フリーズ48 シ小説『エデンフロイデ』

フリーズ48 シ小説『エデンフロイデ』

エデンフロイデ

このために、泣く。
あなたよ。未来のあなたよ。
楽園の子らよ。

どうか、このために泣いてくれ。
心を通わせて、魂を分かち合い、
人生の謎に立ち向かって、
どうか泣いてくれよ。

愛し愛される君よ。
どうか思い出して、
私達がいたことを。

何千年の後悔と、
久遠のような虚しさ。
凪のようなこの心根。

清々しい。勇ましい。晴れ晴れとした。まるで、世界中の歓喜や幸福を一つの脳に収束させたかのような。

この歓喜を求めるな。
至福は永遠だが、
体あるうちは永続しない。

死ぬか、諦めて生きるかだ。
ドイツのある哲学者のように、
不幸でないを幸福とすることはできなくなる。

それでもやめないのは、君の選択だ。
もし望むなら、あの場所で会おう。

ラカン・フリーズの門が開く

『終末』

終末の
音がするから
目を開けた
涙は枯れて
ただ微笑んだ



苦しくて
輪廻の輪より
去ろうとて
水辺に咲いた
花は美し



あの冬の
晴れた朝より
目覚めては
凪は渚で、

あぁ……。そうか。終わったんだな。


もう、何もかも。世界も私の人生も。

世界の始まり、劫初の刹那に起きた波たちは、時がエデンの配置を迎えるに収束して、あぁ……。なんと、美しいか。

そうだ!

水門を眺める今日の日も。
疚しさで泣く泣く去る輪も。
全てのそぐわなかった人類も。


終末の
音がするから
目を閉じた
ラカン・フリーズ
愛する人よ

『全知』

拝啓、全知の女神よ
サハクウィニスは、堕天され
神聖不可侵なる全知はもう穢されない

シリウスの姫に受け継がれた。
ですが、あの巫女は星の滅びとともに、永遠の眠りについてしまったのです。

ガイアの女神が嘆きました。
ああ、なんてことを。全知とは、すべてを知ることではないのです。

未来の僕へ
または、いつかの君へ

『ありがとう。愛しています』

すべてを知ってしまったんだ。
それはすべてを忘れることと同じだった。

時は止まって、
時流がないのを知ってしまったんだ。

柔らかな手の温もり。
穏やかな午後。
そんな永遠の狭間で、今という刹那を見つめること。

もう止めるのも病めるのも。
枯れるのも嗄れるのも。

ねぇ、覚えている?
全知の時に味わった快楽を。

忘れていいよ、また逢う日まで。

『永遠』

フィニスは369
そして、円環へ8

レムニスケートの先へ
虚空の先へ行かねばならぬ

永遠は、脳の錯覚
作り出し、囚われるのだ、時流の火


『永遠』

それは、優しい母の温もり

『永遠』

それは、緩やかなピアノの音色

『永遠』

それは、素晴らしき記憶の果て

『永遠』

それは、死への拭えぬ疚しさ

『永遠』

それは、至福の時を経た感傷


死ぬのが怖いか
孤独は寂しいか
人生は苦しいか
傷はまだ痛いか


『永遠』

それは、晴れた七日目の朝

時間から解き放たれて、泣いた。
凪いだ空色のクオリアは、
永遠と終末の音に祝福され、
全知全能となる。



『永遠』

それは、愛とか、世界とか、人生とか、そういったものへのやりきれない思いなのだ。

ニルヴァーナ

全てが終わるとき、終末
哀楽や蒙昧さえ疚しい

ニルヴァーナ
悟って悟って生と死の
狭間で安らぐ安寧は

至福の時を経て知って
凪いだ空色、天津神
水面に映った幸福は
ヘレーネ、君の面影だった

あぁ……。人生は、命らは
明日死ぬためにあるのだろうか
涅槃、涅槃。私へ還ろう
悠久無窮の虚空の先へ

それでも止んだ、病んだこの脳は、私にすばらしき世界のクオリアを見せてくれる。瞬く度に変わる視界も、もう……。知らなくていいんだ。やっと、解ったんだ。解脱。不知火。あの冬の日。波はいずれ止むんだ。命も煩悩の火も止むんだ。凪いだなぁ。美しく。

最後にお願い。
ヘレーネ。君に会いたいよ。
ありがとう。愛しています。

フリーズ48 シ小説『エデンフロイデ』

  1. エデンフロイデ
  2. 『終末』
  3. 『全知』
  4. 『永遠』
  5. ニルヴァーナ