Over

わたしの処女を、捧げたかった。遠吠えがきこえても、ささいな風でしかないと教えられて、食事は用意され、死んではだめ、と、いわれていた。たとえば、淡白な神さまだった。わたしと姉は、庭を掘るのがとくい。泥だらけになりながら、天を想像していた。いたみはなかった。昼下がりのあたたかさは、血とおなじ。

二階から庭を見渡すと、わたしたちの作り上げた穴がある。そこに、わたしたちではないものが、棲んでいることがある。だいたいは動物だけれど、ほかにも、わたしたちだったものが、息づいてしまうこともある。それらを保存するすべを知らなかったわたしたちは、埋めるしかなく、意味なんてなく、愛するだけをする。掘るときにだけわかる、地の冷たさに、夜になったら、ささやきあいたいね、と、いう。

食事の時間は、かならず訪れる。退屈なわたしと、咀嚼が好きな姉には、毒がある。隣同士で夕食を食べることは、生物を肌で感じること。舌と歯は、庭の釘のよう。吸収するのではなく、見えなくしている。遠吠えを、呼びこむ。棲んでいるのなら、姿を現してほしい。
「退屈だから自然の声を聞くの?」
「この鶏は食べられてしまってかわいそう、とか、人為的ね」
「満たされていた」
「もう食べれないわ」
「焼かれた鶏は埋めても?」
「だいぶ餌ね」食器の艶が、なまめかしい。わたしは、

姉の性器をみたことがある。
美しいと思った。

待ち焦がれていた。夜はいやらしく、昼は白々しい。その境目で、わたしたちは、庭を掘りながら、夕食が胃で消化されていることを感じている。埋めることは、わたしたちを共有し、平等にし、無意味にする。ここがすべてだったなら、淡白な神さまは、能なしかもしれない。でも、愉快。4つの手で、掘る。
「ねえ、まだ、あたたかい」わたしたちは、

すきなおとこがいっしよだった。

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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-06-22

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