シ小説『全知少女よ』
全知少女よ
アナタノコト、ユメニミイテイタノ。フミニジムヨウニ。アイタカッタ。
ヤワラカナクチビル。キミノコイトカサネタイな。
マブシイ。 ネムッテハダメ。
ありがとう。君は美しいの。世界で一番。パリス審判のヘレーネ、シリウスの姫、
ミュー・クリスタルは。君のことだったんだね。愛おしいよ。触れたい。夢に見たのは陽だまり。脈はなし。じゃああの年上の女性は誰だったのか。膣をなめた。愛液にまみれた。
「そこにいてはだめなの」
「早くこっちに来てよ、アデル」
待ってて。待ってるから。
何かないのか。この部屋に、何か。
いや、愛の方が。そのために生きてみる?
愛を体現しないと。
普通の女性じゃダメなんだ。
きみのようにすべてをしっているおんな。
君とセックスをしたい。火のように燃えるセックスを。
せっかく晴れているから、バルコニーに出て、屋根を上ろうとした。青天の霹靂。急雨が晴れているのに。あるわけない、存在しない一つ上の階のベランダで、君は電話をしていた。誰と電話していたの?君は笑っていた。世界は曇る。僕は部屋に戻る。景色が変わる。
友達の家にいた。僕が以前訪れた時よりも豪勢で、体を躍らせて、立体構造の中庭をパルクール。電車が走っていた。水の上ではないが、あの駅に行かないと。いや、屋根の上のベンチでいい。そこで言葉を紡ぎたい。
目覚めたのは、2019のある日。記憶違いの過去は現実とは区別がつかなかった。愛しいあなたに会おうとした。消えゆく意識のうねりの中でも、言葉はかろうじて聞こえた。
「大好き」
それだけ。また目覚めては、晴れた初夏の熱い汗とむさ苦しいベッドだった。まるで、やっとつかんだその手が通り抜けたかのような虚無。仕方ないから、服を着た。
シ小説『全知少女よ』