ピュア
やさしい他人とぼくの体には、膜がある、はげしく抱擁しても傷つかない、膜、ぼくは、どうかしてしまうということ、そして、それがどれほど悲惨でも、至福だ、ということ、を、察している、(たとえば、この真空で、破裂してしまうようなこと、いっしゅんの分散かもしれない、)他人がいて、ここに、ぼくがいて、他人がやさしさ、ぼくはやさしい、(あいまいな偽、あいまいな真、)そして、恋ができる、恋人をつくることとは、また、ちがうけれど、それは恋、老人になっても、ぼくはだれかを愛している、つまり、愛される、ぼくは生きている限り、愛される、だいじょうぶだよ、と、いわれたよね、そのこえの膜、すべてむいみだという、至福の極限、いま、死が訪れても、やさしさで受けいれる、かすんでいる、網膜
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現代詩手帖2021年7月号にて選外佳作を頂いた詩です。
ピュア