アメリカのローガン中学校は、午後2時半に真っ暗やった
アメリカのローガン中学校は、午後2時半に真っ暗やった。
三重県の北部に「四日市高校」っちゅう高校があるんや。うちの住んでる「いなべ市」からは、電車で1時間半くらいの場所にあるんや。このねきの公立中学校は、1学年100人くらいの中学校が多いんやけど、毎年5人前後しか四日市高校に合格できまへん。
うちの塾の高校生コースは、そんな四日市高校の生徒が半数を占めてます。あ、待って。威張ってるんちゃうんよ。読んで「よかった」て思う情報もあるんやで、きっと。
こういう“ええ子”ばっかりの塾になったら、トイレにババのついてることのうなり、教室設置の問題集の盗難がのうなり、備品の破壊がのうなり、月謝の踏み倒しがのうなった。
生徒ばっかりやおまへん。“悪い子”の親には、モンスター・ペアレントがひかえてる確率が高いのは間違いおまへん。逆に、ええ子ぉの親には非常識な親が少ないんです。お受験では、親子そろうて面接すること多いんやけど、当然です。
やさかい、生徒たちはええ学習環境を手に入れるために、ランキングの高い高校や大学に行きたがるし、親も送り込もうとするわけです。学校は、一人でも学力の高い生徒を集めようとするし、せんせ方もできたらランクの上の学校に勤務したがる。
もちろん、例外はありまっせ。Fランキングの学校にも、性格のええ子ぉはおる。難関校にも、人間的に問題のある子ぉはおる。ただ、塾やら学校は生徒の心の中まで入り込むことはでけへんさかい、集団でとらえるしかおまへん。
学力上位グループと、学力下位グループでは、基本的生活習慣や礼儀、常識、ポジティブな姿勢といった点で、明らかな違いがあるんや。企業が学歴フィルターをかけて下位グループを入り口で締め出すのは仕方のあれへんこと。
各中学校で5本の指に入る(逆に言うと、各中学校で1学年に5人しかおれへん)子ぉうちの塾の半数を占めるのは、かなりの異常状態やさかい、
「何、えらっそうに!」
やら
「アホは教えんちゅうことか!」
と、お叱りを受けること多い。特に、田舎は陰口がすごい。
やけど、
「なんでトップクラスの子ぉに多う集まってもらえるんか」
を考えてほしい。近所には、誰でも名前を知ってる大手の塾がいくつもあるんやさかい。
一番の理由は、うちの塾が「オンリーワン」やさかい。大手の塾は、都市部にある本部教室にベテランを配して、ここのような田舎の支部教室には使われへんせんせを配置する。
高校生を指導できるような優秀な講師を配置せえへんのは、「小学部・中学部」限定ちゅう看板を見たら分かる。
やさかい、この地区には高校生を指導できる塾が他におまへん。競争相手がおれへんさかい、独占状態。正確に言うと、高校クラスを設置してる塾もあるんやけど、難関校の受験指導ができる講師がおれへんさかいDVDや動画を見せるだけちゅうシステムにせざるをえあれへんのでんなぁ。
以前は、桑名西高校、いなべ総合学園、津田学園といった高校に通う生徒の方からの問い合わせも多かったんやけど、京大や国立大学医学部を受験する子ぉと、地方の私立大学を受験する子ぉでは使う問題集のレベルも指導方法もぜんぜんちゃうんです。
やさかい、
「そういう大学用の問題集や教材が用意しておまへん」
言うた。ほんまのことなんやけど、怒鳴られる方もみえた。
たとえば英作文の添削を行ってる時に、
「模範解答はどないなるのでっしゃろか?」
て聞かれることあるんやけど、英作文も作文も模範解答を見ても役には立てへんこと多い。作文の上手な子ぉの解答を見たところで、その子ぉのように書けるわけやおまへん。わしの作文の減点部分を減らす方向で努力するしかおまへん。
それで、
「川端康成の文章を見たところで、彼のように書かれへんやろう?」
言うたら、学力下位の子ぉは
「おまえごときの田舎の塾講師が川端康成レベルの文章が書けるんか!」
とほかしゼリフをえずいて塾をやめていった。
やけど、上位の生徒たちは
「なるほど。ほんまにそうでんなぁ」
と納得してくれて、難関大学に合格していった。
こら、一例でっけど似たような経験を数多うしたら
「中学、高校では基本的な学習態度を改善することはムリやなぁ」
と、つくづく思う。注意したら、保護者が怒鳴り込んできて
「てめぇのチンケな塾なんぞ、つぶすのワケあれへんのやぞぉ!」
言うてみえた。子ぉ子やったら、親も親なんや。
英語がわりかし話せるようになるためには、単語だけでも6000語ほど必要になる。高校の初等数学が「解ける」っちゅう実感を持つためには、2000題ほどの数学の問かなかったらなりまへん。問題集、7冊分くらいです。
こら、単語を毎日7語ほど、数学は大問2問ほどを3年間解き続けること意味する。上記のような感情的な生徒には、できまへん。冷静で、ベクトルや微積分の美しさを感じ取れる感受性が必要です。
もちろん、それだけでは足りまへん。おそらく、いっちゃん大切なんは「動機づかんかい」。
「一流大学に合格して、親の期待に応えたい」
やら
「医者になって、苦しんでる人を助けたい」
やら、いろいろ生徒は言う。もちろん、
「一流大学を卒業して、ガッポリ儲けたい」
やら
「一流大学で、ええダンナ様を見つける」
言う子ぉもおる。何でもええねん。公的な理由やと強烈で長持ちしやすいけど。
そんな優秀な生徒を指導するためには、指導する側も真剣にならざるをえあれへん。そやさかい、うちは英検1級や通訳ガイドの国家試験に挑戦し、京都大学の二次試験を7回も受けて、高得点をとる方法を研究してきたんや。
高校生の頃は、隣の席に現在「京都大学」の数理解析研究所の教授をしてる(て聞いた)Oくんや、京大病院で医師をしてる(とパンフレットで見た)Sくんんどがおって、
「うちは、ぜんぜん才能があれへんなぁ・・・」
と、劣等感に悩まされてましたけど、名古屋の大規模塾の人気投票で40人中2番になった時、気づいたんや。
「才能があれへんさかい共感された」
授業をやってる時に、
「これが、うちの受け取った39通の不合格通知や合格通知」
と見せると、生徒の反応が違うた。
「四日市高校で5本の指に入る、京大医学部に合格した子ぉには、受験直前には数学では負けとったかも」
と正直に塾生の子ぉに話した。英語では負けてへんかったさかい、指導はできたんやけどなぁ。
英語講師から数学講師に転身するときは、オリジナル、1対1、チェック&リピート、赤本をそれぞれ2周やって、センター試験は10年連続で受けた。うちは、そのくらいやらな、指導やら出来へん程度の才能なんや。
ところが、その才能の無さのお陰で、生徒の方がどういう点で間違いやすいかが才能のある人よりも良う見える。ほんで、丁寧な指導ができる。生徒の共感が得やすい。
とすると、受験指導ちゅう職業にとっては「才能が足れへんこと才能」て言えるわけやと悟ったんや。
塾生の子ぉたちは、よ学校のせんせを
「あのせんせは、Bランク大卒で信用でけへん」
やら
「担任は、自分で受けたら落ちる」
やら
「まったく無意味な問題練習をやらされるさかい、ほんまに困る」
やら、いろいろ不満をを口にする。
うちは、14年間名古屋の河合塾学園、名古屋外国語専門学校やら7つの大規模校で指導させてもろたけど、英検1級を持った講師に会うたことおまへん。旧帝卒の講師は一人だけ会うた。
それに受験英語の達人やとしても、それだけでは足れへんねん。うちはアメリカのユタ州、ローガン中学校で教師をしとった時期がおました。生徒の前で、四日市高校時代にならった英語で授業をしたら、ネィティブが授業を止めてうちの英語の解説を始めたんや。
「なんでやろう?」
と、同僚のアランに相談したら
「おまえの英語は、ジジイたちの世代の、さらに堅苦しい英語やで」
言う。そやさかい、中学生たちには聞きなられへん英語やったわけです。
今も、そんな参考書や問題集や過去問を前にして生徒たちは四苦八苦してます。せんせ方も、四苦八苦してます。
こないに問題が山積して、その原因もハッキリしてるのにテレビでは教育のことやらなんも知れへんコメンテーターが
「エロ教師は実名報道して追放すべきでんなぁ」
と、当たり前のことしたり顔で語ってる。官僚は「ゆとり教育」やらワケの分かれへん政策で失敗したのに、今度はセンター試験を廃止して「新テスト」て言うてる。教師の免許の更新制はどうか言うてる。
的外れでズレてる。
やけど、トップクラスの生徒を指導できる教師や講師は現場にそないにおれへん。
講師の大多数の方は「上級クラス」の指導を嫌がるんや。生徒の中には、講師が答え切られへん難問や質問を持ってくることあるさかい。
「今はせわしないさかい、あとでね」
言うと、生徒の方は「(このせんせ解かれへんねん)」て思いつつ
「はい、分かった」
言いまんねん。
せやけど、その評定や間の取り方が実にやらしい。講師をねぶってる感が出るんでんなぁ。ほんで、二度と質問に来えへんばっかりか
「Aせんせは使われへん」
やら、ラインなんかで拡散させる。
中級クラス以下やったら、わしが圧倒的に学力が上やさかい安心なんや。上級クラスを指導するせんせも、取り上げる問題を調べまくって授業で解説し、そのまま職員室に逃げ帰る。質問は受け付かれへんねん。
やさかい、
「そんなんなら、DVDや動画といっしょやん!」
と、東進衛星予備校が全国にひろがった。
結局、学校にできることは
1、強制クラブは廃止して、生徒の自由時間を増やす。
2、校内順位を生徒に知らして、対策をとらす。
そうしたら、生徒はプロのコーチやプロの講師のいる所で学べる。せやけど、現実はなんも変われへんさかい内職や仮病が増えるわけです。
塾生の中には、陸上で県大会に出るほどのアスリートもおったけど、夢をあきらめて受験にすべてを賭けてくる子ぉもおった。
そないして、何とかひねり出した貴重な時間を、質問に答えられへんせんせの相手をして浪費することは出来へん。その現実を認めて、彼らを自由にしたれあれへんものでっしゃろか。
「自分は、勉強のできる子ぉしか見えてへん」
と批判されること多いんやけど、現場を知れへん。今は、帰国子女も多い。うちも中学三年生で英検1級に合格した生徒を教えたことあるんや。2級のせんせが、1級の生徒を教えるって、おかしいやろう?
そういう生徒に、中学三年生レベルの宿題をどっさり出す。今は、韓国、台湾、中国やらとの競争が激しい時代。才能のある子ぉ、今のように冷遇しとったら競争に勝てるわけがあれへん。
今すぐに対策を打たな、才能のある子ぉたちは日本をほかして外国に行く。もうその傾向が現れ始めてます。危機感を持つべきです。
アメリカのローガン中学校は、午後2時半に真っ暗やった