情炎

心臓が、火花をちらして燃え盛り、脳天を突き抜け、身体中に燃え移った。ゆびの爪の先、火柱が赤黒くたれ、煤がちらちらと仰ぎ、墜ちて、惑わせようとしている。
蠱惑的な、死、らしい、

(燃やせ、)

醒まそうとするときの、あのこえ、ふるえ、香り、きらびやか、うらぎり、沸々と、点火した、もっともひとが、美しい、ひ、残酷な、純化、掌の、かんかくが、なくなってゆく、ゆびから、形貌の自我が、くずれていく、灰として、彼になる、彼に

(燃やせ、)

ぱちぱち
 ぱ
    ち

           ち

呼号のこだまが、爆ぜ、あのこえも、炎も、たった火花となり、死にゆく。内々、ひとみをつむれば、もっともひとが、美しい、ひ。乾燥して、肌がほろほろ、祈ろうと、骨は、肌のようにいかない、彼に、彼になれない、呪いになる。女がいる。

情炎

情炎

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-11-25

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