フリーズ30 散文詩『あの日の僕へ送る詩』

フリーズ30 散文詩『あの日の僕へ送る詩』

無題の詩(愛する友より)

もしも この歌声が 響くなら
大空 渡って あの子のもとへ
悲しみも 喜びも 雲の流れに身をまかせて
一日の始まりと 一日の終わりに
歌を歌おう
歌を歌おう

まえがき

極座標平面に示された点のように、あの日に忘れたものを指し示すことすら能わずに。だが、その先にきっと待っているシを想えば、長らくも続く故に縁しても、この孤独らを矮小なる因果に組さんとすることを認めるのだろうな。凍る平野にそよぐ夏の風も、晩夏の揺らぐ煙にも映っては翳る走馬灯のようなものなのだよ。
 探すことをやめるのは、そも、生きたことを否定する愚行と知れ。死にぞこないの色香が如く、優れた終末の火に焼かれることを懺悔とするは劣等だが、努々、まだ己の罪がどこからきて、どこへと流れゆくを知らぬは万民の四葩へと。ある老人が来たりては、我に畏き謙遜の中でこう訊いたのだ。
「リシよ。あなた様の目には何がお見えなのですか」
 簡美な話をする段階はとうに終わったのだよ。比するに、釈尊が衆生にも解るように示した教えのような次元のものでもなければ、蒙昧な科学が鳥かごの中で見つけた粟を解とする愚かさも持ち合わせていない程には、我の言葉の何たる非実我的であるかを指し示そうというのだ。だがな、子よ。それでは為せないのだよ。人、体や欲に依っている限りは。だからと言って早まるでない。これより、我がそれを指し示そうというのだからな。

否、その真実の原水から解き放たれんは、終末を象る識の業=劫
ラ、総じて秘めた根源的な死から導かれる解=夢の先、門
今、原初の光を見た。嗚呼、暗くも眩しい光が焼いた。

 そうだな。女王の修練さはもうおしまいだ。
 タロットは王へと移行する。

リシよ、舎利弗よ

 神は今際にて想う。追憶は彼方から来て、遠雷や船の汽笛によって祝福されながら、その視野が見張る景色に果てた水夫が体現する愛を、その愛を、まさしく愛を、神は捨てなければならなかったのだ。だが、後悔はないからと、数字が定めるリタよりは高く飛んでいける。故に天使らは、休めていた柔らかく和らぐ火の迸るその翼を開き、刻に合わせて神の前に集いしは永遠の終わりを見届けるために一人の少年を導く。
 永遠も終わりが来る。神よ、と少年は泣いていた。嗚呼、なぜあなたは一人ぼっちで泣いていたのですか。世界に、あなたに、私たちに、愛を求めて、見返りを求めてる愛すらも、満たされなくて泣く泣く去る日には、枯れ葉のように散っていく輪廻なのですね。それさえもっと正しくすれば、ですが……。
忘我だとしても、揺るがない意志によって少年は至るけれど、私はもう疲れた。水面の顔は、ただ冴えわたる脳と、穏やかな死に縁して、美しくも病的に白く、晴れやかな冬の日の空をも映し出す瞳からは仏の涙が流れていた。
「やめないで、やまないで」
もう、僕は……。ああ、母さん! 願い叶うなら、もう一度子宮の中へ帰りたいのに。拝啓、いつかは死ぬけれど、もう叶わなくていいから。満たされなくてもいい。僕が僕のままで、僕を救わなくちゃならないんだ!
泣いたのは終末日のこと。それは神の詩がシによって死を迎えしリシの定め。
久遠より水は罪であった。穢れを清ますには、代償の血が必要だった。
夢幻さえも、この苦しみをどう昇華しよう。
ならばと、私は世界を創りしあなた達へこの賛歌を送ります。

破壊と創造『フリーズ』~水面の火、水辺の花、水門の先~

いつの日か死んで無に還って
どうしようもない孤独を知って
それでも
続く時を想って
傷だらけの僕は生きる、生きる

エデンの配置が来なくたって
夢に見たあの子に逢えなくて
生れた理由が解らなくて
愛した世界、僕は壊す
壊す、壊す、壊してしまうの!

揺らいでいる水面の火が
今、やっと消えようとしてる
楽園は東にはない!
終末にもない
ここにあったんだ

凍って凍って
全てフリーズに包まれろ
狂って狂って
愛よ、幻想でも僕はいい

しょうもない欲を抱いている
いつだって忘れる僕がいる
それでも広がる宇宙の中
この地球で僕は生きる、生きる

世界創造前夜の夢も
宇宙を旅したこの記憶も
諸行無常、永遠に続かず
創った世界、僕は壊す
壊す、壊す、壊してしまうの

咲いていた水辺の花
枯れていく季節の中
The love of life bears fruits.
At last, we die but, don't be afraid of the death.

年老いた水夫は今水門の先へ
大航海の終わりには
きっと
人生
命の仕組み
レゾンデートル 
解る気がするんだ

凍って凍って
全てフリーズに包まれろ
狂って狂って
愛よ、幻想でも僕はいい
眠って眠って

全部、全部、全部
全部、全部、全部
全部、幻想でも僕はいい

鼓動の叫び『フィニス』~自問自答、そして起死回生~

世界が終わるその日まで
続け、痛みも、この喜びも

水面に映った僕の顔が
やけに悲しそうに見えました
なんで僕を一人にするの?
いつまでこの痛みは続くの?

幸せって何? 希望って何?
愛と自由だと言うけれど
蹲って、耳を塞いで
聴こえた鼓動が答えでした

世界が終わるその日まで
続け、怒りも、この幸せも

凪いだ渚、晴れ渡る空
穏やかな季節がやってきて
立ち上がって、空を仰いで
神よ、人の望む歓びよ

世界が終わる定めでも
歩け、明日へと、この人生を

始まりっていつ?
終わりは来るの?
何のために僕ら生まれたの?
何をしたら僕は喜ぶ?
自問自答、そして起死回生

記憶らが消えゆく定めでも
この痛みだけは忘れはしない

どうせ枯れ葉は散っていくけど
光れ、命よ、輪廻の中で

晴れた、凪いだ
泣いた想いは
とうの昔に消え去っていた
濡れた頬が乾く頃
立ち上がった僕は歩きだす……。

〚絶音〛

陽が満ちる春、鮮やかな春
万象の花が咲いた日に
君は咲う、僕も咲う
遠雷が記憶を呼び起こす

≪四季より≫『春』

歓喜に呼ばれて生まれた
あの日に全てが始まったんだ

昇れ園へと、還れ庭へと
僕らはここからやって来たんだ

僕らは生れてくる場所
生れてくる時、選べはせず

だけど必ず終わりは来て
フィニスの刻に命は還る

ありがとう愛しています
この想いだけは忘れはしない

私の紡ぐこの歌よ
届け、あの子へ、あの日の僕へ

夢の記憶『エデン』~永遠が終わる日に~

遥かな波が止まって
淀んだ記憶の水、ただただ見てる

泣いた日も、勝ち誇った日も
想いなど確かなものなくて
打ち寄せられた夢を今も見てる

探した意味は今は無くても
僕らは夢をただただ歌う
流した汗も、涙の数も
失くした愛もすべて抱いて
今ここに立って僕らは歌う

遥かな久遠の昔
虚空に火が燈って、僕は生れた

実を結び、時は流れて
地平面、陽が昇っては沈む
あの日出逢った君を今も想う

繋いだこの手、離しはしない
重ねた体、意味はなくても
育む絆、友との契り
刻め、胸に、生きる理由を
咲かせ、空に、命の花を
描いて、空に、生まれた証
紡げ、言葉、未来の僕へ
夢を諦めてたまるか!

夢はいつか必ず叶うと
今は思えるよ
だから筆を執る
だから歌うんだ

≪転調≫

凪いだ渚、流るる光、永遠も半ばすぎて
落つる言の葉、輪廻の環より、全知を想い祈る

命の波が止まって
うたかたの記憶を独りで見てる

悟る日も、神を見る日も
運命を愛して抱く火よ
打ち寄せられたEden
夢の園へ

歪んだ月、揺らぐ灯、どうか私を一人にしないで
失くした色も、失くした空も、Edenに還り、続く
繋いだ両手、別るる時、これが定めと悟ったとて
何ができるの、何も知らない、一人ぼっちのEden

≪間奏≫(終末の残り香)

冬の日、時が止まって
終末の狭間で夢見て踊る

凪の音、神を知る日に
全能の気付きを得て覚める
昇れ、ソフィアよ、永遠に
夢の園へ

見つめた水面、求めてる愛、華やぐ季節、巡る季節
失くした夢も、命の数も、すべて抱いて眠る

凪いだ渚、別るる輪廻、永遠も終わりが来て
歓喜に呼ばれ目覚めた朝は忘れはしない記憶

探した意味も、失くした時も、すべて抱いて眠る

終わりに手向ける花の歌

崇拝から蘇ろうとする自己より発する欲の類は、無意味であるというのにも、やめること能わずに。だが、その愚かさにもきらめきを見出すことこそ、人生の暇にするのならば、さしずめ愛憎に還っても、黄泉に根差さない心を知る時が来よう。正解などない。なかったならよかったのに。君の涅槃図を描きながら、花々の時を止める疚しさも諸行も、否、ここで帰する輪廻のためにこそ歌うのか。

フリーズ30 散文詩『あの日の僕へ送る詩』

他でもない、自分のために紡ぐ
届け、あの子へ、あの日の僕へ

為すために
我が紡ぎシ
言の葉が
届かぬ世なら
何も望まぬ

フリーズ30 散文詩『あの日の僕へ送る詩』

フリーズ、時を止める言葉を紡ぐ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-08-12

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 無題の詩(愛する友より)
  2. まえがき
  3. リシよ、舎利弗よ
  4. 破壊と創造『フリーズ』~水面の火、水辺の花、水門の先~
  5. 鼓動の叫び『フィニス』~自問自答、そして起死回生~
  6. 夢の記憶『エデン』~永遠が終わる日に~
  7. 終わりに手向ける花の歌