Go to 収容所 キャンペーン、実施中☆(令和12年)

なおち

まず『あらすじ』キャラ紹介。ここは必ず読んでください。 

以下のふたりが重要。というか、ほぼふたりしか登場しない。

・西沢(にしざわ)アキオ
 28歳の若者。引きこもりニート兼、株式投資家。
 新卒で努めた保険会社はつまらなかったので3か月で退職。
 その後は実家で引きこもっていたが、いつまで経っても再就職をしないので
 父親と大喧嘩になり家を出た。それから現在までアパートで暮らしている。

 本人は投資家を名乗ってはいるが、投資を始めた段階で信用取引や
 FX(外国為替証拠金取引)で多大な損失を出したことから投資家には向いてない。
 しかし本人は反省する性格なので、それ以降は株式の現物取引に徹し、
 ゆっくりと時を待ってから利益を確定する方向へシフト。
 すると驚くほどに損が減った。

 しかし元本の少ない小額投資なので、株で生活するレベルには到底至っておらず、
 彼女のヒモとして生活をしている。ヒモの割には世の貧しい人のことを気にしながら生きている。
 若者にしては珍しく政治のことに関心があるのだ。株の取引でストレスをためているため
 目つきが悪いが、顔立ちが細くて全体的なパーツは整っている

・雨宮(あめみや)ミスズ
 30歳の女性。アキオの彼女。身長コンプレックスを抱える。
 小学生高学年の時に身長が伸び悩み、現在はたったの139センチだ。
 今年の身体測定で昨年より1センチ縮まってしまい、絶望した。
 顔立ちは天使のように愛らしく、ぷっくらした唇と、キラキラした目元が美しく、
 どんな男でも魅了してしまうほどの魅力があった。なにより彼女はすごく優しいのだ。

 早寝早起きを常とし、家事は完璧。細かいところまでよく気を配る。
 大学を卒業した後、東京のオフィスで働くが、残業続きで精神を病んでしまい、
 やむなく退職。それからは、たとえ給料が安くても、シフト勤務だったら
 休みなどの融通が利くからと、地元の埼玉でパートの仕事を探すことにした。
 現在はガストでアルバイトをして生計を立てている。

 もっとも彼女は資産家の娘であり、娘を溺愛する父親から
 多額の援助金をもらっており、たとえニートだとしても生活に困ることはない。
 困ったことに、彼女は父からもらった貴重なお金を、彼氏に貢いでしまっているのだ。
 今までに彼に渡した金額は、総額で『560万』を超える。


作品のキーワードは……

・近未来の設定 「令和12年」
・自民党 一党独裁
・富の再分配(笑)を筆頭とする政策の失敗。
・インフレ(物価高)が仮に8年間続いたとする。
・またコロナとの戦いも8年間続いたとする。
・国民の実質賃金がついにOECDで最下位まで転落した。
・国民の大半が貧困になった。

以上が基本設定だが、これに加えて

・金融
・経済
・政治

も話のテーマになる。

以前書いた「令和10年~兄妹の絆シリーズ」と似たような世界観である。
筆者的にはスピンオフに近い作品だと思っているが、登場人物はかぶらない。

岸田文雄政権に対する徹底的な批判、
金融市場の未来に関する見解、
貧困などの社会不安について筆者の見解を交えながら、
『ヒモ男のダメ人間』アキオと『依存症のメンヘラ女』ミスズの恋の行方を観察する。

この作品において最も重要なのは金融や経済ではなく、上の二名の男女の恋物語である。
私の各作品は何かと政治、経済、金融、歴史、軍事の話が多くなるが

それらは恋愛を盛り上げるためのスパイスに過ぎない。
作品によっては小説ジャンルを金融とすることもあるが、
あくまで筆者の書く作品は恋愛ものである。

舞台は令和10年シリーズと同じく、埼玉県久喜市内のアパートメントとした。


                    令和4年。元日から執筆開始!!

☆ここは読む必要はありません☆ 現実世界のインフレの見通しから説明する。

2020年から始まったコロナ化によって各国が国境封鎖された。
貿易上は先進各国や新興国が交戦状態に入ったのと同じだった。
その結果、サプライチェーンが伸張しまくり、あらゆる資源の供給不足に陥った。

インフレの最大の指標となるのが、『原油先物価格』である。
これに連動してあらゆる製品の価格が上がるのだ。
たとえば鉱物の採掘作業では重機が必要になるのだが、重機は燃料がないと動かない。
漁業をするにしても、燃料がないと船は動かない。農家のトラクターも同じである。

資源と名のつくものは、いくつもある。
金融市場(主にCME取引所)で取引される先物商品を例に挙げよう。

金属であれば『金地金(ゴールド)』『銀』『プラチナ』『銅』『パラジウム』など
特に銅は半導体部品に、アルミニウムは、EV化される車の車体の軽量化に使われるために、
今後も需要が継続する可能性が高いとされている。

食料であれば「とうもろこし」「大豆」「小麦」が筆頭である。
他にも肉やコーヒー豆など多彩だ。食料は作付面積が限られており、
また収穫までに時間がかかることから、一度国境が封鎖されて需要が落ち込むと、
最大の生産国であるアルゼンチン、ブラジル、インドなどの農場で作付けが行われない。

そのため執筆時点のように経済復興期の特需となっても、生産が追い付かずに価格が高騰する。

次に原油だが、
「ドバイ(中東)」「ニューヨーク」「北海ブレント(イギリスとノルウェー近海)」
これらの先物価格を中心に推移する。これが上がるとガソリンの卸売価格も上がるので
市民の生活にも響く。仕入れ価格の上昇は、企業にとっても辛い。


為替についても説明したい。
執筆時点の2022年初頭では対米ドルで、1ドルが114円前半となっているが、
日米の物価、金利格差が広がれば120円が視野に入る。
円安となっているのは、他にもカナダドル、豪ドル、NZドルだけでなく、
ノルウェークローネに至る。資源国の通貨に対し、昨年末にかけて円安が加速した。

これは、日本に対して「死ね」と言ってるも同然であり、
国の経常収支(貿易)を見ると、11月と12月は共にマイナスだった。
貿易黒字国として世界の三つの指に入っていた我が国にとっては大きな痛手である。

日本国は、戦略物資の大半を輸入に頼る国である。
輸入しなければ、現在の豊かな生活が成り立たない。
(実は米の自給率だけは100%を超えているのだが……)
円安だと、物を輸出する企業にとっては得だが、輸入する側にとっては損をするのだ。

日銀の総裁はこう述べている。
『スガ政権の携帯電話料金引き下げ行われたが、あれのおかげで消費者物価指数に
 おいて1.5%の引き下げ効果があった。だけども来年の2022年はやばそう。
 物価上昇率が2%を超えたら重い腰(利上げ)を上げちゃおうかな (∩´∀`)∩』

おそらく物価上昇率は2%は超える。利上げする可能性が高いだろう。

各国の中央銀行の関係者は、
足元の物価の上昇について様々な意見を述べていた。

「インフレはどうせすぐ終わる」
「インフレは一時的なものだ」
「いや、やっぱり、やばくね?」
「簡単に終わらないんじゃね?」
「おれ、インフレ対策にちょっと利上げしとくわ」
「あ、おれもおれも」
「うちも資産の買い入れとか辞めて、さっさと利上げするかな」

現在金融市場で最も注目されているのが、アメリカの中央銀行に当たる
FRBが、いつから利上げを開始するのか、そして一年間で何回するのかである。
パウエル議長の発言ひとつで市場が暴落(短期的にだろうが)するかどうかが決まる。

ここは重要なので読んでください。「スタグフレーション」について

この作品では、現実世界ではまず有り得ないことではあるが、
前回の話に出てきたインフレ(物価が高いこと)が令和12年まで続いたとしている。
また実質賃金も租税(年金保険料、健康保険料を筆頭)の高さから、下降を続け、
それなのに物価だけは高い「スタグフレーション」が現実のものとなったとして描く。
  
       ※実質賃金とは、名目(総支給)ではなく、
        最終的に手元に残ったお給料の事。可処分所得と言い違えても良い。
        第二次安倍政権時代では毎月勤労統計において、名目賃金の上昇を
        データとして国会に提出し、戦後最大の好景気を宣伝しましたが、
        その後、すぐに野党にウソがばれてしまいました。

つまり、この世の地獄である。
スタグフレーションとはインフレに合わせて「賃金が上がらず」
「日本の場合はむしろ下がってしまい」国民の生活が破壊されることを言う。
ナチスドイツ発足前のワイマール共和国で発生したハイパーインフレほどではないが、
もはや一般の市民がまともに買い物すらできないほどの惨状を描いてみる。

なお、これは小説の話だが、岸田政権が本当に悪政権だとし、また物価の調整役である
日銀も、黒田総裁無き後(任期満了)に暴走したとしたら、現実でも実現する話ではある。

設定の話を続ける。

・コロナとの戦いは、令和12年(2030年まで)継続した。

変異株が現れ続けたら、そうなる。
確かに変異するごとに毒性は弱まり、死亡者数は減少するだろう。
しかし感染力の高さは驚異的であり、現在のオミクロンも先進各国の空港房など
経済に(短期的だが……)打撃を与えている。
(なお、ファイザーCEOは2024年までにコロナとの戦いが終わると宣言した)

・岸田政権が企業に対して無理な賃上げを要求した結果

全労働者の2割が解雇された。
すなわち業績の回復の途上にある企業にとって、まずは借金の返済や
設備投資に回すことが第一であり、労働者の雇用は一応回復させるが、
現実世界の2022年初期の段階においては、とても賃上げをする余裕などない。
お隣の韓国政府が無理に賃上げを要求した結果、
一部の労働者は確かに賃金が上がったが、一方で大量の解雇者を生み出したのは有名だ。

打ち出の小づちなどないのだから、ない者を出せと言われても企業は困る。
現状は(あくまで貧しい末端労働者の視点だが)最低賃金で労働者の雇用者数を
増やしている。かつての製造業における派遣労働法の解禁の狙いはこれなのだ。

無理な賃上げをすれば、労働のパイが減るのは確実だ。もはや算数のレベルの話だ。
確かに雇用を増やした中小企業(だったかな?)に対して法人税の減税措置が
あるとしても、企業が応じるとは限らない。

2017年に過去最高益を出した大手企業は、既存の油の乗り切った高収入の社員の
大量解雇、そして新卒を安値で採用を行った。例えばメガバンク三行では一万人以上の
45歳以上の社員が解雇(表向きは他の金融機関への出向)された。

さらには設備投資と株主への還元(配当、自社株買い)のために利益を使った。
すなわち政府が要求したところで企業が賃上げなどするわけがないことは、
すでに証明されている。なぜなら日本の企業は、バブル崩壊を経験していることから、
先進各国と比べても非常に保守的な経営判断をするからだ。

岸田君は、ロクに金融の知識もないのに自社株買いの規制など、
資本家の行動原理(資本の増加が、社会の富を増やす原動力になる)
にまで口を出してしまった。これは明らかに社会主義的な発想であり、
資本市場の成長を阻害し、ますます国を貧乏にするための政策であり、
同じことを安倍元総理にも指摘されている。
岸田君は、おそらく10年に一度クラスの大バカ者である。

そもそも岸田が資本主義そのものを理解してないのは間違いない。
本来なら立憲民主党や共産党にいるべき人材だろう。

・スタフレになった。

仮に原油先物価格(NYMEX)が100ドルの少し手前でずっと高止まりしたとする。
これは、企業経営と市民生活の破壊を意味する。ガソリンだけではなく、
お店で購入可能な全ての商品が値上がりするが、一方で我が国はG7で最も賃金水準が低く、
(韓国はもちろん、なんと南欧の後進国スロバキアにも抜かれてしまった)

また賃上げは一部のエリート社員だけで、労働者の過半を占める派遣労働者などの
低賃金労働者には関係がなく、ますます餓死者を増やすことになってしまった。

たとえば、アメリカのイエレン財務長官(元FRBの議長)だったら、
連邦政府の債務残高の上限いっぱいまで国債を発行して国民に財を分配する。

この女性初のFRBの最高指導者であり、歴代議長の中でも
労働問題を重視する賢者は、コロナ発生当時こう語っていた。

「米国民は先進各国と比べても貯蓄性向が低く、収入が途絶えると
 ローンなどの支払いで生活に行き詰まる国民が多い。我々連邦政府は、
 たとえ将来の借金を増やしてでも国民を救う。今死のうとしている人が、
 あとひと月でも生き延びることが出来たら、将来は必ず労働市場に
 戻って来てくれる。だから私は積極的に財政出動をする」

賢者ジャネット・イエレン(ポーランドのユダヤ系米国人)
によって多くの米国民が救われた。しかし賢者もやはり万能ではなく、
最近の雇用統計を見ると、米国民の労働市場への復帰は十分とは言えず、
未だに家に引きこもっている人が多いそうだ。

またイエレン長官のバラマキ政策によって個人投資家が激増したため、
NY市場は大いに盛り上がっていた。結果的に貨幣の流通量の多さがインフレを
さらに助長させたわけだが、インフレの件に関しての批判はバイデンに向かっている。

一方、日本政府は (^O^)/
                   
「貧乏人は自己責任。早く死んでください(*^^)v」
   
「国民にお金は、あげません。(゜_゜>)
 うちはプライマリーバランス(財政収支)が悪いのです。
 だから国債の発行はしません。貧しい人は自分で何とかしてください」

「衆院選前に約束した10万円給付は嘘です( ・´ー・`)
 実は5万だけです。残りはクーポンにします」
   
やりたい放題だ。自治体のアンケート調査によると
9割以上の自治体(ほぼ全部)が現金10万円の給付を望んだため、
最後は政府が折れた。まず年末で事務手続きが煩雑なクーポンなど誰が望むのか。
そもそもクーポンの事務手続きだけで600万以上かかるそうだ。税金が。

また現金にしてもたったの5万と、今貧困にあえいでいる国民を救おうとする
気持ちが全くないどころか、そもそも選挙公約を守ろうとしない。
誠実さが全くない。正真正銘、誰がどのように擁護しようとも自民党の閣僚と
その関係者は『人間のクズ』であり、存在そのものが国益に反している。

また森友問題に起因する「赤木ファイル」に関しても、
「誠意をもって解決する」と岸田は選挙前に約束していながら、
赤城さんの妻(遺族)に対して1億円の賠償金を払って終わりにしてしまった。

奥方は「ふざけるなと言いたい。岸田は選挙前に森かけ問題を
誠意をもって調査すると言っていたのは嘘だったのか」
とメディアを通じて怒りを表明していた。
まさに首相は生きている価値がない『人間のクズ』である。

ところで森友学園問題とは、近畿財務局の決済文章を安倍元首相の支持で
改ざんし、結果的におよそ9億円引きで学園の土地を手に入れたわけだが、
9億円の原資はもちろん国民の税金である。

すなわち、「国民の税金で籠池君(理事長)に土地をプレゼント!!」
さらに「国民に悪さがばれちゃったから、遺族にお金をプレゼント!!」

合計で10億円。悪さをして9億円。さらに謝罪のために1億円。
原資は国民の税金である。さらに元凶の元首相は行政に
巧みに根回しをしたため無罪となった。
米ワシントンポストによると、国家公務員が公的文章の改ざんをした場合は
かなり罪が重く、米国憲法では無期懲役(本当は死刑)に値するそうだ。

実際に決済文章の改ざんを指示された赤木さんは、
罪の意識に耐えきれず亡くなっているのだ。前首相は間接的に人を殺したのだ。
なのにアベ、スガ、キシダは反省の色はゼロで、のうのうと生きている。

同じことを何度も繰り返すが『人間のクズ』が首相をやっていることを
読者に理解してほしい。ところで猟奇殺人犯やサイコパスと呼ばれる人は
人を殺すことに罪の意識を感じないゆえに異常とされるわけだが、
上の三人の正体も猟奇殺人犯と大差がないのだ。

彼らを逮捕できないこと自体が、この国には民主制はなく
自民党一党独裁大勢が維持されていることを証明しているのだ。


金融広報中央委員会、国税局、野村総合研究所の調べによると
日本国民の三人に一人が貯金ゼロである。むしろマイナスなのだろう。
65歳以上の高齢者も三人に一人が貯金ゼロだ。
ギャンブル依存症が360万人以上。離婚後のひとり親世帯は年々増加。 

子ども食堂が全国で拡大中。年末の炊き出しは東京であれば
各キリスト教会を中心に実施された。説教を聞いた人には、
おにぎり二個やカレーライスが支給される。もっとも引換券が必要になるが。

年末恒例の派遣労働者の年越し村も開催された。
実に多くの人が参加した。老人や子連れ、女性が多い。
女性の貧困者が増えたとマスメディアが報じるようになった。
必需品である生理用品すら買えない人が増えた。

――なるほど。国民に貧困者が増えたのは分かった。だが金持ちもいるのだろう?

当然いる。純資産1億円以上、1億5千万以上の人は、
全体で6パーセントくらいいる。
純資産5千万以上の人だけでも4パーセントもいるそうだ。

なお、純資産の定義は、住宅ローン残高などのバランスシート上の
負債項目を除いた、純額での資産のことだる。


・日本の国会議員は、自分の生活を第一に考えて政治を行っている。

自民党を中心とした国会議員
「国民の税金は、我々のお小遣いでーす!!(*^▽^*)」

衰退国にありがちな状況である。
まず歴史を見て欲しい。
ローマ帝国、モンゴル帝国などの世界帝国は、最後は政治的な腐敗から滅びていった
(もちろん外敵の侵入で滅びたのだが、要はそれを払いのけるだけの力がなかったからだ)

公明党や日本維新の会は2018年ごろにはすでに給料の二割削減を行っていた。
しかし最大与党の自民党では給料削減は、国会の議題にすら上がっていない。
2021年の衆院選後に支給された文書通信交通費の約100万は、
当選した議員にとっては完全なるお小遣いなのだが、それも全額もらうつもりらしい。
なぜならお小遣いの国庫への返却が「努力義務」とされているのだから。

自民党議員の平均的な年収は実質で4400万とされている。
基本は3000万だが、それに議員特権を加えると前述の金額になる。
特権はたくさんあるが、有名なのが住宅手当である。
議員の高級マンションは家賃14万なのだが、その7割を我々国民が負担する仕組みとなっている。
またJRの利用料金も議員ならタダである。これも我々が負担している。
以上は特権のほんの一例である。

前回の選挙では小選挙区で落とされたはずの石原(あえて下の名前は言わない)
のような人間のクズが、コネで内閣参謀関与に任命された例を見ても、
完全に政治は腐りきっている。確か参謀関与は自給?が2万円以上の仕事である。

これが何を意味しているか。

日本国は、すでに政治的には末期状態なのである。
歴史を知っている人なら誰でもわかる。これが国の衰退の象徴なのだと、
貧しくて死にそうな人がいても、政府にはその人たちを救うための意志がない。
アメリカにはそれがあった。日本にはそれがない。

なぜなら今の政治家には、本気で日本を良くしようとする、
かつての大久保利通や渋沢栄一のような人物がいないからだ。

岸田総理の今までの国会答弁(年末の臨時国会)や記者会見の様子を
筆者が見る限り、偏差値27、精神年齢は12才であり、
どう見ても国家の最高権力者たる器ではない。
秘書に渡された台本をゆっくりと読む姿は、読書感想文を読み上げる小学生を
連想させる。典型的な小物である。歴史の教科書には絶対に乗らないであろう。


長くなったが、最後にこのニュース記事も読んでほしい。

[ロンドン 26日 ロイター] -
英シンクタンクの経済ビジネス・リサーチ・センター(CEBR)は
12月26日に発表したリポートで、世界経済の規模は2022年に
初めて100兆ドルを超えるとの見通しを示した。

中国が世界最大の経済大国になるのは30年で、昨年の「世界経済リーグ・テーブル」
での見通しよりも2年後ずれすると説明した。インドの経済規模は22年にフランスを抜き、
23年には英国も抜き、再び世界6番目の経済大国になると指摘した。

CEBRのダグラス・マクウィリアムス副会長は
「2020年代の重要な課題は、世界経済がインフレにどう対処していくかだ。
インフレ率は米国では6.8%に達している」と指摘した。

「比較的穏やかなかじ取りで、非一過性の要因がコントロールされることを期待する。
 それが不可能なら、世界は2023年もしくは2024年に
 リセッションに備えなければならないだろう」と分析した。

CEBRによると、ドイツ経済は33年に日本を超える見通し。
ロシア経済は36年までに上位10位入りし、
インドネシア経済は34年に9位になる見通し。


日本がいずれインドとドイツに抜かれることは当然として、
長い目で見れば人口大国のインドネシアにも抜かれる可能性がある。
GDPとは個人消費(お買い物の事)が過半を占めており、
国民の購買力の源泉である実質賃金が増えない限りは、成長は確実に鈍化する。

我が国は財務省が言うように2025年には、老人世代が急増して
社会保険料の負担が過去最高額になり、ますます税金が上がってしまう。
消費増12%も目前だろう。と言うか絶対にするだろう。
2022の参院選で自民が圧勝したら、向こう三年間選挙がないわけだから、
あとは自民党のやりたい放題だ。社会保険料の増額、
医療保険制度の改悪、金融所得課税の拡大を筆頭に文字通り大手を振るだろう。

G7で比較しても日本のGDP成長率は際立って低く、先頭を走る米中と比較すると
周回遅れだ。それだけでなく、執筆時点での実質賃金では
経済協力開発機構(OECD)の中ではなんと23位。
つまり国民の生活レベルで考えるならば、すでに後進国なのだ。

世界と比べて自殺者数が多いことも有名だ。
前作の令和10年シリーズでも述べたが、
過労死自殺、と言う言葉はフランス語やドイツ語には存在しないため、
日本語の「karoushi」に定冠詞を付けて報道されるそうだ。

ドイツの一般企業では最低でも30日間の有休を政府が保証している。
彼らが(インバウンド消費時代に)日本に一週間近く滞在していたのはそのためだ。
なお、ドイツ企業が有休を社員に消化させなかった場合は、
政府に10万程度の罰金を払う必要がある。
日本特有の長時間低・賃金労働は、ギネス記録に乗るべきである。

そして国民は、何度衆議院総選挙をやっても自民党しか支持しない。
年金が欲しいがためのシルバー選挙。老人たちは目先のことしか考えない。
若者は投票しない。そもそも若者は政党名すら知らない人が多いだろう。

ほかの政党にも期待ができないのだから仕方ないにしても……。
それにしても、岸田のような『10年に一度の無能者』を総裁選で選出している時点で
自民党内でコネがはびこっているのは言うまでもなく、つまり実質この国にはまともな
政治家は一人もいないと言い換えても、決して言い過ぎではないだろう。

以上のことから、日本国はもう完全に、どうしようもないくらいに
国家の衰退の最中にあることを、ぜひとも理解していただきたい。

しかし、筆者はこうも考える。

そもそもこんな小さな島国が、西洋列強の最強国だったフランス、
イギリス、ドイツに匹敵していたことが歴史上の奇跡だったのだ。

第一次世界大戦当時、フランスのパリでは200台以上のタクシーが走っていた。
戦時中にトラックが不足したため、タクシーを使って兵隊の輸送を行っていたそうだ。
また気球も保有していたため、上空から敵のドイツ兵を観測していた。
また空軍は戦闘機を保有し、海軍は大型戦艦を持っていた。

フランスは戦争が終わるまでに、ルノー戦車を2000台も生産していた。
砲塔が回転し、キャタピラーが装備された近代的戦車だ。

当時の日本には、戦車は一台もなかった。設計図すら持っていなかった。
日本が後進国へ転落しようと、そう不思議に思うことはない。
貧しかったころの日本に、また戻るだけだ。本来あるべき姿へと。

☆本編☆  「アキちゃん。はい。今日のお小遣いよ」

ガチャリ、バタン……。

控えめに閉じられたな……。とアキ(アキオのこと)は思った。
彼は玄関の方を見もしなかった。
どうせ誰が来たかなんて、分かりきっている。ミスズだろう。

「こんにちわ」

「おう……」

「この前掃除したばかりなのに、また部屋が散らかってるじゃない」

「ごめん。今綺麗にするから……」

「あっ、別にいいのよ。
 私がやってあげるから、アキちゃんは座ってて。
 仕事の邪魔しちゃ悪いわ。三時まで真剣に取引するんだもんね」

(何が、真剣なものか)

と思いながら、アキはPC画面を凝視した。
大きなちゃぶ台の上にノートPCを乗せ、あぐらをかく。
これが彼のスタイルだった。
今どきの若者は椅子に座るのものだろうが、彼は古風を好んだ。

「ちっ、また外資の売り浴びせかよ。いつもこの時間だな」

東京証券所。大引け。取引時間は9時から15時までだ。
東証を実質的に支配しているのは、外国の大手金融機関(投資銀行や証券会社)であり、
全体の取引量の7割を彼らが占めている。そのため、日経平均株価が上がるかどうかは
外資によって決められていると言っても過言ではない。

「アキちゃん。今日は損しなかったの?」

「……株が下がったからって売ったりはしない。
 俺はもう、あの時みたいに馬鹿じゃないからな」

あらすじでも述べたが、彼は取引が下手だった。
取引において感情を交えるのはタブーとされている。
株を毎日眺めてみると分かるが、株価とはよく分からない理由で
上下するために、一度下落を始めたからと焦って売ってしまうと失敗する。
長い目で見れば売った後に上昇をしてしまい
「やっぱり売らなければ良かった」となることが多い。

長期投資が推奨されるのはそのためだ。
ただし、一つの株を長期で持つためには、企業の業績や財務の分析
(ファンダメンタル分析と言う)が必須であり、すなわち最低でも
決算書類が読める程度に力がないと、ただのギャンブルになってしまう。

「アキちゃん。掃除、終わったよ」

「おう。サンキュ」

「はい。今日のお小遣い。大切に使ってね」

「いつも悪いな(今日は一万円か……)」

「ねえねえ。聞きたいことがあるんだけど」

「あ、ああ。なんだ?」

「さっき本棚の奥で見つけたんだけど、これ……なにかな?
 表紙に成人向けって書いてあるんだけど」

アキオの好きな、艦〇コレクションのエロ同人誌だった。
戦艦大和や金剛を始めとした巨乳キャラとビーチで
イチャイチャラブラブする内容の漫画だ。

「また私に内緒で通販で買ったんでしょ……。
 こんなもの買ってたんだ……。私に内緒で。
 あなたには私がいるじゃない。なのに、どうしてなの?
 表紙の女の子、胸が大きいわ……。やっぱり巨乳が好きなんだ……」

「そ、それは違う!! お、俺はこんなもの好きじゃねえ!!
 ったく誰だよ。こんなくだらない漫画を注文した奴は?
 きっと業者が間違えて俺のもとへ届けちまったんだ!!
 そうだ。そうに違いない!!」

アキオはカッターで同人誌をズタズタに引き裂き、さらには
コンロの上であぶってしまう。勢いあまって火傷しそうになったが、
一瞬で消しカスになった。ようやくミスズが泣き止んでくれた。

「俺はミスズのことを愛してるから他の女なんて興味ねえ!!
 だいたい漫画なんてくだらねえよ!! 
 こんなのただの絵じゃねえか!!
 俺にはミスズがいるから漫画なんて必要ないんだよ!!」

「本当に……?」

「本当に本当だ!! 
 俺はミスズと一緒にいられたら、それだけでうれしくてさ。
 もう本当に生きててよかったって思える!!」

「ふふ。うれしいわ。
 でもね、アキちゃん。多分私の気のせいだと思うんだけど、
 先月も同じセリフを聞いた気がするよ? その前も。その前の月も」

「あ……そ、そうだったかな? いやぁ……そのぉ……なんていうか。はは……」

「適当なことを言ってれば、何とかなると思ってるんだね。
 そうよね。私なんて……あなたにとっては便利なお財布だもんね。
 財布女……。私はそれでもよかったのよ。あなたが私を頼ってくれるなら、
 それで十分満たされていた。でも……あなたは私に嘘をついたのよね。
 嘘をついて艦これの漫画を買っていた……。エッチな漫画を……」

ミスズは風呂場へ駆けた。何をするつもりなのかと彼が後を追いかけると、
ミスズはバスタブの中でうずくまり、左の手首に刃物(カミソリ)を当てていた。
俗にいう、リストカットである。

「うわあああ!! バカバカバカっ!! やめんかあぁああ!!」

アキオが刃物を取り上げ、窓から捨ててしまった。

さすがにアキオが本気で怒ると、
ミスズは涼しい顔で「私にはそれしかなかったのよ」と言う。
彼女にとってアキオに頼りにされることが生きがいなのである。
だから生活に必要なお金もあげるし、家事もやってあげる。

アキオにとってミスズとは姉であり母であり、神様のような存在で
なければならなかった。アキオが背が高い女(成人女性でミスズより身長の低い人が
そもそもいないのだが……)や巨乳の女に鼻の下を伸ばしたり、陰で
知らない女と逢っていたりしたら、彼女は世を絶望して自殺してしまう。

「スズちゃん……。さみしい思いをさせちゃってごめんね……。
 俺はずっとスズちゃんのそばにいてあげるからねっ……」

「本当にそう思ってる? 口から出まかせじゃないのよね?」

「ああ。俺は君を愛してる。世界中の誰よりもね」

「ふふ……じゃあ、もっと言ってよ」

「スズちゃん。愛してる。俺は君がいないと生きていけないんだ。
 こんな情けない俺だけど、君が許してくれるなら、
 これからもずっと俺のそばにいてくれないか」

優しく抱きしめながら、耳元でささやく。
やはり女は口で言われると弱いもので、すっかりスズの機嫌は良くなった。

「俺まだ昼食べてないんだよ。よかったら一緒に食べない?
 今日はピザが食べたい気分だから、今から注文しようかなって思ってんだけど」

「うん。いいよ」

「もちろんミスズの分も俺が払ってあげるからな?」

「うん」

スマホで注文しながら彼はこう思った。

(俺が払うとは言ったが、そもそも俺の金じゃねーんだよな)

それでもミスズは心から嬉しそうだった。
アキオは仕事もろくに続かず、株の運用も下手だが、
女を口説くことだけは得意なのでミスズのヒモとしてうまく生活をしていた。

彼は、仮にこの世界に「国際ヒモ男選手権」が存在したら、上位10名に
入賞できるほどの自信があった。毎朝鏡で眺める顔立ちは悪くないと思っている。
うぬぼれかもしれないが、ミスズは「かっこいい」と褒めてくれる。照れ臭かった。

アキオは毎月ミスズにプレゼントをする。
先月(11月)の末には高価なマフラーをネットで取り寄せたし、
たまには外出してミスズの好物を食べさせてあげたりもする。
ミスズはケーキなどの甘味よりもガッツリとしたに肉を好んだ。
パスタよりも油ぎっしりの豚骨ラーメンを好んだ。

とはいえ、ミスズもさすがにラーメン屋や焼き肉屋に行くのも飽きてきた。
それを機敏に察したアキオは、ならばこれならと八丁味噌を使用した

「名古屋、風味噌煮込みうどん」のお店に連れて行った。
大きな煮込みうどんとご飯(お代わり無料)と
漬物が付いて1000円を少し超えた。ミスズは大満足してご飯をお代わりしていた。

彼女は「アキちゃんにご馳走してもらえて、うれしい。
今日もご馳走様でした」と笑う。そのたびにアキは不思議に思っていた。

(だからよ。そもそも俺の金じゃねーんだよ)

繰り返すが、彼はヒモである。
ヒモとは、生活費を交際相手の女性に依存するダメ男のことである。

彼は三流投資家なので、なんと個人資産の全てを
証券口座に入れてしまい、株の取り引きをしていた。
おまけに証券口座の中でも現金余力(プール)はなく、
つねに全額投資(フルインベスト)をしていた。

市場の暴落を懸念して一部の銘柄を空売りしたり、
インバースを購入してヘッジをしているが、
実際は8割の資産で現物株式を購入しており資産配分の比率が悪い。
彼は値上がり(買い方の側)を常に狙っているわけで、
このようなポートフォリオでは一度暴落をしたら耐えられない。

専業投資家を名乗っている割には、空売りの仕方も下手くそだ。
このような運用をするのは三流以下である。売り方(空売り)でもうけを
しっかりと出せるのはヘッジファンド並みの技量がないと難しい。

※空売りやインバース性のETFは、
 通常の株価指数と真逆の値動きをするので、
 下落したときに儲かる仕組みとなっています)

※ヘッジファンド
 お金を最大限に増やすよりも減らさない運用を心掛ける組織。
 金融に対する高度な知識と機敏な取引を必要とするプロ集団を指す。
 マーケットニュートラル、グローバルマクロなどの高度な戦術を使う。
 世界最大のヘッジファンドの創設者、レイ・ダリオを初め有名人多数。

「ミスズ。すまん。ヤマダ電機が買いたいんだ。4万円貸してくれ」

キングオブ・ダメ男。
ヒモ男界のトップランナー・アキオは、
生活費のみならず株を買うお金までミスズからもらっていた。

最初は、これがきっかけだった。

彼は一年間ヤマダ電機の株価を眺めていたが、
2021年の夏ごろから下落を初め、年末になると
株価が400円を切ってしまった。その年の最高値から
20%も下落していたので、株の掲示板では

「さすがにそろそろ底値だろww」
「俺、2000株買ったわww」
「お前らバカだな。まだまだ下がるんだよ」
「うっせー。売り方は黙ってろ」

いつもの低レベルなやり取りが行われていた。
(ちなみに通常国会での与野党の論戦も似たようなレベルである)
アキオは将来の企業業績を見通すための知恵がないので、
掲示板の内容を参考にして株を買っていたのだ。

そんな彼がたまたま上の書き込みを見つけてしまい、
ついに買おうと思ったが、現金がないのである。

証券口座の資産残高はおよそ600万。だが全額投資しているので
今現金化することが難しい。適当に買い集めた株は、先週大幅に下落したために
含み損が総額で40万以上だ。面白いことに持ち株のほぼ全てが下がっており、
逆に空売りした銘柄は値上がりしたために、結果的に含み損となっていた。

「クソがっ!! なんで俺が買うと下がるんだよ!!
 なんで俺が空売りすると逆に上がるんだよ!!
 クソクソクソっ!! くそおおおっ!!
 掲示板を参考にして投資しても全然ダメじゃねえか!!」

「こらっ。アキちゃん。そんなにキーボードを叩いたら壊れちゃうよ。
 5年前にお母さんに無理言って買って
 もらったんだから大切にしないとダメじゃない」

「っせーな!! こちとらイライラしてんだよ!!
 ったく、まじでふざけんなよ。オミクロンだか何だか知らねえが!!
 なんでこんな一斉に下がるんだよ!! マジ使えねえわ!!
 村田製作所なんて買わなければ良かった!! あんのクソ企業が!!」

「でもアキちゃんは、村田製作所はセラミックコンデンサーを作ってる
 素晴らしい会社だって言ってなかった? ううん、言ってたじゃない。
 シャアも世界一だから倒産する心配もない。令和の時代には世界のトップを
 走る製造業だってはっきり言ってた。私覚えてるもん。
 それなのに株価が下がったら村田製作所が嫌いになっちゃうの?」

「うっせえな!! この株価を見ろよ!! マイナス13万だぞ!!
 しかもたった一銘柄だけで!! まじ、なんなのこの企業!!
 初めから空売りしとけばよかったんだ!! 
 こんな会社の株なんて一生上がらないんだからよ!!」

「……落ち着いて。短期取引はダメよ。
 長期投資の人はゆっくり待てば勝てる仕組みなんでしょ。
 レーティング(目標株価)には10500円って書いてあるんだから、
 そこまで持っていればいいのよ。またきっと上がるから、ね?」

「それまで何年かかるんだよ!! ああ!?」

「村田製作所は高いのよ。100株買うのに100万円以上出して買ったんだから、
 すぐに売っちゃうのは気が早いと思うよ……それに、ほら。
 私が毎月お小遣いをあげてるから、生活の方は心配しなくても大丈夫でしょ?」

※東証では通常100株単位で売買をします。100株で一単元とも呼びます。
 最近ではline証券?などが超小額投資として1株からの買い付けを宣伝してますね。
 ちなみに最低でも100株保有しないと株主名簿に記載されないため、
 配当金をもうら権利が得られません。

「ふん。まあ。生活費の方は確かにな……」

「ね? だったら今すぐ売る必要ないのよ。
 それに三月まで持っていたら配当金の権利が確定するんだから」

※配当金とは、例えるなら預金の利息みたいなものです。
 株主に対して決められた月に払われるボーナスです。
 そのためには権利確定日まで株主名簿に名前が記載されている必要があります。

「冷蔵庫の中身が空だから、買い物に行ってくるわね」

「ああ」

「すぐ戻ってくるから。アキちゃん。元気出してね?」

「ああ」


そんなロクデナシの彼だが、株取引とは買い方(買って値上がりを待つ人)
に回っていると、どんなに下手くそでも一年間保持していれば、
どこかで売り時がやってくる。彼の場合のそれは原油のETFだった。

ニュースサイトの記事に、年内に原油が上がると書いてあったから
年初に買ってみたのだ。ドバイの先物価格に連動する商品を気長に
持っていたら、10月にかけてぐんぐんと値が上がっていく。
ついには25万円で買った商品が、33万円で決済された。税引き後の利益が6万を超えた。

 ※株の譲渡益の課税は20%です。
  実際は特別復興税を加えた20.32%が、差し引かれます

「おっしゃああ!! やっぱり俺は天才だ!!」

ちなみに彼は、OPEC(石油輸出国機構)がどんな会合を
しているのかも知らないレベルのド素人だった。

いつもの彼なら、儲かった金額でさらに儲かりそうな株を買っては
損を重ねていくのだが、(いわゆる高値掴み。株で儲かった時は
いったん下落するまで資金を待機させるのが基本)今回は少し違った。

「アキちゃん。この6万円はどうしたの? え? まさか私にくれるの?」 

「こんな少額で恩返しができたとは思ってないが、もらってくれ。
 ミスズにはいつも世話をかけてばっかりで、すまないと思っている。
 たまには俺の儲けで好きな服でも買ってくれよ」

「いらない。うん。だから本当にいらないから、やめて」

「は……? 何を言ってるんだ? 
 俺は君にお金をあげるって言ってるんだぜ?
 どうして素直に受け取ってくれないんだよ」

「アキちゃんこそ、なんのつもりなの。私にお金をあげてどうしたかったの?
 ねえ。ねえねえ? 私にお金を渡すことで自分がお金を稼げてる
 アピールでもしたいの? そういうの不愉快だわ。すごく不愉快」

「はぁ……? まじで意味わかんねえ!! なんで不愉快なんだ? 
 彼氏が金をくれたんだから、ふつうは喜ぶべきところじゃねえの?
 それを不愉快って……俺が株で儲けるのが、そんなにおかしいのかよ!!」

「アキちゃんはねぇ、私にお金をもらっていればいいのよ!!
 アキちゃんは私がいないと生きていけないんだから。
 だって……アキオが自分で生活できるようになったら……。
 私を捨てて出て行っちゃうじゃない……」

「いやいや。ちょっと待ってくれよ。それって被害妄想じゃね?
 俺は別に君を捨てるなんて一言も……」

「アキちゃんがトレードで成功するようになったら、きっと
 私を捨ててしまうんだわ。私にこのアパートに来るなって言い出すのよ。
 お前なんてうっとおしい。うざい。必要ないって」

「んなこと言わねえよ!! 言うわけないだろ!!
 ……ああそうかい!! この話はもう終わりにしようぜ!!
 6万円いらないのはよく分かった!!
 だったら俺が自分のために使うよ。ったく」

アキオはヤマダ電機を100株買うことにした。
それから一週間もしないうちに面白いくらいに株価が上がっていく。
例の平均偏差値23の掲示板では、ヤマダ電機は底打ちして
来年の夏にかけて上昇する見込みが高いとの意見が多数派だった。

だが、やはり彼には現金がない。
他の銘柄は面白いくらいに含み損ばかりで、SBI証券の画面の数字は真っ青である。
これらを損切りして現金化することもできるが、彼は損切りの判断ができない男だった。
なにより、この600万の資産のうち9割がミスズに借りた(実際はもらった)
お金で運用している。一度買った株を簡単に売ってしまったらミスズに怒られてしまう。

そしてタイトルのセリフを言ってしまうのだ。

「ミスズ。すまん。ヤマダ電機が買いたいんだ。4万円貸してくれ」

「いいよわ。何株買いたいの?」

「100株だけだよ……。よ、欲を言えば1000株ほど買いたいんだが」

「まあ、そうなの!! アキちゃんは、本当は1000株欲しいのね?」

「いや待て!! 別に絶対に欲しいってわけじゃねえから。
 ただ言ってみただけだ!!」

「ちょっと待っててね。コンビニのATMでお金おろしてくるから。
 45万くらいあれば足りるかしら?」

「はぁあぁぁぁ!? 45万だって!? 
 いやいやいや、さすがにそれはやり過ぎだ!!」

「私がそうしたいんだから、もらっておけばいいじゃない」

「いや、さすがの俺もそこまで腐ってねえから!!
 もちろんくれるのは嬉しいけど、4万だけでいいよ!!
 むしろ4万にしておこうぜ!! その方がきっといい!!」

「私はお父さんから余るくらいの生活費をもらっているから、
 少しくらいなら崩しても平気なのよ。だから心配しないでね?
 お金に困った時は頼ってくれていいのよ。今までも、
 そしてこれからもアキ君はお姉さんがいないと生きていけないものね?」

その時、アキオは血の気が引いてしまう。
字面だでけでは想像できないことだが、
最後のセリフを言う時のミスズの顔は、悪魔そのものだった。

彼女はいつも自分を頼りにしてほしいと言うが、
その裏にあるのはアキオを金銭的に完全に服従させたいという欲望である。
ミスズは、一度あげると決めたら絶対に引かない。これもおかしな話だった。

アキオは一応借りると言っているのだが、彼女は全額お小遣いとしてあげるつもりだ。
お小遣いとは、文字通りもらった側が自由に使って良いお金のことである。
仮に彼が株を買わなかったとしても許される。最悪馬券を買ったとしても許してくれる。

(ちなみに政府が国家予算として計上するお金も、
 実際は国民が献上したお小遣い、あるいは寄付金と考えて差し支えない。
 なぜなら貧者の救済や国家の発展のために使われることがないからである)

彼はミスズから45万円を本当に受け取った。
実際は受け取ったと言うより、証券口座に入金をしてくれたのだが。
パソコンの電子画面にはその日の内に買い付け余力として反映されており、
アキオは複雑な気持ちになった。

せめてミスズに恩返しができないかと思い、その日の夜はいつもよりも
愛情をこめて彼女を抱いてあげた。といっても彼は幼児体形のミスズの身体には
とっくに飽きていて、頭の中で艦これのお姉さんキャラを思い浮かべながら頑張った。
決して彼女のことが嫌いではないのだが、このぺったんこな胸が
魔法の力で膨らまないのかなぁと思ってしまうのは男なら無理もないことだ。

それからひと月が経つ頃、

「う……うあぁ……嘘だろ……信じて買った株が、こんなに下がるなんて……」

電子画面にはヤマダ電機の含み損が、マイナス37万と表示されていた。
彼は掲示板を参考にして一括で1000株購入したのだが、
そこから一気に株価が下落したのだ。これも素人の典型例だった。

同一銘柄を1000株単位で買うとしたら、時間を分散して
一週間ごとに100株ずつ買うなどしてリスクを減らすのが基本だ。
彼は同じ日に全力買いしたわけだが、それはその日以降に確実に値が上がると
信じてやる行為であり、信用買い(信用取引の事)と似たようなものである。

ヤマダ電機の株価が上昇の兆しを見せたのは「機関投資家の騙し上げ」であり、
そこで調子に乗って一気に買ってしまうと、奈落の底へ叩き落される。

ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者レイ・ダリオはこう言った。
「個人投資家が機関投資家相手に戦うのは、
 ポーカーの世界王者に挑むのと同じくらい無謀なこと」

同組織は、米国最大の年金基金(カルパース)からも財産を信託されており、
運用資産が16兆円を超える世界最大のヘッジファンドである。

レイ・ダリオは、あのリーマンショックの到来を事前に予測し、
年利12%を達成したことで世界を驚愕させた。
(年利とは、投資元本に対して、年間で何%資産が増えたかの指標)
リーマン時は多くのファンドが20%以上の損失を出していたのだ。

『ピュア・アルファ』『オールウェザー(全天候)』
と名付けられたファンドが有名だ。

レイ・ダリオは、金融市場では匹敵する者のいないほどの大賢者である。
通称「ヘッジファンドの帝王」 岸田君に代わって日本の総理をやってもらいたい。

証券取引(ポーカー)で精神的なダメージを受けたアキオは、
握った拳を力なく畳の上に、何度も何度も振り落とした。
ぽたぽたと熱い涙がこぼれ落ちる。

「ちくしょう……ちくしょう……あの掲示板の奴ら、底値だなんて
 適当なこと言いやがって……あんな奴らを信じていた当時の
 自分をぶん殴ってやりたい……うあぁあぁ。どうしてこんなことに……」

「アキ君。大丈夫よ。大丈夫だから。株は売らなければ損にはならないんだから。
 村田製作所みたいにずっと持ってれば、いつかは上がるわよ」

「うっ……すまないミスズぅ……本当にすまない……俺なんて生まれてこない方が
 よかったんだ。人に迷惑をかけてばっかりで……生きてる価値なんてないんだ……」

背筋を伸ばして正座しているミスズの膝の上に顔を乗せて、
本気で泣きべそをかいているアキ。ミスズは笑いをこらえるのに必至だったが、
表向きは母のように慈愛に満ちた顔で彼の頭をなでていた。

「ミスズ。今日までお世話をしてくれてありがとうな。俺は午後の取引で
 全資産を売って君に現金を返すよ。それから首をつって死のうと思う。
 こんなクズと今まで一緒にいてくれてありがとう」

「アキちゃんったら、株が急落するたびに同じこと言ってるじゃない。
 私があげたお金のことなんて気にしなくていいのよ。株は買ったらすぐ下がる
 ものなんだから。ヤマダ電機は配当利回りが4%を超えてる優良銘柄よ。
 あとで優待券が来たら一緒に買い物に行きましょう。アキちゃんと買い物。今から楽しみね」

「こんなクズの相手をしてくれるのはミスズだけだ……。
 愛してるよミスズ。これからも俺を見捨てないでくれぇ」

「うふふ。私が可愛いアキちゃんを見捨てるわけないでしょ?」

残酷なことに、ミスズにとって彼の買った株式が下落するのが楽しみで仕方なかった。
なぜなら彼が株で失敗するほどミスズへの依存度が高まるからだ。

彼は馬鹿なので手持ちの現金は全額株の買い付けに使ってしまう。
東証とは、外資によって操作されている市場であり、空売りの比率が高い。
細かい説明は専門的になるので省略するが、
筆者の経験上、いつどのタイミングで日本株を買ったとしても、
一週間以内に95%以上の確率で買値より下落する。

『そういうものだと理解していれば混乱はしない』
『女に振られるのが分かっていて告白すれば、
 振られたとしてもダメージが少ないのと同じだ』

ほとんどの投資家が儲からない理由は、少し下がったら顔を真っ赤にして怒るか、
あるいは顔が青ざめてしまい、即売却するからだ。そこは売り時ではない。

ここが最も重要なポイントで、しっかりとファンダメンタル分析と
市場の動向、マクロ経済の分析をしたうえで買い付けをしたならば、
余程のことがない限りは1年くらいの保有期間の中で株価が上昇に転じる。
短期的に売買するレンジとは、その中のどこかだ。

ちなみに筆者の定義では、1年以上10年未満の保有であれば長期の定義に入る。
それ以上の期間は超長期投資。一番楽に儲かるのがNY市場に対する超長期投資
(株価指数のETFの積み立て。具体的にはVOOを買うだけ)なのは言うまでもない。

前作「令和10年シリーズ」の第一部で美雪の父が言っていた言葉を思い出してほしい。

『日本株はね、一度買ったらよく寝ちゃうといいよ。
 それで買ったことを忘れちゃう。あとで日経が最高値更新とか
 NHKが報じるようになったら、改めて自分の株を確認すればいい。
 おっ、こんなに上がってるんだ。じゃあ売ろうってね』

         ※ちなみに筆者の作品の登場人物ですが、ほとんどが
          筆者が過去に会ったことのある人物をモデルとしています。    

ミスズは悪魔的な才能で、株で意図的に損させる方法を学んでいた。
彼女はアキオが下手に得をし過ぎないように不安を煽ることを口にする。
例えば、株が単に株式の需給(信用買いの残高)によって下がっている状態を
企業の業績によるものと錯覚させ、売却させるのだ。

アキオは感情を交えて取引をするので、冷静なミスズが
無表情になって、まだまだ株価が下落する。今売らないと
最後は半値になると煽ると、アキオはもう思考停止して全株を売却してしまう。
彼女はその手法を使ってアキオの主力銘柄であるホンダ自動車で売却損を発生させた。

その時のホンダが下がっていた理由は、半導体不足と海外の工場が
災害で被災したために減産するためであり、これは短期的には減益要因となるが、
高配当銘柄で財務体質が鉄壁なホンダを売る理由にはならない。

マクロな視点ではコウダイ集団の問題でチャイナと香港ハンセン市場から
大量に資金が流出しており、そのあおりを受けて東証の出来高の多い銘柄が
売られてしまっていただけだった。これは、値上がりするまで
待っていられる投資家の視点からしたら買い時である。

その証拠として、彼が売却してから半年後にはホンダの株価は2割も上昇していた。
さらに彼は配当権利確定前に300株売却してしまったので受け取り配当金もゼロ。
仮に半年待ってから決済した場合とで10万円以上の利益の差が出ていた。

「もっと頼ってくれていいのよ。いっそお財布代わりだと思ってくれていいのよ」

先ほどのホンダの例だが、実は簡単に儲ける方法がある。
買い増しをするのだ。

彼は300株保有しており元本割れして血の気が引いたのだが、
お財布代わりのミスズに頭を下げてさらに投資資金を得て、
300株の買い増し(100万程度かかるが)しておく。
半年ほど待って上昇相場に転じた場合は、計600株分の利益が狙える。
この場合は100株の保有に比べて、株価の変動率が六倍に増えることを意味する。

これを一度に売却するのではなくて、100株ずつ日を分けて
売ることによって安値で売るリスクを避けることができる。
さらに上昇すると期待するなら一部は持ったままにしてもいい。
下がったらまた買い増しもできる。

「株は悲観で買って楽観で売れ」とは、まさにこのことで、
半導体不足はいずれ解消されるし、自然災害による工場の活動停止も
一時的なもので10年も続くわけではない。少し先の見える人間ならば、
「安くなってくれてありがとう」とでも言いたくなる。

一方で常に利益を出し続けなければならないプロ連中はそうも言っていられず、
向こう三か月先まで利益の出なさそうな銘柄はすぐに売却する。ただし
それは億単位の資産を扱うファンドの視点であり、個人投資家が
同じ土俵で戦おうと思ってはいけない。彼らがぶん投げた分を静かに拾えばいいのだ。

仮に一年以上ホンダの株価が低迷したとしても、その間に配当金が二度も入る。
株式は会計上は資産なのだ。表面上の株価は特に気にする必要はなく、
たとえマイナス100万だったとしても売らなければ損することはない。
ホンダの場合は財務基盤がしっかりしているので配当金を払う余裕がある。

一般的な定期預金(SMBCでは300万未満で0.002%)に比べたら
配当利回りが3%を超えるホンダは、お金を生み出す源泉としては1500倍の価値がある。

このように配当によってキャッシュ・イン・フローが得られる株は、
間違いなく資産なのである。多くの投資家は、このキャッシュを生み出す前に、
怖くなって株を売ってしまう。だから投資の成績がマイナスになるのだ。

なぜ少し下がったら売るのか? 
それはなぜこの株式を買ったのか、その理由が不明瞭だからだ。
きちんと自分で分析をして買った銘柄ならば、安心して保持できる。
特に売る理由などないのだから。

ただし、急落や暴落の原因が、
カルロスゴーン・ショックに代表される経営者リスクの場合は即売りである。
米中対立のような政治リスクの場合も長期下落が続くので真剣に考えた方がいい。

世界一の投資家、バフェットはこう言っていた。

『株価と妻の顔は、あまり見ない方がいい』

実は、彼の部屋にあるバフェットの格言集の本を熟読していたのはミスズだった。
ミスズは暗記力に自信があるので本を繰り返し読んでは、
主な内容を空で言えるほど覚えていた。

大好きな彼があまりにも株価をにらみながら頭を抱えているのを見て
「あまり考えすぎても体に悪いわよ。ねえ。たまには公園でも散歩しない?
 きっと気分転換になるわ。ねえ、そうしましょうよ?」

と言うが、彼はむきになって否定した。八つ当たりもした。
ミスズに暴力をふるうこともあった。それから数日もすると
彼は泣いて謝ってくるので、ミスズは許してあげた。

「ごめんなミスズ。もう二度と暴力なんて振るわない。いっそ株も辞めちまうよ。
 こんなくだらないことに熱中してるから俺は気が狂っちまうんだ。
 すまなかった。これからは真面目に働くよ」

「途中で投げ出すのはよくないわ。
 誰だって初めから株の取り引きがうまいわけじゃないと思うの。
 今は練習期間だと思って頑張ってみて。きっと上手になれるわ。
 それに働くにしてもどこで働くつもりなの?
 令和12年の日本はひどいわよ」

令和12年ではスタグフレーションが進行中だ。
(円安が加速したことによる輸入高、さらに国際資源価格による)
物価高と租税(政府が際限なく増税を行った場合とする)
を加味し、実質で換算した埼玉県の最低時給が400円となっていた。

仮に彼が8時間働いても単純計算で3200円にしかならない。
実際の労働では休憩時間は労働時間に含まれないため、もっと少ないだろう。

また労働法も改正され、一日の就業時間が12時間を超えないと
残業代(割増賃金)が発生しない。また日本人は休み過ぎだとして
週六日の労働を基本としていた。日曜出勤も推奨されている。

アキオは5年近く無職だったために今から正社員の仕事を探すことは
困難であり、まず社会復帰するためにはアルバイトや
派遣から始めるのが妥当だろう。すると上記の地獄となる。

地元のハロワや求職サイトで募集している正社員や職員の仕事は、
一日の労働時間が12時間を超え、
給料を自給で換算すると550円と派遣と大差がない。
また社員の場合は残業の強制、社則に反した場合の拷問も発生する。

令和12年では憲法や法律が根本から改正され、怠惰な社員は
会社ごとの規則(法律)に従って拷問しても良いことになっていた。
また定年制が廃止され、最大で105歳までの就労が推奨されていた。

「まさかとは思うけど、私から逃げようとしてるわけじゃないわよね?
 もちろん違うわよね? うん。分かってるわ。だってアキちゃんは
 私のお金がないと生きていけないもの。ね? そうよね?
 だって時給400円で働くよりは原油を買った方が儲かるわ。
 アキちゃんは今は破損してばっかりだけど、少しずつ上達してる。
 頑張れば、いつかきっとプロのトレーダーになれるよ」

「で、でも俺……いつまでも君に迷惑をかけ続けるのも。
 俺は最初はヒモも悪くないと思っていた。でも罪の意識が……。
 人からもらったお金を溶かしちまうのって、すごく気分が悪いんだ。
 死にたくなるんだ。まるで俺は生きてる価値がないって言われてるみたいな気がしてさ」

「はい。お小遣いあげる。これで好きな物でも買って元気出して」

「え……。二万円も。どうして俺にお金をくれるの?」

「辛い時こそ人生を楽しまないと
 美味しいものでも食べて元気出しましょう。
 これからどこかへ食べに行かない?
 外出するのが面倒だったら何か頼んでもいいわね」

「ありがとうミスズ。愛してるよ。本当に、愛してる。
 君がいてくれなかったら、俺は今頃自殺していたと思う」

ミスズの膝の上で泣き崩れるアキオ。
そんな彼の頭をなでながら、ミスズは暗い笑みを浮かべていた。

「丸亀製麺でお昼を食べましょう。あっ、道中でテロに気を付けてね」

アキオは、無性にうどんが食べたい気分だっので丸亀に行った。
支払うのはアキオだが、例によって彼女の金で食べるわけなので遠慮してしまい、
一番安い「かけうどん」と野菜のかき揚げを買って終わりにしようと思ったが、

「それだけでいいの? ちゃんと栄養付けなさい」
 とイカやエビのてんぷらを始めとしたサイドメニューを満載にされた。

お昼を安値で済ませるサラリーマンがチラホラいる中で、アキオのお盆に乗せられた
メニューは高級料理と言えた。皮肉なことに令和12年でこれは誇張ではなく、
コロナ以降のスタフレが進行した日本国では、丸亀製麺でうどんのみならず、
天ぷらを注文できる人は「セレブ」と呼ばれた。

レストランの外には乞食になってしまった老人が日中からはびこっており、
来店する客に手を差し伸べて「寄付金」を求める。

「お金を上げちゃダメ」

とスズは言う。

アキオは、はっきり言って彼らの姿に同情していた。

令和12年では日本の人口の4人に一人が老人となった。
コロナが始まってからの八年間で、若者(現在の若者の定義は50歳まで)の自殺者数が
150万人を超えてしまった。特にひどいのが、ひとり親世帯の人間と、その子供である。
貧困にあえぐだけでなく、学校でもSNSを利用したいじめが横行したせいで
子供の自殺率がここ数年で12倍に拡大してしまった。

国が貧しくなると、子供の心も悪に染まり、いじめの比率が上がるのは当然だ。
親にお小遣いをもらえない子供たちは、近所のお店の襲撃、強盗、窃盗、殺害など
やりたい放題やっていた。また大人たちも生活に必要なものを手に入れるために
レジを通さずに商品を持ち去る(スリ)ことは常識である。

途中で店員に発見された場合は、殴るなどして逃走を図るのが全国で横行していた。
レジで会計をする奴は負け組だとの指摘もある。

スタグフレーションと自民党の政治が進んだ結果、

「略奪」と「暴行」が日本の消費社会の基本となっていた。
これのどこが消費なのか。読者はそう疑問に思うかもしれないが、
近未来を描いたこの小説ではそんな設定になっている。
この内容は、前作「令和10年シリーズ」と共通である。

「でもあの人たちだって好きで乞食になったわけじゃないんだ。
 少しくらいお金を分けてあげてもいいんじゃないのか?」

「貧乏な人は一度お金をもらったら調子に乗って
 次はもっとたくさん要求してくるのよ。一度めぐんでしまったら負け。
 そもそもアキちゃんは人にお金をあげられるほどお金を稼いでいるの? 
 どうなの? 先月の売り上げはどうだったの。ちゃんとお金稼げたの?」

「そ、それは……」

「アキちゃんは余計なことは考えなくていいの。
 自分のお金を増やすことだけ考えてなさい。
 私はアキちゃんが幸せになってほしいと思うから
 お小遣いを上げてるんだよ。ねえねえ。私の気持ち、わかるでしょ?」

「ああ……わかるよ」

「だったら、ちゃんと頑張りなさい」

「はい。すみません……」

いつも、こうだった。

ミスズは貧者に対して厳しいのだ。

アキオには無制限にお小遣いをあげる一方で寄付はしない。
寄付の方法も様々で、小さなものではコンビニの募金箱、NPOなどの支援団体から、
市役所の市民課の窓口で寄付(児童福祉施設などに送られる)する方法もある。

(俺ばっかり良い思いをして、あの人たちは道端の草を食べて生きてる……。
 こんなことが許されるのか。政治家の奴らはうまい者ばっかり食べて
 住居費すら国民が負担してるのに、乞食の人たちは、レストランの残飯をあさる。
 田舎では犬や猫を食べ、農家の野菜を盗んでいるそうだ……)

こんな時代を生きているのかと思うと、
美味しいはずの讃岐うどんがちっとも味がしない。

その日の夜だった。

アキオはネットでひどいニュースを見てしまった。
生活に行き詰まったやもめ(バツイチの女性)が、子供を抱きながら
青酸カリを飲んで自殺したのだ。4歳になる娘は事前に首を絞めて殺していた。

令和12年では政府の命令で「貧困は自己責任」とされていて、
市役所の窓口で生活保護を申請して断られた場合は、
職員から『致死量の青酸カリ』が支給される。

彼女は、職場の人間関係のストレスで「うつ」になり、
少しの間休職したいので、その間だけでも生保をもらいたいと願ったが、
受け入れてもらえなかった。その結果、人生に絶望して死んでしまった。

「それがどうしたの?」

とミスズは冷たく言う。アキオは少しカチンときたが、黙っていた。

「去年の令和11年では年間自殺者が30万人を超えていたんだから、
 自殺する人なんてめずらしくないでしょ。生きてるより死んだほうが楽だと
 思うから死んだんじゃないの。むしろ賢明な判断をしたと褒めてあげるわ。
 収容所行きになって奴隷として過ごすよりは死ぬべきよ。
 生まれた国を間違えたと思って諦めるしかないの」

「収容所か……」

「うん。収容所」

「うちの国って、収容所の囚人ってどれくらいるのかな?」

「年によって変動するから正確な数字は分かりにくいんだけど、
 総務省の統計によると少なくとも40万人以上はいるそうね」

ここでタイトルコールを回収する。

『Go to 収容所 キャンペーン、実施中☆(令和12年)』

とは令和7年以降に始まった制度である。

まず政治犯(自民党以外の国会議員)を初め、反自民党的な思想を
持つと思われる全ての国民が強制収容所送りになった。収容所とは
読んで字のごとく囚人に強制労働をさせるための施設である。

土木作業の比率が高い旧ソ連や北朝鮮とは違い、
自民党の収容所とは主に工場労働を指していた。
工場内の施設の中に閉じ込められて24時間体制の監視の中、
生産活動に従事させられる。

一日の労働時間は16時間の無償労働。
食料は一日あたり食パン一枚と野菜スープのみ。
夜は粗末なベッドにすし詰めで寝させられる。
シャワーを浴びれるのは三日に一回。

実は、これは現実世界の日本でも存在していた。
『入管法改正、外国人の特定技能制度』を覚えているだろうか?
分かりやすく言うと、現代版の『外人奴隷制度』である。

通常国会の厚生労働委員会に提出された、
2018年までのデータによると、こんな例があった。

工場労働者が勤務中にトイレに行ったら、罰金。
自給が110円。あるいは220円で長時間のカキ漁(広島湾)を行わせる。
安全綱を付けずに建築現場での高所作業をさせて落下させた。
日本語の指示が理解できず、工場のプレス機に頭部や腕を挟まれた。
寝泊まりする場所は8畳間の部屋に10人をすし詰めにする。

前作でも散々語った内容で恐縮だが、
寮から脱走した外人の数が7000人越え。
指三本レベルの切断の労働者が380人。なおこれは、
かろうじてケガと認定された数にすぎず、使用者側が事実を隠ぺいした場合は
(もちろん労災認定したくないから自己責任だと言い張るのだろうが)
公表されず統計にも含まれない。つまり労災は軽くこの三倍は発生しただろう。

日本政府は中国のウイグル人強制労働問題(ユニクロ)については批判するが、
自分達も堂々と奴隷制度を作っているではないか。大いに矛盾している。

小説の設定に戻るが、コロナ化で国境封鎖されたことによって外人奴隷の
入国がしばらく制限されていた。そのため自民党は不足する単純作業労働者
(本来の制度は一次産業従事者を大募集していた)
を国内の不穏分子(政治犯)で補うことにしたのだ。

令和12年では自民党以外の党はすべて解散されており、
二度と選挙が行われることがない。
実はミスズが一番恐れていたのは秘密警察に逮捕されることだった。

丸亀製麺での楽しい?食事の最中でも、店内に仕掛けられた監視カメラと
盗聴器によって市民の動向は政府(行政組織)に監視されている。

自民党は言った。「貧困は自己責任」だと。すなわち、これは拡大解釈すれば
レストランの駐車場で布団かぶって寝転がっている貧困者に「寄付」することも、
「反自民党分子」と見なされかねない。そうなったら、「収容所行き」となる。

令和12年では、自民党に逆らう者に人権はない。
自民党こそが絶対の神なのだ。古くから権力者に逆らうことを
良しとしない日本国民を支配するのに、全体主義ほど便利な思想はなかった。

(だけどよぉ……。そんなのってねえよ。ねえよ……)

アキオが拳を握るが、余計なことは口にできない。

ヤマダ電機の駐車場にいる若い女性の乞食に、お金持ちらしい、
小さな女の子がコンビニのおにぎりを渡しているのを見たことがあった。
乞食の人は何度も頭下げておにぎりを頬張ったが、
すぐにゲホゲホと咳き込んで食べたものを吐いてしまった。

一週間以上まともに食べてない人は内臓機能が弱まっており、
級に食べてしまうと胃がびっくりしてもどしてしまうのだ。

小さな女の子は「きたなーい。ばっちー。ゲロるなら、あげなきゃよかったぁ」
と笑いながら駆けて行った。幼稚園児と思われる娘である。
悪気はないのだろう。しかしその言葉がどれだけ彼女を傷つけたのか。

その後、すぐに秘密警察がやって来て乞食の女性はどこかへ連れ去られてしまった。
火葬場で処分されたが、あるいは収容所に送られたのか。

「アキオくん」

「は? あ、ああ……。なに?」

「私、言ったわよね? 余計なことは考えちゃだめって」

「ごめん」

「分かってないようだから、私がこの世の真実を教えてあげる。
 いい? よく聞きなさい。この世界ではね、自民党こそが正しいのよ。
 私達国民は、自民党に管理運営されて生存することが許される。
 私のお父さんは生まれた時から自民党員だったから生活が保障されているし、
 私たち家族は一度も飢えることなく今日まで暮らすことができた」

「あ、ああ」

「貧しい人は自己責任。あの人たちが自分から進んでああなったんだから、
 同情の余地はないの。だって日本では、たとえ貧しくても努力すれば上を目指せる
 システムになっているのよ。努力もしないでお金を恵んでもらおうだなんて呆れちゃうわ。
 そういうのって負け組の発想じゃない? それ以前にね、貧者救済は
 自民党の偉い人たちのお仕事。だからアキオが考えることじゃないのよ。
 アキオはただの市民じゃない。あなたは自分が政治の立場に立って
 物を考えられるほど立派な人間だったのかな。それは違うわよね?」

「すみません……。俺みたいなロクデナシが出過ぎたことをしました」

「本当に反省してる? 反省してるんだったら今すぐここで私に誓ってもらうけど。
 今後貧しい人を見かけたとしても、絶対に同情なんかしないって。
 ほら、どうなの。約束できる? ちゃんと私の目を見て誓って」

「誓います。俺は二度と貧乏人に同情しません」

「本当に分かってるんでしょうね!!
 あんまり私を怒らせないでほしいものだわ!!」

「すみません。すみません……。俺は絶対に自民党様には逆らいません。
 貧困は自己責任です。あいつらが飢え死にしようと俺には関係ありません」

「そうよ。それでいいの。まったくもう!!
 アキがいつまでもウダウダしてるからムカついたわ。
 あんまり私をイライラさせないでよね!!」

「ごめん……」

資本主義の世界では「金」こそがすべてである。
アキオは改めて自分の生殺与奪の権利を握っているのが自分の彼女なのだと
思い知らされ、涙を流さずにはいられなかった。

ミスズの苗字は雨宮と言って、江戸時代以前より続いている家だった。
彼女の家系は代々政治家を輩出しており、その気になればミスズも
衆議院議員にコネで採用されることも可能だったのだが、彼女自身は
政治家になることも、またお嬢様として一流企業に勤めることも良しとしなかった。

ミスズは、金持ちのお嬢様に一定数存在する「庶民派」の人間だった。
大学受験も自分の力でやったし、卒業後も自分で選んだ民間企業に勤めた。
金持ちと思われることを嫌い、親の権力にしがみつくことを嫌い、
庶民の生活を好むことから、アキオと同じ安いアパートで独り暮らしをしている。

つまり二人はわざわざ別々の部屋を借りていて、
ほぼ毎日ミスズがアキオの部屋にお邪魔しているのだ。

同棲に限りなく近い。
ミスズの父には表向き一人暮らしをしていると説明しているのでこうなっている。
娘が大好きな父親が嫉妬するのといけないので交際は秘密にしているのだ。

(ミスズの設定は、前作令和10年シリーズの「坂上瞳」にそっくりである。
 筆者の発想力が底をついてしまったため、こうなってしまった。反省はしてない)

ちなみに二人の馴れ初めは、たまたま同じコンビニで働いた時期があったからだ。

あらすじで描いた内容と被るが、アキオは新卒(大卒)で入った保険会社を
すぐに辞め、再就職を探していた。就職先がなかなか決まらないので、
繋ぎのつもりでコンビニバイトをしていた。

鬱で苦しんでいたミスズも、コンビニの昼から夕方のシフトで働いていた。
そこで意気投合した二人が軽い気持ちで交際を始めたのだが、
やがてお互いが依存しあうドロドロした関係になってしまう。

(ちょっと言い過ぎちゃった……)

ミスズは冷静になって後悔した。彼女は本当に、いつもこうなのだ。

「アキちゃんごめんね? お説教はもう終わりにしてあげるから。
 はいハンカチ。これで涙ふいて。よしよし。もう泣かなくていいのよ」

「前から気になってたんだけど、ミスズは投資はしないの?」

タイトルのアキオの問いに対し、ミスズは涼しい顔でこう答えた。

「株を買うのは怖いじゃない」

「まあ確かに怖いね」

「買った後に株価が下がったら落ち込むわよね?」

「落ち込むね」

「心が不健康になるわ」

「なるだろうね。俺がいい例だ」

「だったら、やらなくていいと思うの」

「でも金持ちなのに、ただ預貯金しておくのはもったいなくない?
 俺よりミスズの方が相場に詳しそうだから向いてるんじゃないか?」

「私は生活には困ってないし? これでも一応働いてるから多少の収入はあるのよ。
 だからね、一か八かの賭けに出る必要はないのよ」

「……実際お金はどれくらい持ってんの?
 俺は家賃とか光熱費までミスズに出してもらってるから
 完全にヒモだけどさ、実際ミスズがいくら持ってるのかずっと気になってた」

「私の場合はカードだから」

「カード? クレジットカード?」

「そう。クレジットカード」

「どのくらい使えるカードなの? 限度額とかは?」

「知らない」

「はい?」

「いつも残高が500万になってるの。
 何度おろしてもすぐにお父さんが補填してくれるから、すぐ500万に戻るの。
 私はこのカードを自由に使っていいと言われてるのね。
 生活に困らないようにって意味なんだろうけど、どれだけ
 使ってもお父さんから文句言われることないから、好きなだけ使ってる」

「なんじゃそりゃ……」

令和12年では、自民党の国会議員の平均年収は引き上げられて
7500万とされている。独裁政権のため議員の入れ替えもなく、
勤続年数の長いものほどお金が溜まる仕組みとなっている。

自民党議員は末端の人でさえ株を買いまくるなどして
さらに資産を増やし、30代の若い議員で資産が数百億円の人もいるほどだ。

一方で消費税率は『22%』まで上昇していたのだから、ふざけたものだ。

(自民党の最終目標は、消費税率34%。そうしたら議員の家計レベルの税支出が
 増えるために、それを補う目的で議員の年収はさらに引き上げられ、
 最終的には一人当たりの給料が1億1千万程度に落ち着く。なお、
 それでも末端の国民の実質賃金が一円も上がらないことは言うまでもない)

「カードは予備の分も渡されてるし、
 スマホの電子決済サービスもお父さんの口座と繋がっている。
 あと金地金(きんじがね)も渡されているわ。
 よく覚えてないけど、あの時の時価だったら300万円分の価値だったと思う」

「300万!! 金持ちすげえ!! 現物でゴールドを持ってんの!?」

「いらないから家に置いてきた」

「家って!? 久喜市にある母方の実家にか!?」

「うん。お母さんにお願いして地下の金庫の中に置いてきた。
 ゴールドを持っていると、お金の匂いがするから強盗に入られるんだよ。
 かといって貸金庫サービスを使ったら手数料を払うのがもったいないじゃない。
 そう考えるとめんどくさいから、いっそ持たなくていいかなって」

「やべえ……金持ちやべえ。俺みたいな貧乏人とは住んでる世界が違うわ」

「アキちゃんはこれからも私が支えてあげるからね。
 確かお父さんは700億円くらい資産があったと思うから、
 たとえ議員を首になったとしても一生遊んで暮らせるわよ」

ここでアキオは衝撃を受けて言葉が止まってしまった。
ミスズの家は金持ちだとは思っていたが、まさかここまでとは。

彼はヒモの割には彼女のお金のことを心配していた。すでに数百万円も
お小遣いとしてもらっている(世間一般的な小遣いのレベルを超えているが……)
いくらミスズがお金持ちだとしても、額が額だけに、
彼女が将来本当にお金に困った時に全額返せと言われたら、文字通り破産だ。

しかし娘に甘い父親が700億も保有している以上、
もはや500万円を超える小遣いなど
端数みたいなものだと知り、むしろ安心した。

「あ、ありがと。愛してる。実はまだ気になることがあるんだけど」

「スリーサイズだったら教えないよ?」

「そんなんじゃないよ。つーかもう裸見てるじゃん。
 俺が気になったのはその……ミスズは大金持ちの割には
 庶民ぽいって言うか、例えばランチするのは千円以内って
 いつも俺に言うじゃん。高級料理には興味ないのかなって思ってさ」

「何を言ってるの。ファミレスのご飯だって十分美味しいじゃない」

「いや、確かにそうだけどさ……」

「アキちゃんは勘違いしているようだけど、雨宮家は決して下品な
 成金ではないのよ。先祖代々の資産を受け継いでいる家だからこそ、
 お金を増やすことよりも減らさないことを第一に考えて
 質素に暮らしているの。確かに私だってたまには贅沢がしたい時もあるけど、
 普段の生活は質素でいいのよ。最低限の生活が送れたらそれで幸せじゃない?」

「それはそうだね。今は貧乏で一日一食しか食べられない人もたくさんいる」

「そうそう。お金を持っていることが幸せなんじゃないの。
 明日も明後日も、食べていける。お金があるから生きられる。
 生きていることが一番の幸せなのよ。それに安くても美味しい料理は
 たくさんあるわ。日本のレストランは安いのに世界一美味しいのよ」

「ミスズは本当にグルメだよね。食べることが一番の趣味なんだね」

「それはもう!! 食べることは人生における最大の喜びよ!!」

ミスズは身長が小学生並(139センチ)だが、よく食べる方だった。
ラーメンなどの油物を好むから男性と食味が合う。
むしろ栄養価が高くない食材は、お腹がいっぱいにならないので嫌いだった。

野菜はあまり食べないからバランスは良くない。
中学生の頃から身長コンプレックスに悩まされ続け、
運動部の男子のように栄養のあるものを食べて大きくなろうと努力したことが
きっかけだった。30歳になってからは牛乳を飲むのは
さすがに無駄な努力だと察して止めた。

彼女がアキオに口癖のように言っていたのは
「気分が落ち込んだ時は食べなさい」だった。
美味しいものを食べてお腹がいっぱいになれば、
生存の欲求が満たされて良い考えが浮かんでくる。

それと彼女は散歩が趣味だった。たくさん食べた後は、たくさん歩いた。
夏場などはアキオを連れて夜の街を一時間も散歩することもあった。

ミスズは業務スーパーに通うのが好きで、外国の食材
(韓国製ラーメン、タイの激辛スープ、ブラジル産のソーセージなど)
を買ってきては調理して食べさせてくれた。

特にジューシーでスパイスの利いたブラジル産のソーセージやウインナーは
安いわりに絶品だった。フライパンの上で弱火でじっくりと焼くのが
コツなのだが、ミスズは火の加減の仕方も美味かった。

彼女はレシートを持ち帰り、
いちいち家計簿をつけて節約すること美徳としていた。

本人は一流の主婦を気取っているが、そもそも二人は結婚してないし、
子もいないのでアキオには少し滑稽に感じられた。子がいない理由は、
ふたりの間で子供を作ろうという話をしたことがないからだ。
その理由はアキオには分からない。また結婚しようとも言われたことがない。

このまま一生恋人のままの関係が続くのか。
いっそこのこと彼女の結婚観を訊いてみようとかと思ったが、おしゃべりな
ミスズはヤオコーの冷凍食品の話で盛り上がってしまっているため、
ひたすら聞き役に回ることにした。

34個入りの冷凍のたこ焼きが安くてお勧めらしい。
自然解凍した後レンジでチンして、たっぷりの鰹節と
ソース、そしてタバスコを適量入れると絶品だそうだ。

スマホのアプリでヤオコーの安売りのチラシを見せてくれるが、
アキオはそこまで食に興味がない。アキオは食べることよりも
アニメや漫画の美少女の同人誌を集めることの方が好きだったからだ。

「あっ、そういえばこの前、仕事帰りに近所のしまむらに寄ったのよ。
 安いんだけど若い子向けのおしゃれなデザインのセーターがあってね」

今度はファッションセンター島村の話になってしまった。
ミスズはお金持ちなのにユニクロやしまむらで服を買うのを好む。
今着てる服やスカートもそれぞれ1500円くらいで揃えたものだ。
靴も安物だ。髪の毛も飾り気がなく、毛先にくせのかかった茶髪を
シンプルに肩に垂らしている。髪は長く腰にまで達するほどだ。

令和12年では金持ちらしい服装をして街を歩く人は、一週間以内に
9割の人が暴漢(女性や老人含む)に襲われるとされている。
そのため地味な服を着ることは賢明なのだが、
別に防犯面のことではなくて彼女は本当に
ファッションにお金をかけるつもりがなかった。

「服を買えるだけ幸せじゃない。それに安物はその分たくさん買えるし、
 すぐボロボロになってもシーズンごとに買い替えて
 コレクション感覚で楽しめるわ」

そうは言うが、実は20万円もする高級腕時計やダイヤのネックレスを
持っていたり、ワンセットで12万円もする化粧品をこっそり使っていたりと、
全くお金を使わないわけではない。金持ちのパーティに参加するための
高いドレスもしっかりと持っている。ただ普段は出番がないだけだ。

さらに国内の温泉巡りや史跡巡りが趣味なのだが、
コロナ化では医療従事者に迷惑をかけないために自粛するべし、
との信念を持っているので、ランチや買い出し以外で外出はしないことにしている。

「何よりしまむらは財務体質が素晴らしい企業なのよ。
 決算書をよく読んで自己資本比率を見て見なさい。
 コロナ化では紙面やアプリでの広告収入にすごく力を入れてて、
 マンボウ化でも売り上げをほとんど落とさずに不景気を乗り切る知恵があったのよ。
 円安による原材料高も地道な努力を重ねた売上増によって相殺し、
 スタフレ化の地獄の日本では庶民の味方になり……」

アキオはよくしまむらの株(東証一部)を買うように勧められていたが、
100株で90万円ほどするので遠慮していた。そのくらいのお金な
あげるわよとも言われるが、どちらかというと人口減少化の日本で商売を
している企業よりは、ホンダやトヨタなどの外需産業を選択したかった。

しかし実際のトレードではホンダの売買に失敗し、同じ時期にしまむらを
買って半年放置した場合に20万以上儲かっていることが明らかになり絶望した。
ミスズの方が努力家なうえに頭が良いので、気が付いたら実際に
運用しているアキオよりも株に詳しくなってしまったのだ。

特に相場とは面白くも残酷なもので、大衆が絶対にこれが上がる!!
と思っていると真逆の動きをすることがよくある。
これがダリオ氏の言う「ポーカー」である。

特に危険なのが、昨年まで好調だった株式やそのジャンル(グロース株など)
が翌年以降も高いパフォーマンスを維持できると思い込むことだ。
市場の動きはコロコロ変わる。例えば米英が年三回の利上げを
するだけで為替と国債金利が激しく変動し、短期的に株が売られ、別の世界になってしまう。
金融の世界では、過去の実績がそれ以降の未来を保証するものではないとよく言われる。

「いい? アキちゃん。半導体だとかDX銘柄とか雑誌で取り上げられるけど、
 地味な企業ほど市場で見落とされがちなのよ。派手さはいらない。人々の生活に
 密着し、確かにそこにお店があってみんなの生活を支えている。
 そんな企業はたとえ株価が下がっても最後は見直されて買いが入るのよ」

「なるほど。確かに服がないと人は生きていけない」

「それにユニクロ(ファースト・リテイリング。日経225の最上位銘柄のひとつ)
 みたいにウイグルみたいに強制労働問題も起こしてない。ただ普通に
 服を作って売ってるだけだよ。ね? 素晴らしい企業だと思わない?」

「ああ……ミスズの言うとおりだ。
 君はいつだって正しいことしか言わないもんな。
 俺はミスズの言うことが一番正しいと思ってる」

「アキちゃん、眠そうだね。難しい話をされたから眠くなっちゃったの?」

「あ、いや。そんなわけじゃないけど……」

「うふふ。いいのよ。眠くなったのならよく寝なさい。
 睡眠をしっかりとることも健康のためには大切なことだもの」

ミスズはくすくす笑ないながら膝枕をしてくれた。
そしてまるで母親のように、彼氏の頭をなでてくれるのだった。
アキオが完全に眠るまでそうしてくれた。

実はミスズは外貨預金をしていた。

外貨預金とは日本円を特定の通貨に両替し、特定の口座に置いておく運用法である。

ミスズがやったのは証拠金を使ってレバレッジをかけるFXではなく、
SBI証券で外国為替両替をしただけだ。いずれ米国株でも買おうと思い
2020年のコロナ化で為替が円高だった春から夏ごろにかけて両替をし、
USドルで持っていた。平均取得単価は為替レートで106円と、
長期的視点で振り返るとベストなタイミングで両替ができていた。

しかしながら、ミスズには生活に必要のないお金だったので、
ガストの仕事に夢中で両替したことさえ忘れてしまい、
令和12年の2030年まで放置していた。

(ちなみにミスズのやり方は厳密には外貨預金とは言えない。
 金利はつかないし、手数料である為替スプレッドも割高だ)

前回の話で大好きな彼に「株取引はしてないのか」と言われたので
ふと自分の金融資産のことを思い出したのだ。
彼女は久しぶりにスマホで証券口座を開いた。

SBI証券。雨宮美鈴様。
外貨建て口座。残高を確認。

評価額は円換算で
「GLD」(金のETF)が83万円。
「RWR」(米国不動産リート)が121万円。

株式を含めた他の有価証券はゼロ。
残りのお金はUSドルで保有していた。

このポートフォリオ(資産配分のこと)では
現金(ドル)の比率が8割近くを占めており、
円換算の資産残高がおよそ2180万円となっていた。

「増えてたんだ……」

ミスズはしばらく画面を見つめ続けていた。

コロナ発生当時、株式は暴落した。リスク回避の視点から
各国の通貨に対して円がずいぶんと買われ、極端な円高となっていた。
そんな時にめずらしく父から電話があって、
今すぐドルに両替して米国株を買いなさいと言われた。

まもなく世界がインフレやスタフレになるから、米ドルだけでなく
カナダドル、豪ドル、NZドルにも分散しなさいと言われ、
お小遣いとして『2000万円』をもらっていた。

ミスズは二か月かけて少しづつUSドルに両替を済ませて(時間の分散)
から、さあ何を買おうかなと思ったが、米国株のことはよく分からない。
外国の企業なので決算書類は英語じゃないと読めない。
そもそも当時のミスズは企業の業績にも経理にも興味がなかった。

豪ドルやカナダドルにはもっと興味がなかったので手を出さなかった。
外国為替取引自体が破産者を量産させるFXのイメージだったので嫌っていたのだ。
多くの女性は投機(いっぱつ賭け)を嫌う。

それにアメリカも好きではなかった。
米国ではマックやコーラなどの食品産業が世界で一番発展しているわけだが、
資本家連中と末端労働者との賃金格差が大きいことはよく知られている。
世界一の資本主義帝国は、その資本の巨大さゆえに世界一の格差社会を生み出しているのだ。

ミスズは庶民派の人間だから、従業員を奴隷として使用する経営者の
連中はむしろ悪だとさえ思っていた。実際に彼女はレストランやスーパーを
利用する時に店員に対してすごく愛想がよい客だった。

彼女に丁寧なサービスを提供してくれる店員さんたちの給料が
一円でも上がってくれたらいいと毎日願っていた。
だからスーパーでは安いものを探しつつもカゴいっぱいに買う。
それを彼女は衝動買いだとは思わないようにしていた。

定員の顔も全部覚えていて、急にあの店員がいなくなった、
新しい人が入って来たとアキオによく話をしていた。
多くの客が事務的に買い物を済ませる中で、店員の風貌や体調に
まで気を使って買い物をしているのはミスズくらいだろう。

彼女の優しい視点は、むしろ経営者やリーダーのそれだった。

資産運用の話に戻るが、ミスズは何を買うべきか悩んだ末に、
安全資産とされている金を買うことにした。
これは彼女が今後の中央銀行のやり方や、貨幣経済の行く末に不安を
覚えたからではなく、あのレイ・ダリオがお勧めしていたことを知ったからだ。

ミスズは父からよくこう言われていた。

「自分がどうしてもわからないと思う分野の事ことは、
 その分野について一番詳しいと思う人の話を信じなさい。
 きっとその方がうまくいく。国の大臣だって専門の助言役が何人も
 いて、実際の政治はナンバー2が立案しているんだよ」

ミスズは父親からとある著書を渡されたので、しっかりと全部読んでみた。

 『世界のエリート投資家は何を考えているのか―――
      「黄金のポートフォリオ」のつくり方』

この本は作者のアンソニー・ロビンスが友人のダリオに
直接インタビューし、彼の投資哲学を聞いたものである。
なんとダリオに無理を言って個人投資家でも作成可能な
「オールウェザー」型のポートフォリオの作り方を聞き出すことに成功した。

前も述べたが「オールウェザー」とはブリッジウォーターで
使用されている主力ファンドである。全天候型と訳される。

「投資家は自分が思っているほど、リスクの許容度は高くない」
「株式は大変なリスク資産だ。株式の比率を下げるべきだ」
と大賢者は言う。

オールウェザーでは資産の5割以上が中長期債券になり、
株式がたったの3割。それに金や商品を一部組み入れる。
あらゆる経済の「季節」に対応するための資産配分だ。

「最小のリスクで最大のリターンを」

もはや常人では到底思いつかない高度な戦略だった。
これは勝つためではなく負けないための配分である。

(執筆時点の2022年初頭では、まもなくFRBの利上げが
 予想されるうえに、実質金利がマイナスの状態で債券を
 保有することは論外のため、上記の配分で組まない方がいいです。
 今が仮に好景気で高金利の経済ならば、暴落時から資産を守ってくれます。
 実際にダリオ自身もコロナ化では株式の比率をかなり増やしています)

発売当時に全世界の個人投資家に革命を起こしたほどの本だった。

ミスズから見てレイ・ダリオよりも資産運用が上手な人は、
世界中を探しても一人もいないと思われた。
確かにコロナ発生時の大暴落では、換金可能なあらゆる資産が
溶けてしまったのでダリオのファンドも損失を出したが、あれは仕方ない。

ヘッジファンドは、レバレッジを利かせて短期的な利益を生み出したり、
空売り(ショート)を使ってリスクをヘッジする。

このように短期的かつ機動的な売買をしながらも、中期的な視点で
安値で資産を買い集めたりと様々な技を使う。一見すると投機なのだが、
ダリオの場合はこの売買で利益を出し続けていることが脅威なのである。
普通ギャンブルだったら一度買っても二度負けて退場するのが世の常である。

日本市場で個人投資家に勝負を挑んでくるのが、こういった海外の
ヘッジファンド集団なのである。個人投資家が知識の量や経験で
彼らに勝てるわけがないから、筆者は「短期売買は無駄」だと考えている。

なお個人投資家が「この株はもう終わった」と売ってしまったものは彼らに
安値で拾われている。なぜならヘッジファンドは個人投資家と反対売買をして儲けるからだ。
仮に試合開始後(東京時間、朝九時)に先物主導で日経225の売り浴びせを
仕掛けられたら、個人投資家はパニックを起こして意味もなく売却してしまう。

お金がなくて信用取引で大量の株を買っている個人は、あらかじめ
半年先までと決済期間が決められているので余計に判断力を失う悪循環が発生している。
だから株は現物でのんびり持った方が精神的に楽なのだ。
現物なら時間で強制決済されることはない。

ダリオの口癖は「現金は紙くずだ」(キャッシュ・イズ・トラッシュ)である。
金本位から貨幣経済制に移行してからの貨幣は中央銀行が自由に
増発できることからどんどん価値が減少するため、こんなものを
後生大事に抱えてるメリットはないと氏はずっと前から警告している。

劇中の日本ではスタフレが8年間も続いて、気が付かないうちに一万円の価値は
一万円ではなくなっている。貨幣とは当然、物やサービスとの交換に
使われるものであり、平成時に比べて物価が上がり続けたが
賃金が上がらなかった(むしろ下がった)のでお金の価値が2割以上減ってしまった。

ここでミスズはとんでもないことに気づいていた。

「ただ貯金していると、気が付いたら損をしている?」

つまりインフレ化の社会では、株式、不動産、金、商品(コモディティ)などを
持たない人は、知らないうちに自分のお金をドブに捨てているのだ。

だからミスズも重い腰を上げた。だが株式は嫌いだ。
そこでゴールドやリート(不動産投資信託)ならどうかと思った。

毎日電子画面を見ながら8万円ずつゴールドとリートを買い集めた。
その当時はまだインフレではなかったが、いずれインフレが高進したら
商品先物価格に続いて実物資産である不動産の値が上がることは常識だ。

それにリートは高配当なこともあり、いっそ死ぬまで保有して分配金
(ETFの場合は配当ではなく分配と呼ぶ。国債の場合はクーポン)
をもらい続けるのも有りだ。むしろそうするべきだろう。

ミスズは慎重なのでリートを一日5万円ずつ買った。
買い付け時に手数料が発生するが、気にしない。
最も重要なのは、慎重に買い集めて標準単価のばらつきを抑えることである。

これは米国株取引の際には手数料を気にして一度に12万円分ずつ
買い集めるのがお徳だと言い張る某ユーチューバーの考えに反するが、
最も重要なのは、一度の買い付け手数料ではなく資産の総評価額なのである。
あとで高値で売ることを視野に入れるなら、手数料はそこまで気にすることはない。

ミスズは素人なのにチャートなど気にせずに少額で買い集めるという、
本来なら貴金属ディーラーなどのプロが行う運用方法を初めから知っていた。

(貴金属の運用担当者ほど素人が驚くような、凄腕の買い方をしてると
 よく錯覚されるが、実際の場合は「素人の何倍も」地味な買い方をするものだ。
 なぜなら、それこそが賢者の知恵だからだ)

しかもコロナ発生当時は、多くの投資家が混乱の極みにあり、
日本市場では多くの退場者を出していた時期に冷静に買い向かったのである。
ミスズの判断はあとで振り返ってみると完璧な運用だった。

一種の天才である。ひとつ過ちがあるとすれば、それはあまりにも
投資金額が少ないことだ。手元にあるお金は全て株を
買うのに使ってしまうおバカな彼氏とは大違いだ。

では、なぜドルを9割も残しているのか。とつぜんだが質疑応答を始める。

「三週間くらいで飽きちゃったから」

……え?

「だってETFをチマチマ買い集めても評価額がぜんぜん増えないのよ。
 それにNY市場って日本時間だと開く時間が遅いのが地味にストレスなの……。
 私は早寝早起きが基本だから夜は10時過ぎには寝ちゃうから。
 それに夜遅くまで起きてるとお肌にも悪いわ」

なるほど。小柄な人ほど睡眠時間が多いことは分かるのですが、
もし継続して積み立てをしていたら、今頃すごい金額になっていたはずです。
成り行き注文や自動積み立てを利用しようとは思わなかったのですか?

「うん。思わなかったよ。だって買ったからって絶対に増える保証はないじゃない。
 私の買いのタイミングが完璧だったって言われても、それは今だから分かること。
 あの時はこんなインフレになるなんて誰にも分からなかったし、私だって怖かったわよ。
 資産運用って思ってたよりもすごいストレスよ。二度とチャートなんか見たくないわ」

含み益がすごいですね。リートはプラス40万円。
ゴールドはマイナス17万ですが、
現在は1ドル116円なので為替で儲けています。
為替スプレッドを計算しても
2000万円の投資元本で、およそ180万円も増えてる計算です。

「実はさっき両替の注文を出しておいたわ」

え!?

「全部じゃなくて一部だけ。
 儲けの部分の180万円分だけをドルから円に換えておくの。
 あとでアキちゃんにあげるお小遣いとして使おうと思って」

なるほど。リートとゴールドはそのままに、
現預金のドルの部分から円に両替したのですね。

「うん」

そのお金を彼にあげてしまったら、また株を買うのに使いますよ。
いいんですか? あなたが運用した方が儲かると思いますけど。

「別に儲けるためにやったわけじゃないし、
 ただインフレやスタフレからお金を守ろうと努力しただけよ。
 私の彼は投資が大好き。投資をしないと生きていけない。
 だから彼にお金をあげるの。彼に生きがいを与えるために」

そんな考え方もあるんですか。

ちなみに彼女のように資産防衛目的で、そこまで力を入れずに
運用(というか途中で忘れてる)人の方が、血ナマコになって
チャートを見てる人よりも成績が良いことは現実世界でも有り得ます。

投機はギャンブル。
投資は賭け。
運用は賢者の知恵。

この違いがよく分かると思います。運用は基本ほったらかしですが、
ギャンブルほどストレスが大きくて精神的に疲れることも明らかになっています。

ちなみに米国超長期投資といえば
「ジェレミー・シーゲル」が大御所です。

大賢者・シーゲル博士の著書 『株式投資の未来』は
全世界の長期投資家のバイブルとされています。
およそ200年間に及ぶ米国株式のリターンを研究した結果、
「低PER」の高配当銘柄を所持し「配当を再投資」をするのが
資産増大の最適解だと示した彼の著書は、まさしく長期投資の教科書です。

特にシーゲル博士は「時間」を味方につけて長いレンジで
チャートを見ることを勧めています。「時間」は目に
見えないものですが、実は資産増大のための最大の武器となるのです。

基本的に筆者の作品では、
シーゲル博士、バフェット、レイ・ダリオ、以上の三名の批判は行いません。
彼らの考えが絶対に正しいと信じているからです。
断言してもいいですが、日本の総理大臣が
仮に一万人いたとしても、彼らの賢さには及びません。

この三名の考えが合わない人は本作を読まない方がいいかもしれません。

さて話をヒロインの美鈴に戻します。
それにしても……ダメ人間を養うために自分の利益を使う。
しかも損することが分かっているのに。
筆者には到底理解できませんが……。

「だからなに? 別に理解されたいと思ってないから。
 うざいからそろそろ消えてくれる?
 てか、なんでさっきから私は地の分と会話してんのよ」

分かりました。失礼します。

……このように雨宮ミスズさんは彼氏以外の人には
冷たい態度を取ることがあります。特に彼氏のことを
馬鹿にするのは絶対にやめましょう。本気で怒りますので。

「株主優待株を持ってても資産が増えないって本当か?」

タイトルのことをアキオが言うので、
彼女のミスズはニコニコしながらうなづいた。

「まずお金の交換価値とはなにかわかる?」

株主優待株は、テレビや雑誌でよく宣伝されていて。
女性投資家を中心に人気がある。
それを美鈴はお金と時間の無駄だと断言する。

「仮に吉野家の優待券が3000円分あるとします。
 ホンダの配当金が3000円あるとします。
 さあ、どちらの方が価値があるでしょう?」

「ええっと……どっちも三千円分使えるから、あっわかった!!
 配当金の方が利便性が高いのか。なんにでも使えるから」

「そうそう。その通りよアキちゃん」

「お金の方が交換価値が高い。だけど優待券の場合は
 所定の店でしか使えない。割引券だから」

「配当金は現金。紙幣とは日本銀行券を指し、その価値は日本銀行が保証する。
 配当金ほど便利な物はないのよ。しかも配当金を再投資にも使える」

「配当金を使って新しい株を買うと、さらに多くの配当金がもらえる。
 つまり福利の効果で資産が増えるってことだよね?」

「シーゲル博士の言葉を借りるなら株式の価値の
 源泉とは配当金であり、売却益ではない。
 まあこれは超長期投資の視点では、ってことになるけどね」

「でも優待株は個人がずっと持ってるから、
 あまり株価が変動しないって言われてないか?」

「それは嘘。直近の例を見てごらんなさい。コロナショック、トランプの貿易戦争、
 東日本大震災、リーマンショックでも優待株はしっかりと下落しているじゃないの」

「あっ、本当だ。吉野家HDを例にしてみると下がってんじゃん。
 これじゃ安全資産って呼べないわな」

「ダリオの言葉を借りるわ。株は株なの。いわゆるディフェンシブセクターと呼ばれる
 ヘルスケアや公益銘柄に投資したって株式はリスク資産なことに変わりはない。
 債券に比べて株式のリスクは三倍もあるのよ。実際にこんなものを
 持ち続けたとしても、ちっとも暴落時に資産を守ってくれない」

「言いたいことは分かるよ。もし暴落時に生活にお金が
 必要だった場合は、損切りして現金に戻さないといけないんだろ?」

「そうそう。投資は余裕資金で。向こう10年先まで使わないお金でやるのベスト。
 高齢者の方なんてお孫さんの大学の入学資金のためにやってたりするわ。
 いくら若い人だからって、お給料を全額株につぎ込むなんて
 どれだけ自分の大切なお金をリスク(人質)として差し出していることか」

「耳が痛い話だ。筆者の知り合いにも毎月の給料を全額つぎ込んで
 株式投資してる奴がいて、俺はディフェンシブセクターの
 電力や医療銘柄も混ぜてるから完璧だとか思ってる人がいたんだってな。
 総資産額は800万円で現金は常にゼロだ」

「銀行預金をしておくと低金利だし、インフレ率を考慮したら
 お金の価値が減って大変だからと銀行預金を極端に嫌って、
 給料が振り込まれたら即証券口座に入金。余剰資金は一切残さないタイプの人ね」

「なるほど。全部株を買ってるから悪いって言いたいんだろ?
 つまり俺のことなわけだが」

「分かってるじゃない。ズバリ言うけど、アキちゃんは馬鹿よ」

「うっ……(;^ω^) はっきり言われるときついな」

「例えば債券、ゴールド、商品、リート、その他のETF(インバースなど)
 全部違う値動きをする商品を組み合わせるとリスクが分散できる」

「うん。リスクの分散を勘違いしてる人が多いってことだよね?
 また遠回しに俺のことを言ってるんだろうけどさ……。
 株だけを仮に100銘柄持っていたとしても、例えば日経が
 大暴落したら全銘柄が一斉に売られるわけだから意味がない」

「だけど債券やゴールドはアルファ指数と言って、ベータ(株価指数の平均値)
 に対して、違う値動き(平均の上か、あるいは下)をするから資産が守れる。
 逆に大きく損する時もあるけど、だいたいは株が下がると上がってくれる」

「レイ・ダリオが言っていることは、株だけをたくさん持つことの無意味さか。
 株とは違う値動きをするためには、株以外のアセット(資産)クラスに分類する」

「重要なのは値動きの異なるアセットを組み入れること。
 それと不安なら現金をしっかりと持つこと」

「現金の比率ってどれくらいが理想なの?」

「素人投資家なら5割」

「5割も!? それはちょっと多すぎない?
 投資資金が少ないと資産が増えないじゃないの?」

「素人なら下手にリスク資産なんて持つべきじゃないのよ。
 そこで今から20年前のコロナショックを振り返ってみましょう」

例1 バカ
 資産200万。全額を優待銘柄に投資。

例2 バカ2
 資産200万。信用取引をして借金し、600万円分を投資。

例3 賢い人
 資産200万。米国株式を50万。
        10年米国債を50万。残りは日本円の現金100万円。

ここでコロナショックが起きたとする。

例1は
資産額が最大で30%程度マイナスになり、完全に塩漬け。
実質金利がマイナス圏で推移し、中央銀行が資産の買い入れ(規制緩和)を行っている
状況では、国境封鎖の影響に伴う不景気の受けにくい情報技術(GAFA)を
始めとしたハイテクセクターが浮上する一方、優待銘柄である小売りや
外食産業などには当分の間、買いは入らなかった。

企業の業績悪化によって優待廃止、優待改悪、配当金の減額が発生する。
仮に優待が廃止となったら保有するメリットはない。

世界中でウイルスが蔓延し、当時はワクチンもなく、全世界に
絶望と混乱が巻き起こり、貿易が極端に制限され、サービス業が破壊され、
もはや中国の最近兵器による第三次世界大戦に近い状態となっていた。

この場合、株主は大きな精神的ストレスを抱え、
将来を悲観して株を売ってしまう可能性がある。

もっとも2022年以降まで売らずに持ち続ければ株価が
回復する見込みの方が高いのだが、ほとんどの投資家はそこまで待てない。

さらに低迷した株に対してナンピン買いをしかけて株の平均取得単価を
下げておく判断も、おそらくできないだろう。
なぜなら優待銘柄が好きで購入する層は、
「雑誌で見たから」「キリタニさんをテレビで見たから」
などと軽い気持ちで購入しており、深くは考えてない。

またキリタニさんは資産総額が3億を超えるほどの富裕層であり、
そもそも投資などする必要がない人なのだ。しかも彼は
そもそも将棋のプロであり、マクロ経済の分析もできないどころか、
個別企業の決算書類すら読めないのは有名な話だ。

すなわち「優待生活」「優待銘柄でお気楽に」とは、
かなりお金に余裕のある人の娯楽であり道楽であり、
資産を増やす目的の「投資」や「運用」とはかけ離れている。

そもそも最強の優待券とは、実質的には「現金」であり、
割引券など使わずに、儲けた金額を使って買い物をすればよい。

株式の運用とは資産運用の一部であり、家計における財務活動の一環である。
(筆者は家計の財務を「高度なおままごと」と定義している)
ファイナンシャル・プランナーの立場で考えてみると、
株価下落のリスクを背負ってまで長期で優待株を
保有するメリットは「ゼロ」と言い換えても問題はない。


例2は
資産額の大幅マイナスは上と同じだが、信用取引なので
資産評価額の減少分に応じて追証(おいしょう)が発生する。
平たく言って証券会社に払う借金のようなものである。

追加証拠金を払おうにも、持ち株の全てが暴落しており、
差し入れ可能な代替資産がない。追証が払えないと、
今のポジション(株の買い玉)は強制決済される。
そして損した分(元本が割れた分)の現金を払うことになる。

証券会社に借金を返済するのだ。
もちろん自己資金はないので、他の金融機関から借り入れる(高利貸し)か、
親、兄弟、親戚、友人に泣きついてお金を借りるしかない。

仮に証券会社への支払いを無視した場合、
遅延損害金が発生するかどうかは証券会社によって対応が異なるが、
場合により『年10%』を超える遅延損害金が発生することもある。
それでも払わない場合は「裁判所」から督促状が来る。

繰り返すが、コロナ発生当時は第三次世界大戦並みの衝撃を世界に与えていた。
こうなってしまうと株主は破産だけでは収まらず、最悪自殺も考えられる。
2020年度のコロナショックで多くの人が市場から退場したが、
主な原因はこれだった。株取引だけでなくFX(外国為替証拠金取引)も同様である。
『委託保証金』を使う取引とは完全なる投機なのである。


例3は
株が30%下落しても投資額が少ないために、
資産総額に対しての変動幅(ボラティリティ)は低い。
つまりダメージが少ない。

一方で10年国債は、暴落からひと月も立たずに上昇を初めていき、
買い値より2割以上の高値で売却できる(株に対してαを取った)

国債を全て売却した後、現金を合わせてだいたい、160万円ほどが手元にある計算だ。
しかも日本円で持っていた100万は、円高時に米ドルへ
両替できることから、長い目で見て為替差益(円安になると儲かる)も狙える。

(金融ショックの時は円安から円高へ振れやすい傾向にある。
 外国為替市場ではリスクオフのために安全資産の円が買われやすいからだ)

さらに、この人の場合は、暴落してバーゲンセールとなった
株式、リート、金、原油などを160万円全額を使って買い集め、
一年ほどよく寝てから売却すると、さらに資産が増える。

この場合は3割を軽く超える大幅な値上がり益が狙えるだろう。
しかも一年間寝ていた間に権利が確定し、配当金や分配金も入ることから、
キャッシュインフローで考えると、かなりのお金が手に入る計算だ。


「なんてこったい……。確かに現金を持ってる投資家の方が
 はるかに高いリターンが得られるってことか。
 しかも退場もしないし自殺する必要もないってことね」

「全額投資はね、本来ならば暴落時にのみ使える魔法のカードなのよ。
 例えば日本株式市場は真のエキスパートのみが生き残れる、
 先進国の中でも最上級難易度の市場となっているわけだけど、
 東証で絶対に儲けようとするなら、暴落するまで何もしないのも手なのよね」

「何もしない?」

「そう。何もしない」

「さわかみファンドみたいな考え方だね」

※さわかみファンド。
 日本最古のノーロードファンドとして超有名。
 実質的に日本株のみを運用するアクティブファンド。
 徹底したファンダメンタル分析のもとに銘柄を選定し、集中投資をする。
 暴落時に逆張り投資をして長期保有することで利益を狙う。
 
 当ファンドはR&I(格付け投資センター)ファンド大賞の
 バリュー部門で二年連続(2020、2021)で最優秀賞を受賞している。
 なお、当ファンドの組み入れ比率最上位銘柄は「日本電産」である。
 余談になるが筆者も日本電産は長期で保有している。


「個人投資家には、プロと違って最大の強みがあるのよ。
 それは何もしなくても許されること」

「えっとそれはつまり、株を買わずに現金で持ったまま暴落を待つってこと?」

「そう。しかも大暴落を待つの。10年に一度の大暴落を」

「な、なるほど。株がバーゲンセールになってる
 状態で買えたら、楽に儲かるよね」

「しかも個別銘柄だと回復に差が出ちゃうからETFがいいわ」

「ああ、ETFね」

※ETF。上場投資信託のことで、株のように証券市場で任意に売買できる。
 これを通じて日経平均株価やダウ平均株価などの「指数」全体に投資できる。
 リートやゴールドなどもETFとして販売されている。

「日本の株式市場全体をマークしたいのなら、トピックスのETFが
 最もバランスがいいわね。著名な海外投資家の人もコロナ化の
 4月からトピックスのETFを毎月買い集めていたそうよ。
 一年以上続けたらすごい含み益になっていたことでしょうね」

「指数を買うのは長期的には最も安全だってシーゲル博士も薦めていたよね」

「そもそも個別を買えるほどの知恵
 (業績や財務分析、マクロ経済の分析)
 がない人が買うべきものじゃないのよ」

「手厳しいなぁ。全部俺のことを言われてるみたいだよ。
 なんだか優待の話からずいぶんとそれちゃったね」

「まとめると、優待銘柄は大金持ちが遊びで長期保有するものだと考えて。
 これからお金を増やしたい若者が保有するべきじゃないわ」

「わかったよ。どうもありがとう」

※あくまで執筆時点(2022年1月)の話になりますが、
 オリックスやヤマダ電機は優待銘柄として有名ですが
 配当利回りが高く、今後も成長も見込めることから、
 資産株としての価値が十分にあります。

「アキちゃんが家出しちゃった……」

初めは外出してるのかと思った。
その日は平日だったから東京証券取引所は開いている。

彼は取引時間中はアパートの自室から決して離れなかった。
洋服タンスを見ると外出用の服を着た形跡がある。
それに玄関から靴も消えている。外出したのは間違いないのだ。

ただ、おかしいのは彼が夜になっても帰ってこないことだ。
メールも電話もしたが応答がない。

まさかミスズに無断で外泊でもしてるのかと思ったが、

(アキちゃんにはお金がないはず)

そう。彼はヒモ男で株式に全額投資するおバカなので
お金の持ち合わせなどないはずだ。確かにミスズが、定期的に
お小遣いを渡してはいるが、それを「全額消費」させるように仕向けている。

生活保護費が月ごとに全額使い切る決まりになっているのと同じで、
常にアキオの金欠状態を作り出し、ミスズに依存させることを目的としていたのだ。
ちなみに出費のほとんどは食費(贅沢)か、ミスズへのプレゼント代だ。
彼は気が利くのでミスズに対するプレゼントは毎月買ってくれる。

そもそもお小遣いを渡したのはミスズなので、結果的には自分で買ったようなものだが。
ただ彼の好みで選んでくれた冬物の衣服、小物、アクセサリーのコレクションが揃うだけだ。
それに外食も必ずふたりで行くのだ。

時計の針が、10時を指した。夜である。

「まあまあ。あらあらあら。まったくもう、
 アキちゃんったら、少しお仕置きが必要かしらね」

ミスズは念のため、菖蒲町(埼玉県の田舎)にある彼の実家に連絡したが、
実家には帰ってないと言う。たまたま電話に出た父親が
「あんな奴、いつどこで野垂れ死んでも構わんぞ」と言うものだから、
大変なショックを受け、やがて怒りが込み上げてスマホを握りしめた。

(世界が震えるほどの衝撃を受けたわ。
 どうして自分の息子が行方不明になってるのに心配しないのよ。
 うちの父親とは大違いだわ)

夜が明ける。やはり彼は帰ってこなかった。

これが遊び歩いている旦那の設定だったら、
妻にばれないようにこっそりと朝帰りでもしそうなものだが、
玄関の扉が開くことはない。

その日の夕方になっても彼は帰ってこなかった。
ミスズは探しに行こうと街へ出ようとしたが、
今日は1月の末なのでそうも言ってられない。

令和12年の月末は、相当にまずい。

『反対主義者の国民、一掃キャンペーン、実施中☆』

全国の自治体で行われていたのは、秘密警察による反自民党と思われる
あらゆる国民の摘発だった。月末の28日から30日くらいにかけて、
秘密警察が町中を歩き回って「物乞い」「乞食」「反政府活動をしている者」
「秘密の集会を開いている者」「自民党以外の組織を結成しようとしている者」
「貧者の救済をしている者」などを捕まえるのだ。

捕まった場合は、

『Go to 収容所 キャンペーン、実施中☆』 となる。

またしてもタイトルコールである。
令和12年では反自民党的な分子は強制収容所送りとなるのだ。

令和7年より厚生労働省に新しい組織が設置された。

『怠惰、怠業取り締まり、全日本非常委員会』

全国の自治体(役所の職員、労働組合その他)、警察、自衛隊を
動員して、日本全国において健康であるにもかかわらず職業につかずに
遊んでいる者を取り締まるための委員会である。

これによって生活保護の不正受給をしている在日朝鮮人を始めとした
勢力は簡易裁判にかけられ、最低でも16年以上の強制労働を命じられた。
仮に彼らが脱走や自殺を図った場合、その者の家族もまた連帯責任として裁判にかけられ、
次々に収容所に送られる。北朝鮮の朝鮮労働党が実施している「連帯責任制度」である。

令和12年とは、自民党の圧政によるこの世の地獄とされていた。

多くの労働者の賃金は一円も上がらないのに、物価だけは上がり続けて
税負担は際限なく上がり続け、不満を言う者は逮捕され、拷問され、粛清される。

年金支給開始年齢はどんどん引き上げられ、

    基礎年金が 「95歳から」
厚生(共済)年金は 「105歳から」 とされた。

実質、死ぬまで働き続けないといけないのだ。
老人の多くが動けなっても働かされたが、最後の手段で生活保護を申請しても
青酸カリを渡されておしまいなので、自殺する人が多かった。

令和12年では青酸カリを製造するための医薬品メーカーが繁盛していた。
それと多すぎる自殺者の遺体を火葬するための火葬場も盛況だ。
自殺者は政治犯と見なされるので葬儀は認められない。

全国の健康保険組合は令和10年までに完解体され、
国民の医療費は全額自己負担。介護も同様だ。

民間に頼ろうにも、スタフレにより一部の富裕層を除いて
誰も医療保険を払えないので民間の保険会社は9割が破綻した。

仮にガンなどの治療で入院した場合は、以前なら存在した
高額療養費制度(健康保険)がないので費用は全額自己負担する。
国民の9割が払えないので高利貸しの金融機関からお金を借りることが推奨された。
その場合の金利は最低でも14%で当然福利である。

手術に成功しても、借金が返せない者は「自己責任」として収容所送りになる。

こうして日本人の労働者はどんどん減っていくので、
自民党は外人奴隷を連れてくることにした。

令和12年では「外国人ブローカー」と言う名の派遣の仕事が高給で知られていた。
これは、タイ、マレーシア、フィリピン、ペルーなどに営業マンが出向き、
日本の労働環境のすばらしさを宣伝して第一次産業と二次産業に就業させるのだ。

無知な外国人に対し事前に説明した雇用条件とは全く異なり、

「一日12時間労働」「残業代の割り増しはなし」
「脱走した場合は空港で取り押さえられ、暴行される」
「永遠に支給されない厚生年金保険料を払わされる」
「日本で暮らしている以上、スタフレであり貧困であり、
 故郷で待っている家族に送るお金が稼げない」

などの現実世界の日本とほぼ同じ条件での奴隷労働がわれていた。

若くて健康的な男女は、どんどん子供を作るように命じられた。
日本人も外国人も関係なく、自民党に好意的でよく働く労働者には、
国が強制的にお見合いの機会を作らせ、子供を作らせる。

そしてその子供は生まれた時から自民党の思想に洗脳させ、
完全に物言わぬ奴隷として一生を送らせる。文科省の命により、
全国の教育機関で自民党を褒め称える教育が行われていた。

国民のこれだけの過酷な生活を強いる一方、
この国での唯一の立法府である国会では、次々に憲法や法改正が成され、

「基本的人権」の廃止によって拷問が解禁。
警察組織は秘密警察となって国民を管理、虐待する正当な権利を有していた。

思想の自由が認められず、反自民党的な出版社は次々に放火された。
前述のとおり、ネットでも思想の自由はない。

国会議員の平均年収は「一億一千万円」
議員年金は60歳から最低でも月220万が支給される。医療費もタダだ。
さらにタクシー、電車、空港などの交通費もタダ。住居費も無料となっていた。
また議員特権として議員が在任期間中に国民を殺害しても無罪とされた。

信じられないだろうが、国会議員の殺人無罪
(正確には国会の会期中における逮捕の免除)
の件は小説の設定ではなく、現実世界で実際に存在する制度だ。

ここまでくると、どこまでがファンタジーでどこまでが
現実なのか分からなくなってくる。筆者の書く小説は
過去作品も含めて「まず読み物として面白くする」という
筆者の基本方針に従って書いているので、どれもが非現実的すぎる内容になっているが、
現実世界の日本もこれに劣らず相当に狂っていることが分かると思う。

国会議員は国民から「議員様」と呼ばれ、恐れられ、
もはや天皇陛下すら超越した存在となっていた。

この国の憲法では、最初に天皇陛下ではなく
議員の権利から書かれることになった。

これが『自民党独裁の日本』である。

かつて日本では朝廷が存在し、幕府が存在し、軍部が存在し、
国を治めていたが、令和12年ではその頂点に立つ存在が「自民党」に代わっていた。

三権分立を否定し、行政権、立法権、司法権を党が独占して
国家を完全に掌握する点においては「国家社会主義的ドイツ労働者党(ナチス)」
「ソビエト共産党」「朝鮮労働党」「中国共産党」と変わらない。

実は令和8年に全国で大規模な暴動が発生していた。
国民の反乱を鎮圧するために自衛隊の陸戦部隊を投入し、「粛清」が断行された。

岸田政権は令和8年の秋に、「テロリストたちの鎮圧に成功しました。
抵抗する者は頭を撃って殺害し、生き残った人は
反省してもらうために裁判にかけています」とNHKの中継で演説し、
この会見が国民の戦意を完全に奪ってしまった。

のちに「11月暴動」「テロリストの赤い11月攻勢」と呼ばれ、
文科省が社会科の教科書に記載することを許可した。

殺害された人数は全国で18000人。負傷者はその倍。
収容所送りになった人は26万人を超えた(うち半数が2週間以内に自殺)

自民党は国民に重税を課す一方で陸上自衛隊の戦力を拡充し、
戦車2300両、輸送用トラック5000千両、攻撃用ヘリコプター700機、
大砲各種20000門を用意した。国が貧しくなるほどに軍需産業で働く労働者の
割合は増えて行った。自衛隊員の数より明らかに機械戦力が増えているが、
令和12年にもなるとヘリコプターや戦車はAIによる自動運転が可能となっていた。
国防大臣がスイッチ一つ押すだけで機甲師団は動き出す。国民を殺すのはゲーム感覚だった。

実は国家予算における歳出の割合は令和元年と比較して大きく異なり、
国民には社会保障(サービス)がないに等しいのに、徴収額だけは倍増した。
ではその予算をどこに使っているのかと言うと、陸上自衛隊の強化に使用していた。

岸田政権では中国、ロシア、北朝鮮に対抗するための海空軍の増強は
ひとまず考えず、まずは国内の反乱分子を鎮圧するために、
あの一等国のフランス陸軍、ドイツ陸軍の実に10倍規模に匹敵する陸上戦力を用意した。
これにより、国民がいくら警察署を襲撃して銃を奪ったところで、
秘密裏に爆発物を製造したところで、もはや完全に積んでいる。

国民は皆こう思った。

「こんな国に生まれてくるんじゃなかった」

なぜあの時、選挙で自民党を選んでしまったのか。
きっと何も考えてなかったからだ。

以下は自民党の宣伝だ。

「党の力によって!! 日本国は戦後最長の経済成長を達成しています!!」

「労働組合との協議の結果、最低賃金はアップし!!
 先進国の中でも最良の生活を国民に提供しています!!」

「苦しかったインフレとの戦いはすでに終わりました!!
 誰もが安心して暮らせる社会となっております!!」

なにひとつ、真実などなかった。
令和元年から時は過ぎ、世は脱炭素社会となり、市販の車は全て電気自動車となった。
インドの軍事力はあの英国やドイツすら超越し、世界の覇権国のひとつとなっていた。
中国海軍の勢力は米国海軍の1.5倍にまで膨張し、米国国防省はパニックに陥っていた。

世界は、大きく変わっていた。
2030年になってもまだ「大本営発表」を続けている政府は
先進国の中でも自民党だけだった。
大本営発表は神の言葉であるから、否定することは許されない。

国民のSNSでのやり取りは、総務省と内務省が把握している。
パソコン、スマホでの会話はすべて盗聴されているし、書き込んだ内容も
チェックされる。不穏分子と見なされた人には、深夜の三時から四時の間に
秘密警察が自宅にやって来て、黒い車に乗せられて収容所へ送られる。

黒い車のあだ名は、「収容所行きのタクシー」と呼ばれ国民に恐れられた。

自民党の宣伝する社会は「一億総幸福社会」なため、
国内に乞食がいることは許されない。またニートがいることも認めない。
駅前で寝ている乞食は真っ先に消される。
だから乞食たちは場所を移動し、レストランの駐車場の一角や
目立たない路地裏で寝泊まりするのだ。

これは現実の日本でも同じなのだが、貧しい家の子供は
電気も水道も使うことができないので、公園の水道を使って髪を洗う。
親が食費を払えないので、お肉を食べられるのは月に一度だけだ。
給食費など、当然払えない。

子供の餓死者が年々増えていったが、
それでも自民党は「我が国には餓死者などいない」と言った。

ミスズは、考えないようにした。

彼女だって道端で寝転がっている人を何度も見たことがある。

人は、食べるものがないと寝転がるしかないのだ。
脳に栄養が足りない状態では思考することもできず、
最後は食べ物のことしか考えられないようになる。

4歳くらいの女の子が、白い眼をしながら
「みず……おみず……ください」とうわごとのようにつぶやいていた。

貧しい者の住む団地では、
お互いの子供の死体を交換して、死肉を食べている例もあった。
これは、かつてドイツ軍に包囲されたレニングラード市民の間で
日常的に行われていることだった(第二次大戦のドイツとソ連の戦争)

ミスズは、あれは犬か猫なんだと思って見ないふりをした
見過ごすしかなかった。彼女の父親は自民党の衆議院議員だ。
彼女は勝ち組なのだ。父親のお金で一生が保障されている。
今さら負け組のことなど考えて何になる。

今は貧乏人のことなど、どうでもいい。死にたいなら勝手に死ねばいい。
岸田政権の圧政から教会での食べ物の寄付が随分と増加し、
その影響か、多くの貧民がキリスト教徒に目覚めた。

貧困者は何一つ間違ったことなどしてないのだから、
死んだ後は天国に行けると言った。イエス様の右側に召されると。
なら天国に旅立てばいい。こんな地獄にいる意味などないのだから。


「アキちゃんは、どうして……」

ポロポロと涙がこぼれる。狭いはずのこのボロアパートの部屋が広く感じられる。
彼がちゃぶ台の前に座って株取引している姿が懐かしくさえ思える。

「どうして出て行っちゃったの? 私が言い過ぎちゃったから?
 私がもっとお小遣いを上げればよかったの?
 お料理がまずかったから? 私ってうざかったのかな……?
 上から目線で投資のことで説教したのが嫌だったの……?
 ねえ教えてよアキちゃん。どうして私に何も言わないで去ってしまったの……」

それから三日が立ち、ミスズの左の手首には「バーコード」のような
切り傷が目立つようになった。リストカットの後である。
夜寝る前はカミソリを当ててないと不安になるのだ。
さっさっさっと、切り傷を付けていくと次第には楽しくなってくる。
自らの真っ赤な血を見てニヤけていた。

この心の痛みを、一刻も早く彼に見せてあげたいと思っていた。

彼が何気ない顔で帰って来たのは、それからさらに二日経った後だった。

「ちょっとその辺を散歩してたんだ」

ミスズからの執拗な問いに対し、アキオは無表情でそう答えた。

『散歩』

と彼は言うが、一週間近く疾走していた者の言い訳としては無理がある。

「なによそれ。いい加減にしてよ。私がどれだけ心配したと思ってるの?
 あなたの実家にまで電話しちゃったのよ。それにこのリスカの跡を
 みて。ほらほら。こんなに傷でいっぱいになっちゃった」

アキオは黙った。それ以上聞きたくないとでも言いたげだった。

「どうして黙ってるの!! 何か言い訳してみなさいよ!!
 アキちゃんったら、本当は私に頼らないと一人で生きていけないくせに!!
 どうして一週間も家出したの!! 私に断りもなく勝手に外出しちゃだめって
 何度も言ってるでしょ!! それに無断外泊ってどういうこと……?
 お金もないのにどこに泊まっていたのよ!! ねえねえ!! ねえ!?」

「警察に逮捕されたんだ……」

「は? 警察に逮捕ですって!?」

「話せば長くなる。今は疲れてるんだ。少し寝かせて欲しい」

「全部話して!! 今すぐに!! ちょっと、なに寝ようとしてるの!!
 まだ寝ないで!! 私が納得したら寝かせてあげるから、
 ほら、ちっ重いわねぇ。布団から出なさいよぉ!!」

「いちいちうるさいなぁ。わかったよ説明するから。
 喉乾いてるから紅茶でも淹れてくれない?」

「わかった。淹れてあげるわ。その代わりちゃんと説明して」

「うん……」

イオンで買って来たティーパックのアールグレイを飲みながら、
アキオは疲れ切った顔で語り始めた。

「俺さ、前にミスズが投資のコツを教えてくれた時、自分は心底
 株には向いてないんだって思い知らされた。そしたら
 自分が株ニートであることが情けなくなっちゃってさ。それでさ、
 食糧配給所で働こうと思って職場見学に行ってみたんだ」

「よりにもよって食糧配給所ですって!! なんて馬鹿なことを!!」

食糧配給所は、令和10年から非営利団体(金持ちによるボランティア)
によって作られた。読んで字のごとく貧困者に対して食料を配給する組織である。
令和5年頃までは「子ども食堂」「大人食堂」などでカレーやシチューが提供されたが、
調理をしているとすぐに警察に取り押さえられてしまうので廃止された。

(ちなみに旧ソ連では食料配給所は実在した。
 貧者救済のためにソビエト共産党が支援したのだ。
 ソ連では住居費無料(共同アパート)医療費無料、
 冬の寒さと戦うソ連人のために暖房に使う燃料代も無料である)

くどいようだが、自民党の時世では
すでにスタフレは終わり、戦後最長の好景気の最中であり、
貧困者は存在しないことになっているからだ。

読者諸兄らも考えてみて欲しい。
第二次安倍政権時代より続いた経済指標の発表は、
ことごとくがフェイクデータであった。

詳細は省くが、2016年から2019年にかけて、
厚生労働省、総務省、財務省、国土交通省が発表した数々の資料が
『捏造』だったと国会で指摘され、自民党側はまともな反論ができなかった。
(この件は令和10年シリーズの第一作で詳しく述べている)
これら大本営発表は、もはや北朝鮮の労働党の発表と大差がない。

そしてコロナ化の2020年においても与党から現金給付の前に
「お魚券」「お肉券」を配る案が出されたばかりか、アベノマスクを
支給するなど『前代未聞のギャグ』を披露する一方、フランスやアメリカなどの
一等国は国民を救うために直ちに財政出動をさせていた。
なお、当時の世界で最も感染封じ込めに成功したのは文明国トップのドイツ国である。

(日本人の多くが米国こそが世界のトップだと信じているだろうが、
 それは経済規模を始めとしたスケールのデカさであり、全世界の貧しい移民が
 目指す先がドイツであることから分かるように、世界で最も文明化された国が
 ドイツであることは世界の常識だ。人口でも経済規模でも西洋最強国だ。
 福祉大国の北欧諸国も大変に文明的だが、日本はすでに後進国である)

スガ政権下の2021年度の5月の段階で日本のワクチン接種率は、
内乱中のミャンマーと同レベルだった。同国は革命軍が政府を転覆させていた最中であり
もはや内政などあったものではなかったが、それと同等だったことを忘れてはならない。

以上のことから、例えばドイツのような一等国の政府と
自民党の国家運営能力を比較したうえで学力で査定すると、
自民党は小学校卒業程度の学力で「偏差値24」 
精神年齢は「10歳程度で止まっている」とするのが妥当だろう。

アベノマスクの件だが、2021年末の段階で、
8000万枚が残り、15%が不良品だった。
倉庫に抱えた在庫の管理費用が「6億円」だったので
岸田政権下では破棄することが決定した。

沖縄県は、アベノマスクを文化財として保存することが
正式に決定したそうだ。日本政府のバカさを世界に披露するために。

このマスクの件を、第三次世界大戦に等しいコロナの緊急時において
自民党は大まじめに決定したのだ。もちろん首相の独断だろうが。

何より問題なのは、これほどのバカがコネで内閣総理大臣に任命される
国家制度そのものである。今後選ばれる首相も確実にコネだ。
以上の例を出しても日本国が衰退に向かっていることが分かっていただけると思う。

筆者は今後も東証へ投資し続けるが、読者の皆さんが
米国株その他に逃げたくなったら、どうぞ自由に逃げてください。

例えば日本電産やトヨタなどは今後も企業努力で株価が上がり続けるでしょうが、
日本政府が今後も企業の足を引っ張り続けることが予想されることから
GDP成長率はG7で最下位を維持し続け、ほとんど成長はしません。
東証は、半永久的に外国の機関の空売り天国と化し、株価が乱高下し続けます。


話を食糧配給所に戻すが、そんなわけで警察の捜査を逃れるために
スーパーで買い貯めした「惣菜パン」「菓子パン」「食パン」を
手渡しで配ることにしていた。全国のあらゆる場所で
不定期に実施され、その場で貧者に対し素早く食料を渡す。
時間帯は暗くなってからの20時以降とされていた。

アキオは、家で引きこもり一日中パソコンをやってるから、
そういう情報には詳しかった。

「俺はクズだ。どうせ生きてても何にも生み出すことのできない、
 非生産的な人間だ。堕落者だ。だからせめて配給所の職員さんに
 コンビニで買ったパンでも渡そうかと思って、軽い気持ちで見学に行ったんだ」

「はい!! 待って待って!! 
 いまコンビニで買ったって言ったわよね!!
 そのお金はどこから出たお金なの!! 
 お姉さん怒らないから正直に答えてみなさい」

「ミスズからもらった……お小遣いです……」

パシイイイイン、と平手が飛び、アキオの頬が真っ赤に染まった。

「このぉ、バカ!! 大馬鹿!!」

「……」

「いったい何度同じことを言ったら学習するの!!
 貧困者を救うために私のお金を使ったですって!! 違うわ。
 金額の問題じゃないの!! 私がこれだけ世の中の真実を教えてあげてるのに、
 それなのに全然理解してくれないあなたの態度が気に入らないの!!
 ほんとにねぇ、いい加減にしてくれる!! 
 温厚な私でも今回ばかりはさすがに怒るわよ!!」

「ごめんなさい……」

「謝って済む問題じゃないでしょ!! 私がバイトに行ってる間に
 こんなことするんだったら、私も無職になろうか!?
 ねえその方がいいよね!? だってそうするしかないよね!! 
 いっそのこと24時間体制でアキオのこと監視しないとダメ!?」

ミスズの怒りは計り知れなかった。
確かに彼女との数年に及ぶ付き合いの中でも、
ここまで怒っているのは見たことがない。

美しかった童顔は消え去り、目がぎらぎらと輝いてるのに
口元だけは半笑いしているという、まさに悪鬼のごとくだった。

言い返す言葉のないアキオは、床に両手を突き、土下座をした。

ミスズは近くにある物を何でも部屋中に投げつけ、窓ガラスが割れて
破片が床に転がった。フライパンが床に跳ね返る。コップは三つも割れてしまった。

「で? 続きをさっさと話しなさいよ!! 警察に逮捕されてどうなったの!!」

「集会場にいた幹部はみんな収容所に送られたらしい。
 俺は、すきを見て脱走することに成功した……。実は違うけどな。
 俺は命の危機を感じたのでミスズのお父さんの名前を口にしたんだ。
 俺が雨宮貴一議員の娘の彼氏だったことを知ったら、警察の人が
 俺に頭を下げてきたんだ。そんで表向きは脱走したことになっている」

「そうだったの。お父さんの名前がアキちゃんを救ってくれてたのね。
 もちろん父の名前を出したことはどうでもいいわ。
 もっと大事なこと忘れてない? なんで一週間も帰ってこなかったの」

「ルートイン(ホテル)に泊まってました……」

「ビジネスマンでもないのにわざわざホテルですって!!」

「ごめん」

「警察に捕まったのは家出した初日だったんでしょ!!
 そのまま、まっすぐ帰ればよかったじゃない!!
 どうしてホテルに泊まる必要があったの!!」

「なんか、家に帰りたくなくてさ」

「なんで!?」

「……」

「黙らないで!! さっさと理由を話して!!」

「死のうと思ったんだ」

「は!?」

「俺はミスズに依存して生きているクズだし、健康な体があるのに
 就職するつもりもない。こんな奴生きてても役に立たないだろ? 
 だから死のうと思ったんだ。令和12年の日本では貧しい人がたくさんいて、
 田舎ではヘビやカエルを食べて貴重なたんぱく源としている。なのに
 俺だけはお金に不自由なく暮らせてて、罪の意識に耐えられなくなったんだ」

「貧困は自己責任!! 貧困は自己責任よ!! ほら繰り返して!!」

「それはちょっと冷たすぎないか……」

「ひとはひと!! あなたはあなた!! 貧乏な暮らしなんて私達には
 一生縁がないじゃない!! なのにどうして貧しい人の心配なんてしてるのよ!!
 アキちゃんは自分では株取引すら満足にできないくせに、
 一丁前に人助けをしようだなんて考えが甘すぎるよ!!」

「やめてくれよ」

「え?」

「俺の事、株の取り引きが下手だって言うのやめてくれ。
 実はそれすっごく傷付くんだ。この前は俺の事、馬鹿って言ってじゃないか。
 バカなのは分かってる。でもミスズみたいに頭の良い人に言われると傷付くんだよ」

アキオは涙を流していた。
たとえ愚か者だとしても男の子にはプライドがあるものだが、
ミスズは知らず知らずのうちに彼の一番触れて欲しくない部分を攻撃していたのだ。

「あっごめんね……。別にアキちゃんを傷つけようと思って言ってるわけじゃないの。
 アキちゃんは今は練習中だもんね。だ、大丈夫よ。私が応援してあげてるじゃない。
 この前だって原油の取引で成功して6万も設けたわ。ちゃんとできてるわ。
 そ、そうよね? だから、ごめんね……? よしよし。もう泣かないで」

歳が二歳上なこともあり、ミスズはいつだって上から目線になり過ぎていたのだ。
だか歳が上だからこそ、あやすのも得意だった。
これで今回の件は一件落着するはずだった。

ところがこの流れをぶち壊してしまったのはアキオだった。

「触るなぁ!!」

頭をナデナデしてくれたミスズの手を振り払い、玄関先へ駆けだしてしまう。

喧嘩の続き。監禁が始まる。

西沢アキオ。まさかの二度目の脱走。大脱走である。

しかしミスズがそんなことを許すわけがない。
彼女の鍛え上げられた太ももの筋肉は、チーターのように収縮し、
ひと足飛びでアキオの背中にしがみついて激しく転倒した。

警察がするように腕を背中に押さえつけられたアキオは
痛みのあまり絶叫した。それでも逃げようと必死でもがくので、
身長さが20センチもあるミスズの力では押さえるのが辛くなってきた。

そこでミスズは、最後の手段で口で脅すことにした。

「私を捨てるんだったら、お金貸してよ」

「……え?」

「だから、お金。今までのお小遣いを全部返して。
 あれ、あげたんじゃなくて貸しただけだから。
 私これでもアキちゃんに貸したお小遣いの額ぜんぶ数えてるからね。
 総額でおよそ725万円だよ。
 別れるんだったら全額返してくれる? できれば今すぐに」

アキオはこんな時なのに、母親の交際相手との金銭トラブルで
困っていた小室ケイ君を思い出してしまった。自分も女の人に
執着されて無理やり交際を迫られている点については同様だ。

例の元内親王殿下は、どう見てもリアルヤンデレであり、
ケイ側に結婚の意志などなく、例の記者会見も
「愛している」と無理やり言わされている感が半端ではない。
実際に言わされているだけだろう。真の被害者はケイなのである。

「お、お金ことを言うのは卑怯じゃないかな……」

「あとでお父さんに話を通しておくから。そうしたらアキちゃんは
 明日から借金を背負うんだね。金融機関の個人向けの貸し出しでは
 200万を超えた場合はSMBC(三井住友銀行)で利率が21%だったよ。 
 だったらそれを適用しようか。だって私は貸した側だから利率の設定も自由だから。
 あと返済期限も決めておくね。一年で全額返してくれる?
 返せなかったら罰として収容所行きね。はい決定」

「わ、別れようと思ったわけじゃなくてさ。
 たまには一人で暮らしてみたいと思うことだってあるじゃないか。
 俺は静かに暮らしてみたかったんだ」

「それじゃ別れたいって言ってるのと同じじゃない!!」

「違うよ!! 少しだけ距離を取りたかったんだよ」

「……なんで? 私の事嫌いだから?」

「俺がミスズのこと嫌いになるわけないだろ。むしろ好きすぎるくらいだよ。
 でもこのままミスズに依存してたら俺はますますダメ人間になる。
 ミスズだって本当は自覚してるんじゃないのか。
 自分がダメ人間製造機だってことを」

「その言い方、すっごく気に入らないわ。ダメ人間って何?
 そんなこと誰が決めるの? 私とアキちゃんは真剣に愛し合っているのに。
 もしかして世間体とか気にしてる? 人にどう思われようと関係ないじゃない」

「親父からさ」

「うん?」

「年末に親父から電話があったんだよ
 母さんも俺のことを心配してたみたいでさ。
 令和12年の貧困地獄でどうやって暮らしてるんだって聞かれて。
 俺はずっと両親に連絡もしてなかったから、そりゃ心配もするわな。
 で、俺は素直にこう答えたんだ。優しい彼女にお金を出してもらっているから
 なんとか生活ができてるんだって」

「うん。それでお父さんになんて言われたの?」

「おまえなんか、俺の息子じゃねえって」

「なんですって!!」

「男として生まれて恥ずかしくねえのかって。
 俺の時代はそうじゃなかった。男は女を守るのが普通だった。
 そんな夫婦ごっこが何年も続くもんか。
 おまえみたいなクズは、いつか飽きて捨てられておしまいだって」

「あの男……自分の息子にそんなひどいことを言ってたのね……」

「でも親父の言うことはもっともだよ。令和12年では餓死者が年間で
 1万人は出てる。自殺者は30万人。外人奴隷の総数は240万人だ。
 こんな地獄でヒモなんてやってて言い訳がない。いつかバチが当たる」

「何ってるの!! この私が!! 雨宮美鈴が!! 
 好きで昭雄君の生活を支えてあげてるのよ!!
 私が好き好んでやってる事なの!! 
 なんであなたのお父さんに口出しされなくちゃならないの!!」

「ああ、君は優しいからそう言うよね。でも甘えてるだけじゃ
 俺のためにはならないのは本当だ。だから少しだけでもいいから
 ミスズの居ない世界で暮らしてみたら、少しは変われるんじゃないかと
 思ってホテルで生活してみたんだ。毎日スマホとテレビを見てるだけだったけど……」

「……分かったわ。アキちゃんの気持ちはよく分かった。
 男の子なら誰だって逃げたくなる時があるものね。
 たぶん28になって遅めの反抗期が来たのよ。
 いつまでも外に居たら風邪ひいちゃうわ。早く部屋に戻りましょう」
 
アキオは部屋に戻るなり、左の足首に何かをかけられた音がした。
なんとも冷たい感触だ。よく見ると手錠だった。
手錠から10メートルほどの鎖が伸びていて、
部屋の奥にある「黒い鉄球」につながっていた。

「この鉄球はアキちゃんが帰って来た時のために用意しておいたの。
 今日からアキちゃんの行動範囲は半径10メートル以内ね」

「わ、笑えない冗談だね。早くこれ外してよ。
 こんなのつけられたら生活できなくなっちゃうよ」

「ダメ」

「だ、だって買い物にも行けないよ?」

「買い物は私が行くから」

「外食は?」

「デリバリーを頼めるわ」

「風呂やトイレはどうするんだよ」

「私が付き添うわ」

「トイレも!?」

「うん。しばらくはね。アキちゃんがすきを見て脱走する可能性もあるから」

「は、ははは」

「うふふ」

「はははは」

「うふふふ。面白い?」

「ミ、ミスズ、君は少しおかしくなってるんだよ」

「私は真剣だから。マジだから。
 アキちゃんがしっかりと反省するまで一緒に暮らしましょう。
 片時も、どんな時でも一緒よ。私から視線をそらすことさえ許さないわ。
 だってアキちゃんは私のものだから。アキちゃんは私を頼りにしないと
 生きていけない。私はアキちゃんがいないと生きていけない。
 だから私達は離れちゃいけないの」

アキオはその場に崩れ落ち、泣いた。

たぶん彼女からもう一生分の愛情を受けている。
アキオだって彼女のことを愛している。

どんな時でも、アキオがどんなミスをしても、
株で大損しても家賃すら払えなくても、
ミスズは笑って許してくれた。無制限にお小遣いをくれた。

彼にとってミスズは姉のようでもあり、母親のような存在だった。
背丈は小学生のように小さいが、アキオには
どんな女性よりも大きくて偉大な存在に思えた。

「今日は怒鳴っちゃってごめんね。
 腕、痛かったでしょう。ちょっと久しぶりに本気出しちゃったから。
 腕を見せて。あざになってないかしら?」

「うっ……ううっ……ミスズぅ……ミスズぅ……」

「あらあら。そんなに泣いちゃってどうしたの?」

「逃げたりしてごめんよぉ……さみしい思いをさせてごめんよぉ……
 もう……二度といなくなったりしないから……約束するよ……」

「アキちゃんったら本気で泣いちゃって可愛い。
 お顔見せてごらん。鼻水拭いてあげるから」

アキオは鼻水をティッシュでふかれたあと、
思いきり抱き締められ、ディープキスをされた。
アキオの唇ごと吸い取ってしまうほどの強烈なキスだった。

「よしよし。もう泣かなくていいのよ。仲直りしましょうね?」

「うん。ありがとうミスズ。ありがとう。愛してるよぉ」

「私もよ?」

アキオが何気なく手を伸ばしたら胸に触れてしまった。
ミスズは「くすっ」と笑ってブラをずり上げた。
大人の女性にしては小さすぎる膨らみが露になる。
アキオはピンと張った乳首に夢中で吸い付いた。

「あっ……」

ミスズはたまに甘い息を吐きながら、彼の頭をナデナデしてあげた。
まるで赤ん坊をあやすような仕草で。

「うふふ。甘えちゃって。そんなにおっぱいが欲しかったの?」

「うん。なんだか無性にミスズに甘えたい気分なんだ」

「そう。なら好きなだけ舐めていいのよ」

そのあとも無性に胸を堪能した。
コリコリになった乳首が唾液でびっしょりと濡れる。
ミスズは女の子座りをしながら彼の欲望を受け入れていた。

アキオはミスズのミニスカートをまくり上げ、中に顔を突っ込んだ。

「アキちゃん……」

ミスズはふくらんだスカート越しに彼の頭をなでてあげた。
変態的な行為をする彼氏に対しても満面の笑みである。
アキオはしばらく荒い息を吐き続けていたが、
スカートの中が暗いからか、そのまま寝てしまった。

「うふふ。良い子ね。よく寝なさい。
 アキちゃんはお姉さんがいないと生きていけないものね?」

ミスズは彼が目覚めるまでそのままの姿勢でいた。

「いやぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあ!!」

「な、なんだぁ!?」

アキオは夜中に飛び起きた。
しかし木製の手かせをはめられているため、
バランスを維持できず布団にすてんと転がる。

「アキちゃんがいないぃ!! アキちゃんがいないのぉおお!!」

「な、なに言ってるんだ? 俺ならここにいる!! ここにいるよ!!
 ミスズのそばから離れてないよ!! ちゃんといるよ!!」

「いやぁぁぁぁぁぁ!! 行っちゃダメええ!!
 私を置いてかないで!! 一人にしないで!! 
 さみしいのはいやぁ!!」

ミスズは頭を抱えたまま、床の上を転がり回り、
部屋の隅から隅へと行ったり来たりを繰り返した。

「ぐえっ」

トイレのドアの前で頭をぶつけると冷静さを取り戻し、
キッチンでコップ一杯の冷水を飲み干す。
美しい髪の毛はボサボサ。瞳は涙で濡れていた。

「あ、あのさ。ミスズ? だ、大丈夫か?」

「騒がしちゃってごめん。ちょっと夢見が悪くて。
 アキちゃんがね、私を置いてアパートを出て行くって言ってたから」

「夢の中で?」

「そう。夢の中で。でも生々しかった」

「……これで何度目だよ。
 ミスズがうるさいから、こっちは安心して眠れやしない。
 そろそろいい加減にしてほしいもんだ。……病院に行こうミスズ」

「その必要はないわ」

「どうして!!」

「私は病気じゃないからよ」

「じゅうぶん病気だよ!! 戦場帰りの兵隊みたいに発狂してる!!」

「アキちゃんが悪いんでしょ。アキちゃんが私を不安にさせたのが悪いの」

「それについては何度も謝ってるじゃないか!! 同じことを百回謝ったら、
 君は満足するのか!! このやり取りするのが俺にとって苦痛なんだよ!!
 俺の気持ちも考えてくれよ!! ミスズの相手すると頭痛がしてくる!!」

「うっ……」

「ミスズ……? なんで泣いてるの?」

「あ、アキちゃんが怒ったぁ……。そんなに私のことが嫌いなの……。
 私なんて重くてうざいから出てけって言った……」

「ちょっと待って!! 出てけとは言ってないぞ!!」

「言ったよ!! 私にとっては同じことなんだよ!!」

「……もう寝ようよ!!  朝の4時前だ。 
 隣の部屋の人にも迷惑だし風邪ひくぞ」

彼は木製の手かせをはめられた状態なのに、器用にも彼女の細身を
抱いてやり、布団に寝転がった。気が動転して目を真っ赤にしているミスズに
キスをしてやると、すっかりおとなしくなった。

「愛してるよミスズ」

「ほ、ほんとうに?」

「俺には美鈴以外の人はいらないって思ってる。
 だって俺には美鈴がそばにいてくれるだけで幸せなんだから」

「あはっ、うれしい」

「君は俺のものだ。これからもずっとな。
 ミスズも俺の事好きでいてくれるか?」

「はい。愛してます」

ミスズは急に体が熱くなったと言い、服を脱いで下着姿になった。
小学生並に細い足を彼氏にからませ、ゆっくりと顔を近づけてキスをした。
舌を絡ませ、ねっとりとした唾液を交換する。

(この時間に始めるのかよ……)

アキオは不満だが口にしたら負けだ。
1月末の東京市場は第3四半期の決算シーズンを迎えている。
この時期は株価の変動が大きいために、パソコン画面を注視する必要がある。

目を休ませるためにも、できるだけ睡眠を多くとっておきたかったが、
最近のミスズは深夜に「発狂」するのだ。アキオが家出をしてからこうなった。

彼女は完全なるアキオ依存症だ。一度彼が出て行ってしまったことが
トラウマとなってしまい、その記憶が夢の中で呼び起こされ、
恐怖とストレスに耐えきれず大声を出してしまうのだ。

「もっと私を愛して!! ちゃんと愛して!!」

「ああ。分かってるよ」

避妊はしてない。なのに妊娠したことはなかった。
後でミスズに聞いてみたら、「不妊症」だったことが明らかになった。
実は彼女が結婚を望まない理由はこれだった。
自分は母親になることができないと
諦めているので婚姻関係など結ぶ必要がないと言い張るのだ。

治療をするつもりはないらしい。
なぜなら、子供が産めないのは神様が決めた運命であり、
その運命に逆らうことは不自然だからだと言う。

「私とアキちゃんは、心が本当の意味で繋がっているから」

ミスズが以前から語っていたことだ。

結婚は役所に届けを出して成立する。
書面上の契約でしかない。

岸田政権が発足した令和3年度以前から、20代の若者の離婚率は5割、
30代で3割強、なんと60代も5割を超えていた(熟年離婚)

令和12年では全世帯の平均が7割を超える、破綻した社会である。
理由は簡単でみんなスタフレに苦しみ、金がないことから外出もできず、
夫婦仲が険悪になるからだ。金持ち喧嘩せずとはよく言ったものだ。

ミスズはこうも言った。

「日本で子供を産み育ててる人は、
 実は罰ゲームに参加してることに気づいてないのよ」

令和12年以前から、日本の子育て世帯は家計のやりくりが相当に厳しい状態だ。
たとえ離婚してない世帯だとしても、総計で三割の人が貯蓄がゼロなわけだから、
まさに自転車操業に近い。世帯主のボーナスが減額されただけで、住宅ローンの
滞納が発生するレベルだ。奨学金で大学に進学する学生もたくさんいる。

これも前作で語りつくした内容になってしまうが、
仮に離婚して女性のひとり親になった場合は
「完全なる家計の破産」である。(よほどの高給取りを除いては)

実は日本の若者の多くが結婚と出産を望んでいるが、
お金の心配からそれができないらしい。

日本では、子供を産んだら即破産のリスクが存在する一方、
先進国のフランスでは、少子高齢化は90年代の後半から改善している。


偏差値の高い政治家が国を治めている場合は、以下のような制度が存在する。

(フランス共和国の社会保障制度です。
 どこかのページから拾ってきました。反省はしてません)


○家族手当
所得制限なしで、2子以上を養育する家庭に給付される。
20歳になるまで、こどもの数によって支給されます。
日本の児童手当と近いですが、1子の家庭には支給されない点が違います。

○N分N乗方式
子育て世代、特に3人以上の子どもを育てている世帯に対して、
大幅な所得税減税がなされ有利な仕組みになっています。

○家族補足手当
第3子から支給される。所得制限はありますが、
制限は緩やかなので多くの世帯が受給しています。

○年金加算
子どもを3人養育すると年金が10%加算されます。

○職業自由選択補足手当
子育ての為に仕事を全面的に休むのか、週4日や3日勤務、
午後3時までと言ったように時間短縮するかなど、
個人に合わせて労働の有無や、労働時間数を選択することができる。

○保育方法自由選択補足手当
保育ママに子どもを預ける場合に支給されます。

○出産費用
産科の受診料、検診費、出生前診断、出産費用など
妊娠出産から産後のリハビリテーションを含め無料。

○父親の出産休暇
母と同様の有給扱いで賃金の80%が保障されています。

○不妊治療と人工中絶
治療は公費で行われていますが、43歳までと年齢制限があります。

○高校までの学費は原則無料となっています。
公立大学の学費も、数万程度の登録手続き費と健康保険料のみで、ほぼ無料です。
また、多くの学生が奨学金を支給されています。
学費や教育費にお金がかかるから子どもを産まないという考え方は、
ほとんど存在しないといえるでしょう。

○事実婚と婚外子
フランスでは、ユニオンリーブル(自由縁組み)
というカップルの生き方が一般化しています。
法律婚にとらわれないカップルが社会的に
認知されるようになった背景には、
フランス人の家族観とそれに伴う法の整備があげられます。

1970年に6%だった婚外子が、1980年代半ばから急速に増加し、
2008年52%に達しました。産まれるこどもの半分が婚外子となり、
社会的な受容度は高くなっています。婚外子の法律についても、
自然子(非嫡出子)の権利は嫡出子と同じになり、
嫡出子、自然子という用語そのものが民法から削除されました。

○保育サービス
公立保育所の充足率は低いですが、
3歳までは自宅で子どもをみてくれる認定保育ママや
低額のベビーシッターが比較的簡単に利用できます。

3歳以上になると公立の保育学校に入学できるようになり、
保育学校は初等教育体系に位置づけられている為、100%就学保障されています。

○余暇保育
日本の学童に相当するものです。
ほほとんど費用がかからない仕組みになっています。

これに対し、学のない政治家が国を治める日本では、
筆者が思い出せるだけでも出産一時金や、児童手当、児童福祉手当、
住宅ローン減税などが浮かぶが、現役世帯も含めて「三人に一人が貯金がゼロ」
であり、「国民の7割近くがマス層(純資産3千万以下。実際は数百万程度か)」
であり、多くの国民は、破産寸前で生活している。

ちなみに貯金ゼロ世帯のデータは2016年以降から毎年国会の
理事会を通じてデータして提出されているが、改善されるどころか悪化している。

つまり日本の社会保障制度は一等国フランスと比べると「何もない」のに等しい。
同じく文明国のスウェーデンやフィンランドとも比較にすらならない。

日本では「一度敷いたレールから外れたら最後」
あとは奈落の底へ落ち続ける仕組みになっている。

フランスはそうではない。しっかりと国民を助ける仕組みになっている。
だから仏国民は安心して子供を作れる。子供とは国家の宝であり、
子供の教育水準の高さ(まずは衣食住の不自由のなさ)は、そのまま
国の発展に寄与する。明治維新で日本が一番力を入れたのが教育分野だった。


コロナでインフレになり、キシダ悪政権の賃上げ要求が失敗に終わり、

(執筆時点(2022/1/18)のブルームバーグの記事で、経団連の会長が地位上げは無理と言っていた。
 企業は仕入れ価格の高騰から、今ようやく販売価格に転嫁している最中であり、
 非常に苦しい状態だ。それに企業の剰余金の認識も岸田は間違っている。
 剰余金は非常時にとっておく資金で貴重。現預金の残高は、企業が
 借り入れを増やしために積みあがった分もあり、必ずしも余裕があるわけではない)

夏の参議院選挙後の12%の消費増税、
(2026年までのPB黒字化目標を掲げたことから、遅かれ早かれ増税は確実)
エネルギーや食糧を中心とした物価の上昇、
年金、医療、介護等の保険料の引き上げという、メガトン級のコンボが発動する。

野党の多くが「減税」を訴える中、岸田政権のやろうとしていることは

「国民生活の破壊」
「国会議員優遇社会」
「一億総貧乏社会の実現」であることは明白だ。

一度の給付金で多少の支持率が上がったところで、インフレの長期化による
国民生活の圧迫によって支持率がいずれガタ落ちするのは目に見えている。

なお、フランス国は共和制を採用した時から官僚は「エリート」のみを
採用しているそうだ。エリート官僚主義である。
これはコネで選ばれる低偏差値の人間を排除しなければ
一等国としての地位が維持できないと言う、当たり前の考えによるものだ。

世界初の民主主義国家を制定した際の、当時の臨時政府「国民公会」
に集まった面々は、エリートなどと言うレベルではなかった。
彼らの話していた内容は、高度過ぎて筆者の頭ではついていけなかった。

明治維新を起こした偉人政治家、財閥を作り上げた実業家たちも、
世界史に残るレベルの知的エリートが揃っていた。

その一方で、最近の日本の総理大臣は

「漢字が読めない」「統計で嘘をつく」
「国会での虚偽答弁が60を超える」
「メモがないと記者会見できない」
「経済のことが分かってない」
「ちゃんと大学を出たかどうかも分からない」

など、ギネス記録に残りそうな低レベルな人材が顔を並べた。

ちなみに工業生産が好調なフランスの2022年度のGDP成長率予想は6%を超える。
日本はようやく頑張っても、その半分である(世界銀行、および日銀の見通しを参考)

以上の国家制度を比較しても、仮に国家が学生だとして偏差値で比較すると

フランスは 「64」
日本は   「23」

が妥当だろう。厳密な偏差値の算定は複雑なのだが、
これが仮に一般的な中学だとして、
日本は全科目の点数が20点以下なのだろう。
これで先進国を名乗るのは無理があるのではないか。

確かに治安が良く、インフラなど文明的な面は大変に発達しているが、
政治のレベルでは発展途上国とするべきだろう。

筆者は日本国の一般会計予算を何度見直しても
「おれさまの考えた、さいきょうの作戦(小学六年生)」
と書かれているようにしか思えない。

日本国の政治家(主に自民党)は、明治から命を懸けて
国を守ってくれた先人に対し「唾を吐いている」ことに気づいてない。

私財の全てを捨ててまで国を発展させた大久保利通。
神風特攻までして散った英霊たちが守ろうとした愛すべき国土。
マッカーサー元帥が米兵の缶詰を、当時の貧困国民に配ってくれた優しさ。

それらは無駄だったのだ。すべてが無駄だったのだ。

彼らが今は国民の税金をお小遣いにして楽しんでいたところで、
死んだ先に行きつく先が「地獄」であることは間違いない。


コネの話をさらに続けるが、

筆者の手元には「坂の上の雲」がある。
これは秋山兄弟と正岡子規を中心としながら、
日露戦争全体を描いた司馬遼太郎の小説である。

海軍生みの親と言われる山本権兵衛(当時大佐。のちに大臣)
による無能士官の首切りのエピソードは有名である。
日露開戦前に、当時の薩摩派閥というだけで
採用されていた人間を90名以上も解雇してしまったのだ。

さらに当時の連合艦隊の司令長官であった日高壮之丞を解雇し、
東郷平八郎に入れ替えることにした。人事の件を聞いた
日高は激怒し、短刀を取り出して「これで俺を刺してくれ」とまで
言ったのだが、山本権兵衛は冷静に諭して彼を納得させた。

そして東郷平八郎長官率いる連合艦隊がロシア旅順艦隊、
バルチック艦娘を全滅させたことは知っての通りだ。
ロシア帝国は海軍戦力の7割を失い、ソ連時代の後期になるまで
海軍戦力を再建することが不可能なほどのダメージを負った。

ロシア政府や軍が日本に対し、半世紀以上にわたり
修復不可能なほどの「恐怖」を抱いていることを、
多くに日本人は知らないで生きている。

仮に現代に山本権兵衛がいたとしたら、解雇される人間は決まっている。
衆参両院にいる、ほぼすべての国会議員とその子息である。

以上の歴史から見ても、もうひとつ分かることがある。

我が国が、近い将来大国間の戦争に巻き込まれた場合、
アメリカの支援がなければ敗北し、勝者の奴隷となることだ。


ところで筆者は日本の政治が大嫌いなので
作品を通じて批判するが、日本の企業のことは
批判していないことに気づいただろうか?

日本には世界に誇れる企業がいくつもあるのだ。

以下に特定の商品の
世界シェア首位の企業を思い付くままに列挙する。

タイヤ        = ブリジストン
自動車        = トヨタ(VWとほぼ並ぶ)
二輪自動車      = ホンダ
エアコン       = ダイキン
複合機(プリンタ)  = キヤノン
炭素複合材      = 東レ

セラミックコンデンサ = 村田製作所
モータ        = 日本電産
消化器内視鏡     = オリンパス

サーボモーターとインバーター     = 安川電機
工作機械用NC(数値制御)装置    = ファナック
塩化ビニル樹脂、半導体シリコンウエハ = 信越化学工業

これらの企業のほとんどはコロナ化の2021年で過去最高益を達成し、
今この瞬間もお金を稼ぎ続けている。
日本は工業生産品の輸出業で成りあがった国である。
力はしっかりと持っている。経営者も賢い。

そもそも政治家と違って馬鹿が実業家になれるわけがない。
株主総会に出席してみると、取締役も監査役も実に素晴らしい人物が並んでいる。

筆者は上のトヨタを中心としたバリュー株に、配当金目当てで出資している。
長期的視点で保有していて、四半期決算ごとに財務に不安を感じたことは一度もない。
各国の著名な投資家やアナリストからも、日本の大企業は財務体質が大変に健全で
株主への還元(配当)に力を入れていると定評がある。

つまり、これらの会社が倒産する心配などまずないのだ。

私は決算期ごとのファンダメンタルに問題のない会社は、
日々の株価を見る必要がないと思っている。
なぜなら短期的な株価の値動きなど誰にも予想できないし、
それが会社の価値を正しく評価しているとは限らないからだ。

2020年から2022年の初頭まで、
独仏米などの主要先進国の株価指数と比較して、
日経平均とトピックスのパフォーマンスは最低だった。
企業業績の足を引っ張る邪魔者がいるからだ。自民党のことである。
もっと具体的に言うと、アベノミクス以降の菅政権と岸田政権ある。

スガは東京五輪強硬開催をして世界を驚愕させた。ワクチン接種率は
当時の5月の段階で先進国中最低であり、GDPの成長を鈍化させた。
彼が衆議院を解散すると言ったタイミングで日経平均が3万を超えた。
そしてキシダ政権が金融所得課税、富の再分配など
意味不明な政策を掲げた時、日経は30%近く下落した。

日経平均株価は、日本経済の半年先以上の見通しを示すものだ。
内閣総理大臣が日経平均の足を引っ張るなど、
投資家の視点では言語道断の悪行である。

断言しよう。

この国の未来は政治にかかっている。

政府によって国民の税金が無制限に搾取され続け、国民の実質賃金が下がり
続けている日本は、もはや資本主義とさえ呼べない中世の奴隷王国である。

ちなみに執筆時点までの二年間で45歳以上の会社員が累計で3万人以上も
早期退職させられた。賃金水準の高い者は「整理解雇」されて経費削減されている。
子供の教育費や住宅ローンの残高を考えると、彼らの行く着く先は、破産である。
彼らに対する政府の保証は何もないに等しく「自己責任」で終わるのが日本だ。

民主党時代は、「若者の~○○離れ」などとふざけた見出しが新聞に並び、
当時新卒だった筆者をたびたび激怒させていたが、
若者はお金を使いたくても消費しようがないのだ。

GDPの大半は個人消費が占めているから、自民党が国民を
いじめ続ける限り、GDP成長率はG7で最下位を維持し続けることになる。

いや、もう経済学など考えなくてもいい。

業務スーパー、しまむら、100円ショップが繁盛している、
年末に多くの貧困者が炊き出しの列に並ぶ、
年間の自殺者数が先進国でトップクラス、

これだけでこの国の政治は完全に失敗していることが分かると思う。

今いる無能な国会議員が全員死なない限りは、
この国の衰退が止まることは決してない。

Go to 収容所 キャンペーン、実施中☆(令和12年)

Go to 収容所 キャンペーン、実施中☆(令和12年)

『令和10年シリーズ』のスピンオフのような新作である。 自民党による圧政が続き、国民の大半が飢え死にしていく中で、 とあるヒモ男(ダメ男)が生活のために投資をしていた。 そんな彼を救おうとする可愛い彼女(依存症、メンヘラ)との、 ラブロマンスを描く物語である。 詳しい設定は第一話に書くので、ぜひ読んでもらいたい。

  • 小説
  • 中編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-02

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. まず『あらすじ』キャラ紹介。ここは必ず読んでください。 
  2. ☆ここは読む必要はありません☆ 現実世界のインフレの見通しから説明する。
  3. ここは重要なので読んでください。「スタグフレーション」について
  4. ☆本編☆  「アキちゃん。はい。今日のお小遣いよ」
  5. 「ミスズ。すまん。ヤマダ電機が買いたいんだ。4万円貸してくれ」
  6. 「もっと頼ってくれていいのよ。いっそお財布代わりだと思ってくれていいのよ」
  7. 「丸亀製麺でお昼を食べましょう。あっ、道中でテロに気を付けてね」
  8. 「前から気になってたんだけど、ミスズは投資はしないの?」
  9. 実はミスズは外貨預金をしていた。
  10. 「株主優待株を持ってても資産が増えないって本当か?」
  11. 「アキちゃんが家出しちゃった……」
  12. 「ちょっとその辺を散歩してたんだ」
  13. 喧嘩の続き。監禁が始まる。
  14. 「いやぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあ!!」