だめだ
おれの親父は王様だ
おれの親父は王様で、三百人の妻がいて、その妻に一人につき一人の子供がいる。おれには二百九十九人の兄や姉や妹や弟がいる。だから、この国はおれたち兄弟姉妹と母で合わせて六百人の人がいて、そして親父が一人いる。おれたちはこの国の王子王女として、おまえたちで、この国を大きくししろと親父に言われた。おれには后が必要だが、この国にはおれの姉貴や妹しかいないし、姉や妹も婿を迎えたいが、兄貴や弟しかいないんだ。
おれたちはさっぱりどうしたらいいか分からなかった。だからおれたちは親父に聞きに行った。そしたらこう言ったんだ。
お前たちでなんとかしろ
おれたちは随分と考えたよ。兄弟姉妹が知恵を絞りあったんだ。そうすると、おれを含めた男連中は全く言いにくい事柄だが、おれたちの母以外の母なら、つまり血の繋がりのない方の母なら、結婚できるなあ、という結論に達したんだ。それで、国を大きくするためにも、そのことを、非常に言いにくいことを、親父に言いに行ったんだ。親父は最後まで聞いてくれたが、一言だけおれたちに言った。
だめだ
おれたちは、さすがに引き下がらなかった。国を大きくするためであること、それに伴う必要であること、など熱意をもって力説した。じっとおれたちを見詰め、時々うなづいたりしていたんだ。そして、おれたちが話し終わると、最後にこう言った。
だめだ
おれたちはなすすべなしだ。では一体どうすればいいのか、親父に聞いたんだ。親父はこう言った。
お前たちでなんとかしろ
おれたちは自分たちでなんとかしようとした。それが親父の怒りを買ってしまった。おれたちは兄貴や弟もみんな切り落とされてしまった。
だめだ