突風の散華 / 双月意沙 作

霞のように霧のように
視界を掻き消す桜の花と
真紅となってここに散る命の誇り

最後のひとひらが
この刹那の情に(ほだ)されるより
あなたに届けたくて
風の向こう走った軌跡を辿る

(あか)が散る 春が舞う 一瞬の生命(せいめい)を魅せて
光溢れる独り立つ地に 愛し焦がれた四月が来る
僕に想え 僕に想え 鮮烈な今を駆け吹くならば
瞳開いて それは風のうたかた 閃く紅い春のしぶき

想い惑えど 色は変わらず
深い記憶の海にまた沈む
めぐる季節を引き裂いた 突然の悲傷(ひしょう)
泣いていたのは僕だったのか


嗚呼どうして崩れゆくのだろう
あなたのいない春はこんなにも寒かった
触れた先から融けていく小さな(ひかり)
ただそれだけの物語に後日譚(ごじつたん)はいらない

夢の残滓(ざんし)に囚われて窒息した
伸ばした手さえ愚かな幻想にすぎなくて
散るまでの(わずか)か 綻びた糸を振り切る
進むこと思い残す花に 還るべき世界は無いのだと

また 紅が散る 春が舞う

春が散る (あか)が舞う 一瞬の生命(せいめい)を魅せて
光溢れる一人立つ地に 愛し焦がれた四月が来る
僕に想え 僕に想え 鮮烈な今を駆け吹くならば
瞳開いて それは風のうたかた 閃く紅い春のしぶき

永遠(えいえん)の想いに花をかざして
突風の中を一直線に駆ける

突風の散華 / 双月意沙 作

突風の散華 / 双月意沙 作

【紅の恋歌】 生きること、そして命の無常さを自分なりの言葉で表現してみました。 短いですが、読んでいただければ幸いです。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-02-14

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