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71 ウサギで思い出したこと

 子どもが幼稚園のとき、ウサギを扱っている仕事をしているお宅があった。
 直接話したことはないが、人から聞いた話では、実験用のウサギらしい。
 その人は、実験の内容を教えてくれた。


 以前、食べられるために、殺されるために生まれてくる豚の話を書いたが、人間は、都合の悪いことは忘れてしまうようだ。

 私は「固い」とか文句を言いながら肉を食べているし、目に染みるシャンプーは買わない。
 そういえば、以前はシャンプーすると、目が赤くなったものだが、最近はそれはない。

 ウサギたちのおかげ……か?

 私たちは何気なく髪や体を洗ったり、薬を飲んだりしているが、そんな生活は多くの命の犠牲の上に成立しているのだ。

 米国では年間1億匹以上の哺乳類が犠牲になっている。しかもそのうち4450万匹が痛みを伴う実験の末、殺されている。

 もちろんすべては「安全性」のためだ。事故が起きたら取り返しのつかないことになる。だが、本当にそれらの動物実験は必要なものなのか、倫理的に許されるものなのか。消費者や研究者たちからも疑問の声が上がり始めている。

「ドレイズテスト」は別名「眼刺激性試験」とも呼ばれ、試験物質を強制的に点眼し、目にどのような反応があるかを見るものだ。

 化粧品やシャンプーが目に入ると、痛いものだが、その影響を測るための試験が、ウサギを使って行われているのだ。

 ウサギの眼は涙腺が発達しておらず、涙で薬が流れないため、観察しやすいのだ。

 当然ながら、痛い。だが固定されたままのウサギは目をこすることもできず、試験が続く3日のあいだ苦しみ続ける。中には、暴れまわって首の骨を折ってしまうウサギもいる。

 そして、試験が終わり、苦しみから解放されるのは、すなわち死を迎える時だ。試験を終えたウサギたちは殺処分、解剖され、実験動物としての短い生涯を終える。

 このような動物実験の存在が普段、われわれの意識に上ることはあまりない。試験を行っている企業や研究所はその現実を隠したがるし、メディアも動物が苦しんでいる様子を積極的に報じることはほとんどないからだ。

 酷で、実験を行う側の心理的ストレスも大きいという。


(講談社ホームページを参考にしました)

72 知らなかった

 自慢……だが、料理上手だ。
 時間をかける。手間をかける。金をかける。命をかけて食べてもらう。

 夫は忙しくて、毎夜9時過ぎに食べて、酒飲んで寝た。歯も磨かないで。
 結果……今じゃ悪いとこだらけ。私の料理がおいしいから、食べ過ぎで太って高血圧に心房細動。
 歯はボロボロ……になる前にいい歯医者に出会えたから、毎月行くようになって、まだ噛めるけど。

 結婚した息子家族が来るたび腕を振るった。
 牛しゃぶサラダにミートローフ、五目寿司。手作りケーキ等等。
 
 ああ、出来の悪い我が息子。高校は赤点ばかり。
 遅刻しそうになり、バイクで行って停学も。
 免停中に乗って母は裁判所まで行ったことも。
 もう、金輪際あなたとは縁を切りたい、と何度思ったことか。

 ひとり暮らしをしてからは家に寄り付かず。来るのは金を借りるときだけ。
「あさって給料日。でも、明日釣りに行く。金がないから貸して」
 母は甘かった。ふたりの娘に言われる。
「おにいちゃんがいちばんよね。特別よね」

 この息子は結婚しないと言っていた。釣りに行けなくなるから。
 ところが子どもができた! できた! できた!

 それからは家族で来る! 来る! 来る!
 そのたび母は大忙し。料理の本を見て腕を振う。
 妊娠中だったお嫁は食べた! 食べた! 食べた!

 お嫁がポツリと言った。息子が焼き茄子を好きだと。
 ただ油で焼くだけ? 

 焼き茄子を好きだとは知らなかった。そんな簡単なもの作らなかった。作ったのは、グラタン、はさみ揚げ、麻婆茄子。

 そういえば、結婚式にお嫁のおかあさんに言われた。
「T君、福山雅治が好きなんですってね」
 ああ、なにも知らされない母。
 
 でも、今度来たら、おいしい秋茄子でなにを作ろう?
 
 

73 子どもって……

 孫が2歳のときに、
「頭が痛い」
と言ったら、
「おばあちゃん、気のせい」
と返された。タイミングがよくて笑ってしまった。
 おしゃべりな男の子。次から次に新しい言葉を覚える。
 すべて親の真似か? YouTubeか?

 もうひとりの女の子はずいぶん心配した。3歳でもあまり話さず、私が「帰るね」と言っても顔も見ない、反応がなかった。
 娘はずいぶん心配した。
 3歳児検診で、おもちゃで遊んでいるところに名前を呼ばれ、反応なし。
 対面して
「お名前は?」
と聞かれて、
「お名前は?」
と、返したそうだ。

 それで、発達障害、グレーゾーン。
 幼稚園の他に、週一でそういう施設に通った。そのたび私は下の子の子守り。
 そこにはトランポリンがあって、楽しかったらしいが。

 幼稚園では、教室を抜け出し園庭の水たまりで遊んでいた。教室には鍵をかけられた。
 娘はことあるごとに悩んでいた。
 うちに来るとおもちゃで遊びながら、
「アメにもまけずカゼにもまけず……」
と暗唱していた。幼稚園で聞くらしい。
「イチニチにゲンマイニゴウと…………
 そういうヒトにわたしはなりたい」
 詩を丸ごと、なん度も繰り返した。

 年長になると、ずいぶん落ち着き、褒められた。
 この子もおしゃべりになった。しつこいくらいに聞いてくる。
 お化けの話。八尺様の話。YouTubeで観ていて物知りだ。
 私が、口裂け女の話をしてやると何度も聞いてくる。

 今は小学校1年生。この間は、
「おばあちゃん、人間を1番殺す動物はなに?」
 動物? 熊か、ライオンか、少し考えた。
「蚊」
「正解」
 蚊は動物か? 動物の血を吸うが。

 そもそも蚊ってどんな生き物? 蚊は生物学的に分類すると、甲殻類、昆虫類、クモ類を含む「節足動物門」の「昆虫網」のうち、触覚が胸より長い特徴を持つ「長角亜目」の「カ科」に属します。

 これ、今度会ったら教えてあげよう。丸ごと覚えるかな?

 動物園の飼育員がライオンに殺された、とか、熊が人を襲った話をすると、何度もしつこく聞いてくる。
 これでは、女の子の友達と話が合わない……と、娘は心配する。
 おまけに、爬虫類が好きでよく生物園に行く。

 蛇といえば、息子が田舎に行ったとき、木に青大将がいた。すぐに逃げてしまったが、息子はもう1度見たくて、ずっと木の前に立っていた。

 蛇といえば、娘の旦那のお姉さんが2匹飼っているそうだ。娘は行きたがらないか、孫は大喜び。

 ペットブームの中、蛇をペットとして飼う人が増えている。蛇は、犬や猫と違って鳴かないし、散歩の手間もかからないことや、餌も頻繁には食べないので餌代などもあまりかからない。
 そして長生きなので、一緒に過ごす時間が長いことなど、ペットとしての魅力が多い生き物でもある……よく見るとつぶらで可愛らしい目をしていたり、じっくりと付き合うことで飼い主になついてくれたりと可愛い一面もあり、蛇の魅力に引き付けられる人もたくさん出てきている。
https://www.travelbook.co.jp/topic/15653

 エサは冷凍マウスを丸呑み。

 
 息子が小学校低学年の時、よく友達を連れて来た。ホットケーキを作ってあげたら、喜んで、お皿まで舐めていた。
「ママに作ってもらえば」
なんて、言ってしまった。だって、ホットケーキミックスだもの。

 後日、その子に言われた。
「ママ、暇じゃないんだって」

74 コーヒーもう1杯

 インスタントコーヒーを初めて飲んだのは、小学校6年生くらい。家で皆で飲んだ。クリープと、砂糖を3杯も入れて。
 一家にテレビが1台。父と母と姉がいた。豊かではないが、あったかかった。

 父がレギュラーコーヒーをもらってきた。仕事で通っていた東大病院の先生から。
 父は矯正靴の職人。障害のある患者さんの靴を作っていた。
 偉い先生から月に1度くらい、コーヒーの粉とネルのドリップの器具をいただいてくる。
 最初はどう淹れるのかわからなかった。母が適当に淹れたのだろう。砂糖をたくさん入れて、本物は違うね、なんて言ったっけ。
 
 姉が買ってきた雑誌に、銀座の『カフェ・ド・ランブル』という店のコーヒーのコラムだかエッセイが載っていた。

 私は、初めてコーヒーに酔った……

みたいな。
 だから、1度行ってみたかった。高校のときに友人を誘って飲みに行った。
 運んできた男が、
「ミルクはかき混ぜないでお飲みください」
と。
 酔ったかどうか? 砂糖も入れたし。
 場違いだった。

 就職してサイフォンを買った。憧れだった。
 秋の夜長にコポコポと。ボブ・ディランのレコードを聴きながら。
『コーヒーもう一杯』

 でも、そのあと洗うのが手間だった。それに、すぐに割ってしまった。 

 コーヒーミルも買った。手動の時間がかかるやつ。

 そのあとはコーヒーメーカー。豆を挽いてから淹れるのも。すごい音がする。
 でも、姉が嫁ぐと、飲むのは私だけ。

 結婚しても夫は滅多に飲まない。子どもも、コーヒーを飲む歳になると、一緒には飲まない。家にはいない。
 そのうち、ひとり用の手軽なドリップに。

 最近の話。『美の壺』という番組でコーヒーを特集していた。
 そしたらまた、豆から挽いて淹れてみたくなった。ネットで電動ミルを頼んだ。
 時間の余裕ができたからゆっくり楽しむ。ひとりの時間……
 ところがミルが壊れた。

 思い出した。健康のために、煮干しと昆布と緑茶とかつお節を、粉砕していたミルがあったはず。
 あったけど、見事に煮干しの匂いが。よく洗い、コーヒー豆を挽いて、それは捨てた。2度目に挽いたコーヒーは……気持ち、煮干しの匂いがが……
 でも、それから何十回……

 店で豆を煎ってもらう。冷凍しておくのがいいそう。
 煎りたて挽きたて淹れたてのコーヒーを飲む。
 歳をとって、アイスコーヒーは飲まなくなった。夏でも熱いのを飲む。地獄のように熱いコーヒーを。

 ときどきは、夫がコーヒーを淹れてくれる。私がなかなか起きない朝。
 インスタントだ。
 それがおいしい。コーヒーと砂糖とミルクの微妙な配合。濃くて、かなり甘いが。

 3歳の孫が来ているときにコーヒーを飲もうとしたら、
「ボクもコーヒー飲む!」
と。
 紅茶にして、牛乳と砂糖を入れたらひどく気に入り、来るたび、
「おばあちゃん、紅茶飲もう!」
と。
 ふたり、揃いのティーカップで飲む。孫はスプーンでフーフーしながら飲む。
「一緒に飲んでくれるのはあんただけよ」
「あんたって言っちゃいけないんだよ」 
「……」
 
 

75 ともに生きるならば

【お題】 武士のナイトルーティン

 韓国と中国の歴史ドラマはよく観るが、日本のはあまり観ない。やらなくなったし。
 でもあれは面白かったな。本を読んでたから。小説で、あの方に惚れてしまった。だからドラマになるとき、誰が適役? などと、ネットでも話題になった。


 将軍様の食事に命をかける御膳奉行。
 堅苦しい着物を脱ぎ捨て、夜な夜な蕎麦屋に行く。
 この頃は母に訝しがられる。早く嫁をもらえと。

 あの娘は、あの下がり眉の料理人。あの娘も料理に命をかけている。
 
 身分違い。どうする?
 想像する。
 嫁にもらう。どれほど障害があろうとも、ともに生きるのは下がり眉しかいない。

 しかし、あの娘は選ぶだろうか? 俺を?
 料理の道を選ぶのではないだろうか?

 考えながら眠りにつく。
 ともに生きるならば、下がり眉がよい。

(みをつくし料理帖)

 

76 間違えないで

【お題】宇宙人の中田さん


「ダン、ダン、中田隊員」
「アンヌ、何度言えばわかるんだ? 僕はね、僕はモロボシ・ダンなんだよ」

「ダン」
「アンヌ、僕はね、僕は、人間じゃないんだ。
 M78星雲から来たウルトラセブンなんだ」

 ダ、ダダーン、ダダンダダダダダダー
(シューマンのピアノ協奏曲冒頭のつもり)


ダンとアンナの最後の決別
https://youtu.be/Vs0EYUu7DHw?si=LmcLz5Wd7UgCSBWQ

 ウルトラセブンは、観ていなかったのですが、YouTubeの絶賛コメントが凄いです。
 検索していたら、
「ウルトラセブン第12話は永久欠番となっておりますので放送致しません」
と。
 延々と経緯が記されています。

77 あたったら

 息子が近くに住んでいた頃は、お嫁と子を連れてよく夕飯を食べに来た。

 またですか? と思うくらい。

 そりゃ、楽よね。こっちは疲れるけど。
 たっぷり食べて、残ればお持ち帰り。だから、たくさん作る。
 肉も奮発。でも、ありがたいことに息子は、和牛の高いのだと下痢をするのだ。

 いつも来るばかりで、来てください、と言ってくれない。
 今度は行くからね、と、強引にご馳走になりに行った。

 なにが出るやら?
 お嫁さんの手料理は食べたことがないが……

「サバが売ってたので、しめ鯖にしました」
「!」
 しめ鯖? 苦手だ。食べたことがない。
 それよりなにより、大丈夫か? あたらないか?

 でも、ひと切れは食べないとダメだよね……
 恐る恐る、初めて食べた、しめ鯖に……

 私は酔った。
 初めて、しめ鯖に酔った……

 これは、コーヒーのエッセイに載っていた。

 私と夫は、うまい、おいしい、と言い、お嫁はもう半身も切ってきた。
 季節は忘れたが、おいしかったので秋だったのだろう。

 あとは肉じゃが。圧力鍋で煮たじゃがいもはホクホクでおいしかった。
 あとは忘れた。

 それから私も、しめ鯖を作ってみたがあれほどおいしくはできなかった。
 それから私は今までは食べなかった、鯖寿司も食べるようになった。好物になった。  

78 プロヴァンスって?

 やっと思い出した。
 鯖のプロヴァンス風。
 ずうっと考えていた。検索しても出てこない。

 結婚したとき、魚は苦手。
 だいたい、母も焼いたのは塩鮭とあじのひらきだけ。あとは湯豆腐に甘塩のタラを切って入れただけ。だから、魚の名前もわからない。

 夫は肉より魚が好きだった。
 だから頑張った。魚料理を。
 覚えた。イサキにタカベ、その他いろいろ。焼いたり煮たり、刺身にしたり。
 鯖はダメ。焼いて……当時はガスがなくて、ぐるぐる巻きの電熱機。グリルも片面焼きで、器具が悪いのか、魚が悪いのか、生焼き、皮ははがれる。腕が悪い。

 本で見つけた鯖のプロヴァンス風。
 切り身に小麦粉ふってフライパンで両面焼く。その間にニンニク、玉ねぎ、トマトを刻みぶっかける。酒に水に月桂樹の葉。アクをすくって煮込む。最後にケチャップと塩コショウ。
 これは褒められた。褒められたから何度も作る。でも、子どもにはイマイチ。

 そこで、鶏肉に変えてみた。ときどきはミートボールに。野菜もナスやじゃがいも、にんじんを追加。
 それはいつしか、我が家の定番、おふくろの味。名前も、ただのトマト煮に。プロヴァンスだなんて忘れてた。
 プロヴァンスとは、フランスのプロヴァンス地方の特産品のトマトやニンニクをたっぷりと使った料理のこと。
 
 秋鯖で作ってみようか。
 鯖のプロヴァンス風ですのよ。

79 ドングリがない

【お題】 ラブ・まつぼっくり


 まつぼっくりからドングリを連想。

 ドングリがない。ドングリがない。餌がない。

 すごく久しぶりに秋田の田舎に行った。義兄が人工透析に心臓病。ここ3年、コロナ禍で見舞いにも来てくれるな、と。
 すごく久しぶりに会った義兄は痩せて杖をついてひどく弱々しかった。
 夫が、ショックで生活を見直そうと休肝日を取るほど。

 もうひとつビックリしたのは……
 朝夕は外に出るな、と。
 クマが出る。
 冗談じゃないよ。ほんとだよ。出たら猟友会に電話。義妹も運転してたら、小熊がゴロゴロ落ちてきた。

 山に餌がない。
 なぜ? 山だらけ。木ばっかり。なのになぜ餌がない?

 気候のせいで野菜が不作になるが、ミズナラやブナの豊凶は、野菜の収量の増減とはメカニズムが異なる。
 ミズナラやブナは、積極的に凶作になる年を作っているのだ。
 凶作の年を作ることが、植物の繁殖に重要である、という仮説がある。それが捕食者飽和仮説だ。
 毎年同じ量のドングリを生産し続けると、ドングリを食べる動物たちに、毎年たくさん食べられてしまう。
 一方、凶作の年を作ると、その年はドングリに頼る動物たちの個体数が減る。
 その結果、翌年に多くのドングリを実らせたとしても、食べ尽くされることなく、多くのドングリが発芽の機会を得ることができる。
 つまり、ミズナラやブナの凶作は、果実の捕食者を減らすための植物の戦略といえる。

 今年はそういう年なのか? よくわからないけど。暑さのせいだとニュースでは言ってるが。

 クマは視力が非常に悪く、白黒にしか見えていないので、建物の入り口が暗く見えることがある。
 森の中の暗がりだと思いこんで、人家や納屋、倉庫に入ることはよくあるし、ショッピングセンターに入り込んだのもそういう理由だったからかもしれない。
https://biome.co.jp/biome_blog_142/

 ドングリがない。
 まつぼっくりでもいい。硬いけど食べられる。
 なんでもいい。
 愛はいらない。餌がほしい。

 おい、そこの人、俺を撃つなよ

80 ここは私に払わせて

「ここは私に払わせて」
 なんて、たまには言ってみなよ、とずーっと思っていたそうだ。
 見栄っ張りな旦那様は、兄弟が集まると全部払う。
 そういう人がいるのだ。奥様は大変だ。


 こちらは奥様はいなかった。生涯独身。
 かっこいい男。
 初めて好きになった、憧れの俳優。夏木陽介。『青春とはなんだ』『太陽野郎』等の青春スター。


『Gメン'75』の出演交渉で、プロデューサーの近藤照男から、
「次の作品がまた失敗に終われば、プロデューサーの地位を失うかもしれない、力を貸して欲しい」
と言われ『Gメン'75』に出演した夏木陽介。

 ニューカレドニアでのロケの際に、プロデューサーの近藤と中華を食べに行き、夏木が先に支払いを済ませた。
 しかし近藤はプロデューサーという立場の自分が支払いを、と考えていたため口論となり、夏木が、
「怒られる理由がない、降板する」
と言い降板となった。
 近藤からは降板回のエピソードを作らせて欲しいと打診されたが、夏木がこれを固辞したため、突如番組から姿を消すこととなった。
 夏木は『Gメン'75』は、
「自分にとって大切な作品であったので、もしそのようなことが起きなければ、その後も長く出演していたであろう」
としている。

ーーーー

『Gメン'75』同窓会番組で丹波哲郎が、
「夏木の喧嘩っ早さは危ない。ヨーロッパロケの時に、見学してた群衆の中にチャチャを入れる奴が居てNGが続いた。
 夏木が今度やったら俺がブン殴ってやる、と言い茶化した奴の首っ玉捕まえて引きずり回していた」
と語っている。

 結婚歴はなく、生涯独身の人生を送ったまま死去した。生前のインタビューでは、一人身だから仕事を選ぶことができ、不本意な仕事はやらなかったと述べている。

掌編集 8

掌編集 8

  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-10-26

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 71 ウサギで思い出したこと
  2. 72 知らなかった
  3. 73 子どもって……
  4. 74 コーヒーもう1杯
  5. 75 ともに生きるならば
  6. 76 間違えないで
  7. 77 あたったら
  8. 78 プロヴァンスって?
  9. 79 ドングリがない
  10. 80 ここは私に払わせて