抱擁

あなたは私を抱き上げ、そっとベッドに横たえた。私はまだ服を着ていて、身体はあらわになっていない。でも、どうやら今夜のあなたは欲深いらしく、すでにズボンが盛り上がっている。
あなたは私の白いワンピースを脱がせる。暑いので、それを一枚剥ぎ取っただけで、私は下着姿になる。私は同じ下着を何枚も買って使っているので、あなたはそれを見慣れているはずだ。しかし、本当に、今夜のあなたは欲深い。
あなたはそっと、私の大切な部分に触った。あなたは私を撫でている。
「あっ」
思わず私は声を漏らした。自分でも気がついていなかったが、どうやら私も興奮しているみたいだ。あなたが触った部分が熱を帯び、少しづつ敏感になっていく。
「うう」
十分に湿り気を帯びた私の中に、あなたの指が入ってくる。あなたは優しいから、最初は細い小指だ。いきなり人差し指や中指のような太いものを入れようとはしない。
あなたの紳士的な性格を肉体で感じとりながら、私は過去を回想し始めた。

中学卒業後、十五歳で就職したが、職場の人とうまくいかなかった。髪を鮮やかな金髪にしたり、派手なアイメイクを施したりしていたので、人間関係の上で浮いてしまっていたからだろう。私はわずか一ヶ月で退職し、毎日遊んで暮らすようになった。しかし、そんな生活も長くは続かない。金がないからだ。私は仕方なく、水商売を始めた。その世界に入ったら、金髪もアイメイクも普通のものとして扱ってもらえたけど、何せ私は人間が苦手だ。ここでも、私はうまくいかなかった。それでも、生活のために、なんとか耐えていた。
そうして苦しんでいる私のところに、あなたが現れたのだ。初めて会った日、その翌日、さらに翌日、そしてまた次の日。あなたは私が働いていた店にやってきて、毎度私を指名した。
あなたは私を、救ってくれた。

あなたは唐突に人差し指を私から出し、覆いかぶさってきた。あなたは私に問いかける。
「いい？」
私は「もちろん」と答えた。
ゆっくりと、ゆっくりと、あなたが私に入ってくる。
「抱きしめて」
私はあなたに頼んだ。直後、私の左の瞳から一粒の雫が流れ落ちる。悲しいわけでも、感動しているわけでもない。私は自分に困惑したが、あなたがその雫を拭ってくれて、そして私を抱きしめてくれて、それはすぐに払拭された。安心して、私はあなたに身を任せる。
あなたは私を抱いたまま腰を前後に動かす。私とあなたはもう夫婦になったんだから、赤ん坊ができることを怖がる必要はない。だから、私たちは直に触れ合う。
「気持ちいい？」
「うん」
「どれくらい気持ちいい？」
「おかしくなりそうなくらい！」
あなたはしきりに私の感覚を気にする。やっぱり紳士だなあ、と私は嬉しくなった。あなたは出会ったころからちっとも変わらない。でも、やさぐれた私を変えてくれた。
「そろそろいい？」
もう四十代のあなたは、そう長くは持たないらしい。いつも十分も経たないうちに最高潮に達してしまうし、複数回することはできない。私としては物足りないのが正直なところだが、私はあなたを愛している。あなたはかつて、もう女性に対して肉体的な欲はないと言っていた。それでも欲を持つ私を抱いてくれるんだから、不満はない。
「もういい？」
「いいよ」
あなたは腰の動きを激しくする。はあ、はあ、はあ、と荒く吐息を漏らす。急に動きを止め、そして私を抱きしめる力が強くなった。しばらくそのままの状態で感覚を研ぎ澄ませる。優しく私の髪を梳かしながら、あなたは言った。
「今日はまだできるよ」
私は答える。
「お願い」
あなたが私に入ったまま、私たちは抱擁した。

なぜこんなものを書いたのか🤔