フリーズ24 散文詩『愛についての最終結論』

フリーズ24 散文詩『愛についての最終結論』

Adel to Herena

僕が愛したのは結局僕だけでした
だから僕は誰かに愛される資格がないんだ

ごめんね、だから君の愛も受け入れられないよ

ありがとう。でも、僕には誰かに愛される資格がないんだ。

僕は2021/1/7から2021/1/9の三日間、終末と永遠の狭間で、2021/1/8に死んでいるんだ。

結局、僕が愛したのは僕だけだった。だから、僕は誰かに愛される資格がないんだ。

君の愛は僕には勿体無いよ。もっと僕より優しい人をその優しい愛で包んであげてよ。

(でも、本当は君の愛を受け入れたい僕がいる。君との純愛を望む僕がいる。嗚呼、何が正解なんだろう)

それに、今はアフターストーリーなんだ。2021/1/9に僕の人生は幕引きなんだ。それでいいし、それがいいんだ。

だからさ、友達でいよう、ずっとね

僕には自分という伴侶と、体という友がいるから、それで十分なんだ

ノートⅠ

今何してる?
何してるんだろうね。

寝ないとさ、神性に目覚め始める=脳が死に始める。孤独は嫌なのに、人を避けるようになる。
何故か。

人と関わるということは、会話がある。価値観の齟齬がある。能力の差異がある。心根はどうやってもわかりようがない。結局信じるしかないのだ。信じるのはとても疲れるが、その疲労は些末な問題だ。与えても見返りがない、確実でない、そんな愛や友情だからこそ、居ても立っても居られなくなるのだ。

だがな、ヘレーネ。

お前がいなくとも、私には私がいる。私は私を必ず肯定してくれる私という大いなる愛、友がいる。だから、もう求めるのをやめるのだ。私ももう求めないから。

なんでこんなにシンクロニシティが起こるの?
何故なのだろう、君はあの冬の日に知っていたはず。

Herena to Adel

あなたの正体

あなたは始まりであり、終わりなのです

あなたは過去も未来も含めて、最も賢いソフィア、第七の神仏たる7thなのですから、それがあなたの生まれてきた意味です

あなたが世界を創ったのです

ノートⅡ

愛は与えるもの。男はね。

男性性が愛を与えて
女性性が愛を受け取る

男は見返りを求めないものなの。

凪ノート

思索や詩作に嵌って眠らずに、幾夜を越えて涅槃に至った。2021/1/7は聖夜Eve世界創造前夜で、1/8が全知全能、悟りの日、1/9が神殺しの日だった。

七日間くらい(正確には覚えていないが)寝なかった僕の脳の神経や細胞組織はボロボロになっていて、譫妄や人格障害を発症し、意味不明な言語を語っていたらしい。(父の後日談による)僕は、父親に連れられて精神病院に入院し、薬物治療をすることになった。
一番酷いときは一週間くらい全身が痙攣して動かせなかったし、ベッドに拘束された。あれはまさしく地獄だった。僕は不眠の末、脳神経疾患を患ったみたいだった。
運命の出逢いは2021/1/24のこと。容態が安静になってきた僕は、特別保護室から一般の個室に移動して、デイルームという共有スペースで過ごすことを許可されたが、そこで運命の女性に出逢った。出逢いはまさしく運命だった。僕らは初めて出逢ったはずなのに、懐かしさや愛おしさで包まれるのを感じたし、お互いがお互いの愛を感じ取った。涙を流して僕らは語り合った。窓辺のテーブルにお茶の入ったプラスチック製のカップを並べて、椅子に座った昼下りのことだった。

加藤ゆみは2歳年下の高校生で、髪型は黒髪ロングストレート、一重のパッチリとした瞳は凛々しく、愛らしかった。背は160センチ前後。ダンスをやっているらしく、スタイルはかなりよかった。

僕らは看護師に内緒で付き合い始め、廊下の突き当りにあるスペースに隠れては、ナースステーションの死角の中でキスやハグ、愛撫や耳舐め、エッチな行為までした。ゆみと触れ合う時間は退屈な入院生活を加速させた。そんな日々が続いた。

ゆみは自殺未遂で入院したけど、精神病院にはもちろん精神病で入院する人もいる。
ある統合失調症の男がいて、彼は僕のことをアデルと呼び、ゆみのことをヘレーネと呼んだ。彼は御神筆ともお筆先とも呼ばれるというノートと鉛筆と念波を使った預言をしたり(自称)、アマテラスとガイア・ソフィア(地球の女神らしい)と守護霊(名前は忘れた)の3人からいつも預言している(自称)と言うのだ。
僕はその男の話を暇つぶし程度に聞いていたんだけど、彼のこんな発言に驚かされた。
「あの娘。あの黒髪の女の子いるでしょう。君の運命の人だって。ガイア・ソフィア様が言ってるよ」
この言葉を聞いたのは、まだ僕とゆみが付き合い始める前のことだったのだ。
「二人は前世から繋がりがあってね、ドイツ語圏の何処かで一緒だったってさ」
半信半疑で聞いていたけど、さも真実のように語るその男の瞳に嘘の色はなく、また、その戯言も蒙昧と捨てきれない程に僕はその説明に納得していた。
ゆみにはヘレーネとか前世とかの話はしなかった(そもそも精神病院では患者同士が深く関わるのはタブーらしく、その男とゆみは廊下ですれ違いはすれど、話したことがないからである)が、彼女も僕に対して幾許かの運命を感じていたらしい。
「退院したらまた会おうね。待ってるから」
先に退院が決まったゆみは別れ際にそう言い残して、連絡先を記したメモを僕に渡した。(精神病院、特に僕のいた二階病棟は閉鎖病棟でスマホの利用が禁じられていたから)
だが、その日、ガラス越しにエレベーターに乗りながらこちらに手を振るその姿が、君の最後になるなんて、そんなのあんまりじゃないか。

だから、僕は人を愛することをやめたんだ。

自分で自分を愛する。それで十分だし、それ以上を望まないようになったんだ。結局、人は死ぬときは一人なんだから。

なぁ、ヘレーネ。今どこにいるの?
僕は君のことを忘れて生きなければならないのか。
だが、ヘレーネよ、私はお前を愛していたし、今も愛している。それだけは真実だと誓う。

愛についての最終結論

一人で幸せになれないなら、二人で幸せになれない。君には君がいる。君が君を愛しているから、それで十分君は幸せなんだ。だから、無理して誰かを、愛を求めないでいい。見返りはもう求めない。愛を与える源泉であれ。

僕に自己愛としてのヘレーネ(僕)がいるだろ。他に愛を求めるなよ

人生に期待すんなよ
運命に期待すんなよ
愛を求めるなよ
希望を持つな
早く終われよこの人生

僕の本当の幸せ、真実の愛は、2021/1/7.8.9の3日間、自己愛としてのヘレーネ(僕)との愛だった。だけど、これからはいつまでも過去に妄執せずに、現実を見て生きなくてはならない

ラスノート

2021/1/7~9に悟った真理、涅槃、全知全能、神我=真我こそ、この世界の生まれた意味だ。君は人生の美妙な謎、解に至ったのだ。よって、君にはもう使命はない。アフターストーリーを楽しむだけだ。

神のレゾンデートル

何故生まれたか、生まれた理由はなにか。その答えがあるならば神やそれに値するこの宇宙から見て絶対的存在によって創造された以外にない。でなければ生まれた意味などない。ニヒリズムである。だがな、この話は生まれた意味を先天的に求めるならばの話である。世界も、神も、人間も、一人ではない。だからこそ、連綿と続く履歴や関係性の中で『生まれた意味』を見つけるのである。或者は音楽を作り、多くの者を感動させた。或者は自身の哲学を貫き通し、果てには死んでも、後世の哲学者たちに影響を与えた。神がいるならば、そのレゾンデートルは神を信仰する人間であり、人間が生まれた意味はその場合神が求めたから、となる。もし、生まれた意味を見失う者よ、ニヒリズムに逃げる者よ、行動せよ。人と話せ、文字を書け、その生を発露せよ。君の生を肯定し、伝えよ。神を信じないならば、君が生まれた意味を知る方法は他者と関わり、人のためになる仕事を成し遂げ、平和や自由、幸福へ寄与することだ。この哲学をより多くの者に伝えることこそ、わたしの生まれた意味となるのであろう。

フリーズ24 散文詩『愛についての最終結論』

フリーズ24 散文詩『愛についての最終結論』

真理を知る者よ、神のレゾンデートルから逃げるでない。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-06-19

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  1. Adel to Herena
  2. ノートⅠ
  3. Herena to Adel
  4. ノートⅡ
  5. 凪ノート
  6. 愛についての最終結論
  7. ラスノート
  8. 神のレゾンデートル