騎士物語 第十一話 ~神の国~ 第八章 裏世界のげきどうごと

第十一話の八章です。
もう一つの主人公チームのようになっているラクスくんたちの戦いに乱入した『絶剣』のお話もありますが、メインはロイドくんたちのVS『フランケン』です。

第八章 裏世界のげきどうごと

「信じられないな……」
 国内のあちこちで火の手が上がっている神の国、アタエルカ。一国の首都レベルの街が十二も隣接しているわけだがその面積は一般的な国のそれと比較すれば非常に小さく、仮に外周を一回りしたとしても一日はかからないだろう。そんな狭い国で無差別に暴れている者たち――何者かに操られているかのように、しかし同時にその制御を失っているようにも見える暴徒たちを無力化してまわっている一行。その中の一人、戦闘用というよりは何かの儀式用に見える翼のような装飾のついた剣を二本、背後に浮かべている祭司姿の男――《オクトウバ》が半ば呆れたような顔でそう呟いた。
 彼の視線の先にいるのは一人の少女。その小さな身体では重さに振り回されてしまいそうな大人用の剣を肩に乗せて外見相応の速さで走り回っているのだが、少女が横を通るだけで暴徒が一人、また一人と糸の切れた人形のように倒れていく。暴徒たちの武器も魔法も一切当たらず、暴徒の数は見る見る内に減っていった。
「おいおい、サボってるとお前のところの大司教様に言いつけるぞ!」
 少女と比較すると荒っぽく、その剛腕で暴徒たちを気絶させている筋骨隆々とした男――フィリウスがニヤニヤした顔で《オクトウバ》を指差した。
「……呼び方を間違えるな……未だに信じ難いのだ、あれが世界最強の剣士などと……」
「だっはっは、厳密には今は最強じゃないだろうな! あの身体じゃちょいと無理があるだろうよっと!」
 飛びかかってきた暴徒を片手で捕まえてぽいと放り投げながらそう言ったフィリウスに《オクトウバ》は怪訝な顔を向ける。
「『絶剣』……なのだろう?」
「別に『絶剣』は世界最強を目指してるわけじゃないぞ! 結果としてそれに近いってだけで、正確に言えばあいつは世界一の剣術バカだ! この世に存在する全ての剣術を極めようと本気で考え、その剣術に最も適した身体へと乗り換えながら修行を繰り返してる変人だ!」
「乗り換える……!? バカな、どうやって――いや、何の為に……」
「今言ったぞ、極める為だ! 剣術に限らず、スポーツでも何でも身体を動かす何かしらってのには必ずそれをするのに最適な身体ってのがあるもんだ! 体格、骨格、筋肉の付き方鍛え方、本来は天性のモノとして変えようもないそれをそうだからとは諦めずにあの手この手を試した結果、元の身体を捨てて理想の身体に自分を移し替えるってのをやってるわけだ!」
「……お前が言っていた、中年のオヤジだったり老婆だったりというのはそういう事か……ハッキリ言って狂人の所業――おい、まさかその身体、元の持ち主を殺して奪ったりはしていないだろうな……!」
「だっはっは、そうだとしたらあいつはS級犯罪者の仲間入りだったろうな! 本人が言ってただろ、『フランケン』に会いに来たのは欲しい身体を作ってもらう為だってな! あいつは身体を作れそうな技術者やら魔法使いやらを訪ねて身体の作成を依頼するんだ! でもって今回は次に極めたい剣術に適した身体を作れそうな奴がたまたまS級犯罪者だったってわけだな!」
「……あの幼い身体もそうやって手に入れた適した身体というわけか。」
「次の身体を作ろうとしてるって事はあの姿で極められる事は極めたって事だろうからあれでも何かの剣術の達人だし、身体を変えても今まで極めた剣術の全てが使えなくなるわけじゃないから見ての通り滅茶苦茶強い! だがあのちびっ子ボディだからな、今のあいつは世界最強の剣士を名乗るには色々と足りてないだろう!」
「……では一般的な成人……極端にお前のような身体だったなら……」
「だっはっは、俺様の身体があいつの極めた無数の剣術とどれくらい相性がいいかは知らないが、それでも俺様の筋肉がつけば最強の剣士だろう!」
「おい、サボるな十二騎士。」
 二人が眺めていた少女はいつの間にかすぐ横に立っており、周囲の暴徒は残らず倒れていた。
「だいぶ減ってきたんじゃないか!? いよし、次はどこだ!」
「第十一地区の方だな……魔法を撃ちながら走り回っている奴が何人かいるようだ。」
「まだいるのか。人使いが荒い――」
 やれやれと面倒そうな顔でため息をついた少女は、ふと何かに気がついて《オクトウバ》の指差す方向とは別の方へ顔を向けた。
「……見覚えのある顔だ、こういう機会は逃さないようにしている。ボクはあっちへ行く。あとで追いつく。」
 二人が何かを言う前に、少女はトトトと走って行ってしまった。
「だっはっは! 一体何が見えたんだ!? 俺様には何も見えないぞ!」
「膨大な力の位置を感じる……『聖剣』か……?」
「ま、結構倒してくれたしな! 追いつくって事はまだ手伝う気みてーだし、次に行くぞ!」



「生憎と、それで強くなれるかというのは人による。」
 理由はそれぞれに、しかし共通して強さに重きを置き、それを求める者が集うアタエルカ第五地区。そこの頂点――教皇として聖騎士隊を率い、彼ら個々の戦闘技術を他の者へ共有する魔法を展開する者、フラール・ヴァンフヴィート。その輪の中に新たに加えるべき強さとしてラクス・テーパーバゲッドを認め、勧誘する中で不意に現れた少女が口にした言葉。一体何者だろうかとその少女を数秒見つめたフラールは、ふと何かに気がついて目を丸くしていた。
「もっと言えばキミに提案されたモノは環境が良くない。棚から飛び出した牡丹餅に飛びつく前に今一度考える事だ。」
「……なんつーか、似た雰囲気の奴に会った事あるんだが、見た目と喋り方が合ってない感じからしてあんた……普通の女の子ってわけじゃないんだろ……いきなり出て来てなんなんだ……」
 フラールからの提案に頭の中をグルグルさせていたラクスだったが、唐突に登場した少女のおかげで落ち着きを取り戻したようにそう問いかける。
「普段ならボクもこんなアドバイスはしないがその六刀流は実に興味深く、その使い手が良くない道に進むのはこちらにも損失。無駄骨の代わりの収穫は多いほど嬉しい。」
「何を言って――」
「まず根本的に、誰かの技を他人が再現するにあたり、不足している部分を魔法で補うと言っても限度がある。」
 何者なのかという疑問には答えず、少女は一方的に解説を始めた。
「極端な例を言えば、筋骨隆々とした人物の力強い技をようやく立てるようになった乳児に再現させようとした場合、足りない体格を全て魔法で補えるかという話。聖騎士は誰もがかなりの強者であり、その肉体は同レベルにまで仕上がっている故に互いの技をほんの少しの補助で再現できるのだろう。その点、キミはまだまだ成長途中の若者――オリジナルと比較すれば理解できるだろう、自身の再限度の低さに。」
「……完コピは無理でも……それでも俺が今持っていない技を得る事には変わりないだろ……普通ならそれなりの時間をかけなきゃいけないそれを、一瞬で……」
 少女の意見を否定するというよりは自分に諦めさせて欲しいような、そんな表情のラクスの言葉に少女は確かにと頷く。
「戦闘において重要な行動の選択肢を、しかも劣化版とは言えそれなりに洗練された技術を瞬く間に得られる。この点に関してデメリットはほとんどない。知識や経験もセットというのであれば、せいぜい選択肢が多すぎて思考が止まるくらいの欠点はあるだろうがそんなものは慣れの問題だ。重要なのは、それらをお手軽に得られるという点――要するに、失うのも一瞬という事だ。」
 少女のその言葉に、少女を驚いた顔で見ていたフラールがようやく話が頭に入ってきたかのようにピクリと眉を動かす。
「『聖剣』だったか。それがどれほどの力を持っていて、技を共有する魔法をいかに簡単に遠方にいる者に施し続けるのかは知らないが、何事にも完璧というモノはない。自身の預かり知らない事がフラール・ヴァンフヴィートに起きて不意に共有が切れたら? それが戦闘の真っ最中、今まさに共有されていた技でここぞという一撃を放とうとしている時だったら? そんな不安定なモノに命を預けることが果たしてできるのか?」
 一つの魔法が作り出すグループに参加するだけで得られる無数の力。だが正確に言えば共有されているだけで自分のモノにはなっておらず、それを実現している術者はフラールという個人。構成の脆さについての指摘に、ラクスは更なる納得を求めて反論を出す。
「……自分の技が何かの理由で封じられるなんてのは……そう珍しくない、はずだ……」
「自身を標的にした何かであれば予兆を得ることもあるだろう、対策も立てられよう、だがこの共有に関しては無理だ。普段から術者であるフラール・ヴァンフヴィートの近くにいる聖騎士ならばどうにかなろうが国外のどこかで活動するキミが対応できるわけがない。」
「それは……多分、あんたの言う通りだ……でもそれなら……共有された知識と経験を頼りに自分の技にしちまえばいい……そうだろう? 戦闘中には不安で使えないって言うならトレーニングをして技を習得する……そうすれば共有が切れても――」
「若者よ、自分が何を言っているか理解しているか?」
 頑張って理屈をこねくり回して否定したラクスに、少女は少し呆れた顔を向けた。
「知識と経験がその頭の中にある時点で習得してしまっているんだ。他人のモノだから自分とは別に考えているようだがそうじゃない。その魔法は、他人の技を自身の技にするモノなのだぞ? 既に身につけた技をもう一度身につけるなど、教科書を作る為に教科書を作るようなモノだ。」
 少女の言葉にいよいよ何も言えなくなったラクスがどこかホッとしたような顔になるのを横目に、少女はフラールの方を見る。
「当然今言ったことはそっちにも適用される。ベルナークシリーズの解放方法を共有で得ようとしているようだが、いざ解放しようとした時にその場にいない若者とのつながりが切れたらどうする? 最悪ベルナークの持つ力が暴走を――」
「正直、今はどうでもいい事です。」
 少女の意見を遮り、フラールはグッと『聖剣』を持つ手に力を入れる。
「何故この場にいるのかさっぱりわかりませんが確信があります。あなた……『絶剣』ですね……?」
 フラールの問いかけに、突然現れた少女への困惑が残ったままのプリムラが驚愕する。
「『絶剣』……!? 世界最強の剣士――この世の全ての剣術を極め抜いたとされる……!?」
「よく言われるが大袈裟だ。ボクは興味を持った剣術しか身につけないぞ。」
 仰々しく「いかにも」などとは言わずに本人でなければ言わなそうな事を当然のように口にした少女に、プリムラの半信半疑は確信に傾く。
「何故ここにという問いは何故この時にという意味合いが強いだろうが、タイミングが悪かっただけだ。当初の目的は果たせず、十二騎士にこのよくわからない混乱状態の収集を手伝わされている中で見覚えのある顔と興味深い剣術を見つけた。だからここにいる。」
「見覚えのある顔……?」
 怪訝な顔をしたフラールに少女――『絶剣』は同じような顔を返す。
「キミの事だぞ、フラール・ヴァンフヴィート。」
 あっさりとそう言われたフラールは目に見えて動揺する。
「な……あなたがわたくしを覚えているわけが……剣すら使わせる事もできずに敗北した者を記憶しているなんて……」
「言っている意味がわからないな。」
 今とは全く異なる外見だがその雰囲気、滲み出る絶対的な強者の圧は昔出会った時と変わらず、昔と同じことを同じ口調で言った少女にフラールは息を飲む。
「キミはボクとは異なる人生を歩み、剣の道もまたボクが経たそれとは別物だ。それを一つの強さとしてキミがボクと勝負したその時、ボクはボクが知らないモノの集大成を戦いの中で知ることができる。勝敗は関係ない。折角体験した自分の中にないモノを忘れるなど、どうしてそんな勿体無い事ができる? それにこうして――」
 どこか緊張した表情のフラールに、『絶剣』はすぅっと肩に乗せていた剣を向ける。
「思いがけない巡り合わせにより、別の道を進み続けて更に進化したその者と再会する事もままある。再戦する為には前回の戦いを覚えている必要があるだろう?」
 それは再戦の申し込み。混沌とした状況下ではあるがフラールにとっては無視する事の出来ないモノ。故にフラールはまるで――いや、恐らく事実として、ラクスと戦っていた時とは全く異なる気配を漂わせながら「手合わせ」から「本気」の状態へと移行し、『聖剣』を構えた。
「……すみませんね、ラクスさん。勧誘中ではありますが寄り道をさせて下さい。あれと剣を交えてから今日までの自身の成長、そして『聖剣』がそれをどこまで高めるのか、試すのに最適な人物がふらりと現れてしまいました。」
「いや……俺は……」
 謝られても困るラクスはついて行けない状況にマヌケな返事をしたが、次の瞬間から始まった一戦に、ラクスやプリムラたちは釘付けとなった。

 自分たちが通う騎士学校の先輩や教職員、そして普通は学生が戦うような相手ではない強者たちなど、ラクスたちは多くの格上たちを見てきた。だがその者たちですら足元にも及ばない遥かな高み――目の前で繰り広げられるモノは頂点と呼ぶべき者たちの戦いであると、ラクスたちは確信する。
 移動も剣の振りも視認が困難なほどに速いのは当たり前。いなされ、かわされた剣筋は背後の瓦礫を真っ二つに切断し、剣がぶつかれば閃光のような火花が散る。二人の動きとその結果生じている事象の関連性が半分も理解できず、ただただ「凄い」という感想のみが頭の中を占めていく。
 そしてそんな頂上決戦はラクスに一つの気づき――いや、感動をもたらす。

 ほんの少しとはいえ、聖騎士たちの技術の共有を受けたラクスにはフラールがそれらをフルに活用している事がわかった。炎や雷を飛ばすような派手な攻撃はないが、不意に十数人に増えたり時間がとんだようにいつの間にか別の場所にいたりという自身の攻めを補助するような魔法と、『絶剣』の足元をぬかるませたり凍らせたりという相手の動きを邪魔するような魔法をフラールは同時にいくつも使用している。
 そもそも本人の剣術の腕前――さっきまで自分の相手をしていた時は相当な手加減をしていたらしいフラールの素の強さはラクスからしたら異次元の領域であるし、『聖剣』の力がどこにどんな形で使われているのかもわからない。ただ、ついさっきまでそれを得るかどうかという事で悩んでいた無数の新しい力――その全てを駆使して戦っている事は間違いないフラールと「同等」にやり合っている『絶剣』は、少なくともラクスには魔法を一切使っていないように見えていた。
 もしかしたら強化の魔法や時間の魔法をどこかで使っているのかもしれない。だがそうだとしても無数の魔法と共に攻めてくるフラールと互角に戦えている理由を考える時、その大半を占めているのは間違いなく剣術の腕だ。
 先ほど本人も興奮していたが、多くの剣術を習得し、第十二系統の時間の魔法以外の全系統と共に戦況に応じた最適な攻めを行うスタイル――『魔剣』の二つ名で呼ばれているプリムラから『絶剣』の話は何度か聞いていたラクスだったが、本物が繰り出す実際の動きは想像を遥かに超えており、極め抜いた技が到達する領域に、ラクスは感動したのだ。

 フラールから持ち掛けられた共有の魔法に加わるという事。聖騎士たちの高度な技を一瞬で得る事ができ、デメリットはない。だが『絶剣』とのやり取りでラクスは、新しく得たそれらの力を「今日はちゃんと使えるだろうか」、「今は大丈夫だろうか」と事あるごとに確認する自分の姿を容易に想像できてしまった。
 懸念されるような非常事態はそうそう起きるモノではないと理解できるのだが、完全に自分の知らない所で起きた何かによってそれが起きる可能性がある――これは強さを渇望している今のラクスにとっては僅かであっても非常に大きな不安要素となった。
 そして今目の前で繰り広げられている、最早鑑賞料金を払うべきだろう芸術に近い一戦。借り物ではない鍛錬で身につけた真の力が届く場所――これこそが目指すべきモノなのではないか。
 確かにこれを今すぐに得る事は不可能だ。そういう時間が無いから焦っていたわけだが、本来あるべき姿を、しかも最上級のそれを見せつけられたラクスの心は不思議と穏やかな決意を得る事ができていた。
 フラールは否定していたが、ラクスはプリムラの言葉を――全てを自分だけが背負う必要はないという事を思い出す。
 そう、時間が無いなら作ればいい。しかも既にそういう領域に到達している人物が目の前にいる……ラクスは自分でもわがままだと思う取引を思いつき、苦笑いを浮かべた。



 相手が使っている技術は魔法ではなく科学。ノクターンモードになったことで、オレはその事を実感していた。
「バカの一つ覚えが!」
 日々の鍛錬の相手であるエリルたちや今まで戦った相手から厄介な攻撃と評価されてきた曲芸剣術。吸血鬼の力で剣の数や速度はかなり増しているのだが、今のところ一発も当たっていない。
「無駄って事を学べ、猿が!」
 全方向から同時に飛ばした無数の黒い回転剣は、両腕を広げた『フランケン』の直前でその軌道をほぼ直角に曲げて明後日の方向に飛んで行く。
 風の力で回し、飛ばしているだけだからそういう事が不可能というわけではない。より強い風をぶつけたり、高い重力をかけたり、あとは同等の何かを物理的に衝突させたりと方法はいくつかある。『フランケン』が何かを飛ばしているようには見えないから、たぶん風や重力と言ったような何かしらの力で剣の軌道を変えているのだろう。
 だけどそういう力というのは当然魔法によって生み出されるモノ。魔法を弾いてしまう吸血鬼の「闇」をまとっている回転剣には効果がないはずだが、こっちの攻撃は当たらない。
 つまり、『フランケン』が使っている力は魔法ではない。
「お前のサーカスがこっちに届く事はねぇんだよ!」
 初めは位置エネルギーとかいうよくわからない力なのかと思ったが、何度か攻撃する内に見えてきた。風や重力の場合はオレが操っている風そのものにも影響が及ぶが、剣だけが見えない何かに引っ張られるような感覚がある。そしてよく見ると剣だけじゃなく、地面の砂までが曲げられた軌道と同じ方向に飛んでいる。
 恐らく直前までの電撃を使ったユーリの戦いや相手が超科学を使うという情報がなかったらイメージが繋がらなかっただろうが、『フランケン』が使っているのはマーガレットさんが鉄球を飛ばすのに使っていたのと同じ力――電磁力。強力な磁力で剣の軌道を曲げ、その時に砂――砂鉄も引っ張られて舞っているのだろう。
 だがこの結論に至って困惑する。ノクターンモードになると魔法的な感覚が鋭くなるが、『フランケン』からはそういうモノがほとんど感じられない。今使っている電磁力は勿論、さっきまでのユーリやカラードたちとの戦いも本当に科学の力だけで行っていたという事になる。
 理解を越えた科学は魔法に見える……パムの言葉の通りなのだろうが、そんな事が本当にあり得るとは――

「ロイくん!」

 不意に耳に届いたリリーちゃんの声にハッとし、オレは目前まで迫っていた『フランケン』の攻撃――両の手の平から伸びる光の剣を回避する。戦闘中に考え込むのは悪い癖……今はあり得るあり得ないなどどうでもいい。集中するべきは、この外道を倒す事。
「ありがとう、リリーちゃん。」
「う――う、うん! そいつ、まだ気持ち悪いままだけどさっきよりは位置が薄くなってるよ!」
 位置が薄い――これだけだとどういう意味かわからないが、リリーちゃんの話を聞いていたから理解できる。身体の表面を移動しているという「位置」……位置エネルギーとやらが関係しているのか不明だが、機械の身体の時にあったそれが薄くなってはいるけど今もあるというのは重要な事だ。
 つまり薄くなってでも――出力が落ちていても身体にまとう理由、もしくは意味があるという事。身体を覆うモノの用途として真っ先に思い浮かぶのは鎧――カラードのたちの一撃を無傷で防いだのがこれなのだとしたら、今は攻撃が入りやすい可能性がある。こっちの回転剣を全て回避しているのも、逆に言えばカラードたちの攻撃でもビクともしなかったというのに今はオレの攻撃を警戒しているという事になる。
 ともあれまずは、一発を当てるところからだ。



「ひゃぁん、ロイくんてばカッコイイよぅ……」
 ノクターンモードを発動させたロイドといくつかの身体をツギハギした『フランケン』の戦いを、あたしたちは……ちょっとドキドキしながら見てた。
 ロイドの身体にある吸血鬼性っていうのはほんのちょっとで、効果としては……やらしい唇っていうか、ロイドに対してこ、好意――を持ってるとロイドにキキ、キスしたくなるっていう変態能力。吸血鬼が血を吸う時に使う力がそういう感じで発動しちゃってるらしいんだけど、ノクターンモードになると吸血鬼性が増すからその力も強くなって、あたしたちは無駄にドキドキする羽目になるのよね……
「むぅ……ドキドキするというのもあるが、あの状態のロイドくんの攻撃にコンビネーションを合わせられないというのが困ったモノだな。」
 顔を紅くしたローゼルが呟く……そう、あたしたちは別にドキドキしてるからロイドの戦いを眺めてるわけじゃない。ノクターンモードになると回転剣の数も速さも格段に上がるからあれと一緒に共闘するっていうのは……正直『ブレイブアップ』を使ったカラードとかじゃないと無理。毎日の鍛錬のおかげで何となくのリズムはわかるんだけど、それに自分の動きを合わせるとなるとついて行けない時があるのよね……
「何も全身で突撃する事がコンビネーションの全てではありませんよ。」
 あたしたちがどうしたものかしらって思ってると、パムが杖でトントンと地面を叩く。
「確かにこの速さ、兄さんの攻撃にこちらの攻撃を合わせるのは難易度が高いでしょう。ですがさっきのように不意に兄さんがピンチになった時に遠隔魔法で援護する事はできますし、兄さんの代わりに相手の動きをよく観察する事もできます。気を抜いてはいけませんよ。」
 流石現役の騎士――その時その時での最善を考えてる感じね。そうよ、『フランケン』の弱点とかが見えてくるかもしれないんだから、集中しないと。
「あ、あの……動き、じゃないんだけど……ちょっと気になった事があるの……」
 たぶん魔眼の力でこの場の誰よりもロイドと『フランケン』の動きが見えてるティアナが、戦いからは目を背けずにおずおずと手を挙げた。
「さっき、メインバフって言って、たけど……それぞれの地区の情報を、まとめる役割って……言うなら……「ハブ」が正しいと……思うの……」
 そう言ったティアナの言葉に「確かに」って言えるのは誰もいなくて、むしろ全員が首を傾げる。
「その……すみません、言葉の響き的に技術的な用語と言いますか……自分もあまり詳しくなくて……」
 パムもこれに関する知識はあんまりないみたいで、この中で唯一ガルド――金属の国って呼ばれる世界で一番科学技術が進んでる国出身のティアナがわたわたしながら説明する。
「え、えっとね……たくさんのスパイが集めた情報を……誰かがまとめてあの人に送って、いるとして、それを表現するのに「バフ」って言葉はちょっと、合ってなくてね……似た言葉に「ハブ」っていう、たくさんの機械が接続される中心、の装置っていう意味の言葉がある、から、そっちの方が正解……だと思うの……」
「ふむ? 語呂が似ているから言い間違えたという可能性もあるだろうが……ちなみにティアナ、「バフ」だとどういう意味になるのだ?」
「うん……技術的な用語ではないんだけど……「バフ」の意味は……「強化する」とか、そんな感じなの……」
 その言葉で、ティアナがただの言い間違えかもしれないこの話をあたしたちにしたワケを理解する。
 強化……それが間違えじゃない本当の意味合いとして『フランケン』が口にしたとすると、それを担ってた六人の身体をツギハギしてできたあの身体には強力な何かが六発分隠されてるって事になる……!
「相手はS級犯罪者、本来の身体が使えなくなってもすぐに別の身体を用意できてしまうような異常者です。あの身体の中に何が仕込まれているかは全くわからない状態ですが、警戒するべき何かがぼんやりとでも認識できた事は前進です。より一層の注意を払いましょう。」
「注意っていうかさー、もうなんか変な気がするんだけどー……」
「へ?」
 顔をキリッとさせたパムだったんだけど、アンジュの一言で……なんか、自分以外が先に気づくなんてって顔になる。実力的にって感じじゃなくて……妹的にっていうか……
「あたしたちってほとんど毎日鍛錬でロイドと模擬戦してるから何となく違和感なんだけどさー……ロイド、間合いが変じゃなーいー?」
 そう言われて……それに注意してロイドの動きを見たあたしは、確かに変――普段よりも相手との距離が近いように感じた。
 曲芸剣術は剣術だけど分類するなら遠距離攻撃。その気になればティアナのスナイパーライフルみたいに物凄い遠くまで剣を飛ばせるんだろうけど、あれの強みは近距離の範囲内で相手の死角も含めてあっちこっちから剣を飛ばせるっていう点。一瞬の判断の遅れが細切れに繋がるっていうのが曲芸剣術の面倒くさいところだから、ロイドは近距離と遠距離の間、中距離の間合いで動く事が多い。
 最近は目の前まで近づかれた時の為にカペラの生徒会長から教わった近距離用の剣術を練習してたりするけど、自分から距離を縮めるのはちょっと変……
「そう言えばロイドくん、折角解放したベルナークの剣を使っていないのではないか? 確か剣を振る時の速度に比例して見えない剣先が伸びるのだろう? 切れ味もかなりのモノだったし、回転剣に混ぜて使えば有利だと思うのだが……」
 火の国でゲットしたベルナークの双剣。真の力――高出力形態になるとその青い刃の中なのか裏なのかに隠れた見えない剣が振り回す勢いが強いほど遠くに伸びるっていう鞭みたいな動きをするようになる。
 火の国での一件の後、何度か実験してわかったのはその伸縮をロイドの意思でオンオフできるって事。回転させる度に周りを切り刻むんじゃ危なすぎるけど、それを制御できるっていうなら応用の幅は広い。単純に一本を回転させて飛ばすだけでも、剣が伸びる分尋常じゃない大きさの回転ノコギリが飛んでくるのと同じ状態になるからだいぶ厄介。ローゼルの言う通り、それを自分の周りで回転させておくだけっていうのは宝の持ち腐れよね……
「な、なるほど、兄さんとの手合わせの多い皆さんならではの気づきですね……しかしそうなると『フランケン』も妙です。兄さんの攻撃をそらす方法を持っているようですが、それ以外は両手に光の剣を生やした素人も同然……人間らしからぬ身体能力ですが体術と呼べるモノではありません。だというのに段々と兄さんの動きについて行って……いえ、これは兄さんの側が……もしかすると間合いも含めて――何かを狂わされているのでは……!?」
「でも今のロイドに魔法は効かないはずよ……回転剣は――なんかあいつの超科学でどうにかされてるみたいだけど、狂わせるなんて――」
 そこでふと、強化コンビの隣で寝転がってる死人顔の事を思い出す。こいつは『フランケン』の身体に電流を流して動きを狂わせた。そして言ってたわ……人間の身体は電気信号で動いてるって。
「……あいつがロイドの攻撃をそらしてる方法がプロキオンの生徒会長と同じ感じの電磁力だとしたら、あいつは電気を操れるって事になるわよね……」
「! 自分がされたのと同じように、兄さんの身体を電気的に狂わせている……!?」
「ええ!? それじゃあロイくんを助けないと――で、でもその狂わせてるのも魔法じゃないんでしょ!? ボクたちはどうすれば――あっ!!」
 言葉の途中に挟まったリリーの叫び。ロイドの回転剣をくぐり抜けた『フランケン』が光の剣を突き出し、ロイドは後ろに飛んでそれを回避する。距離的にその剣先はロイドに届かないはずだったんだけど、『フランケン』の腕が肘の辺りで分離して――その分先に進んだ剣はロイドの左肩にぷすりと、ほんの少しだけ刺さった。

 バチンッ!!

 そして一瞬の閃光と電気の音。ロイドの身体は煙を出しながらふっ飛んだ。



 二つの騎士学校の生徒らがそれぞれの戦いをしている頃、既に聖騎士たちの避難誘導が済んでいるのか、住人が一人もおらずゴーストタウンのようになっているエリアで異様な面々の戦闘が行われていた。
 戦いの影響でどこかへ飛んで行ってしまったのか、かけていた眼鏡が無くなり、辛うじて胸元をはだけさせるだけで済んでいたシャツのボタンが全て外れてセクシー極まりない姿へとなるもその状態に欲情できる男は存在しないだろうと思えるほどの鬼の形相で怒り狂う女――『バーサーカー』がその右手を前に出すと、彼女の方へ走っていた小柄な少女を空から降ってきた真っ赤な光線が飲み込んだ。
「うわわ、やっぱり滅茶苦茶だよね。」
 かわした――というのとは少し違う。確かに光線が地面に巨大な穴を開けたその場所を少女――ウサギの耳のような白いリボンと首から下げている目覚まし時計を揺らしている魔人族、ラビホアは走っていた。だというのに光線が消えると、まるで時間が戻されたかのように穴の手前を今初めてそこを走っているかのように駆けていたラビホアは穴の淵で跳躍。人間の速度を遥かに超えた一瞬で『バーサーカー』の真横に移動し、強烈な回し蹴りで顔面を蹴り飛ばした。
「――って、えー!?」
 だがたった今蹴り飛ばした『バーサーカー』は遠方の建物に突っ込んだかと思ったらラビホアの目の前に立っており、ギロリとひと睨みするとどこからともなく伸びてきた、見るからに凶悪なデザインをしている有刺鉄線がラビホアを捕縛、いくつかの建物を崩壊させながらこれまた遠方へと放り投げた。
 そして有刺鉄線がそのような動きをしている最中に『バーサーカー』の姿は白衣を着ている老人――ケバルライの背後へと移動しており、裏拳をその頭へと振り下ろしていた。だがその拳が触れる直前、横から迫った巨大な芋虫のような怪物が巨大な口で『バーサーカー』の身体をくわえ、瓦礫の山へと突っ込んだ。
「ふぅむ……」
 間一髪で攻撃を逃れたケバルライがくるりと怪物の方へ身体を向けると怪物の長い身体が口の方から反対側の端へとぶつ切りにされ、周囲に青い血をまき散らした。
「あの魔人族の蹴りも今のも……そういえば『フランケン』に頭を掴まれた時もそうだったな。なるほど、『ゼノ・スプリーム』の弱点はそれか。」
 真っ青な血液がどういう訳かケバルライを避けて降り注ぐ中、瓦礫の中から出てきた『バーサーカー』は全身を青で染めており、そしてこれまたいつの間にか、そんな二人の近くで傷一つ無く立っているラビホアが『バーサーカー』を見て吐きそうな顔をした。
「うげー、やっぱりおじいちゃん、趣味悪いんだよね。青い血とかどうなのー?」
「大体の生き物の血が赤いのは大体の生き物に必要な機能を持っているモノが赤いからだからな、それが必要無いなら別の色にもなろう。しかし今のでここに連れてきた作品は終わり、頭の追いつかない動きをする狂人と時間を操る魔人族はまだまだ元気……どうしたものか。」
「どうもしなくていい、そこに立ってりゃ殺してや――」
 青い血液を適当に拭いながら右の手の平をケバルライに向けようとした『バーサーカー』だったが、不意のその身体がぐらりと揺れる。
「その血に含まれている毒素が効いている……のではないな、魔法負荷か? まぁ、それだけ強力な魔法を『フランケン』の所からここまで発動させっぱなしというのだから、そろそろ限界が来てもらわないと逃げに徹しているワレもそろそろいい一撃をもらってしまう。」
「あー、人間ってその辺弱いくせに魔法使うんだよね。でもラッキー、これでお姉さんからレガリアを回収できるねー。そしたら帰るからさー。」
「それは困るな、お前はサンプルとして持ち帰るのだから。」
「あっは、そっちのお姉ちゃんは強いけどおじいちゃんは全然だよね? ボクを捕まえられるとか本気で思ってるの?」
「そこの規格外はともかく、ただの生き物なら問題はない。」
 そう言ってケバルライがニヤリと笑みを浮かべると、ラビホアが突然片膝をついた。
「!? ちょ、何これ……」
「今言っただろう、その血には毒素が含まれていると。こんな血の海に近づいているのだ、多少は吸ってしまうというモノ――生憎『バーサーカー』がおかしいだけでこれは猛毒だぞ?」
 瓦礫に手をかけて身体を支えて立っている『バーサーカー』、頭を抑えてしゃがみ込むラビホア、二人を交互に見たケバルライは適当な瓦礫に座り込んだ。
「どうやらもう少しここで眺めているだけで終わりそうだな。『バーサーカー』、悪いがその魔法が解除された瞬間に殺させてもらうぞ。モルモットにするというのもあるが少々危険が過ぎるからな。」
 ケバルライは白衣の内側から小さな子供がデザインしたおもちゃの銃のようなモノを取り出し、その銃口――と思われる部位を『バーサーカー』に向けた。
「ふざけるな……お前はここでアタシが……」
「どれだけ強力な魔法を習得しようとも最終的に全ての術者が辿り着くのは魔法負荷という限界……人間である以上はどうしようもない。そういう意味では『フランケン』の研究は一つの正解なのだろうが……残念ながらヒメサマに評価してもらうマッドサイエンティストは一人でいいのでな。」
「うわ、ちょっとこれ……結構ヤバイ気が……ねぇおじいちゃん、ちょっと話し合いとかしたいんだよね、どうかな?」
「下手な交渉だ。意味ないぞ、ワレはお前に興味がない。目当てはお前の身体――」

 ドスンッ!

 傍から聞けばいやらしい捉え方もできる答えだが本当に「肉体」にしか興味のないケバルライの言葉を遮ったのは何かの落下音。音のした方を見るとそこには禍々しいデザインではあるがスピーカーと思われるモノがあり、同様のモノが三人を囲むように追加で三つ落ちてきた。
「?? なんだ、いきなり誰かの演奏会か?」
 警戒するもそれが本当にただのスピーカーであるとわかったケバルライは立ち上がってキョロキョロと顔を動かすが、スピーカーからよくわからない音楽が流れ始める以外には何も起きなかった。
「催眠……効果があるわけでもない、ただの音楽だな。一体何事――」

 ズンッ!!

 ――と、音楽の盛り上がりらしいタイミングでスピーカーの落下音の数倍の音量と地面を揺らす振動と共に、今度は人が降ってきた。腕組みをして仁王立ちという、そのまま着地したのなら両脚の骨がぐしゃぐしゃになっていてもおかしくないのだが銅像のように何事もなくそこに降り立った人物は高らかに笑う。

「ワガハイ、参上!」

 それは一言で言えば大男。装飾過多な服にマントを翻し、頭にドクロのヘルメットをのせて何やらポーズを決めている。
「見たところ劣勢か、『バーサーカー』よ! 未来の魔王軍兵器開発部隊長が情けないぞ!」
 突然の登場に反応できずにいる――というよりは魔法負荷がいよいよ深刻なのか、苦しそうな表情を返すだけの『バーサーカー』の代わりにケバルライが興味深そうにその大男を見つめる。
「ほう、『バーサーカー』の知り合いか。何者か知らないがこの反応……魔人族――ではないがその力を持っているな? 混血の末裔と言ったところか。」
「はっはっは、ワガハイをそのような枠でくくるでない! ワガハイは魔王、ヴィランであるぞ!」
 ドクロのヘルメットから生えているように見えるが、実際は本人の頭から伸びている牛のような角を眺め、ケバルライはくくくと笑う。
「魔王……そうか、お前が『魔王』か。納得の名と力よ。くくく、『バーサーカー』に『フランケン』にワレ、そこに加えて『魔王』とは、騎士が目を回してしまうな。して、『魔王』様は何用でここに?」
「料理長から『バーサーカー』がこの神の国に向かったらしいと聞いてな! ワガハイの優秀な部下の一人が『聖剣』の話を思い出したのだ! 勇者と言えば聖剣、これは勇者が見つかるやもしれぬと来てみれば未来の幹部候補が追い詰められているではないか! 故に、ワガハイは部下を先に行かせて参上したのだ!」
「部下想いの『魔王』様だが困ったタイミングで来たものだ。どうやら毒は効いていないようだし、正直ワレが勝てる相手ではなさそうだ。さて……」
「戦う? そんな無粋はせぬとも!」
 ズンズンズンとケバルライ――ではなく『バーサーカー』に近づいた『魔王』――ヴィランは、色々と言いたげな『バーサーカー』をひょいと持ち上げてその肩に乗せた。
「目を見ればわかる、お主は『バーサーカー』の獲物! 部下の楽しみを奪う魔王ではないわ!」
「そうか、それは良か――」
 ――と、ホッとしたような顔になったケバルライは、直後目にも止まらぬ速度で放たれたヴィランの拳によって脇腹を半分以上えぐられた。
「がはっ!?」
 大量の血を吐き、あと少しで千切れてしまいそうな身体からも血液を噴き出しながら倒れたケバルライを、ヴィランは高笑いと共に見下ろす。
「『魔王印』! これでワガハイにはお主の居場所がわかるようになった! よもやこの程度では死ぬまい? 後日『バーサーカー』からの再戦を待つが良いぞ!」

「魔王様。」

 足元に広がるケバルライの血液が、不意に電流を帯びて時間を戻すかのようにケバルライの身体に戻り始めるのを満足そうに見ていたヴィランの背後に、赤、黄、青の三色のローブを羽織った三人が姿を現した。
「『聖剣』はその封印を解除され、どこかの地区の教皇が手にしたようです。しかしあの者が勇者というのは考えにくいと言いますか、あまりに勇者っぽくないと言いますか……」
 三人の内の一人、青いローブの者がそう言うとヴィランは真面目な顔であごに手をあてる。
「ふぅむ、確かに教皇で勇者というのは魔王の書にもない肩書きだ。もしやその者が真の勇者に剣を授けるのか?」
「可能性はありますが……顛末を見届けますか?」
「むぅ、勇者誕生の瞬間に姿を現す魔王も良いが舞台がこの荒れ果てた戦場ではいかん。そういう場合は希望と平和に満ちた瞬間に黒き絶望と共にワガハイが登場せねばならんのだ。この場に勇者が誕生するとしても、ワガハイは少し後でなければなるまい。」
「さすが魔王様です。では今日の所は。」
「うむ。」
「魔王様、あの魔人族はいーのー?」
 赤いローブの者がヴィランの登場から完全に蚊帳の外にいたラビホアを指差し、ラビホアもまたこのまま見逃される事を期待していたのか、ビクッと身体を震わせた。
「あ、あはは……どうもー……」
 ラビホアは魔人族としてヴィランの強さを感じ取っているのか、逃げる事も戦う事も初めから諦めて降参しているような、そんな苦笑いを浮かべる。
「確かに人間とは違う気配、あの蛇と同じ魔人族なのだろう。が、しかし……」
 ケバルライが作品に仕込んだ毒によってふらふらとしゃがみ込んでいるラビホアをジッと見つめたヴィランは、とても残念そうに首を横に振った。
「……小柄なウサギではなぁ……せめて人喰い大ウサギくらいの迫力があれば勧誘もするのだが……これでは魔王軍としての品位が落ちる。」
「あー、そぉですねぇ。じゃあ帰りましょうか。」
 知らない内に何かを失格となったラビホアが目をぱちくりさせていると、ヴィランたちは黒い闇となって空気に溶けるようにその姿を消した。
「……なぁんかムカツクけどこれで良かったんだよね……ミノタウロスとなんて戦えないし……あー、でもレガリアも持ってかれちゃったからなー……ハブルにネチネチ言われる……」
 嫌そうな顔をしながら首に下げた目覚まし時計の針をクルクルと回す。するとラビホアは元気よく立ち上がってググッと伸びを一回した。
「こーゆーのは正直苦手なんだよね。早く学校行きたいなぁー。」



「ロイド!」

 ぼんやりと耳に残る音からして、たぶん何度目かの呼びかけでオレは目を覚ます。寮のベッドではなく、困った事に最近は目を開くとニッコリ笑っているミラちゃんもいない。
 あー……えぇっと……?
「どうやら頭が追い付いていないようだが、一先ず起きてくれて良かった。そろそろまずい状況、ロイドの風が必要なんだ。」
 オレを呼んだ声の主……オレと同様に地面に転がってはいるのだが、どうやらほふく前進でオレの近くまで移動してきたらしいカラードがわずかに上体を起こしてオレの顔を覗き込んでいた。
「風……オレの、風……?」
 状況が飲み込めないままふと横を見ると、そこでは戦闘が行われていた。
 膝をついて辛そうな顔をしているエリルたち、唯一立って大量のゴーレムを操っているパム。そしてそのゴーレムを一体一体……爆弾でも使っているみたいに木端微塵に破裂させていく人物。
 何人かの人の身体をチグハグに縫い合わせたみたいな、どこか友達の一人と似たような事をしているその姿が、ついさっきまでオレが何をしていたのかを思い出させる。
 微かに残る熱、手足に残る痺れ――そうだ、オレは電撃を受けたんだ……
「……動け……ないか……でもよく……」
 ――死ななかったな、と正直な感想が頭をよぎる。マーガレットさんとの試合で降り注いだ雷や授業の中で時々先生が撃ってくる電撃を思い出しながら考えるに、たぶんノクターンモードになっていなかったらあの一撃でオレは死んでいた……と思う。ぷすりと、ほんの少しだけ身体に刺さった剣先から一撃必殺の電撃を流し込んでくる……ユーリのおかげで相当弱体化している『フランケン』だが、その恐ろしさは未だにS級犯罪者なのだ。
「……悪いカラード、今どういう状況なんだ?」
「そうだな、先にさっきまでのロイドの戦いを説明するが、恐らくロイドはユーリ殿が『フランケン』の身体を狂わせたのと同じように、電気的な何かを受けて判断を狂わされていた。自覚は無かっただろうが、傍から見ると間合いや攻め方が変だったんだ。」
「そんな事が……それであの一発を食らったわけか……」
「そうしてロイドが倒れた後はパムさんを中心にクォーツさんたちが応戦したのだが、今度は音で全員が狂わされた。」
「音……?」
 言われてみると、膝をついているエリルたちは片手や両手で耳を抑えている。
「これも『フランケン』の超科学なのだろう、不快になる音などは思い当たるモノがあるが、どうやら平衡感覚などを狂わせる音を発しているようでクォーツさんたちはまともに立つこともできていない。対応できているのはパムさんだけだ。」
「た、確かにゴーレムなら音の聞こえない場所から動かせるか……」
「いや、それは少し違う。おれたちには聞こえていない理由でもあるが、どうやら『フランケン』は指向性のある音を使っている。距離に関係なく、あの場で戦っている者一人一人に音をぶつけているようなのだ。」
「! それじゃあパムは……」
「表情からして我慢しているのか魔法である程度は緩和しているのか、何にせよ騎士としての経験の差だな。それでも長くは持ちそうにない。」
「か、かなりやばい状況なんだな……それで、オレの風が必要っていうのは……」
「それなんだが、こういう事が出来るならどうしてロイドとの戦いでは使わなかったのかと考えた。クォーツさんたちの反応からして効果は即効――何故ロイド相手には時間をかけたのか。おそらく、使えなかったんだ。」
「えぇ?」
「音は空気を伝わるモノだ。対して曲芸剣術を展開しているロイドの周りには常に強風が吹いている。おそらくあの音はそういう状況下では相手に上手く伝わらないのだ。」
「な、なるほど……よし……」
 感覚的に……さすが吸血鬼の力というべきか、たぶんあともう少しもすれば身体の痺れは回復するだろう。それまではみんなの援護を……この前みたいに寝ているだけにはならないぞ……!



 金属がこすれる音とか黒板を引っかく音とか、長く聞きたくない上に時々力が抜けるような感覚にもなる、いわゆる嫌な音。それを百倍強力にして百倍の大音量にしたような音が耳……いえ、頭の中で鳴り響く。耳を塞いでも全身を伝わって届く感じの音のせいで身体が全然思うように動かせない。例えるならきっと……そう、酔っ払うのってこんな感じなんじゃないかしら……
「……!」
 酔っ払うって表現したけど、突然その酔いが一気に覚めるみたいに身体が軽くなる。いつもの調子が戻って普通に立てるようになったあたしは、ふとよく知った温かさに包まれるような感覚を覚える……ああ、これロイドの風だわ……
「わぁ、なんか急に、身体が楽、になったよ……」
「うるさい音が消えたねー。しかもなんだろー、この覚えのある感じー。」
「やん、これロイくんの風だ! ボク、ロイくんに包まれてる!」
「風か……ロイドくんにスカートをめくられたのを思い出すなぁ。」
 全員が元に戻って……一部の変態のせいでロイドがなんか真っ赤になってるけど、とにかくこのツギハギ人間の面倒な攻撃は封じられたみたいね。
「ま、まったく兄さんは! 心配させないで下さい!」
「あ、うん、ごめん……」
 ロイドがふっ飛んだ時かなり驚いてかなり不安そうな顔になって……んで凄くキレたパムが嬉しそうに怒鳴る……
「風だと……? あいつ……くそが、うたた寝から目覚めたみたい顔しやがって……人間が生きてられる電流じゃなかったはずだぞ!」
 そしてロイドをふっ飛ばした張本人――パムのゴーレムを次から次に粉砕してた『フランケン』がパム以上にブチ切れた顔になる。
 ……まぁ、最初っからずっとキレてるけど……
「何であれで死なねぇんだ、化け物が! 学生の分際でどいつもこいつも規格の外にいやがって!」
「自分は学生ではありませんが、これで迷惑な音は聞こえなくなりました。兄さんに対して行っていた事も含めて、きっと他にもこちらを混乱させる機能が色々あるのでしょうね?」
 ロイドが目を覚ました事にイライラする『フランケン』にパムが……何というか、煽るような口調でそんなことを言った。
「……何が言いたい……」
「どれも自分たちの想像を超えた科学なのでしょうが、しかしだからこそ、そちらの底が見えてきたというモノです。」
 もしかしてパム、『フランケン』を挑発してる……?
「底……? 底だと? 猿が知った風な口を――」
「あなたこそ、技術者としては天才かもしれませんが戦闘という分野においては素人――いえ、猿ですよ。」
「なんだと……?」
「簡単な事です。初め、機械の身体だった時のあなたにはこちらの攻撃がほとんど通じず、ビームやら何やらと火力の高い攻撃をしていました。しかしそのツギハギ状態になったあなたは兄さんの剣を回避するようになりました。リリーさんによればあなたの身体を覆っている「位置」はまだあるけれど薄くなったとの事。曲芸剣術を無防備に浴びられるほどの防御力ではなくなったわけですね。そして攻撃と言えば両の手の平から伸びている剣からの電撃のみ。ゴーレムを粉砕しているのも結局はその高圧電流ですから、やっている攻撃は一つしかないわけです。自分たちの動きを鈍らせるのも、下がった防御力のカバーとそのたった一つの攻撃を当てる為。運動能力こそ普通に超人レベルですが動きは単調……そろそろあなたが何をしたとしてもかわせますし一方的に攻撃できるくらいには見切れて来ましたよ?」
 長々とした挑発兼解説の間、パムが操ってたゴーレムたちはいなくなってて、代わりにパムの隣にゆっくりと一体のゴーレムが足元から組み上がってく……
「は……く、くくく……」
 パムの挑発が効いたのか何なのか、『フランケン』が両手で顔を覆う。
「せ、世界……最強、その数歩手前までは来てると確信していた身体を化け物に壊され……一歩手前まで来てたはずのあいつからは『聖剣』確保の通信もこねぇ……あの黒い女が足止めしてんのか? それとも壊されたのか? ひひひ、酷い冗談だ……自分はここでクソ生意気な猿に壊されてお終いか? き、ひひひ……」
 だらりとうなだれた『フランケン』は狂ったみたいな笑い声をぼそぼそもらし……そしてゆらりと――ゾッとする顔を上げた。表情が怖いとかそういうんじゃない。まるで危険な薬品でもかけられたみたいに、シスターの格好をしてた女の顔がぶすぶすと煙を出しながら焼けただれてく……!!
「ひ、ひひひ! んなわけあるか、んなわけねぇだろうが猿共が! 底が見えるだぁ? 頭空っぽのバカ猿が、何も見えてねぇよクソが! 足止めされてんなら上等、ぶっ壊されてても完全破壊は不可能だ! あいつの部品を回収して『聖剣』を取り込みゃあ完了だろうが! おい、そこの金髪!」
 ツギハギにされた連中の……肉、が焼け落ちて内側から青白い炎が噴き上がる。全身が炎に包まれる頃には肌とか筋肉っていうモノは欠片も無くなって、中身がよくわからない機械でびっしり詰まった骨だけの姿になった。ただし普通の骨じゃない……炎の光をチカチカ反射するあの感じはたぶん金属……そんな、機械で出来た骸骨が突然ティアナを指差す。
「聞こえてんだよ、誰がバフとハブを言い間違えるかバカ猿! メインバフは地区ごとに集めた情報を自分に飛ばす役割、それぞれの地区が科学やら魔法やらで建てた腹立つ壁を超える為の部品だ! そしてそいつらに組み込んでたこの目玉――出力を底上げする機構がここにある!」
 ツギハギ人間から骸骨お化けになった『フランケン』の身体のあちこちに左右対称な感じで大きめのガラス玉みたいなモノが顔を出して、青い十字架状の光を放つ。
 数は全部で十二個……つまりさっきツギハギにされたあの六人の目があれって事……!?
「これで終わりだ猿どぼおっ!!」
 金属のドクロの奥で真っ赤な光が目みたいに光った瞬間、その顔面に拳をくらった『フランケン』はそのまま殴り飛ばされた。
「なるほど、それが切り札ですか。」
 殴ったのはパム――じゃなくて一体のゴーレム。さっき組み上げてたのが出来上がったみたいなんだけど、スタッとパムの横に戻ってきたそれを見てあたしたちは驚いた。
 色はたぶん何かの金属なんだろう、黒寄りの灰色って感じで鈍い光沢があって見るからに硬そう……なんだけど問題はそこじゃない。
 パムの作るゴーレムには基本的に顔が無い。人間の身体を細かく再現して作るから武術なんかを再現できて、それがパムのゴーレムの凄さなんだけど、顔に関しては別に無くてもいいから全員がのっぺらぼう。でもそのゴーレムにはちゃんと顔があった。
 身長はパムよりも小さい、ぶっちゃけ子供。だけどあたしたちにはそれが誰だかわかる。
「ティアナさんが予想した通り、バフとやらを持っていましたね。この戦いもようやく終盤です。」
「パ、パム、あんたそれ……」
 あたしたちが指差したそれを、パムは自慢気に紹介する。
「これは自分の集中力と魔力の全てを集結させて作る最強のゴーレム、『兄さん』です。」
「オレ!?」
 寝転がってるロイドから素っ頓狂な声が聞こえる。
 そう、そのゴーレムは……見た事ないけど確実に、子供の頃のロイドだった。
 でも……いえ、当然と言えば当然だわ。そもそもパムがゴーレム使いとして腕がいいのは死んだ……と思ってたロイドを第五系統の土の魔法の奥義の一つ、『死者蘇生』で復活させようとしたから。その為に必要な、呼び戻した魂を定着させる新しい身体は土で作るモノだから、パムは自然と土で人体を作るのが上手になっていった。
 そして当然、作ろうとしてたのはロイドの身体――パムの中にあった「最後に見たロイドの姿」っていうのは子供の時のだから、パムが一番作り慣れてる人体――ゴーレムの姿は子供の頃のロイドって事になるんだわ。
「『兄さん』を作ると他のゴーレムは作れなくなりますし、注ぐ魔力も多いので長時間は戦えませんが、この『兄さん』はとっても強いのです。」
「長時間は無理って、じゃあなんでわざわざあいつを挑発したのよ……ばふ――とかいうの使って本気になっちゃったわよ……?」
「これでいいんです。本人にも言いましたが、自分たちの動きを狂わせるような超科学を他にも持っている可能性は十分あり、さっきの音は兄さんの風でどうにかなりましたが、他の科学にも対処法があるとは限りません。であればあのイライラした性格を後押しして全力全開の殴り合いに持って行った方がまだ対応できるというモノです。世界最強の身体を目標としているあの男の本来の戦闘スタイルは最初に登場した時にやっていた、火力でのごり押しなんですよ。」
 そう言いながら、パムは杖を地面に突き刺して先端にくっついてる宝石みたいなモノに両手をかざす。するとパムの身体から……なんていうか、見えはしないけど魔法の流れみたいのが出て杖に集中し、そこから操り人形を動かす糸みたいにゴーレムロイドへと流れが伸びて行った。
「ここから先、『フランケン』はパワーとスピードとあの絶対的な防御力でガンガンに攻めて来ます。ですがあの燃え盛る身体の様子と言動、そしてここまで追い詰められてようやく使う事からしてあちらも長くは続かないでしょう。自分たちを最速で倒して『聖剣』の下へ行くつもりのようです。ですからここからはいかに戦いを長引かせるかが勝負――もしも『フランケン』を倒し切るまで『兄さん』がもたなかったら、トドメはお願いしますよ。」
「トドメ……」
 たぶん、まだあたしたちじゃ今の『フランケン』と「やり合う」ことはできない。でも一撃、あいつを倒す為の一発を用意するくらいはできる――それが最年少でセラームになった天才の判断ってわけね……
「わかったわ……」
「まぁ、倒し切るつもりですがね。」
 あたしが他の面々に目配せしながら一歩下がるのと同時に、瓦礫の中から青く燃える『フランケン』が飛び出した。
「猿があああああっ!!」
 その炎を推進力にでもしてるみたいに物凄いスピードで飛びかかってきた『フランケン』だけど、その進路上にパッと現れたゴーレムロイドがその頭を殴って地面に埋めた。一直線に飛んできた『フランケン』が垂直に折れ曲がって地面に突き刺さったところからして、あのゴーレムロイドのパワーは尋常じゃ――
「はっ!」
 ――ない、っていう感想が頭の中に浮かんだ頃には次の一撃が放たれてて、ゴーレムロイドのパンチを受けた『フランケン』は元来た方向へと殴り飛ばされた。だけどその飛んで行く方向にはもうゴーレムロイドがいて、今度はかかと落としで再度『フランケン』を地面に埋める。
「『兄さん』っ!」
 パムの指示? と共にゴーレムロイドが両の拳を引き、直後一発一発が地面を砕くような威力のパンチがとんでもない速度で連打される。カラードたちの攻撃を受けた時の、ビクともしないあの強固な金属音はするんだけど、そんなものお構いなしに殴り続けるゴーレムロイド。
 そうよ……だってゴーレムだから痛みとか体力とかそういうモノがないんだもの……あの攻撃はパムが魔法負荷で倒れるまで続けられるんだわ……
「うぜぇぇぇぇんだよクソがあああああ!!」
 鳴り響く金属音の中で怒鳴り散らされる咆哮と共に、地面から青い光線が空へと伸びる。その威力に押されてか、くるくると宙を舞ったゴーレムロイドの真上に移動した『フランケン』は――
「壊れろ人形っ!!」
 身体のあちこちで光る青いガラス玉の一つが強烈な光を放つと同時にその拳に集まったバカみたいなエネルギーをそのままゴーレムロイドに打ち込む。空中で強力な爆弾が破裂したみたいな衝撃が走り、あたしたちはともかく寝転がってるロイドたちはまぬけにゴロゴロ転がる……
 と、とにかくそんな一撃を受けて地面に叩きつけられ――ると思ったら地面に落下する前に空中でピタッと止まったゴーレムロイドは、そのまま空中で跳ねて『フランケン』を空高くへと殴り飛ばした。
 人の形をしてはいるけど根本的には魔法で作られたモノ……パムの操作一つで意味の分からない挙動だってできてしまう……パムが自信満々に言った通り、あのゴーレムロイドは相当強いわね。
「今の一撃、バフとやらを一つ消費させたようですね。なるほど、中々のパワーです。」
 スタッとパムの近くに戻ってきたゴーレムロイドは、壊れたりはしてないんだけど表面が……サビたっていうかボロボロになったっていうか、なんかザラザラになってた。
 これもたぶん、今の一撃を受けてこの程度で済んでるっていうのは異常なんだわ……
「すげーな、まるで《ジャニアリ》だぜ。」
 爆発の衝撃で物凄い体勢になってるアレキサンダーがそんなゴーレムロイドを見つめる。
「特別な魔法は一切使わずパワーのみで突き進む! イカしてるぜ!」
「そうだな……《ジャニアリ》の戦いはトーナメントで何度か見たが、遠目と目の前ではインパクトが違う。あのゴーレムの強さのイメージはおれたちを一段階強くするだろう……」
「イメージ……うむ、イメージか。」
 強化コンビの会話を聞いたローゼルが手にしたトリアイナの先端に手をかざす。
「そうとも、ロイドくんとの愛の結晶たるわたしの氷が負けるわけはないのだ。集中力と魔力を一つのモノへ集結させる……こういうのは初めてだな。」
 ゴーレムロイドを作った時のパムの言葉を呟きながら、トリアイナの刃先をピキピキと氷で覆ってくローゼル。ある程度の大きさになったらギュギュッと圧縮して再度氷をまとわせて……そんな事を繰り返し、ローゼルのトリアイナは氷の刃がついた薙刀へと形を変えた。
「バフとやらで身体を覆っていた位置エネルギーも最初の時の強度に戻っているのだろうが望むところ。この氷でリベンジだ。できるだけ小さく刻むから、その後は頼むぞリリーくん。」
 パムが倒し切れなかった時の為の準備――ローゼルに呼ばれたリリーは嫌そうな顔になる。
「気持ち悪いからあんまり見たくないんだけど――あ、そうだ! ロイくん!」
「ふぁ、ふぁい。」
 強化コンビと同じように変な体勢で転がってるロイドにリリーが近づく……嫌な予感がするわ……
「ボク頑張るから、後でご褒美くれるー?」
「えぇ!?」
 やっぱりいつもの流れだわ……ひとのこ、恋人に毎度毎度……!
「む! それは素晴らしい! わたしにも欲しいぞ、ロイドくん!」
「あっははー、それじゃーあたしも頑張ろーかなー。」
「う、うん、あ、あたしも……!」
「あんたら――」
「人が戦っている間に人の兄とイチャイチャしないでください!」
 響く金属音。上空からこっちに突撃してきたらしい『フランケン』を止めるゴーレムロイドを操りながら、パムが威嚇するネコみたいな顔をあたしたちに向けた。
「まとめて――消してやらぁぁぁっ!」
 自分の攻撃を止めたゴーレムロイドを蹴ってあたしたちから少し離れた『フランケン』は、両の手の平をこっちに向けて――バフ? のガラス玉を今度は四つ光らせた。
「死――」
 強力な一撃が放たれる一瞬前、近くで数回の銃声が響く。
「――ねぇぇっ!」
 そして発射された閃光は――空の遥か彼方へと飛んで行った。
「あぁっ!?!?」
 それもそのはずで、あたしたちの方に向けられてた両手はいつの間にか空の方を向いてて、よく見ると『フランケン』の両腕から地面の方に細い線――ワイヤーが伸びてた。
 ラコフ戦の時、そのパワーでちぎられはしたけど動きを鈍くしたり転ばせたりって事はできてたティアナのワイヤー。あの時は『ブレイブアップ』とか色んな魔法の強化があったわけだけど、今まさに攻撃を発射しようとしてる腕の向きをちょっとズラすぐらいならそこまでの強度は必要ないし、力をかける最適な場所とかを知ってるティアナにはお手の者だわ。
「ナイス援護です!」
 自分の腕に巻きついたワイヤーをイライラと千切る『フランケン』にゴーレムロイドが一瞬で迫り、その頭を掴んで地面の方へとぶん投げる。今日何度目かわからない地面へのダイブをした『フランケン』に跳び蹴りの姿勢で突っ込んだゴーレムロイドは、再度重たい連打を始めた――んだけど、不意に音がしなくなってゴーレムロイドがぴょんとパムの前に戻ってきた。
「――!! まさか『兄さん』が……」
 最早絶対無敵、『フランケン』の言う世界最強っていうのはゴーレムロイドの事なんじゃないのって思えてきたんだけど、そのゴーレムロイドの左腕が肘の辺りで無くなってた。
「いくら頑丈な構造にして魔法で強くしようがその人形はここら辺の地面から作ったドロの塊……材料がゴミなんだよ、猿が!」
 ゆらりとくぼんだ地面から顔を出した『フランケン』は、ボロボロと崩れてくゴーレムロイドの左腕を持ちながらそう言った。
「材料……なるほど、『兄さん』の材質を解析して科学的に分解したわけですか。」
「知った風に語るな、原理の「げ」の字も理解してねぇ猿が……もうその人形は敵じゃねぇ、とっとと死ね。」
 バフのガラス玉の一つを光らせ、右腕に青い電撃をまとった『フランケン』がゴーレムロイド――いえ、その後ろに立ってるパムごと攻撃しようと殴りかかる。援護をと思ったんだけど、その前にあたしたちは全員砂で出来たドームに覆われて――
「さぁ、後は任せましたよ。」
 あたしたちと一緒にドームの中に入ったパムがそう言うと同時に、ドームの外で物凄い爆発音が炸裂した。地面が揺れて普通に立ってられないほどの衝撃の中、パムがぺたりと座り込む。
「『兄さん』を作る時には、同時に自分の足元に『兄さん』と同等の強度を持ったこの壁を作るのです。最後の最後、自分の最終手段に自分自身を巻き込まない為に。」
 あたしたちを覆ったドームが一瞬で砂となって崩れ、見えてきた外の光景にあたしは言葉を失った。
 この戦いが始まってから何度もすごい衝撃が発生して、その度に周りの建物やら何やらは粉々になっていったけど……今はもう何もない。あたしたちがいる場所を中心にした一定の範囲、強化コンビが一度更地にしたけどその後ゴーレムロイドが地面を砕きまくったせいでゴツゴツしてたはずの地面が、まるで整地したみたいにきれいさっぱり何も無くなった。
 あるのはあたしたちを覆ったドーム以外の場所をえぐる巨大なクレーターと、その真ん中で膝をつく『フランケン』だけだった。
「これ、は……て、てめぇ、身体を……」
 青い炎に包まれた機械の骸骨、その身体にはいくつかの……破片って言えばいいのかしら、何かが結構な数突き刺さってた。
「『兄さん』は自分の全てを注いで作るゴーレム、その中には自分が倒れずにいられる限界ギリギリの量の魔力が注がれています。それを消費しながら戦うわけですが、見方を変えれば『兄さん』は魔力を詰めに詰め込んだ、言わば爆弾。『兄さん』のパワーで倒せない場合にはそれを全開放して周りのモノを消し飛ばすわけです。当然魔力切れの状態になりますから、滅多に使わない最終手段ですけど。」
「パ、パム……お兄ちゃんを爆弾に……」
 割とショックを受けてるロイドはともかく、さっきの大爆発がゴーレムロイドの自爆として、『フランケン』に刺さってるあれって……
「あ、も、もしかして……あ、あの人の、元の身体を使った、の……」
 明後日の方向を見てそう呟くティアナ。元の身体……たぶん戦闘の影響でどっかに転がってったんだろう、『フランケン』が最初に使ってた銀色の身体。ティアナにしか見えないくらい遠くに行っちゃったみたいだけど、それを使ったってこと……?
「さっき材料がどうこうという事を言っていましたが、最初に使っていたあの身体は世界最強に近い身体なのでしょう? 当然それを形作る材料は世界最強に相応しい強度のモノのはず。位置エネルギーの防御が無くなってどうにかバラす事ができましたので、爆破させる時の事を考慮して『兄さん』の中に仕込んでおきました。『兄さん』を分解された時は仕込みにバレたかと思いましたが解析は腕だけにとどまったようですね。おかげで……ええ、さすが世界最強の身体、爆破の勢いで見事に貫いてくれました。」
 パムにとっての最強の魔法だろうゴーレムロイドを作ってる時にはもう最終手段の自爆を使う事を考えてて、あたしなんか衝撃波でどこかに行った元の身体なんて今の今まで忘れてたのに、それを誰にも気づかれずに遠隔でこっそり回収してゴーレムロイドの中に組み込んでた。
 すごい……これが経験の差って奴なのね……
「つ……っく、ははは……バカ猿共が、勝った気で、いるんじゃねぇぞ……!」
 ユーリの電撃を受けた時みたいに動けずにいる『フランケン』が、まだ残ってるバフのガラス玉を光らせて笑う。
「最終手段の上に人の身体を使っておいてもここ止まり……こんなものはかすり傷、化け物に狂わされた電気的な故障とは全く違う、軽微なダメージ……!」
 ギリギリと、嫌な音を立てながら突き刺さってる破片が『フランケン』の身体から抜けてく。
「修復まで十数秒――結局、人形も含めて自分の身体にダメージを与えられるモノを持ってないお前らにはもう――」

 ――ィィンッ!!

 言葉を遮って鳴り響いた綺麗な音。白い軌跡をいくつも描いた透明な刃――くるくると回したトリアイナを地面に突き立て、ローゼルは満足そうに笑った。
「やはり、愛の氷に勝てる者はいないのだ。」
 次の瞬間、『フランケン』の身体は細切れになった。
『――なにぃぃっ!?』
 口からじゃない、なんかスピーカーから聞こえるような声質に変わった『フランケン』の声。バラバラと地面に散らばる機械の塊。
 ローゼルの氷が『フランケン』の防御を上回った……!
「――ふぅ、これはしんどいな……」
 氷の刃が砕け散り、それと同時にローゼルはへたりと座り込む。本当に全魔力を今の刃に注ぎ込んでたのね……
『バカな、こんな事が――最強の盾が猿なんぞに――』
「軽微とは言え、ダメージを負ったからだろうな。」
 どこから聞こえてくるのかよくわからない『フランケン』の声にローゼルが答える。
「ブレイブナイトたちの攻撃でも無傷だった絶対的な防御力、アレキサンダーくん曰く、パワーだけではどうにもならない特別な感触。リリーくんの感覚とも合わせ、それが位置エネルギーとやらに関わるモノであるのは明白。そして身体を乗り換えた時、その力は弱まった。同じモノを発生させる機構を作り直したが出力が弱くなってしまったとも考えられるが、最初の時と次の時では戦い方が全く違うのにそれだけは健在――これは『フランケン』という存在の本体についてまわっていると考えるのが自然だろう。」
 座った状態でトリアイナをぐぐっと伸ばし、バラけた『フランケン』の身体をガチャガチャと広げながらローゼルは話を続ける。
「そしてそうだとするなら何故二つ目の身体では弱まったのか。詳しい事は知らないが、位置エネルギーを全身に循環させるのに適した構造や材質というモノがあるのだろう。最初の身体は最適化されていたが二つ目の身体はツギハギ故にそうもいかなかった。つまりその防御力は身体の状態によって変化してしまう。バフの力で弱まった分を戻したようだが、身体を貫かれるという「軽微なダメージ」は再度力を下げた。そこを……ああいや、違うな。」
 ジグソーパズルをする前にピースを一度広げてみるみたいに『フランケン』の身体をバラけさしたローゼルは渾身のドヤ顔になる。
「例え防御が全開だったとしても、わたしの全てを注いだ愛の氷には無力だったという事だ。さぁリリーくん、本体はどこだ?」
 本体――ユーリが言うには随分小さい部品ってことだけど、位置エネルギーが本体についてまわるならリリーにはわかる。細切れにしたのはその為ね。
「うぇ……えーっとねぇ……ああ、それだよ。」
 気分悪そうな顔でリリーが指差した機械の欠片に、今度はアンジュが近づいてく。
『ま、まて猿共! それ以上――』
「あっははー、これが正解だって自白しちゃったねー。さて、あたしも全魔力集中でやってみるよー。位置エネルギーの防御が耐えられるかなー?」
 しゃがんだリリーが欠片に両手をかざす。すると欠片の表面が赤くなって白くなって、マグマみたいな色合いで周りの地面と一緒に溶けだした。
「爆発とか発射とかしないで熱だけに集中ってちょっと初めてかもねー。」
 軽くしゃべってるけど表情は全身全霊って感じで、むしろアンジュがそれくらい全力でやらないと溶けないって事。材質なのか位置エネルギーの力なのか、こんなになってもデタラメな相手だわ……
「――っふぃー! 残念、周りの部品しか溶かせなかったよー。」
 ぐつぐつと煮えたぎる地面の中にポツンと一つだけ残った部品。それは『ケダモノ』のチェレーザと同じ、小さいガラス玉。あれが……何度も改造を重ねて身体を強くし続けてきたS級犯罪者『フランケン』の本体……
「で、どーしよーこれ? やっぱり本体だけあって超硬そうだよねー。お姫様のパンチなら砕けるかなー?」
「普段であれば危険性を優先して破壊を試みますが、今はとても都合の良い状況です。ティアナさん、少しお願いできますか?」
「は、はい……」
 もう砂や岩を操る力が残ってないパムに代わり、ティアナが地面の形をグネグネいじって『フランケン』を岩で固め、更に表面を金属的なモノで覆う。そして最後にパムが宝石みたいな石ころを表面に取り付けた。
「これの超科学が何をどこまで可能にしているのかわかりませんが、一先ず電波を遮断し、犯罪者を捕まえる時に使う魔法封じのマジックアイテムを使いました。あとは残った機械部品を今のと同様に溶かしてもらえば、この更地に新たな身体となり得る材料はもうありません。」
「え、他のも溶かすのー? こりゃーロイドからのご褒美をたくさんもらわないとなー。」
 ニコニコしながら他の欠片も溶かしてくアンジュ……
 これで終わり……デタラメさとイカレ具合を極めたような怪物との戦いが、最後はなんだかあっけなく終わった。
 魔人族のユーリが……『フランケン』からしたら相性最悪の魔法で機械の身体を狂わせて、別の身体に乗り換えた後はロイドが挑んだけど感覚を狂わされて、その後はパムがほとんど一人で相手をして……それでも倒し切れなかったところを、ローゼルたちの一点特化の魔法で順番に切り崩して……今、捕まえるっていうところまでやって来れた。
 アンジュはあたしのパンチならって言ったけど、それでもあのガラス玉を壊せない可能性はかなり高い。本来の強さからとんでもないレベルで弱体化させたっていうのにあたしたちにはこれが精いっぱい……たぶんユーリがいなかったらパムも含めて全滅だったわ……
 そしてこの『フランケン』よりも厄介らしいダルマみたいなのをカーミラが一人で相手してる。さっきの『フランケン』の独り言からして動けなくしたか破壊した、とにかくカーミラはこんな怪物相手に一人で勝ってるらしい。
 あたしたちと同い年だけど一人一人の強さが尋常じゃない魔人族、そしてどこまでも強く、どこまでも狂ってるS級犯罪者。
 今更だけど、学生の身分に合わない味方と敵……来るには時期が早すぎる気がする命の危険……だけどそんなモノをもう経験するような環境は間違いなくあたしたちを強くするし、実際学生離れしてると思う魔法も使えちゃったり……あれ……?
 ……命の危険……そうよ、あの時……ロイドが『フランケン』の電撃を受けた時、パムはかなり取り乱したけどあたし――やローゼルたちはそうならなかった。普通に……ロイドが回復するまではあたしたちで頑張らないとって、そう思ってた。
 ロイドがノクターンモードだったから? あの電撃なら大丈夫って思ってた? 『フランケン』のデタラメな強さを見てるのに? なのにあたしにはロイドが大丈夫っていう確信があった。
 たぶんただの信頼とは違う別の何か……ロイドのノクターンモードって、他にも効果が――
「やーん、ロイくん終わったよー! 気持ち悪いのに我慢したボクにご褒美!」
「びゃあああああ!?」
 視界の隅っこでロイドに飛びつくリリー……! 油断も隙も……!
「こ、こらズルいぞ! わたしは魔法負荷で動けないというのに……!」
「こんな時に何言ってんのよあんたらは!」
 いいわ、あとでカーミラに聞くとして――今はこの変態共よ!



「いかんな、『フランケン』が負けたぞ。」
「相手が悪かった、そうでしょ?」
 田舎者の青年らがきれいに出来上がったクレーターの中でドタバタしているのを覗き見ている者らがそんな会話をする。見ていると言っても神の国アタエルカにはおらず、そこからずっと離れた所にある屋敷の一室で、天井に映し出された映像を床に寝転がって眺めていた。
「『奴隷公』が行方不明になって大打撃だというのに市場に流れる兵器の大多数を占めていた『フランケン』がこうなってしまうと金の流れが崩壊するぞ。」
 一人はがっしりとしたたくましい身体の男。整えられた金髪と綺麗に手入れされているのだろう髭が特徴的で、服装も含めてまさに紳士というべき姿なのだが、そのまま床に寝転がって上を見ている光景はかなり異質だった。
「下剋上が始まるかと思ったけどここまで大きく変わるとちょっとまずいわよね?」
 もう一人はお腹の辺りに先の折れた三角帽子を乗せている女。羽織ったローブと長い髪を広げて寝転がっているので一人で相当な面積を占めているが、何よりも問題なのはその女が全裸であるという事。乗せている三角帽子がかなり大きいため隠すべきところは隠れているが、そうでなければ田舎者の青年が鼻血を噴いて倒れる状態である。
「『世界の悪』の動向もあるし、A級がやっていたようにS級も一度集まるべきかもしれんが、そういう団体行動が出来ない連中だからな……先が思いやられるぞ。」
「とりあえずは『マダム』に任せておけばいいわよね? アルハグーエを戦闘不能に出来たんでしょ?」
「そうだが……全く、一度整った形を気まぐれに壊さないで欲しいところだぞ……」

 国や街に法律などの決まり事があり、人々の生活をまわす為にそれぞれの役割をこなす者がいるのと同じように、無法の世界と思われがちな裏の世界――悪の世界にもある程度の決まり事や流れというモノがある。
 その中で大きな役割を担っていたA級犯罪者が死んだり行方不明になったりしたところに、今度は更に影響力の強かったS級犯罪者が捕まった。
 本格的な混乱の気配に、紳士姿の男は心底面倒くさそうなため息をついた。

騎士物語 第十一話 ~神の国~ 第八章 裏世界のげきどうごと

それぞれのお話に出てくる敵役との戦い、そのラストはそれなりに派手にしていたような気がしますが、今回はさらっと終わってしまいました。その要因である「位置エネルギー」ですが、これは物理で習うあれを超科学でこねくり回したモノなので私にも詳細は不明です(笑)

『絶剣』の登場で引っ掛きまわされているラクスくんたちの勝負ですが、これも予定にない展開でしたね。フラールがああなったキッカケとして登場させただけだったのですが、まさか本人が出てくるとは。

さて、残るはそのフラールの一件ですが……ラクスくんのアイデアが通るかどうかですね。

騎士物語 第十一話 ~神の国~ 第八章 裏世界のげきどうごと

ユーリの力によって弱体化した『フランケン』の、それでも圧倒的な強さに苦戦するロイドたち。 勝負をかける為、パムはある作戦に出る。 一方、『絶剣』の登場によって一転するラクスたちとフラールの戦い。与えられる力について考え直す中、 『絶剣』は思いがけない事をフラールに申し出て――

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更新日
登録日
2023-01-15

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