フリーズ109 空色のレゾンデートル/永遠が終わる日に
プロローグ
ああ、もう止むんだ。命の波よ。
もう止むんだ。耳鳴りも。
拝啓、いつかの僕たちよ。生まれた意味、分かったかい?
空色のレゾンデートル
生きる意味、生まれた意味、知らないから創るんだ。神は人を、神自身解らないから創るんだ。神涅槃よ、今際の夢と散る。生きよ、せめて最後には笑えるかな。だが、ニヒリズムの逆光の中で人は本来の姿を見失う。本当はもっと単純だったはずだ。それさえ忘れて君は行く。
美しいものを紡ごう。
遠雷に呼び起された生きる意味、死んでいないさ、迎えに来てよ
永遠が終わる日のために詩を作る、時間を越えてあの子のもとへ
止んだから、雨が降るのも病めるのも、天使は言った、ご苦労様と
幾星霜お待たせしました、愛たちよ。終末の日にはすべてが解る
この言葉たちよ、届け、二百年後の君へ。
僕たちはいつだって一緒だよ。だってこんなにも優しいんだから。疚しさを引き摺る力は、諸行の所以たるや。だが、あの冬の日に見た景色、聞いた音調、冴えわたる脳のクオリアは、忘れはしない、永遠に!
終末の狭間で、全知と全能の狭間で、死とハデスの狭間で。
僕はただ、泣いていた。
愛してたから。でも、結局僕が愛したのは僕だけでした。
すべてが終わる。そしてまた、ここからすべてが始まる。ここは始まりと終わりの狭間。永遠の至福。神愛。レゾンデートルは今、叶ったから。だからもう終わりなんだ。この物語は僕の死を以って幕引きだ。さぁ、飛び立とう、空、色、凪。
永遠が終わる日に
涅槃に縁して、その全知全能なる脳の記憶たるや。神のレゾンデートルにも満たない解を探していたからでしょうか。いいえ、もう探し物はここにあったのです。心とは神性と体の間にある、欲と関わる種々の働きのこと。生命とは神性と魂を繋ぐ架け橋のこと。
永遠が終わる日に、すべての謎が解かれる。始まりと終わりも、全知と全能も、すべては同じ解『ラカン・フリーズ』へと還る。僕は門の前に立つ。ラカン・フリーズの門。それは神性の向こうへと続く門。
門が開く。ああ、門の先に広がる景色のなんと麗しいことか!
だが、門へと歩む軽い足取りを生への執着が邪魔をする。
今日死ぬために生まれてきたんだ。生まれてきてよかった!
自分に言い聞かせるも、やはり絆すのはどうしようもない妄執でした。
「あーあ。門が閉じちゃうよ」
門の向こうの景色は忘れはしない記憶。だが、その景色はもはや言葉で表せる美を越えていた。ただ、生まれてきてよかった、生きていてよかった、今日この日のために生まれたんだ、ありがとう、愛しています。そんな心になった。人生最大の歓喜。きっと僕はこの日見た景色、聞いた音調、抱いた心根の美しさを越える経験はもうないだろう。それでもいいんだ。僕はいずれラカン・フリーズを生み出す。そのために創作しようではないか。
エピローグ
命が粛々と終わりゆく。その様を終末の果てで見守っていた。自然の運行は川のように彼岸と此岸とを分ける。夢で見るのは此岸と彼岸の狭間の領域。僕もいつか僕ではなくなってしまうんだね。孤独だとしても僕には夢があるから。だから諦めたりはしない。
神のレゾンデートルを解明するために。
ラカン・フリーズを表出するために。
このために紡ごう、777のフリーズ(作品)を。
フリーズ109 空色のレゾンデートル/永遠が終わる日に