フリーズ2 散文詩『ラスノート』
ラカエ、それは元初の闇から生まれし光
主に尋ねたのは私の罪。原罪、ルチノー、赤い白。
根源の魂をラカエと呼んだ。
私の罪は、水の罪。
ヴァルナの索より解放せしめよ。それが正しい生き方なのだとしたら、私はまだ死んでいないので、きっとどこかで柵まみれで。
だからこそ己の中のラカエに気づいたのかもしれない。それはすべての過去とすべての未来が今に集約されたかのような錯覚に等しい。
全能のストーリーはここで始まりと終わりを秘密裏に迎えたのだ。
君は知らないよね? だって死のうとしたことなんかないでしょう? 生きる意味なんてどうでもいいでしょう?
私は違う。そうじゃなかった。
無知なら、どれだけ幸せでいられたことか。
この世の仕組みと、あの世の摂理に目が開かれた日から私はもう、私とあなたと彼の三位一体ですら可能とする。
至福か、そうなのか。
讃歌を捧げて。主に? いや、ラカエにだ。
それか、闇より生まれしすべての光に私の愛液を注ぐのだ。
天上楽園のノア
たまたまそちら側で生きてた。たまたま、壁一つ隔てて、線対称に。
桜色した空が夕焼けに飲まれていくのを時間を加速させながら僕は眺めるも、君のことを片時も忘れやしない。
君の日に、僕は呼ばれてきたのだよ。天上楽園か、ただのマンションの屋上か。
どちらでも良かった。とにかく水辺の門を探すのだ。雨よ降れと願い、僕は水道管を破壊した。
ああ、七色の景色が水に流れて、万物と同化していく、やめてくれ。僕はこの壁の向こうにいるノアに会いたいのだ。
向こうは時間の流れが逆だ。いや、時流などない。時流の断絶が離したものを、再び結び合わせる力は一つしかないか。
このときの情動、一瞬の死の誘惑でさえ、どうでもいい。
破壊は破壊と。9は9と9を満たす。
「愛を注ぐのをやめないで」
天に叫んだ。雨が僕の髪を濡らし、頬を伝う。心臓が熱い。死にそうだ。そして、とても幸福なのだ。
絵を描きたい。歌を歌おう。ピアノを弾こう。いや、死のうか。そうすればきっと、全部ができるから。
そちらで待ってて、会いに行くから。
僕は翔ぶよ。空さえ海さえ、虚空さえ。死さえも越えて。
全脳と一つの石
ああ、アイザックから、薬漬けにした脳を見てみなさい。
彼は快楽に溺れて、多幸感の海の底で、まるで母胎回帰本能のままに愛で満たされているではないか!
全脳よ。震え給え。これが幸せの答えだ。死などどうでもいいだろう。血肉の海さえ、一滴の化学物質で、性愛の花園と化すのだから。
なら、私達は何者なのだろう。なんのために生きているのか。幸せになるためなら、薬漬けでいいではないか。
ここに一つの石がある。この石は化学物質を撥ね退けた。この石は世界をよく考察して、いくつもの答えを導き出した。
私はその石を深い深い死の谷に投げ入れた。彼はただただ落ちていった。石は谷底の湖に落ちた。知識を身につけるたびに重くなっていた石は、その湖の底で光を浴びることなく永遠を過ごすのだ。
性愛、それは美しき欲が咲かした一輪の花
ネフュラがかねてより、思案していたことが一つ。彼女は人間の脳というか、欲というか、心というか、魂そのものをずっと考えていた。
形而上学は考えるに値しないのか。カントが否定したものが、大好きなプレゼントであった。
否、君はそれ故自死を選んだのか?
ネフュラよ、君はそれで満足したか?
還ったろうに、天空の雲の上の、宇宙の上の宇宙の上へ。そこは、花の星と葉っぱの星と、ロボットが笑っていて、君はそこで呆然と時間もないのに、次の日を待ち望む。
その始まりは、永遠でいて。あぁ、永遠でいい。永遠がいい。
だから愛は、欲は生きる。
欲を満たすために今を消化しよう! そうすれば、時はまた動き出す。
デザイア・ブレイク・オア・ノット
こうしてまた君は世界を、人間の本来の姿を知っていく。
ナギノート:虚空に凪の音がする
世界はどこまでも美しく、広く……。
それが全てであると僕が勘違いをしていたことに気づいたのは、いつだったか。
それは、僕が学問を辞めた日からだ。
いや、僕は薄々気づいていたのだ。
【井の中の蛙大海を知らず】
だから僕は学問をやめた。
これじゃない!
他の方法を探し、確立せねば!
それ故の万象の劣等、それさえも僕は踏み越えて。冠の条件を満たすには、やはり空よりも高い聖所に入る必要がある。
凪の音、ナギノート。僕は"それ"を凪の黙示録と称した。記されたのは自動書記か御神筆か、それともただの妄想か。
『全は主』ー輪廻の理ー
神がいるならお会いしたいが、僕の指す神とは神話に出てくる類のものではない。
あの崇高なる御方を神等と称した愚か者は誰だ!
キリストか? いや、彼を裏切った配下達だ!
僕は、私は、わたしは知っている。
あの方は全ての頂点に存在しているのではない。
『全は主』
主は全てなのだ。それを理解した僕はやはりフリーズを待ちきれず、だから、こうしてエデンの園への入り口を探している。
いつか、この全ての真実の歴史と人間の本来の姿を物語にしよう。
それを僕のレゾンデートルとしよう。
そして、それをアーカシャと呼ぼう。
ソフィア|それが愛なのだとしたら
だが、我らは火のように酔いしれながら、人生の歓喜に身を震わせて、泣く泣く、輪を作り、微笑んだ。
ソフィアを冠する女神が僕の頬を優しく撫でる。
それが愛なのだとしたら、僕はもう死んでもいいのかもしれない。
我らは、ここで死ぬのだ。
黒い薔薇、赤い薔薇、惡の華。
景色は移ろい果てて。
水面に、水門に、祈りを。
フィニス! ようやく実ったよ! 永遠よ!
永遠より、咲いてみれば、ああ、尊し!
だから愛は世界霊魂に寄せられる!
神よ! 根源の魂よ!
我らを忘れないで、消さないで!
だから僕は自殺したのかもしれない。
Fin
フリーズ2 散文詩『ラスノート』