still / 双月意沙 作

雨がやんだあと
外に出てみれば
それまでの景色が
どこか 違っていた

濡れた葉は光り
雨露を散らす
ほら、今日の空は
少し涙脆くて

手に落ちた一滴が
ほのかに温かく
渇いた肌を伝うように

君はただ まだ
そのままに在る
鼓動が同期する
朝を吸い込んで

いま 息ができる
まだ 生きている
例えば 見つめるもの
彼方へとつづく透明
照れ笑いすれば
なんだかくすぐったい
風が振り向いた

水は流れて
きらめいていく
ここは見つけた世界
森のみずいろに
ささやきは眠る
きっと どこへ行っても
変わらない微笑みがあるだろう

君の好きな花を手に載せて
一瞬の隙もなく
風がさらっていくように

緑は豊かに やがて
新しい輪廻につづいていく
巡り巡る循環の中で
ぼくらはここにいる

いま 声に出せる
まだ 生きている
例えば きこえるもの
澄み切った強い響き
肌に残る感触が
目を覚ますくらいに
はっきりと形になって

熱はめぐっていく
朝が芽吹いている

はじけるほどのいのちが
溢れている
生きている

そして
君がいる
ぼくがいる

雨が降り出す前に
もう一度 会いに行こう

still / 双月意沙 作

still / 双月意沙 作

【雨上がりの世界は瑞々しく、鮮やかに】

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-02-14

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