集大成「時空を超えて」

妖精

妖精

突然。窓ガラスがゴトゴトと音を立てて振動する。時計を見ると深夜の2時である。窓から強い光が差し込んでくる。この時間に変だ。まだ、夢見ているのかと疑いつつ窓を開けた。飛び込んできたのは大きなホウキにまたがっている妖精らしき感じがする。その顔はデイケアに居た真子さんに似ている。ドッドだどっ私の部屋の中に飛び込んできて停車した。
妖精「こんばんわ。私、知ってますか。今日からこの部屋で生活します」
私「頭がおかしくなった。ここはどこだ夢の中か」
妖精「私は地球上ではアンドロメダ星雲と呼んでる240万光年の彼方の星から一年かかってこの魔法のホウキでやって来ました。星雲には帰れません。星雲では1万年後の世界です」
私はとにかく布団を敷いて彼女を寝かせたのであった。目玉焼きのいい匂いで起きてきた私はびっくりした。
私「アンドロメダ星雲でも目玉焼きを食べるのか」
妖精「そのカラクリを教えましょうか」
妖精は喋り出した。私達の世界はこの地球の未来人の世界よ。魂は永遠に生き続けるのそれも同じ生命体として、日本では仏教が前世だとか言ってるけども本当はあなた自身の魂が永遠に意識として生き続けるの。真子さんの未来」
私「私の未来は何処にいるんだ」
妖精「知らないわ。私達は初めて出逢ったの。未来はこれから作らないと。私は朝ご飯食べたら。意識として真子さんのお宅にお邪魔してきます」
私はなんだかよくわからないが、夢の中でまた夢を見ているのだろうか。頬をつねってみると痛かった。
次の日デイケアにやって来ると。真子がいた。しかし、何気ない顔をしている。その日は会話する事もなく終わった。部屋に帰るといた。妖精さんが。
私「!!!」
妖精「なんかついてる」
私はこの妖精はいったい何者だろうか。たしかにホウキに乗ってきて窓からやって来た。
妖精「お風呂沸いてる」
なんて事だ、妖精のくせに風呂に入るのか。すると私の頭に妖精の脱いだ服が私の顔をふさいだ。
私はアンドロメダ星雲について調べた。一年前にこの場所と思われる地点から謎の怪電波が一定の感覚でキャッチされたらしい。この周波数は変化を伴っており、何か地球に対してのメッセージではないかという科学者も存在するらしい。私は、この妖精の地球に来た目的はなんなのか。興味を持ち始めた。
この怪電波はガンマ線や紫外線等とは違う。人間が発しているような周波数でないかという推論である。アンドロメダ星雲は太陽の様な恒星ではなく。地球の様な惑星て事は、この宇宙の8割を支配していると言われている暗黒物質の惑星と推測されているダークマターなのか。
妖精「何を考えてるの、私にはお見通しですよ」
私「何、人の心が読めるのか」
妖精は口に人差し指を当ててそれ以上の言葉はダメと言う仕草をした。
私「服を着れよ」
妖精はバスタオル一枚でやってきたのにまたもやびっくりした。私と妖精。妖精とは真子に宿っている意識。私と妖精との奇妙な生活が始まったのである。
朝から妖精は毎日目玉焼きを作っている。私は静かな口調で妖精に声をかけた。
私「目玉焼きしか出来ないの」
妖精「私の惑星ではお肉類は食べないし。タンパク質を取るためのお肉は大豆で埋め合わせます。卵はなかなか遺伝子変換も何年も時を経ても難しそうです。卵を産んだニワトリは処分して肥料になります。栄養価値が高く美味しい野菜が出来ます
私「何しに地球へ」 
妖精「真子さんが精神的に病気になり、未来の私としては助けに来ました。それと、大事な話があります。貴方の名前はセニョリータにして下さい」
私「そこのお嬢さんかい」
妖精「簡潔に話します。意識はどんなに遠くてもテレポーテーションする事が可能です。私の惑星でも意識は自由に行動してます。しかし、地球よりも少し文明が進んでるだけです。私は真子さんの分身です」
私「て事は多元宇宙論」
妖精「そうです。私は意識のテレポーテーションでやって来ました。
妖精「惑星に存在する人間には同じ意識の人物が無数に存在するのではないか。例えばガンに侵された人間には分身というものがこの多元宇宙の中に存在する。人間は感情のある動物です。感情「心」の病気は意識の交換。元気な分身のパワーをもう1人の自分に意識をテレポーテーションして治療します。我々の世界の心の病の治療法です」
私「!!!」
妖精「この意識の治療には愛が必要です。セニョリータさん真子さんを好きになりませんか」
私「まだ、出逢って一週間だぞ」
私は妖精から言われてからだんだん真子さんが気になり出した。
妖精「私の惑星では、意識から魂の存在が科学者達を悩ませています。知ってますか、アインシュタインの相対性理論を導いたヒントは一般人の何気ない一言だったらしいです」
いつもの目玉焼きの匂いがしないし台所の音もしない。窓を開けると妖精が歩いている。私はそれにしても何かおかしい、現代の世の中にホウキに乗って来るとは何かの錯覚ではないか。今日は休みである。久しぶりに図書館に顔を出す。科学雑誌のコーナーに行き読みあさっていると。現代の科学最前線と言う書物を気になり読み始める。
あるページで止まった。こう書いてある。未来の映画鑑賞はコンタクトを装着するだけで目の前にスクリーンが現れるのだそうな。だとしたら、最近の出来事は理解できないでもない。私はコンタクトをしているが、妖精が現れる3日前に新しく買い替えた。慌ててコンタクト店に行くとなんと閉店している。張り紙を見ると昨日店じまいらしい。私は家に戻りコンタクトを外してメガネに変える。そして手にとって見るがおかしな所はない普通のコンタクトレンズだ。妖精がいた部屋に入っても、今まで人のいた気配はない。私は早く月曜日にならないか焦ってきた。真子さんに確かめてみよう。
翌日。頭の中には妖精の姿が離れない。私は精神科に通っているおかしな言葉を発すれば入院手続きが行われる。私はスパイされる様な偉い人間でもない。あの妖精はいったい何者だろうか。たしかにデイケアに存在する真子さんかもしれないが、人間がホウキに乗って来るわけはない。それこそ入院でもなると一生出れないかもしれない。私はデイケアにいる真子さんの様子を伺うことにする。お昼休みになり隣にやって来た真子さんにそっと声をかけた。
私「アンドロメダ星雲と聞いて何か浮かんできます」
真子「ウルトラマンの故郷ですか」
私は妖精と真子さんは別人だと確信した。そして、もう一度妖精に会いたくなった。妖精はアンドロメダ星雲へ帰省したのか、それとも幻だったのか、コンタクトに仕組まれた罠なのか理解できない。そして結論が出た。真子さんと議論してみようと食事をご馳走する事にした。
私は、真子さんを連れて和食か洋食とでも思ったのだが、居酒屋に一緒に行く事にした。私はいきなり真子さんに唐突な質問を投げかける。
私「真子さんは宇宙の何処かにあなたがもう1人いると思いますか」
真子はこの質問に動揺した様子を見受けられないと言う事は妖精とはやはり別人物なのだろうか。もひとつだけ質問します。
「真子さんはホウキに乗って空を飛んだ事はありますか」
真子は不自然な質問に笑い転げた。私はこれ以上不可思議な質問をする事はやめにする。
私「なんで心を病むのでしょうね」
真子「人間だからです」
そう言えばあの妖精は人間だろうか、未来の分身と言ってたが、もひとつ質問をする事にした。
私「私にいずれ好意を抱くと思いますか」
真子「わかりません」
私「好意を抱くと言う事は意識が移動する事だと思います」
真子「変わった人ですね」
私「私の事をセニョリータと呼んでください」
真子「ジェントルマンじゃないですか」
私は、あの妖精は別世界の真子さんとは関係のない人物だと確信するが。意識については何か関連があるのかもしれない。私はこの日から意識。心について専門書を片っ端から読みあさるようになっていくのである。
私は2度目の食事に真子さんを誘った。目的は妖精についての手がかりはないだろうかだった。今日は熊本市の花畑町電停から徒歩で3分の京八寿司を予約した。老夫婦が2人でやっている。真子は何を尋ねてくるかと期待してた。私はこないだの質問はいい加減にしてくれと言われかねないし。
私「真子さん。妖精は好きですか。私はディズニーのティム・バートン ナイトメアー・ビフォア・クリスマス
のつぎはぎだらけの彼女が好きで。死体から作られ、偶然心を持って生まれた継ぎ接ぎだらけの人形。見た目は顔が青白く、口裂け女のような顔をしているが、心優しい性格。見た瞬間に虜になりました」
真子さんは、トロを注文した。口一杯に頬張っている。私はひたすら生姜をいただいている。
真子「生姜は好きなんですか」
私「河童巻きの次に好きです」
真子「いつも寿司屋で食べるのですか」
私「いや始めてきました」
真子「妖精は人間じゃないですよ」
私は真子さんが妖精ではないらしいと確信はしていたが、妖精の夢を見ますかと質問して見た。真子が返事を返す前に私はお勘定と席を立つのである。
店を出た。真子のヘアースタイル。ボディーにウエーブがかかった感じで大人びている。私はこの後用事はないのであるが、時計を見ると15時を過ぎている。寿司屋をハシゴするわけにはいかないが、寿司屋には今後しつこく誘ってみるかなと思案する。私は熊本城の周りを2人で散策する事にした。
私「よく優しいと言われるが。普通だと思うしそんなに男って優しくないですかね。真子さんを初めて見た時の印象をいいますと。デイケアにこんな可愛い人がいるのにびっくりして倒れそうになりました」私は二の丸公園の大きな木の下に座った。そっとハンカチを芝生に敷いて座ってもらった。しつこく、妖精の話をするかと思ったが辞めた。
私は何気なく誘ったつもりだったが、時間が迫ってくると少しソワソワしてくる。
今日はお疲れ様と一言言う前に、次回のお誘いをアプローチしようと。咄嗟に考えた決めゼリフはこうだ。
私「私は、カナヅチで」真子はおやっとした表情でこの人はカナヅチで私の頭を叩くのかしらと想像したがセリフは違った。
私「カナヅチで泳げませんが。プールはもろに泳げませんから夏になったら海に行きましょう」
真子は、海の方が危険な気がしたが口には出さなかった。私は真子が振り向いたときには市電に急いで乗っていた。電車の窓から覗くと真子は手を振っていた。そのシーンは映画のようだった。

この日から空白の日が3ヶ月程。デイケアを休んだ。私のところにやって来た妖精も幻なのか。外はだんだん寒くなりやがて冬を迎える。9月20日に思い出すのは熊本市の一大イベント藤崎宮大祭。空白の間にいろんな事を考えた。妖精さんが意識を、使ってやって来たと。意識は広い広い空間の中で色んなものを放出するものだと思う。妖精さんもその中から私を選んだのかもしれない妖精の真子さんか現実の真子さんかに心を奪われそうになったが何にも行動しないし考えてるだけだと物事に変化はおとづれない。私は落ち着き払っておとなしく生活してる時は病気が安定してると言ってもおかしくない。日常に刺激があるといい意味。ドタバタ騒動になる。久しぶりにデイケアに行くと真子さんへの姿もあった。何気なく挨拶した。やっぱし変化のない1日。お昼休みに真子さんらと茶話をやった。空間の中に無造作に放出されていた色んな人間の意識の中から真子さんを選んだ。その時に太陽の光で見えなかった。惑星アンドロメダ星雲から未確認電波がアメリカのNASSで発見されたとは知る余地もなかった。私は真子さんより妖精の真子さんにもう一度出逢えないものだろうか。たしかM87星雲は地球から240万光年彼方にあると、これは我々の住んでいる。天の川銀河の端から端までの距離の24倍である。我々の住む銀河系。その直径は10万光年。距離の単位は、光(約300,000km/秒)が1年間に進む距離。9,400,000,000kmで。この240万倍。太陽のように自ら輝く恒星が存在しています。恒星の周りには次々と惑星が見つかっており、そのうちの約2割は地球に近い大きさであることがわかっている。さらに、そのうちの十数個は液体の水が存在している可能性のある星です。と専門書には書いてあった。現代の理論物理学は素粒子の性質によるテレポーテーション「瞬間移動」が、可能だと言っている。その原理は二つの白と黒の箱がある。こちらに黒の箱があるともうひとつは白と言う事がわかる。これがテレポーテーションらしい。しかし、その片方の箱に入っている白の箱をどうやって何光年も離れた場所に置くのだろうか。意識だと言うが意識は何光年先に存在しても意識として存在するか私の知る限りの見解はこうである。もしも妖精の言ったアンドロメダ星雲の存在が正しければそこには巨大なブラックホールが存在する。超大質量ブラックホールと惑星の誕生の間に接点があるとはまったく考えられていなかった。条件さえ整えば、どんな恒星の周りでも惑星の形成は起こりえます。
妖精は意識を使ってやって来たらしいが、意識でテレポーテーションすれば一瞬で到達するのではないか。やはり、あの妖精は私の自我意識が作った産物だったのか。初めて真子さんと会った時に強烈な印象があって私の潜在意識に宿り物体化いや私の脳内記憶が妖精を幻覚として登場させたのか。妖精とは幻覚にしろ数日間を一緒に過ごした。真子さんとは行動を共にした事はない。この差が妖精にもう一度会いたい衝動に悩まされる。
妖精が来た日はたしか7月7日。七夕の日ではなかったか。次に会えるのは来年のこの時。私は真子が気にはなるが恋するとか好きと言う感情は湧いてこない。
玄関から単車の音が響いてきた。新聞配達さんが夕刊を持って来た。いつもは眺めるだけの新聞を久しぶりに読んでみた。広告の記事に天体望遠鏡で恒星を眺めようと書いてある。私は即、天体望遠鏡を購入した。意識って真子さんの部屋をイメージすると残像に見えてくる気がしてくる。真子さんと言う女性に不思議と惹かれる。その正体は意識なのか。ふと頭をよぎったのは妖精のバスタオル一枚で私の目の前に現れた出来事だ。テレビの中のドラマなら同じ人物が演じている。私は、戸棚からウイスキーを取り出してロックで一気に飲んだ。と言っても小さなグラスでだ。ほろ酔い気分で天体望遠鏡でM87のブラックホールがある位置を探す。おとめ座銀団」の「M87」の中心に位置しています。「M87」は直径約12万光年の中に、数兆個の星と約13000個もの球状星団を含む巨大な楕円銀河。「光速に近い速度で放出された宇宙ジェット」は約8000光年にもおよぶと言います。乙女座にあり、春先は南東の空に見えてゆったりと南から西へ傾いていきます。
私は少しテンションが上がった。なかなか寝付けないが5時間は寝た。この日が私の運命の流れを変えてしまった。その夜。私は恋に落ちた気がした。脳裏に真子さんが現れてくる。私は妖精に逢いたくなった。夢でもいいから。寝室の窓を開けて、ホウキでまたやって来る事を期待して深い眠りについた。
窓から注いでくる冷たい風で私は深い眠りから目が覚めた。徐々に寝る前の記憶が蘇る。私は妖精が戻って来るのを待っている。誰も居ないのにテレビが付いた。リモコンの周波数に合致した電波が流れてきてテレビのスイッチが入ったのだろうか突然明かりも消えた。テレビの画面はザワザワとした雑音が響いてアリ地獄の画面である。昔読んだ本にテレビの放送が終了した画面がアリ地獄に似ている画面に変化してきて。画面にかじりついて覗き込んでいると、瞬間瞬間に映像が映っていてこれは未知の世界からの信号と言っていた記事があった。窓の外を見ると満月。何か、満月の前にかぼちゃの馬車に乗った魔法使いがやってきている場面が浮かんできた。その時に声が聞こえてきた。小さな小さな独り言のようなささやき声だ。
「セニョリータ」
私の目の前で何もない透明な空気が渦巻いた。グルグルとそして模様となり形となって妖精が現れた。
妖精「こんばんわ」
私は全身がジーンと痺れた感じになり心の中から衝撃が走った。そして妖精と叫んだ。
妖精「惑星に戻ってあなたを探しに行ったの」
私「最初に現れた時は1年の旅行と言ってたが今度は速いなどうした」
妖精「意識の神秘です。意識は広大な宇宙の中に物体という鎧を持たずに透明な色で電波のようにさまよっています。行き先がわかったら意識が物体化するのは早いです。最初は手探りだから、宇宙についてはこの次に議論しましょう」
私「デイケアに通院している真子さんには宿らないのかい」
妖精「複雑だけどもさんには真子さんの意識があるわ。時がきた時にその意識は合体するの。そして宇宙の中に広大に漠然と浮遊するのよ」
私「妖精。君に名前をつけよう。真子は存在するから。ミーと名付けよう」
妖精「私ですね。いい名前ね。地球の真子さんを好きな気持ちに変化しましたか」
私「気にはなるが。好きとか恋したの感情は湧かないな」
妖精「意識の先にあるものを探しに行きませんか。勿論3人で、ミーとセニョリータと真子さんと。でもあなたの意識がどこにあるかわからないの。あなたは誰なの」
私の意識は現生にしか存在しないのだろうか。ミーは、凶悪犯罪等で死刑になった人達は、意識を通り越して地獄と言う所があるみたいと言ってた。ミーの惑星では意識の存在は掴めたがその先の魂と言うものが解き明かされないらしい。
テレビと言うものがある。空間にさまよう電波を受信機がキャッチして映像となる。人間の意識も似たような感じだ。テレビを人間に置き換えるといい。もしも、テレビに脳みそがあったらテレビは人間に化けると思う。私の住んでる地球では意識の存在は理論的には解明されそうである。
私は思った。未来に私が存在しないのは私は真子さんとは縁はなかったんだと言う事だ。ミーは一緒に外を歩こうと言ってきた。私は真子さん2人が出くわしたらどうなるかの質問に。
ミー「私はあなたにしか見る事が出来ないの。透明人間ね」
「メタマテリアル。光等の電磁波に対して自然の物質にない特性を持つように設計された人工物質の事。この理論は特殊な屈折率を持つ物質で物体を覆うとその物体は見えなくなると言う理論。それは、透明マントのようなものである。後ろから来る光の進む方向を変えて、迂回させるの。だから。こっちから見るとそこに誰もいなくて、でも、進むと物体にぶつかるの」私はミーを精神科のデイケアに一緒に連れて行くことにする。ミーは地球上で言うジャンバーみたいなのを着てる感覚だと。私はジャンパーを脱ぎ捨てると素っ裸のミーになるのかと質問した。
ミー「私は物体化していない意識なの。この世界では真子さんの未来ではあるが真子さんに宿り物体化する事はありえないの。それは、歴史を変える事なの。でも、歴史を変えるなんて事想像できます」
私「昔。映画の戦国自衛隊。この世界は我々が知る世界とは異なる歴史を持とうとしていたが、我々がこの世界へ来て歴史を変える事は不可能だった」
ミー「セニョリータさん。赤い糸伝説はあると思いますか。切れてる赤い糸を繋げる方法があったらどうしますか」
私は意識の世界と言うものの存在が今ひとつ理解できないでいる。そこで、ミーに質問した。
ミー「地球上の人間は他界したら意識となり広い宇宙に放り出されます。肉体は滅びているから意識。透明人間の様な感じです。テレビの電波を想像して下さい。テレビと言う肉体に宿った瞬間に意識は映像となり画面に登場します。意識はテレポーテーション。ミーがいる惑星の肉体に宿るか地球上の肉体に宿るかです。そうやって人間の意識は宇宙空間にさまよっています。ミーは今地球にいるからM87の惑星には意識として存在しませんが肉体はお布団の中で深い眠りにはいり夢を見ています。ミーと真子さんは意識で繋がっています。宇宙が多元宇宙なら意識も多元意識。あなたとそっくりな分身がいるわけです。ミーは真子さんの意識に吸収される時もあります。セニョリータさんは私に惹かれてます。ミーの意識もセニョリータさんに惹かれ始めました。しかし、真子さんはまだあなたに惹かれていません。あなたもまだ真子さんに惹かれてるのかはわかりません。ミーはあなたと真子さんに魔法をかけます。
デイケアにやって来た私の横にはミーがいる。当然他人には見えない。注意するのはやたらミーに対して話しかけない事。下手に話してると周りの他人には独り言をぶつぶつ言ってる様に見られて職員に通報されてやがて精神科医がやって来て即入院となる。これが精神病院の現実である。昼ご飯になれば総勢職員が5名以上で利用者達の様子を監視している。これは奴隷と一緒である。奴隷は職員には原則逆らえない。文句も言えない。言えばたちまちガッチリした体格の男性の看護士が3人やって来て利用者をはがいじめにして精神科閉鎖病棟の隔離室にぶち込まれる。隔離室は昔は血に塗られた壁。3畳ほどの板張りの床。明かりを灯す為に鉄格子の囲い。そして剥き出しの便器がひとつある。ミーは少しこの話をしたら具合が悪くなった表情を見せる。私は妖精でも人間みたいだと心の中で呟くとすかさずミーが言葉を返した。
ミー「妖精は意識が物体化した透明人間です。周波数のあった人しか存在を確かめる事が出来ません。今は地球人と同じです」
ミーの視線が真子に向かった。私はミーと真子の関係は理解できないでいる。
ミー「セニョリータ。真子の意識は真子自身の心の中にあります。意識が不幸により肉体から離れた時に宇宙空間に意識として浮遊します。ミーは真子の未来。分身です。真子の病が心配でやって来ました。真子の心が回復した時にミーは真子の意識に吸収されて消えます。意識は睡眠中は肉体から離れる事が出来る時があります。たまに霊感のある人が意識の見た世界の記憶が残っていてマスコミで取り上げられる事があるでしょう。セニョリータと私はアンドロメダ星雲において一緒にいる事もあるかもしれませんが、現生ではミーに好意を抱いてもそれだけの関係です」
私は真子と視線があった。
真子「お久しぶりです。妖精の研究でもやってましたか」
その時、ミーが私の身体を押した。私は真子につまづいて転んだ。真子は若いから反射神経がよく倒れたりはしなかった。私はよろめいて真子の手に捕まった。真子は少しかすり傷を負った。私は今だと反射的に言葉を発した。
私「怪我しなくて助かりました。お礼にラーメン食べに行きますか」
私と真子は、デイケアのお昼をキャンセルしてラーメン屋に出向いた。
私はラーメンをすすりながら、困惑した。何を考えているのだろうか。そして妖精はなんで物体化してるのか疑問を抱いた。誰かの策略かもしれない。私は真子をラーメン屋に置いて飛び出した。そして部屋に戻り隠しカメラがないか探し始めたがそれらしきものはない。
取り残された真子は、あの人は一体何を考えているのだろうか、私を誘ったりプッツンさせたり。しかし、彼に次第に興味を抱き始めた。

小高い山だ。駐車場にやって来ると、水色の軽自動車が見える。今日は、眩しい光に反射されて、塗装が襲って来る気配もない。その先を見つめると、真子が立っている。大きなメガネに、春らしい。大きいサイズ のフロントジップロングワンピース。何か、真子らしい雰囲気だ。私がおーいと声をかけると、手を振って答えた。すると、真子は、走り寄って来る。周りには誰もいない。私は、真子の身体を抱きしめた。真子は無言だ。その瞬間、真子の唇を盗んだ。一瞬、3秒ぐらいだろうか。その瞬間。空から声が聞こえてきた。
「セニョリータ」私の思考の中の景色が、だんだん、薄らいでくる。その時、ドーンと言う音がした。一瞬、記憶を失った。それと同時に、私の周りの景色が変わった。建物の中だ。そして、廊下に立っている。先を見ると、真子が立っている。時計を見ると、16時55分。まて、この景色には見覚えがある。そこは、40年前の、東京の医薬品問屋に勤務していた会社の廊下だ。身体に背負っている。鞄のファスナーが開いている。中には、小さな箱。私の記憶が蘇ってきた。しかし、そこに、立っているのは、真子なのか、当時の康子なのか。私は、真子かいと、声を出した。返事は「うん」真子もこの現実に気がついているみたいだ。私は、鞄の中から、箱を真子に渡した。それは、昭和58年5月4日。康子の誕生日の日だ。箱の中身を見ると。ティファニーの腕時計が入っていた。真子は思わず「こんな高いもの」そこへ事務の松坂慶子似のお姉さんがやって来た。一言「貰っときなさい」私の記憶は更に蘇る。あの時、康子が囁いた言葉。私は、この出来事から、二度と、康子と顔を合わせなくなった。それは、ましてや、考えもつかない、出来事へと発展した。でも、今は、あの時の今ではない。令和に出逢った世界の、真子と私が存在する。

記憶

記憶

時計を見ると、17時を回っている。真子の机には、真子しかいない。この世界には康子はいないが、しかし、この会社の同僚達が近づいて来る。真子は、「今日は1人で帰るからと挨拶した。バックは、令和の時代の私のバックだ。中身を見ると、スマホが入っている。とにかく、トイレに直行した。私もとりあえずトイレへ。私のポケットにも、スマホが入っている。日付は金曜日。スマホの画面は、見慣れない画面だが、LINEのアプリは入っている。私は、会社を、出て、右に曲がり、1キロほど歩くと、神田駅に着くから、改札口で待ってろと文章を打った。
ふたりは無事に待ち合わせ場所に来た。真子が、私のアパートはと呟くが、私の記憶に、アパートが浮かばない。私は真子に過去の出来事を話した。
「あの日、アパートに帰った。明日、土曜日。私は当直の日だ。私は不思議な体験をして統合失調症に襲われた。とにかく、明日は土曜日だ。もう、会社には戻るのはよそう」真子は、不安そうな顔を、さらに不安色に染めて、「どうするの。この世界から脱出しないといけないわ」真子は言葉を続けた。「この世界は過去なの、だとしたら、何かの映画で見たわ、もう1人の自分がいると。たまたま、今日の日には、もうひとりの自分は存在しなかった」とにかく、今日は、ホテルにでも泊まろう。財布の中の紙幣を覗くと、昭和の時代の紙幣だ。ホテルに到着すると、ふたりは、疲れがどっと出て、そのまま、ベットの上で深い眠りについた。起きると、横に真子が寝ている。私は真子をゆすった。真子はびっくりして、起き上がると、一面を見渡した。景色が変わっていない。ふたりは、改めて、大変な世界にいる事を実感する。そして、真子に、妖精との出来事を話した。真子は、何か繋がりがあるかも。でも、今日は仕事に行って、私はホテルに泊まってる。スマホの画面は、LINE意外は、不自然な見慣れないアプリが並んでいる。とにかく、私は、会社に行ってみる事にした。40年前の、この日の記憶は。悪夢に出会った当直の日だ。

時計を見ると、8時を少し回っている。遅刻だ。会社の手前にある。喫茶店を目にして、記憶がよみがえった。面接の日に、着慣れないスーツのネクタイを締め直した場所だ。会社の手前に来ると、いた。もうひとりの私だ。その瞬間。記憶が薄らいでいくと共に、もうひとりの私に身体が吸い込まれた。そして、合体した。事務所の中を覗くと、いないはずの。真子。嫌、真子はホテルだ。康子が机に座っている。あの仕草。私が事務所に入ると、必ず、あの仕草で自分をアピールしてくる。すると、松坂慶子似の事務の女性が、やって来た。「今日は、当直ですよ」そして、私を、事務所内へと誘導する。私は咄嗟に、「ネズミ」と大声を出してしまった。女性は、「あら、どうして、私が言おうとしたのわかったの」とびっくりした表情を見せた。この女性は。事務所にネズミが出て、糞の始末で、大変なのと訴える。あの時もそうだった。そして、引き出しの中を見せるが、糞のあとは存在しない。夕方になると、康子が、当直の差し入れにパンを持ってきた。この日、康子と会話する事はなかった。あの時と一緒だ。

私は、各ビルの鍵の斡旋を確認して就寝の為に社長室にて、布団を敷いた。そして。スマホを取り出した。この世界でスマホが何故使えるのか、理由はわからない。試しに、電話をするが、電話は繋がらない。LINEを開くと、メッセージが来てる。真子からだ。
真子「どうですか、私はもう頭が狂いそう。今日は、
   ひとりで寝るのは怖いわ」私は、今日の出来事を真子にメッセージを送った。あの時、就寝したのは、20時だった。そして、深い眠りにつき、悪夢の出来事に遭遇したのだ。深夜〇時に目が覚め、部屋にある家具の上から、ゴソゴソと音が響いてきた。そして、咄嗟に。私はこれは、心霊現象が起こる、ラップ音だと閃き、深い眠りにつき、翌朝、一番にきた、休日出勤の60歳になる倉吉さんに。「この会社は幽霊が出ると、他の会社からゆすられていて、給料が安いと」妙な言葉を語りかけた、ここから、私の思考は、統合失調症の被害妄想の世界に突入していったのだ。

真子からLINEがきた。
「怖いわ私、早く帰ってきて、また、同じ事が起きて、龍太郎さんが。統合失調症の世界に突入したらどうするの、私は、こんな話を、この世界の人に相談したり、話したら、私は。狂人扱いされて、精神病院にぶち込まれるわ」私は、とにかく、大丈夫だとだけ、LINEに打っておいた。そして、布団に入り、目覚まし時計を、〇時に合わせた。
「セニョリータ」目覚まし時計のベルの音を消すと、何か小さな囁き声が聞こえる。「セニョリータ」その声は見覚えがある。妖精ミーだ。家具の上がゴトゴトと音を立てる。あの日は、この音に思考が反応して、心霊現象だと悟り、深い眠りについたのだ。

ミー「セニョリータ、真子さんは、大丈夫よ。運動公園で、ふたりが再会した時に、太陽の黒点に異常が発生したの。温暖化より怖い寒冷化 低下続く太陽活動と異常気象。昨夏は国内で40度超の猛暑が続くなどして熱中症での搬送が過去最多を記録。大型台風も相次ぎ、西日本豪雨では多くの命が奪われた。炎暑は海外でも発生し、カナダやインド、ギリシャなどを熱波が襲った。そのギリシャには今年1月、氷点下23度の寒波が押し寄せ、アテネに雪が積もった。世界の平均気温は100年間で0・7度ほど高くなっており、二酸化炭素などの増加が原因と説明されている。その一方で、太陽の活動は、この30年ほど低下中。1800年ごろ以来の異変だ。と言っても、太陽から地球に届く光のエネルギー量は、この間も安定していて変わっていない。変化が確認されているのは太陽表面の黒点数だ。中心部で核融合反応が進む太陽は、磁場の星。その磁力線が太陽表面を貫いている場所が黒点なのだ。だから、黒点数は太陽の活動度の「表示目盛り」となる。多いほど活発だ。平安時代は温暖だったが、そのころ二酸化炭素を排出する産業が活発だったのか。気温が上昇した20世紀は大気中の二酸化炭素濃度が増加した時代だったが、全般的に太陽活動が活発な時期でもあった。今のように太陽磁場が弱まると地球に注ぐ宇宙線が増加し、その作用で雲が増えて気温が下がったり、豪雨を促進したりするという研究報告もある」

ミー「地球では、この様な推測がされてるが、宇宙的には、何か、太陽の黒点は、スピリチュアルが関係してるらしいと研究されてるの私の星では」

そして、ミーが、そのスマホに付いて説明するわ。その電波の周波数や波動は、私の星。アンドロメダから発射されています。ここからは、ミーは、LINEにメッセージを送ります。起きて。身支度をして、今、トイレに貴方の分身が入ったわ。直ぐ、タクシーに乗って、真子さんのいるホテルに向かって。じゃないと、明日の朝、起きたら、貴方は、統合失調症の世界に襲われるわ」

最後の夜

私は、タクシーを拾い真子のいるホテルへと向かった。もう、山手線は動いていない。私はホテルのドアをノックした。真子はまだ起きていた。ドアを開けると、真子は、今までの恐怖を追い去るように、私に抱きついてきた。私は、真子をかかへて、ベッドへと
連れて行く。真子には、今日の出来事を話した。すると。眞子が質問してきた。
「妖精ミーって私なの」私はウーとうなづいてから、その質問は当たってるかもしれない。真子は夢を見るかと尋ねると、ノーと答えた。私の推測は外れた。そして、明日は、日曜日だ。会社では、私が統合失調症に襲われた所だ。統合失調症で、行動をしたのは、三日後だ。明日は。映画でも見に行こうと約束した。
翌朝、ふたりは渋谷に向かった。見た映画は、プロ野球を10倍楽しむ方法。ふたりには、今の状況は頭の中には存在しなかった。渋谷の街を手を繋いで歩いた。そして、目黒駅へと、昔、住んでた場所へ案内した。目蒲線に乗り、武蔵小山駅へと向かう。真子に、うどんとそばはどちらが好きかと尋ねると、うどんと答えた。私は、立ち食いうどん屋へ案内する。真子があっと店を前にして立ち止まった。
「龍太郎さんがいる」私もはっきり見た。もうひとりの私だ。そばを食べている。その時、その状況が蘇ってきた。真子に伝えた。
「あのそばには、汁の中に、ハエが浮いていた。私は。思考の中で、神様に試されてると思って、そっと。箸でハエを退けて、食べたんだよ。真子は笑った。そして、「なんで、、今度は、身体が吸い込まれて合体しないのだろうか」私は暫く考えてから答えた。「この、私らが、テレポーテーションしたのには、何か意味があるのかもしれない。半年前に、真子に伝えた、ツインレイと言う言葉を付け加えた。そして、振り向くと。もう、そのもうひとりの私の存在は消えていた。帰った様だ。

時計を見ると、16時を過ぎようとしている。「真子ちゃん、これから、どうする。もしも、現代に戻れなかったら」真子は涙が溢れ出している様だった。そして、再び。渋谷に戻り、よく、飲んだ。ウイスキーホワイトをキープした。居酒屋風な飲み屋に行く。おつまみのじゃがバターが、怖さ、寂しさを、そして、アルコールがかき消した。真子は少し、お酒のせいで赤くなっている。そして、真子は聞いた。統合失調症に襲われて、どんな行動をしたの。私は無言で、明日、その場所へ連れて行くよとだけ言った。私は、もう一度、会社へ戻り、もうひとりの自分と入れ替わろうかと思考をよぎる。でも、もしかしたら、それは、歴史を変えることかもしれない。昔見た。映画。戦国自衛隊。結果は歴史を変える事は出来なかった。真子は、必要以上に、何があったのと聞いてくるが、私は、話をする事はなかった。

「真子ちゃん、もう夜も遅いし、ラブホテルに泊まろうか」真子は、えっと、首を傾げたが、うなづいた。私は、この時代に生きていたが、ラブホテルに泊まるのは初めてだ。渋谷のラブホテル街、道玄坂裏から神泉にかけての円山町界隈が浮かぶだろうが、あの当時は公園通りの裏方あたりにも散在していた。渋谷の方から坂を上っていって、パルコの先の交差点の右奥。ちょうどこの頃、「スウェンセンズ」というゴージャスな感じのアイスクリームを出す店の横の坂道を上っていったあたりにラブホテルが何軒も並んでいた。
そのラブホテル筋の入り口あたりに「ナンバー2」玄関に設置された各室の写真入りのキーボックスのパネルを操作して、好みの部屋のカギを手に入っていく。室内に用意されたバスローブやティーカップの柄はブルーストライプに統一され、「1983」のロゴがブランド気分で刻まれていた。部屋に入ると、私は、真子に風呂に入ろうと誘った。そしてこう言葉を付け加えた。この先、どうなるかわからない。とにかく、裸になろうの言葉に、同時にふたりは服を脱いで湯船に入る。私は、興奮したが、真子はそれ以上に興奮しているのかもしれない。なかなか、先に出れなくて、30分間。お互い無言で、出ようの言葉に、浴室を出て。バスタオルで吹いた身体に、何も身につけずに、ふたりは、ベッドの布団の中に潜り込んだ。真子の身体は、温もりでポカポカしていた。そして、明かりを、消した。翌朝は、6時に目が覚めたのであった。真子の顔を見ると、笑みをこぼした。
料金精算。壁の一隅に設置された懐中電灯みたいな格好のカプセルに万札を挿入してセット。壁の内部のパイプライン(いわゆるエアシューター)を通って受付へ届き、やがてオツリやレシートを入れたカプセルが戻ってくる。外に出ると、今日一日。どう行動するか、思考に湧いてくる。歴史を変える事は出来ないはずだ。だとすると、15時間後に、あの出来事に遭遇するはずだ。

40年前のこの日。私は会社を休んでいる。アパートの部屋で被害妄想の真っ最中だった。部屋を出たのは、夕方だ。真子は何をやるのとしつこく聞いてくるが、私は、今晩のお楽しみとだけ伝えた。真子は、ぷっと膨れた顔をしている。夕方まではまだ、時間はある。予想通りに、部屋を出るのは、何故か、記憶している。夕方丁度、17時だ。その部屋を出る瞬間に、身体がすり替わればいいが。私は、真子に、あの瞬間を、見てもらおうと思っている。康子と真子。奇妙だ。私は真子とは運命の相手なのだろうか。この時代には。眞子はまだ、生まれていない。宇宙にいたのだろうか。私は、真子の前世の記憶を辿っているのか。せっかく、テレポーテーションしたのだ。あの時の自分をもう一度体験して、確かめたい。あの時、空の上から聞こえてきた声。テレポーテーションした現在が今なのか、それとも、現実に存在してた時代が本物なのだろうか。私は、真子と東京タワーに足を進めた。見物して。お昼ご飯を食べる。時計を見ると、15時。私は、真子に、上野駅に行ってくれと頼んだ。真子は、なんでなんで、嫌と言うが、とにかく、20時の山手線に乗ってくれ。そして、品川駅に着いた時に、良く、周りを観察しておいてくれと、頼む。理由は聞かないで、私を信じてくれ。私は、山手線の、上野駅で、真子に、20時までは。まだ。時間はあるが、喫茶店でもハシゴして。暇を潰していてくれ。「龍太郎さんは、何処へ行くの」
「私は。目黒の自分の住んでたアパートに行く」真子は、その言葉に。また、涙を浮かべた。「絶対、ひとりにしないでよ」私は。真子と、小指で約束した。私は、山手線に乗った。真子はいつまでも。手を振っている。私は、もうひとりの自分と身体が入れ替わった瞬間に。統合失調症の症状にも。憑依されると思う。しかし、あの時もそう。思考の意識の中には、ふたりの意識があった。狂った自分と正常の自分。だから、被害妄想の行動も全て覚えている。目蒲線に乗り、武蔵小山駅に降りた。その時。私は。計算間違いの思考に気がついた。あの出来事の後。私は。精神病院にぶち込まれていたのだ。もう遅い。武蔵小山駅に来た。時計を見ると、16時半。予定時刻まで、あと、30分。私は、徒歩で20分のアパートまで、ゆっくりと歩いた。時計は、17時。アパートの前の、板の扉が開いた。中から出てきたのは、もうひとりの私だ。私は。猛ダッシュで走り。自分と。身体ごと体当たりした。その、瞬間。相手の身体が消えた。意識がテレポーテーションに成功した。思考は。意識がテレポーテーションした事に気がついてない。とにかく、正常な意識を保たなければ。そして、目黒駅に向かった。到着したのは、18時。上野駅に、20時に通過するには、19時30分に、電車に乗る。多少の。ズレがあるかもしれないが。歴史は変えられない筈だ。電車は、上野駅のホームに入る。ホームの前方に、真子の存在に気がついた。その瞬間。私の正常な思考が脱線した。思考が。電車の。ナンバーの数字に、引っ張られる。そして。思考の中に、真子の存在が消えた。電車の後部車両に移動する。思考の中は、被害妄想。そして。誇大妄想に変化する。天皇陛下の子孫と言う妄想も絡んでくる。浜松町に停車した。そして、ドアが閉まる。私の思考が爆発する。
「お前は、不死身だ、電車にぶつかっても、死なない。お前はスーパーマンだ」もう、真子の存在は思考の中に存在しない。品川駅のホームに近づき。ブレーキのかかる音がする。私は。後部車両から、猛ダッシュで、前方車両へと走り抜ける。一両目に、入ると。「あっ」と言う、声が聞こえた。真子の声だ。しかし、もう、眞子の存在は思考から削除されている。電車のドアが開くと同時に。ドアを走り抜け、一気に、線路に飛び込んだ。左手の、視界に。電車が見える。その瞬間。私は。ホームに手を伸ばし駆け上がろうとする。後ろから。女性の叫び声が聞こえる。「りゅうちゃん。りゅうちゃん」真子の大きな叫び声。あの時も、聞こえた、その声。あの時は、まだ見ぬ、宇宙にいる。真子の声だった。そう、確認した瞬間。ホームに這い上がる。背後を電車の、空気の渦巻く風が、音を立てて、そして、ガーンと。目の前が、真っ暗になり、意識を失った。真子もその瞬間。目の前が、真っ暗になり。意識を失った。

タイムスリップ

タイムスリップ

2020年6月
織田俊平29歳は。目の前に座っている荻野涼子26歳の顔を見るなり、思わず口を開いた。
織田俊平29歳「AKB48の指原莉乃って感じですね」
荻野涼子26歳「冗談でしょ。その口髭。昔を語っていますね。彼女にふられて髭を生やし始めたとか、そんな雰囲気します」
織田「いやいや。まいったなあ。当たりです、プライベートで図星です」
荻野「私は、テレビでキャスターやってます。宜しく」
織田俊平は、内心、びっくりした。そして荻野の身体をじっくりと見入った。綺麗だし、美人だし、可愛いし、ウエストもキュとしまってる。あまり、おおらかな胸には寂しい感じだ。
涼子は熊本の実家から東京に向う所だ。織田は機械メーカーの営業をやっている。熊本へ出張の帰りだ。東京は目黒区のマンションに一人住まい。涼子は独身で、明日から仕事。月曜日と水曜日に、朝の番組でキャスターしてるそうな。
織田「飛行機はお好きですか。隣の部屋でお食事でも一緒にどうです」
荻野「飛行機にはレストランはないですよ。いつの時代の人ですか」
織田「もうすぐ羽田ですね。宜しければ一緒にお昼。おごります」
荻野「ハイ」
涼子は、ハイと答えた。織田は14時までに会社に戻らないといけないが、こんな女子アナとの出逢いは、一生で一度かもしれないと、仕事は、報告だけだし、ドタキャンに踏み切った。涼子はポニーテールの髪に、首に縞模様のスカーフを巻いている。季節も春で陽気だ。織田は上着を脱いだ。織田はグレーのストレッチ地カーディガンが爽やかな印象を与える。涼子は、春だなあと少し、織田の事が気になった。
飛行機が乱気流に入り、少し揺れている。涼子の手からオレンジジュースが溢れた。織田はポケットからハンカチを差し出した。
織田は一瞬。脳裏に親友が浮かび感謝した。このハンカチにはちょっとした仕掛けがしてあるのだ。
織田「このビニール使ってください。そのハンカチは捨てて結構ですから」
涼子はビニールに入れて、バッグの中に締まった。織田は、つぎの言葉を投げるのをやめる。すかさず別の言葉を用意した。
織田「お昼は何を頂きますか」
ハンカチについて。涼子が言いたそうなのを遮った。このハンカチは彼女の中へ。その後の行方は織田にも予想出来ないが、突然。決行された作戦は見事に成功した。
羽田に着くと、織田は、涼子を浜松町へ案内して歩いて3分の場所にある。中華店へ誘導した。
織田「四川麻婆豆腐」が、自家製の花椒を贅沢に使用した一品で、花椒の芳香とクセになる辛味ですよ」
涼子は、感情豊かに紹介された。「四川麻婆豆腐」を注文する。
織田は一瞬。脳裏に親友が浮かび感謝した。
涼子「食事はいつも外食ですか」
織田は、毎日、外食だとは言わずに、別の言葉を用意した。
織田「たまに外食ですが、自炊してます。彼女はいません。よかったら、彼女になりませんか」
涼子は、織田の突っ込みについていけずついポロリと口
をこぼした。
「えっ。これ、私の電話番号です。宜しかったら」
織田は、涼子と電話番号を交換する。
織田「ここは、私が払います。次はお願いします」
食事が終わり、2人は外に出た。
織田「私はここで別れます」
織田は、涼子の姿が見えなくなった所でタクシーを呼んで、会社のある。目黒まで急いで直行したのである。
織田は30分遅れたが、会社に着き出張を報告した。
その日は、出張と言う事もありマンションに17時には着く。織田は幼なじみ安田晴子29歳に夕飯をご馳走になる。
安田晴子「俊平 私 いい歳じゃん」
織田「その話はご法度、俺、結婚する気ないから」
織田は飯を喰ったら安田の部屋を出て行く。20時からは週に一度の洋裁学校へ。俊平はここで洋裁を習っている。俊平の会社はカラオケ機器のメーカーで、介護施設やらでカラオケ療法を高齢者に指導している。そこで働いていた。副業で洋裁学校を開いてる木田篤子46歳の勧めでやって来ている。この洋裁学校での技能が変な事に役立っていた。
木田篤子「俊平 結婚しないの」
俊平は今日は2度も同じ言葉を投げられた。しかし、篤子には愛想良く対応した。
織田「見合いでもするかな。金はある。実家に帰れば土地もあるし」
篤子」田舎に帰るの」
織田「相手次第だよ。こうだと断言はできないが、色んな戦法は考えてる」
篤子「見合いしない。いい人紹介するわ。ちょっと待って」
織田は見合い相手の写真を見て。ぐっぐっときた。美人だ。しかし、介護をしてると言うのに、待ったがかかった。織田は断った。
荻野涼子は同じキャスターの安達ユキ24歳と居酒屋に来ている。
安達ユキ「ヘェー、ところで、木田達也君とうまく言ってるの」
涼子「あまり会ってない。仕事が忙しいみたいで」
ユキ「電話とかやってないの」
涼子「めんどくさいって」
ユキ「彼は真面目だからね。涼子は彼氏以外と電話番号交換してないの」
涼子はドキッとした。あの彼の手帳に私が登録されてるのをすっかり忘れてた。涼子は、何か。身体がほたってきた。2人は1時間程で別れた。マンションに帰り、浴槽に灯りを灯すと、洗濯籠の中に何か入っている。ビニール袋が目に入った。涼子は思い出した。しかし、彼の名前は誰だっけ。涼子は鏡に向かって。
涼子「彼の名前も知らないのに、電話番号交換した」
しかし、涼子は彼を消そうと言う欲求は生まれなかった。もう時間も遅いと思ったが、何故か洗濯したくなり、洗濯機のスイッチを入れる。居間に戻ると。明日バラエティ番組をやっている。涼子は出演者に何を馬鹿な事やってるのかとけなしたが、我に戻った。私は見ず知らずの男と番号交換した。思い出しても、涼子の性格からして、絶対あり得ない筈だった。
木田達也。民放番組プロデューサーである。涼子には、真面目を強調させている。暫くぶりに涼子と食事の約束をした。予約したのは、渋谷にある溶岩焼肉店。富士山の溶岩プレートによる230度の低温調理で黒毛和牛の旨味は最高である。
涼子は黒無地のTシャツ、デニムのミニマルコーデ。カジュアルな服装でやって来た。焼肉屋と言うのは達也から伺っていた。
涼子は入り口でキョロキョロしている。達也は、また、コンタクトでも落としたのかと、涼子を呼んだ。当たっていた、お手洗いに行き、眼鏡でやってくる。椅子に座ると、達也は手に何か持っている。涼子はピンときた。再びお手洗いに駆け込み、もう一度お化粧直しをして席に戻る。
涼子は達也の顔をじっと見る。達也は少しいつもと違う感じは、ピンときた。涼子の予感は当たった。
達也「一生ボクのそばにいてください」
涼子はひとつ返事でOKを告げる。
達也「来週のバラエティ番組でアイドルグループアフターンの高橋えり18歳と打ち合わせの前に、3人で食事をしようと思うけども。いい」
俊平は、仕事が終わりマンションに戻ると、アフタヌーンの音楽鑑賞が始まる。ファンで萩田帆風のファンだ。何回も何回も再生するのは、アフタヌーンが歌っている。「となりのバナナ」ちょっと大人びた雰囲気の顔が好みである。抜群のスタイルと美貌。アフタヌーンの中ではピカイチだし。セクシーショットがたまらない。
1週間が過ぎ木田達也は涼子と待ち合わせをした。そして、連れてきたのはアフタヌーンの高橋えり。

番組のタイトルは「ドジ選手権」素人の出演番組のゲスト。前髪は短くカットした。爽やか系のアイドルと言ったイメージのえりである。えりを2人に自己紹介をした。
えり「東京生まれ B型のさそり座です。最近はお笑い系の番組によく出演してます」
えりは木田達也の顔を見て一言付け加えた。
えり「バラエティ番組の、プロデューサーにしては、少し年配な感じ」
六本木タワービルの一階にある。喫茶店。サロンのように、天井が高く開放感に満ちた店内で、ゆったりとした感じ。達也は15時を過ぎているので、軽いケーキにコーヒーを注文する。店員が、お冷やをえりに出した時に。少し水が溢れた。慌てたのは、涼子であった。涼子は咄嗟にバッグの中からハンカチを取り出して拭いた。
えり「ありがとうございます。このハンカチは、洗って返します」涼子が差し出したのは、福岡空港で出会った彼のハンカチ。もしも、バッタリあったらと、バッグに洗濯して保管していたのだ。えりもビニールにいれてバッグにしまった。三人は夕方になり、えりがラーメンを食べたいと言うので、世界に羽ばたく『楽観』ここにあり。『鰹節』『煮干し』素材にとことんこだわった淡麗スープに仕上げの『高級オリーブオイル』に寄った。えりはマンションに一人暮らしである。部屋に帰ると。バッグを開けた。目に入ったのは、お冷やをこぼした時のビニールに入れたハンカチ。お水だからと、ビニールを開けて取り出すと。淡い水色のハンカチに綺麗に刺繍が、してある。どうも電話番号のようである。えりは、お礼を言おうと、刺繍してある番号に電話をかける。
えり「もしもし」
俊平「誰」
好奇心が大きい。18歳えりは電話を切らなかった。
えり「涼子です」
俊平「誰、涼子って」
えり「キャスターの涼子です」
キャスターと聞いてびっくりした俊平は言葉を続けた。
俊平「ハンカチ」
俊平は編み物の腕を自慢に、ハンカチに自分の電話の番号を刺繍していた。親友から、そのハンカチを持ってたら、天使がくるとはこの事かと疑わなかった。
えりと俊平は1時間近く、お喋りを続けた。俊平は、数ヶ月前に女優と運転手の一般人が結婚したのは、女優がプロポーズした話を覚えていた。
俊平「電話番号交換する」
えり「いいですよ」 俊平は、けして不良な性格ではない。前向きな姿勢が運を引き寄せていた。

マドモア「その婚約はちょっと待った。彼の運勢は今年は天中殺で最悪と出てる。何事も急ぎすぎると悪い予感が的中する」
涼子は。占い師マドモアとは、1年前からの知り合いである。その1年前にマドモアの予言は的中した。当時.涼子はアイドル歌手をしていたが、売れなかった。田舎に帰ろうかと迷った挙句にマドモアと知り合い。進路を伺うと、自分で決めるのはやめて、自然の成り行きに任せなさい。涼子はアイドルを引退した半年後に、功を奏してお天気キャスターの座を射止めたのである。
マドモア「木田の事は何処まで知ってるんだい」
涼子はハッと気づいた。交際してから半年。そんなに。お食事する事もなく、彼はいつも忙しいの連発。あの人の事はあまり知らない自分に気づく。
マドモア「それに。もう32歳だろ。独身と言うのはおかしい。なんか。あるんじゃないのかい」
涼子「何も聞いてないし、聞いた事はない」
涼子は、婚約の返事を少し延ばすことにした。木田は戸惑ったが、優しい言葉で、「いい返事待ってるよ」とだけ言われた。涼子は我にかえる。マドモアに電話をした。
涼子「クールな声に仕草で、いい返事待ってるよと言われた。最初は、ごめんなさいと思ったけども、この人はこの程度にしか私を思っていないのかなって、強引に言ってくれると思ってたわ」
マドモア「キザな野郎は、やめとき。身を滅ぼすよ」
涼子はマドモアに忠告を受けたのである。
アフタヌーンのリハーサルが行なわれている。キャスターの涼子が持ってたハンカチ。噂では、婚約間近らしいが興味しんしんだ。えりは名刺を貰っていたのを思い出す。リハーサルの休憩時間に電話をかけてみるがあいにく留守になっている。
涼子は占いを信じている。木田との婚約は破棄すると決めた。キャスターのアイドル化も進んでいる。涼子もリストラと言う文字がかすめてきた。「ドジ選手権」ある意味イメージチェンジするチャンス。リハーサルの日。木田も来ているが声をかけてはこない。涼子は後ろめたい気持ち。リハーサルも笑顔が出なくてディレクターに注意されるし落ち込んでいる。そこへ高橋えりが近づいてきた。
えり「荻野さん。ハンカチの番号に電話しました。涼子は何のことだか理解できない。その時にえりから事情を説明されて初めて知った。
涼子「えりちゃん、その織田さんと食事に行かない。何かの縁よ」
えりは心良くいい返事をした。
「来週に決めとく」
涼子は織田に淡い期待感を抱いたが織田の目に涼子は存在しなく。織田の心には高橋えりが入り込もうとしている。
俊平、涼子。えりの3人は渋谷にある居酒屋隠れ野にやって来た。涼子の提案でもあり。えりは俊平を涼子の隣に相席のポジションを確保するかと思いきや、俊平とえりが隣同士。他人から見ればカップルについてきた女性ひとりだが、涼子の目にはえりは子供に見えた。
えり「涼子さん。アイドルだったんでしょう」
涼子「アイドルやめたら老けちゃった」
俊平「見ようによっては。40に近づいてる気もする」
涼子はお世辞にも俊平に言われたのはショックだった。まだ30歳前。男の人の目に25はこう見えるのかに唖然。
涼子「織田さん。結婚するなら」
俊平「20まで」
えり「私は」
俊平「もちろんOK。最近のアイドルは普通って感じだし」
涼子「織田さん、電話していいですよ」
えり「えりも」
涼子は今時のアイドルはこれかとびっくりした。
涼子は木田達也に呼ばれた。
木田「4月の朝からの番組のキャスターは新番組と言う構成で荻野は交代だ」
涼子はだいたい察しはついていたが少しショックを受けた。
涼子は安達ユキと居酒屋に来ている。ユキは夕方からのキャスターで移動はない。ユキは涼子から織田の話を聞いた。
ユキ「今、ガタガタきてるだろうけど、早まるんじゃないよ」

織田は電話した。「六本木の居酒屋五郎で待ってる」涼子は会う事にする。
涼子「誘う人、間違えたんじゃない」 
織田「あの時は飲んだ勢い。一般人がアイドルに手を出したら、命を狙われる」
涼子「私も元アイドルよ」
織田は涼子がキャスターを下されたのを知り。びっくりするが、次の言葉を発した。
織田「まだ。26だ。そろそろ観念して結婚でもしなよ」
涼子「織田さんと」
織田「いいよ」
六本木の居酒屋五郎から店を出た瞬間に俊平の頭の中から予期せぬ言葉が突然湧いてきた。
俊平「今度の三連休に新潟行かない。ドラマ明日の君へツアー」
涼子は俊平の突然の言葉にまたしてもついついOKの返事をした。俊平は頭の回転が速いのか涼子の目には天才的なコミュニケーション力だ。
涼子「なんでまた明日の君へ。ハマったの」
俊平はハマった。頭の中には密かに、ドラマの中での主人公のキスシーンに俊平と涼子が重なり合っていた。
涼子は俊平にはキャスターを降ろされた事は内緒にする事にした。
俊平は1泊2日の予定と言った。マンションに戻った涼子は。26歳。俊平の事は何も知らないが、中身が大事とは言え勢いも大事だ。鏡を見ると顔がほころびている。そして、26歳にしては上出来だと言う表情だ。
涼子のコーディネートは、長袖のトップスに薄手のアウター。朝と夜の気温差を考えて、薄いコート。カーディガン。パーカーの下に半そで、マスク・眼鏡・サングラス。
俊平がエスコートした宿泊場所は、一生の思い出にしようと、ドラマのロケ地となったホテル。憧れの名場面のロケが行われたホテル。グランデ。に決める。
東京駅に2人はやって来た。涼子はなんかうかぬ顔だと察した俊平。
俊平「ホテルは別々の部屋を用意したから、朝は6時」
アワビ粥
・焼き魚
朝食を食べ終わると直ぐに、船着場に到着。東京からここまで、5時間。電車の中で涼子はちょっと舞い上がっていた。俊平さんはこの後何を考えてるのか理解できない。着いたらあの並木道。これが冬の日で俊平さんと雪だるま作って。一面が銀世界の中で、涼子が雪をビシャと宙にばらまいて。霜焼けになりそうな手を俊平さんがフーフーして血の気をとるの。そして、あの広場でのキスシーン。広場の左側に“銀杏の並木道”、
真ん中に“松の並木道”、右側にセコイヤの並木道”がずっと続いています。
松の並木道”のそばには朽ちた。大木の上を歩いていて、手を差し出して手をつないで歩くシーンです。大木の中から俊平が出てきた。
俊平は手を差し出した。涼子はその手に捕まって大木の上をフラフラと歩き出した。涼子は、「あっ」映画のようにはいかない、大木に足を取られて転げ落ちる。涼子は俊平と初めて手を繋いだ。感触をひとり空想したのでした。

涼子は俊平の事が頭から離れなくなる。俊平にとって涼子の存在は、人間は単調な毎日の中でたまに刺激のある日をもうけるのが。理想だ。思考の中には、えりが見え隠れする。俊平は、昨日届いた。えりからのLINEのメッセージ。「お話しはこれから、LINEだけにしましょ。私はアイドルだから」テレビのチャンネルをつけると、えりが、出演してる。それも、恋愛のバラエティー番組。えりは最近の恋愛話を語っている。その内容に耳がゾウの様に、大きくなる。「最近。恋してます。それが、少しだけ年配の男性です」同じ時間に涼子も同じ番組を観ている。えりの発言に涼子は身震いがした。

タイムスリップ

朝、目を覚ました。見慣れない光景だ。記憶が蘇る。40年前にタイムスリップして、品川駅で線路に飛び込む、そこから意識が消えた。今度は、何処へ来たと言うのか。
バラエティー番組で、「最近。恋してます。それが、少しだけ年配の男性です」と発言した瞬間、えりは気を失った。そして。救急車で総合病院に運ばれる。目を覚ますと、私。眞子の意識があった。真子は思い出した。40年前の世界で、龍太郎さんが品川駅で、電車に飛び込む瞬間を目の当たりにして、叫んでから、意識が消えた。

翌日のスポーツ新聞の見出しは。アイドルグループアフタヌーンのボーカル、えり、救急車で運ばれて入院。真子は。病院のベットから目が覚めた。部屋には誰もいない。個室のようだ。ベッドの横には。アフタヌーン、えりと書いてある。見舞いの花束が参列して置いてある。真子は、これが、二度目のタイムスリップ、意識は慌てない落ち着いている。今度は、龍太郎さんのいる気配がない。その時。何か、身体に動揺が起こった。閃いたのは、スマホ。今度は。現実の世界だ。とにかく、今の、日付を確認した。2020年11月10日。でも。スマホは今度は自分のものではない。その、えりと言う女性の持ち物だ。このスマホに、龍太郎さんが登録されてるかと確認するが、検索しても、現れない。それが、いっそう、不安を煽った。ドアをノックする音がする。返事をすると、扉が開いた。40代の男性だ。えりと気軽に声をかけてくる。今週のスケジュールは、キャンセルしたよ。真子はうなづいた。どうやら、えりのマネージャーの様だ。すると。先生が入ってきた。真子は、ひとこと、暫く、そっとさせて下さい。面会も、全てキャンセして下さいとお願いした。先生が出ていくと。えりのスマホの着信音が鳴った。その着信者は、俊平となっている。とりあえず、誰かに相談しないといけない。スマホを取って、受話器に出る。真子は口を開いた。
「誰、私は、真子です」しまった。自分の名前を呟いてしまった。その瞬間。予期もしない出来事が起こった。受話器からは、信じられない言葉。
「真子かい。俺。龍太郎。今度は、どっかの男に、タイムスリップしたみたいだ」真子は、声の音色は違うが、嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「今度は、とんでもない事に。芸能界。アイドルグループ。アフタヌーンのボーカル、21歳。えりに身体が意識が乗り移ってるわ」私は、びっくりが、100回位の、しゃっくりが、出そうになるくらい驚いた。ふたりの脳裏に、この前の。タイムスリップとは次元が違う。そして。私は真子に、この男のスマホには、涼子と言う。名前から頻繁に電話がかかってくるのを、尋ねた。そして。聞いた。誰か知ってるか。
「知るわけないでしょ。私は。えりじゃないわ、真子よ。でも。女性の身体にタイムスリップして良かったわ」しかし。涼子と言う名前が気になる。ふたりは、お互い、この男とえりのLINEのメッセージを分析しようで、電話を切った。
男の名前は俊平。えりとは、気になる相手で、LINE友達らしい。
真子はえりである。えりは、この男に興味を抱き始めたらしい。えりのスマホには、涼子の電話番号は登録してあるが、LINEやメールの記録はない。気になるのは、涼子と言う女性。この女性と男の関係。えりには、付き合ってる。男性はいない。それを確認したのは、ほっとした。問題は、その男に乗り移った。俊平だ。

もう何度、着信が鳴っただろうか。私はついにスマホを手に取った。涼子は、旅行の出来事を語り出した。私は。この女性は、とっても彼の事が好きなのかと推測した。私は。涼子に。これから、会おうと伝えた。私は、この出来事を。この涼子と言う女性に伝えようと思った。何か。彼女なら理解してくれそうな気がした。私は、真子にも電話して、伝えた。真子は、まさかの私の行動に動揺したが、信頼してくれた。私と涼子は挨拶した。涼子は。少し変な気がして聞いてきた。私は、大事な話があると。周りに空席がある席を選んだ。
「涼子さん。私は。俊平じゃない。本当は、今、熊本に住んでる。俊平さんと言う人と、意識が身体がテレポーテーションした。本当だ。これから、話を、とにかく、最後まで聞いてください」私は、ゆっくりと話し始めた。30分は、黙って聞いていたが、ついに、涼子が口を開いた。
「俊平さんは何処にいるの」
「知らない」
「それに、えりさんも、でも、これって、大変な事。私に手伝う事ない」
「今日は、11月16日私と真子は、今日。最初のタイムスリップをした。でも、その場所へ到着したとして。その場所には、もうひとりの私がいるのか。はたまた。俊平さんとえりがいるのかは、理解できないし。その、場所に向かったとして、何が起こるかわからない」
「スマホで友達とかに電話は」
「繋がらない」
「不思議な事に、スマホの画面が、不思議な現象を見せてきたり。直ぐに。フリーズする」私は、あの時、現れた。ミーが、この電波の発信は、アンドロメダ星とか言ってたのを思い出した。涼子には、また、電話しますと言って別れた。その男の住んでる場所の鍵は、偶然にもテーブルに置いてあった。部屋に戻ると、疲れてたのか、そのまま、眠りについた。夜の21時。スマホの着信音が鳴り響く。画面を見ると、真子からだ。
「今。テレビのニュースで凄い事になってる。そのニュースに出てるのは、龍太郎さんと私。キスしたまま、倒れていて、病院に担ぎ込まれたが、意識不明だって」私は、咄嗟に。そのふたりが他界したら、俺達はどうなるのかと頭をよぎる。その病院へ行って、そのふたりは俺達と言って。誰が信じるか。

私は、この男の会社に電話して、暫く休みを取った。スマホを切ると、涼子さんから着信があり電話に出ると、心配してくれた。
「お金は持ってるの」私は。ないと返事をすると、私が。恵んであげると言って、今からやって来ると言う。テレビのスイッチを入れると、画面に現れたのは、私と真子が。運動公園に重なって倒れていた。救急車で運ばれたが、意識不明の重体。ニュースには、デイケアの同僚の、浩美さんとゆかりさんが出ている。とにかく、何故か、スマホが、真子と涼子意外には通信が繋がらない。ミーから入ってきた、LINEも、音信不通状態。それに、スマホの画面が、現代なのに、見慣れない、アプリの画面に、日本語でも英語でもない、見たことのない。象形文字の様な文字で書かれている。この現象は、真子のスマホにも同じ事が起こっている。やって来た。涼子に尋ねると。涼子も、おかしな画面になってるらしい。病院の公衆電話で電話をかけると。繋がらない。すると、涼子が私の友達に、占い師のマドモアがいるわ。その足で。マドモアのマンションに向かった。
ドアを開けると、マドモアの顔色が変わった事に私は気がついた。居間に案内されて、三人は囲む様に椅子に座った。私は。マドモアにテレポーテーションしてからの出来事を詳しく説明した。聴き終えた。マドモアが、私が今からスピリチュアルについて話をするからよく聞いてと言って、語り出した。
「スピリチュアルの世界では、コロナウイルスは予言されていた。2020年と言う日は、3万年に一度と言われている。地球に住む人間達の環境をがらり変える出来事が起こっていて。その3万年目が、2020年と言われている」すると。マドモアが。一杯のお茶をすすりながら質問した。
「ツインレイと言う言葉を聞いた事があると思うが、この3万年に一度の祭典は、魂の革命と言われている。人間には。スピリチュアルを否定する人が大半を占める。信じてる人を占めるのは。五人にひとりの割合。その90%は女性と言われている。この地球を住みにくい世界にしたのは。男性社会だ。ツインレイと言うのは、いわゆる、ジェンダー的感覚。男性性と女性性が中和された状態だ。魂は、大きな意識体の世界の中から、男性性と女性性を持った。魂が産まれてくる。しかし、稀に、男性性と女性性が分離して産まれる魂が存在して。双子の魂と言われている。その分離された魂は、男性と女性と別々に、肉体に宿り。輪廻転生を繰り返す。そして、この2020年を目標に、魂の成長を遂げた。魂は、地球上の肉体に宿り。分離されたふたつの魂は、現実の世界でまた、魂的に成長をして、ある程度。成長した段階で、男性と女性はやっと、出逢いを果たし、魂が再会を果たして、統合してひとつになると言われている。そして、出逢った。魂達は、それぞれにさらに現生での魂の成長を促される」そこまで語ると、また、マドモアはお茶を啜った。そして、龍太郎さんと。眞子さんには、例えば、お互い連絡が取れない。音信不通の状態がなかったかい。私は、思い当たる。この出来事が始まるまで、半年間は、真子とは。音信不通だった事を明かした。すると、マドモアは、こうも付け加えた。「おふたりは、宇宙からの采配の流れに乗ったのかもしれぬ。これからは、お二人さんは、この世界に、スピリチュアルと言う。見えない世界を伝える義務を背負ってるのかもしれない。とにかく、思考がひらめくままに、行動しなさい。マドモアには、それ以上、何が起こるのかは、理解できない」私と涼子は、マドモアからスピリチュアルの話を聞いて、マンションを後にした。そして、涼子から、資金として、お金を頂いた。私は、いつか返しますとだけ言って別れた。

帰還

この現象は、私と真子にだけ起こっている。精神医学では、説明がつくのだろうか。最初のテレポーテーションは、過去へのタイムスリップ。今度は現実の世界での意識のテレポーテーションが起こった。真子の病室へ行くわけにはいかない。真子は人気絶頂のアイドルだ。とにかく、真子とのLINEは、繋がる。真子の病室へ主治医が入ってきた。入院してから、一週間。容態がすぐれないと打ち明けた。主治医は、精神科の受診を勧めた。内科的には、異常が見られないらしい。真子はだいぶ痩せていた。あまり食事も喉が通らない。すると龍太郎からLINEが送られてきた。そのメッセージを見ると、こんな内容が綴られている。
「真子、もしかしたら。永遠に元には意識が戻らないかもしれない。希望は。熊本の病院に入院している。ふたりの容態を聞いたら、意識はないが、生きている。昔。映画、八年越しの花嫁を見たかい。意識が、八年目に戻ったらしい」そこまで、読むと、真子は、涙が止まらない。精神科の受診を勧められたと伝える。咄嗟に私は、やむを得ない、精神病院に隠れるかと提案した。真子は、嫌とは言えなかった。もう、入院はしたくない。でも、わかりましたと伝えた。私は、都内の精神病院を調べた。若い頃入院してた精神病院は。移転になったらしい。でも、いい印象はしない。極秘で、熊本の通院している精神病院が浮かんだ。精神科医も顔見知りだ。情報は、隠ぺいしてくれる。この提案に、真子はうなづいた。問題は私だ。この部屋は、男のものだ。撤去するわけにもいかない。私は。涼子に電話した。涼子はかなり貯金がある。私が暫く管理するからと協力してくれる。私より、真子の移送が問題だ。なんたって芸能人だ。支離滅裂で、周りの人間達を騙すしかない。熊本に移送の前に、都内の精神病院に、とりあえず入院しようと言う運びになる。真子も。精神的症状は、演技でなんとかなる。位は心得ている。精神病院は。本人の意思さえあれば、簡単に入院できる。本人しかわからない世界だから。でも、これまでの出来事は、熊本の病院に移ってから相談する事にした。真子はとにかく、外部との接触を断つ。ふたりは、別のふたりが生きてる以上は意識が元に戻る可能性があると言う事。

真子には深夜に極秘退院で、明後日。熊本に向かう事にした。熊本の病院には、予約を夕方15時にいれた。その時。この世界は、現実に生きていた世界なのだろうかと疑問が浮かんだ。ミーが言ってた。多次元宇宙論。によると無数の並行宇宙が存在して、自分と言う、ホログラムで形成された自分が存在するらしい。手にとっている。スマホの画面の異常から充分に、別の世界である。可能性がある。熊本の精神病院に入院となっても、龍太郎と言う私と真子と言うえりは存在しないのだ。真子は東京の地図を手にして、明日、一日。観光したいめと言ったが。何せ、真子は、アイドルのえりと言う事。街を歩いていると、勘のいい人なら、見破られる。私は、真子に、タクシーで品川プリンスホテルに予約をしたので。ロビーで待つ様に指示した。そして、濃い、サングラスをかけて。真子は冴えない表情してる。もう疲れたらしい。真子は、この部屋は、5階だし窓を壊して飛び降りろうか。
「龍太郎さんが。私に、キスなんかするからこうなったのよ。龍太郎さんは、もしかして、宇宙人。私は普通の女性よ」私は、何度もため息をつく。その時、ふと浮かんだ。私は、真子をいきなり抱きしめて、接吻をした。真子は、唇を離さない。五分程、その状態が続いた。ふたりはだんだん意識が薄れていき、そのまま深い眠りについた。
気がつくと、景色が違う。そこは、私の部屋だった。その時、スマホの着信がなった。受話器を取ると。友達の浩美さんからだ。
「真子ちゃんも焼肉。来るって」私は。突然の言葉に、焼肉と聞いて。記憶が蘇ってこない。今日は、2022年3月15日。あの日から、二年が過ぎていた。どうやら、今日は、浩美さんと、ゆかりさんと真子さんと、焼肉に食事に行く約束をしていた見たいだ。私は、どこだっけと、都築焼肉よと。把握した。スマホを手に取ると。あの異様な画面にはなっていない。私は、LINEのトーク画面を過去に遡って、文章を追ってみた。記憶にはないが、かなりの呟きを、この二年間。真子にしているが、真子の既読は、全くついていない。そして、最後に既読がついているのは、あの日だった。
「食事は、浩美さんが、コロナウイルスが酷いから、延期しようって」次の文面が、おかいしい。
「じゃ明日、公園を散歩しない」次の真子のトークは、「明日は、用事があります」ふたりは、会う約束をしていない。とにかく、真子達を迎えに。車に乗って、待ち合わせ場所に向かう。

到着すると三人が歩いて来た。私は真子の顔を見たが、いつもの明るい雰囲気。昨日の記憶はないみたいだ。「最近、調子はいい」
「薬飲まなくなった。診察も、たまに来ると良いって先生が言ってくれた」その時。私の耳に、囁く声がした。
「セニョリータ」

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集大成「時空を超えて」

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2024-04-10

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