それぞれの正義

 見えないものには実在が無い。意識のないものは存在しない。
 街を歩く私の後ろをあなたが付けても、私はあなたが家にいると思っている。
 あなたがおやすみと言えば、私はあなたが眠ったと思っている。
 昨夜の話をしなければ、私はあなたの愛を信じている。
 
 と、思っているでしょう。
 私が知らないフリをすればあなたの中で知らない私がずっと生きている。
 
 
 固いような柔らかいような、ゼリーにフォークを突き立てるような、そんな感覚が指から伝わり、口元が緩むのを自覚した私はそのままゆっくりと手首を回した。
 
 誰が私を裁けるか。
 
 

それぞれの正義

それぞれの正義

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-03-10

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