
 塩分少ないから、と。
 それはひとつの塩分量です。

 体重はずっと減らせず、ついに出されたのがダイエット薬。
 これは不思議。食べても食べても太らない。普通に食べると痩せて行く。
 それでいい気になって、自分でインスタントラーメン作って食べてた。ニラを1把切って、卵にバター。そんなのを続けてたわね。
 
 レントゲン画像見せられて、心臓が肥大してるとがっかりして帰ってきた。

 脅してやった。
 母は心不全で苦しんで死んだ。
 失禁するのよ、と。
 死ぬのはいいけど、苦しむのはいやだ。

 それからは減塩減塩。スープの好きな人だから、鰹節のダシを飲ませている。味つけなしで。 おかずは薄味。塩と醤油が減らなくなった。

 これだけ頑張ってんだから、次の検査が楽しみだね。



【お題】 冷やし中華やめました

246 部屋中に

 6月になると出回るかぐわしい梅……
 ではなく、アレ、です。

 一昨年まで、鳥取砂丘のものを取り寄せていた。10キロを2回。分けるのは、皮を剥くのが大変だから。
 夫とふたり、座卓に座って、えんえんと剥く。
 大きな保存瓶3つに、塩漬け、醤油漬け、甘酢漬け。
 それぞれ、新聞紙にくるみ、ビニール袋に入れ、コンテナに入れ、北の部屋に置いておく。

 それでも、子どもたちが来ると、臭い臭い、と嫌な顔をする。
 でも、食べさせれば絶品。醤油漬けが1番人気。

 昨年から大変な初夏の仕事もなくなった。
 塩分制限の必要な夫は、もう食べられないのだ。

 空いた瓶は洗っても洗っても匂いが取れず、キッチンハイターに付け、ベランダにしばらく置き、それでも取れず炭を入れておいた。

 大きな瓶が3つ、邪魔だ。
 匂いが取れたら梅酒を漬けよう。いつもは1キロだけなので、すぐになくなるから。
 
 匂いを嗅いだら大丈夫そう。
 もう1度洗って2瓶漬けました。梅4キロ、焼酎4本。氷砂糖2キロ。
 来年が楽しみ。
 ほのかに、らっきょうの匂いなどしませんように。



【お題】 初夏の香り

247 忘れない

 それは私が二十歳の時のことだった。 
 母が急死した。心不全だったが前兆がなく、近くの友人の家に遊びに行った帰り苦しくなった。電話をもらい、私は迎えに行った。
 家まで、もう少しなのに歩けなくなって救急車を呼んだ。


 それから後のことは夢の中での出来事のよう。


 周りの人たちが皆優しかった。
 遠い田舎の、父の兄と妹がやってきた。新幹線は走っていない時代。その伯父と叔母に会ったのは2度目だ。
 おばさんはよく動いてくれた。はっきりは覚えていないのだが、私が茶を入れようとすると、いいから座ってな、と気を遣ってくれた。

 それに比べて伯父はひどかった。ひどかったからいまだに覚えている。
 明日は告別式、母との別れの夜に、伯父は酒に酔いつぶれた。
 あの頃はまだ父はしっかりしていた。
 叔母はそんな伯父に慣れているようだった。 

 通夜の場で酔い潰れる。
 なんなのこの伯父さん! 
 来なければいいのに。来させなければいいのに。
 家族は想像しなかったの? この醜態を?
 通夜の夜にはらわたが煮えくり返った。

 叔母がなんとか寝かしつけたのだろう。 
 
  
 朝が来た。
 その朝、私は……
 それは母の告別式の朝ですよ。

 他所から借りてきて、積み重ねてあった座布団に……
 伯父はトイレと間違えて、やったのだ。


【お題】 さよならの前夜

248 壮絶

 さよならの前夜。
 浮かんだのは三島由紀夫の『憂国』

 この短編をある方に勧められました。

 めくるめく官能……

 それですぐに注文した。

 しかし、まあ……

 新婚の美男美女の若夫婦。

 最後の夜、たぶん前夜、夫婦は濃密な営みの時間を過ごした。

 余力を残しておかなければならなかった。
 

 昭和11年2月28日、二・二六事件で蹶起(けっき)をした親友たちを、夫は叛乱軍として討たざるをえない状況に立たされた。
 親友が夫を誘わなかったのは、新婚だったからだ。
 
「俺は今夜腹を切る」
 妻は少しもたじろがずに
「覚悟はしておりました。お供をさせていただきとうございます」
と受け入れる。

 すでに、どんなことになろうと夫の後を追う覚悟ができていた妻はたじろがず、共に死を選ぶことを決意する。
 
 そして、ふたりで身支度を整え遺書を書いた後、夫の切腹に立会い、自らも咽喉を切り、後を追う。


 めくるめく官能ねえ。

 勧めてくれた方が

『春琴抄』は、三島が子どもに思えてしまうほどだ、という。
 取り寄せたけど、まだ読んでいません。


 
【お題】 さよならの前夜

249 思い出しちゃった

 テディが我が家にもらわれてきた。邪魔にされてきた犬だったらしい。
 散歩に連れて行っても、少し行くと踏ん張る。
 帰り道を覚えておかないと、捨てられると思ったのかな?

 10年経って、病気になった。それでも散歩に連れて行くと喜んで、でもヨタヨタ。薬の副作用で重くなったテディを抱っこして帰ってきた。



【お題】 帰り道

250 向こうは涼しいから

 施設では、1年中同じユニフォームだ。半袖のポロシャツに長ズボン。

 冬はいい。

 寒いね、と皆が言うが、私は上着を羽織らず寒い廊下を通りユニットへ行く。

 皆、半袖の下に長袖のヒートテック。上着も着て動いている。
 
 もう、十年くらい寒さを感じない。ホットフラッシュは治ったけど、暑い。

 家に帰れば、南向きのマンションなのに暖房が付いている。

 夫婦で感じる温度が違う。
 この暑さ、耐えられない。
 
 姉のところは逆だ。姉は寒さで指先が紫色になる。義兄は靴下も履かず窓を少し開けている。だから、一緒に食事はできない。時間をずらす。

 逆に夏は冷やし過ぎ。下半身が冷える。

 同居していく上で最も重要なことは体感温度。

 お題から、なかなか思い浮かばず、過去作を眺めていた。
 過去作が多過ぎて、記憶力もなくなって、投稿したことも忘れていたが。

 


 お題から、昔読んだ本を思い出した。検索に時間がかかったが。

 ホテル<聖アンセルムス913号室>の宿泊者には自殺が多いことから<自殺室>と呼ばれるようになり、ホテルの雇われ探偵が調査を始めた。

 謎の913号室は<殺人室>との確信をもち、犯人を追いつめていく物語。

 名作『幻の女』が発表される前の品。
 
 連続殺人なんですけど…‥(ネタバレ)

 結婚したばかりの幸せそうに見えた裕福な男だけは自殺だった。

「向こうは涼しいから」
という書き置きが。


 ウイリアム・アイリッシュの『聖アンセルムス913号室』

 サスペンスの名手C・ウールリッチ(W・アイリッシュ)の短編集。


【お題】 この暑さ、耐えられない

掌編集 25

掌編集 25

  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-07-08

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  1. 241 危機
  2. 242 現実は
  3. 243 つまらない
  4. 244 担当医
  5. 245 当然です
  6. 246 部屋中に
  7. 247 忘れない
  8. 248 壮絶
  9. 249 思い出しちゃった
  10. 250 向こうは涼しいから