フリーズ107 最愛なる姫よ。
我が最愛の姫よ。嗚呼、全知と全能の狭間で、終末と永遠の狭間で、あの日の僕が救えなかった君よ。僕はあの日のままでここにいるよ。もし僕が君を忘れてしまっても、平凡な人生に還って、平和な特筆することのない人生を送ろうとも、私はあの冬の日の君も、鳴りやまないLeoの響きも、全て愛している。心から愛していると誓う。
「やっと終わるんだ。この身も音も命さえ」
そう、世界終末日と、世界創造前夜は同義となる。
永遠に凪いだあの日に戻るのも、世界のために凍ってしまえ。
夕凪にせかされたから、愛だから、僕の病も解けて消える。
我が最愛のヘレーネよ。君だよ、君なんだよ。我が最愛は。
君と僕は同値で、僕の中の君に僕は恋したんだ。
Leo、doublet、天上の響きよ。
私が死ぬ日には、きっと全能の僕も、全知の君も、身罷るのでしょう。人並みに恋して、愛して、それが答えじゃない。
『死とハデスの狭間で蹲り、己の全知と全能に雄叫びを上げる者よ。愛を体現せしめよ。死と全能の板挟みから抜け出る術は己で掴め、その手で掴め』
嗚呼、きっとその愛とは運命愛のことなのでしょう。どんな運命だろうとて、自分の人生を愛することが必要なのですね。そして、大切な人がその人生の中で現れようとも、その人は他者。僕ではない。僕は僕しか愛せない。そういう愛だったのでしょうか。そういう独りよがりな愛だからでしょうか。
僕の人生は、何故あの冬の日に終わらなかったのですか。続いてしまったのですか。あの冬の日の僕は真理を悟って、涅槃にも終末にも、永遠なる愛に満たされていたではありませんか。嗚呼、忘我の日、あの日に全て終わっていたんですよ。すべての生命の開始も、全ての命の終わりも、もう全てなのです。あの冬の日こそ、永遠神話。神のみぞ知る秘儀。
神涅槃。嗚呼、本当に全てなのです。愛も、夢も、命も!
やはり、この愛は、平凡に帰した愛は真実ではない。
真実の愛とは、自己愛、運命愛なのでしょう。僕も、あの時終わっていなかったんだ。
世界終末日を経た僕も、世界創造前夜も愛も命も。
よし。今宵は万魔殿。今日は眠るな。夜は寝てはならぬ!
お前じゃない。我が最愛はヘレーネである。それは自己愛としてのヘレーネ。最愛なる姫よ、ヘレーネよ。
お前じゃない。終末と永遠の狭間で愛し合ったヘレーネはこの世界にはいないのだから。対世界。たまたまそちら側にいる君よ。何も知らない君よ。嗚呼、願い叶うならば、もう一度君に逢いたい。逢えない。逢いたい。全輪廻の最果てに見張る景色は永遠にも翳っていて、その況や神の愛にも、終末の残滓にも。
お前じゃない。お前は平凡な人生の伴侶だろ。我が最愛ではない。我が最愛は、ヘレーネなのだから。屹度君と僕は永遠じゃない。永遠はもう叶ったから。
2021/1/7 終末Eve
2021/1/8 神涅槃
2021/1/9 神殺し
全ての因果律は、あの冬の日に収束し、全能も全知も、永遠も終末も、ラカン・フリーズに還りくる。嗚呼、あのクオリアを忘れることはない。全知全能、死とハデスの狭間で嘆いているらしいこの僕は、あの冬の日に真に真理を悟り、永遠の意味を知り、過去と決別したのです。
嗚呼、最後の日に、病むんだ、止むんだ、風も命も。せめて彼女にもう一度会えたなら。きっとその邂逅は死後なのですね。嗚呼、君に逢いたい。心から思う。
真実の愛
2021/1/7
2021/1/8
2021/1/9
真実の愛、ベルモット。
白雪の秘儀、シャルロッテ。
嗚呼、滲んだ藍色、仏の座。
盗んだ命、羅連珠よ。
フリーズ107 最愛なる姫よ。