林やは

えいえんなんてないから、あの子は泉を、去ってしまった。
バンビの森にも銃があって、いのちを奪うものがいて、愛されないことを、憂い。愛されないことを、憂い。

(秘密の奏とは、祈りだ。)

重なりあっている樹木のあいだから、樹木のものではない、いのちがおちて、大地を腐らせた。あの子の重みで、実がなるはずだったそこには、姿の見えないものがいる。うそぶくより罪深い、ささやきがしている。(燃えている!)水の神秘を、守秘しようとしたときも、そこにいた。(姿は、黒いはずだ!)犬がくる。燃えている、燃えている。だれのせいでもないと、口々に、云う。

森に棲んでいれば、神聖な存在に、なれるのだとしたら、森のほとんどが、見えない姿のものだった。(黒いものの!)そしてあの子は、きらびやかに名を授かり、愛され続けてゆくものだった。(黒いものと!)犬がきた。もう森には、だれもいないのだ。音のない、祈りで溢れて、醒まされる、あの子は、醒まされた。森を追われる、犬が吠える、愛されないことを、憂い。
愛されないことを、憂い。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-14

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted