徹底的にやったら、蛇蝎の如く嫌われた
徹底的にやったら、蛇蝎の如く嫌われた。
平成27年三重県で「三進連」っちゅう会社が倒産した。うちが中学生の頃は、どの学校でも受験しとった業者テストやった。当時は、三重大テストとよばれて受験率は90%以上、ほぼ全員が強制的に受けさせられとったように思う。
それが、天下泰平になり「学力格差」が許されへん雰囲気が蔓延していった。ほんで、偏差値をつこて進路指導をするのも許されへん。業者テストも許されへん。そんな世論に文科省も教育委員会も媚びた。
ほんで、指導内容を3割削減し、相対評価の通知表を絶対評価に変えてもうた。日本の生徒の学力は、世界のトップレベルから滑り落ちて、産業の競争力の低下に影響する心配がでてきた。
さすがに、この不況を長引かすわけにもいかず文科省は脱ゆとりに方向転換したけど、現場では(ここ、いなべ市では)なんも変わってへん。相変わらず、業者テスト追放や。「三信連」は学校で実施がでけへんようになった。受験者数も、ほぼ全員から生徒の報告では
「半分も受けてへんで」
ちゅう状態やった。
これでは、倒産して当たり前や。
せやけど、「秀英」てならんで三重県で最大の「えいすう」の実施する三重県統一テストちゅう模試でも、受けてきた塾生情報では1500人ほどしか受けてへん。三重県では、1学年17000人ほどいるさかい、9%ほど。
9割の生徒が受けてへんのや、合否判定ができるわけがあれへん。
それどころか、隣町の「光陵中学校」や「陵成中学校」では、校内順位を教えてくれるのに、いなべ市の「北勢中学校」「藤原中学校」「員弁中学校」「大安中学校」「東員第一、第二中学校」では、校内順位さえ
「競争をあおるさかい教えられへん」
と、教師は基本情報を隠蔽してる。
四日市高校に進学したら、校内順位は廊下に張り出される。昨日までは、“悪”の権化のように教えられとった偏差値や順位が、今度はわしの将来を決めるちゅう“神”に変わるんや。
就職活動では、学歴欄が絶対的な威力を発揮する。なのに、ここでは
「クラスが大切。班がたいせつ。助け合いがたいせつ」
とばっかり指導する。
助け合うた相手が合格し、助けたわしが落ちる。
高校からは、蹴落とし合いになるのに、この偽善はどうやろう。
うちは、塾内で高校のランキング表を張り出したときのこと覚えてる。ある母親から電話がかかり、
「いなべ総合うて、そないに偏差値が低いんですか!」
と、お怒りのようす。まいど、いなべ総合を卒業された方らしい。
それだけちゃう。週休二日になった時は、地元の教育委員会から「土曜日は塾も休むように」連絡が来たし、塾内でコンピューターが打ち出す順位を生徒の一人ひとりに報告したら
「オレの息子をアホ扱いした!」
と、母の方に苦情がいった。ライバル塾らしき人が、そういう塾やさかいうちに移るようにと戸別訪問を始めた。ある母親から
「A塾の人がさきほどみえて、高木さんは塾を閉める言うてましたけどほんま?」
と、問い合わせもあった。
名古屋の大規模塾で勤務してる頃は、生徒に理科や社会の質問も受けたさかい答えとったら
「スタンドプレイはやめんかい!」
やら、
「そんなんされたら、うちらも他の科目の質問に答えななれへんくなる」
と、講師から苦情の嵐。経営者も、5科目の担当をバラバラにして、5人分の科目を受講してもうて金儲けをしたいわけやさかい、生徒の希望に合わしとったら儲かれへん。
受験業界は、国立大学の教授やら、大規模予備校の看板があれへんと発言権はゼロや。林せんせが出世したのは、「東進ハイスクール」のCMで「今でしょ!」て言うたさかい。
こら、めっちゃ消費者や生徒の方を見てるは言われへん。仲間内の権力争いだ。日本では、わしの保身、権力欲が消費者や生徒の都合より優先される。生徒のため思てやると、あちこちから槍が飛んでくるんやで。
うちのような人間は、不都合や。講師間の不和を引き起こす。経営者は儲かれへん。せやけど、うちのような人間は一人で5科目指導できるさかい人件費が要れへん。そやさかい、生徒や保護者からのウケはええ。
したがって、個人塾を開くしかなかった。
うちのような人間は、不都合や。クラブをやる時間を勉強にあてたい子ぉに、勉強させてやりたい。せやけど、学校は生徒が死のうが、保護者が勉強させたけどろうが、
「クラブは強制です。絶対です。問答無用です」
ちゅう立場や。
うちのように、自由にやらしたい人間は和を乱す。
うちのような人間は、不都合や。京大を受けて、
「どのような答案が評価されるんか」
を研究したかった。
すると、
「てめぇのようなジジイが合格したら、若者が落ちるやろうがぁ!!」
と、メールがきた。
せやけど、学力上位の子ぉたちの支持が厚う生き残ることできてる。
ところが、そうなったら奥さんから
「あんたは、勉強のでけへん子ぉ差別してる!」
といった攻撃が続き、バツイチになってもうた。
この日本社会ちゅうのは、見かけは民主主義国家やねんけど、ほんの小さな異論も許せへん。社会の片隅で細々と生きていくことさえ、ままなれへん。本人たちは、自分を善人やと信じてるらしいけど、徹底的に異論をつぶすことになる。
「おまえやらは、死なんかい!」
日本社会が大きゅう変化したのは戦国時代にポルトガル人やスペイン人たちがやってきた時。明治維新で、アメリカのペリーが黒船でやってきた時。ほんで、70年前に戦争に負けてマッカーサーに占領された時。
日本は自分では、絶対に変われへん。そういう社会や。
政治家も、芸能人も、二世、三世、四世ばっかり。最近も、ジャニーズ事務所の経営が問題視されとった。コネばっかりの日本社会が衰退していくのを傍観するしかあれへん。実力主義は、この国に似合えへん。
日本社会では、大規模校の金看板やら、教授といった肩書きがすべてなのやさかい、うちのような実証主義は邪魔者でしかあれへん。
「せんせも、この人みたいに実際に受けて証明してや」
なんて言われたら困る。
「よけなことしよって・・・・」
と、蛇蝎のように嫌われた。
黙って死ぬしかあれへんようや。少々、日本の若者が不憫やし、学校の教師は、業者テストをつぶして勝利宣言やろうが、三進連の従業員にだって生活があったねん。
徹底的にやったら、蛇蝎の如く嫌われた