日々のうた2

このおもひ 言葉にせむ

さくら木に 世をばゆづりて 梅の花 なくうぐひすと 楽隠居せむ

極楽に ずっと前から いきたいと 祈っているよ にんげんだもの

集まった 龍の七玉 学校の 友だちのため 海でつかうよ

このおもひ 言葉にせむと ろくすっぽ 考えもせず 羅列しつるよ

初歌を 作ったときは 眠れずに ミューズだけれど クールな彼女

おびえてた 小さなほたる つかまえて いきて帰れと 天にはなった

よみかけて 人の笑はば しあわせに 楽ではないが ずるく生きむよ

自由の身 ゆるされるなら 生まれあひ しあわせまでの 近き守りに

こんな血は ここで絶やして しまおうね

おもしろき こともなき世を おもしろく 駆け抜けてゆけ その両足で

伊藤翁 思ひ出されて 泣かれけむ 駆け抜けた日は 青春そのもの

散り果てぬ 旧体制の もののふに 灯明あげよ 荒城の月

青空に 蝉の鳴かない 夏休み 裁きの使徒よ 降りてこないで

みどり髪 乱してうたう あのひとは 私と歌を ともにする人

亡き人を 取り戻したい 一心で 幼き子らの 禁忌にふれぬ

泣かぬには 仔細のあろう ほととぎす 悲しく笑う わけをきかせて

世の中は 何か常なる マスメディア 昨日の不義ぞ 今日は是になる

この世をば わが世とぞ思ふ 人間の ひしめきあへる 狭き星かな

大臣の 物語する 物ごしに つらづゑつきて 暑きにとおぼす

さかしらに 己が不幸を 見せつけて 女同士の 争ひ止めつ

こんな血は ここで絶やして しまおうね あなたは私と ここで死ぬの

浮世テトリス

ほしいとき ほしい形は きてくれず 隙間をうめよ 浮世テトリス

配られた カードで勝負 はじめても 勝てる確率 ゼロではないさ

日に焼けた ドラゴンフライ つかまえた あの子の腰に 籠はなかった

公園の ハトにも顔の 違いあり 弱きをつつく いじめっこあり

亡き祖父は 七十路にても 若き日の 戦の夢に うなされにけり

あてのない この人生に 一度だけ 夢をみました いい夢でした

終末を 知っていながら 若き蛾は 立つ火柱に 乞はれて踊る

さまざまな 終末思想 とびかって 親切なひと 我に布教す

ふるさとを 見失ひて しまひけむ 転勤族は 西へ東へ

歌はうたかた

ひめられし 歌はうたかた 聞く人の 心にのみぞ 消えず残らむ

うたかたの 歌詠みびとは 消えぬれど などて心に 跡残しけむ

雨垂れを 集めて咲きし 紫陽花の 濃き藍色を 君に見せばや

愛されて 綺麗になりし あの人は 私をすてて 正しかりけむ

目がさめて 隣に見えぬ 君のこと 胸さわがせて 探しつるよ

恋すれば 鐘が鳴るなり 愛すれば 金が要るなり 湧けとごとくに

天の川 歩いて渡る アルタイル 危ふがりて 祈るベガかな

家族より 恋人よりも 仕事場に 束縛される 時の長さよ

最後まで 戦ひし人 倒れても 助ける制度 既になくなむ

帰る家 選べぬ児らに 少しでも 心ゆるして 休める場所を

死してなほ 幸せなれ

うたたねに 見しは昔の はらから※の とり返されぬ あはひなりけり

梨の花 よき実をつけよ みやびとに もてはやされぬ 幸ひのうち

とりたてて 話もなきが 共にいて 安らかなるは 嬉しかりけり

手折りては 萎れゆきなむ この花は 君が手をとり 二人で見ばや

若人の 恋こがれあひ 子が生まれ 育ついとなみ 懐かしうなむ

父が背を 超えんとすらむ このかみ※2は いづこの淵に さまよひおはす

恋のうそ 愛のまことと きこゆるは 天上人の 仰せなるらむ

恋の罪 愛で償ふ 夜明けには 去りつる国の 門開かれむ

死してなほ 幸せなれと 願ふらむ 人の心に 神はおはせむ

眠れぬ夜の羊飼ひ

平安とは 誰か名付けむ 飾りたて 身をば削りて 争ひしものを

女など みんな同じと 言ふ君に 香をば隠して かき抱かれん

同じ名を 賜りながら これほどに 生き様かたちの 違ふものかは

真実に 最も早く 近づきて 証し人ぞ 罪に問はるる

確認が いるかどうかの 確認を せねばならぬ 仕事なりけり

道化師は こけつまろびつ 笑はせむ 赤き涙の 雫を描きて

安らかで 慈愛にみちた 退屈に 耐へられずなむ イヴの過つ

育てるも 育てられるも 一度きり 楽しい時を 過せますよう

降り積る 雪に濁りの 洗はれて あがなう町は 神のもちもの

神の子の 片端だにも まねびけむ 眠れぬ夜の 羊飼ひして

花の咲きたる牢獄

貴なれど あてなき夜を 生き抜けば 空寝空泣き 空言を使ふ

何事も くまなく知れば つまらなく 枯木の山も 秘すれば花よ

世の中は 椅子取りゲーム よき仕事 よき連れあいに 空きはでなくて

人がみな 罪人ならば この世こそ 花の咲きたる 牢獄ならめ

永久といふ 輪廻の鎖 断ち切って 限りあるものに 人は憧る

人の子に 宿さるるには あまりにも 純粋すぎた 青きたましひ

賜った 愛に教わる 恐れかな 老いた女の 捨てらるること

手も声も ぶるぶるぶるぶると震えた 何を恐れていたか判った

結ばれる 暇とお金は ありますか 働く人の 婚期剥奪

すべたまふ 怖きお方の 手のひらで もてあそばれる 雪になれたら

赤ちゃんが 養育者から 愛されて 獲得するは 希望だといふ

歌で世界は救えるものか

照りつける 炎天謳歌 せみの声 七年ぶりの 娑婆に出るかな

変らない 笑顔を求む 切実の 要請をうけ 二次元の嫁

子を残し 家を存続 させむには 悲しきことも さぞ多からむ

己より 賢き者の おらぬげに 振舞ふ猫の ひっくり返る

失くすもの 少なき人ぞ 待ち望む 世界がリセット される瞬間

かみついて 貪るように 求めあい 愛されていた 証をさがす

囲われし 小さき姫の 尋ぬらむ 歌で世界は 救えるものか

醜しと 赤鼻笑ふ 貴公子の 清き笑みこそ 残酷ならめ

きぬぎぬの 歌はいらねど ここにいて 三千世界の 烏を殺し

奴隷とは 死をも自由に できぬもの 貧富貴賎を 言ふに非ず

こりずまに 誰も入れぬ 想像の 王国つくれ 指先ひとつで

気がつけば 浮世といふ名の 妻がいて 死ぬまで俺と 別れてくれぬ

たえることなく 友だちで

愛せよと 強ひるむなしき 徒労かな 人の心は 変えられぬのに

肉親を 最も近き 敵として 定められたる 悲しき人よ

とり返し つかないことが ありまして 古き傷跡 今でも消えぬ

人がみな 神の子ならば 温かく 優しき腹に 生まれておいで

安らかに 眠れる場所が ほしいから 私の中に 入ってこないで

あきらめて 金も家庭も 子もいらぬ 欲なき人は 罪人なるか

子どもなど 持たなきゃよかった 父嘆く 生まれてごめんと 娘謝る

貧乏人 ネットつないで 暇つぶし 電気があれば 何でもできる

家族って こういうものじゃ ないんだよ 気持悪いと 嫌われ果てぬ

いつまでも たえることなく 友だちで 情のかよった 他人でいよう

我は鬱の子

別れにし 君が冷たさ 焼け残る 骨の少なさ 涙で見えぬ

父が死に 母も死んで 子もなくて 広いこの世界 私のもの

逆らって 考えるのに 疲れたの 好きになれば 楽になるのに

飽きなくて 持ってることを 自慢でき 長く遊べる 楽しい玩具

お前ひとり どうあがこうと この世界 何も変らぬ 自由に生きよ

環境を 変えてみましょう 考えを 変えてみましょう 我は鬱の子

すべてを 理解することは できないし 理解してもらう こともできない

父がまだ 父じゃなかった あの頃に 戻してあげられたらいいのに

死神の お迎えに来た 手をとって やっと死ねると 涙を流す

一度きり 練習なしの 本番で 出せた結果が 実力なんだ

糸切れし 操り人形 屍かな

明日はまた 敵に戻ろう

生きるって 悲しいことね 生きるって 疲れるけれど 楽しいことね

偽りの プライベートを さらけ出し 本当の私事を 守るという芸

歳経れば どんな苦労も 美しい 夢のように 思い出される

初めに歌があった 歌は人と共にあった 歌は人であった

あなたから 繋がる機械 あなたの 鼓動がやむと 止まる機械

女には 群れねばならぬ 時があり 昨日の敵は 今日だけの友

もう二度と かなえられない 夢を見る 家族団欒 楽しい我が家

とりけもの 親の子育て 上手いのは 勝ち抜いてきた エリートだから

親と子は 同じ景色を 見ることは できないんだねと 悲しく笑う

長男も 長子も抜かん 貴族の世 争ひ勝つが 生きる価値なり

さけられぬ 定めのままに 咲く花は 命繋ぎて 名残なく散る

明日はまた 敵に戻ろう 好敵手

都はこにわ

百姓の 秋は実りの よろこびに 暇な貴族は 寂しとうたう

私たち この悲しみと 喜びを 繰り返すため 生まれてきたの

かみさま あと何年 この役を 俺は続ければ いいのですか

ブックオフに 私の探す 本はない 売られないのか 売れてないのか

その席は 俺じゃなくても 埋まる席 用が済んだら 明け渡す席

愛の先に 何があるの 結ばれて 子どもの先に 何があるの

思い出は 別れる人と 作るもの 別れぬ人や この世にはある

ここでなら 役立てられる 官と爵 皇胤(こういん)のさと 都はこにわ

あなたに 父と呼ばれた その日から 俺の世界は 変りました

ありがとう ごめんなさいと 微笑みを くり返して 歳をとれたら

ありがとう あなたに会えて よかったよ あなたをずっと 愛しています

我が身を熔かす焔

思い上がり 他者評価との 差が怖い リラックスして 分を知ること

ここでまで いい子を演じる ことはない 悪い子になる 必要もない

いつだって 最後の人に なるように 願った腕に 抱かれてるのに

大魔法 勝利もたらす 代償に 我が身を熔かす 焔が見える

主よ、東の最果てには 神がたくさんいらっしゃいます

残酷に そんな貪欲に やらないで 言葉をなくして 命を消して

自分では 爆弾落した つもりでも 小石くらいの 価値しかないの

ネットには 星の数ほど うたがある 私の言葉 銀河を飾れ

脅迫者 あなたが私の 天使なら その手で黄泉に 送ってみせて

君の代を 千代に八千代に 守りたい 一年長く 一日も長く

君の描く 二次元嫁は美しい

結婚は 船出でした 僕たちは ひとつの舟で 沖に出ました

こんな世界 ほしかったら あげるのに どうして君は 執着するの

どちらを 選択しても 責任は 俺が取るから 君は格好いい

昔は よかったなどと 無責任な 補正をすまい 今がマシだよ

若い蚊の お母さんは 懸命に 巨人の生き血 すすりに来ます

手も足も 真っ黒にして 稼ぐ母の 白き娘に 面影を見る

君の描く 二次元嫁は 美しい 男の誠実 女体に乗せて

美しい 美しい眼をして 翁は 静かに働き 静かに眠る

貧しくて 周りの人に 叱られて なぜ生んだと子に 怒られます

同じ場所で 同じ行為に 耽っても 違うことを 考えている

陸の金魚

他人に 救われることが あります 何の事情も 知らない人に

しあわせに 育ててくれて ありがとう 底辺なんて 知らなかったよ

似た言葉 使われてると 嬉しくて 僕らは同じ 来た時代の子

夫ひとり 守れぬならば 妻なんて 辞めているの クイーン動く

暑いけど ここで負けたら この夏の 思う壺だから クーラー避ける

街中で 座れる場所を 探してる 歩き疲れた 流浪の民よ

白い背に 浮ぶゆかたの 帯模様 陸の金魚は 夜店に泳ぐ

石橋を 叩いて壊す 力持ち ここより先へは 行かせないから

流されし 痛み悲しみ 苦しみも みづから生まれ みづへ帰らむ

赤ん坊の 無邪気な笑みも 生存を 高めようとする 工夫だと聞く

命の水輪

夜勤明け 三時間しか 眠れない 底辺たちの ここは戦場

底辺に 高さをかけて 二で割れば 貧乏所帯の 望む三角

生きるとは 失うことの くり返し 何か得るには 犠牲がいるの

在りし世を 偲ぶよすがは くれなゐの 王の(しとね)の 去りがたき色

深海に 潜む宇宙は 有限の 命の水輪 生まれては消え

男は 言葉で嘘を つきました 女は体で 嘘をつきます

十代を お利口さんに 過しても つまらん大人に なるだけでした

私は あなたのことを 忘れたい いい思い出も 消えていいから

仰ぎ見る 絶望の色の 美しさ 天より注ぐ 恵みに似たり

すべての 感覚から解き放たれた 静謐こそが 天国なのね

地獄で会いたい

銀河かと 見まがふ色は 白き花 夜藍の墓地に 低く咲くなる

朝夕の 風は涼しく なりにけり ものの始めは 端より変り

若者は 殺す間際に 改宗した 地獄で会いたい 人のいるため

狭い部屋 作り付けの 寝台で ひとり静かに 眠れる夢を

神の名を かたって人を 殺すのか 人類同士の 兄弟喧嘩

この星に はじめて来た子 習慣も 言葉も知らず 困り果てて泣く

よの中の うつくしければ 生きたひと いふこともなし 死ぬこともなし

僕たちは 旅の途中 この世界 見たり聞いたり 楽しんでくるね

愛されし 子に裁かるる 嬉しさよ 親の支配を 否定しなさい

偏屈な 私の母の 口癖は 建設的な 話をしよう

鎖につながれて育った子ゾウ

鎖に つながれて育った 子ゾウよ お前はもう 自由なのだよ

負けたから 終りじゃないし 勝ったから 終りでもない 咲ちゃんありがとう

欲しがって すべての門を 叩きなさい 手に入れるたび 何を失う

どなたです 天国の門を くぐるのに 痛みを伴ふ ようにしたのは

そんなに つながりたくは ないのよ 電波の網の 届かぬ場所へ

異常気象 戦争兵器 太陽光 医療福祉と宇宙開発

有り余る 母性本能 もてあまし 二次元嫁と 猫可愛がり

死の床で はじめてほっと 息をつき 主の訪れを 待ちわびてゐた

苦労して やっと見つけた 仕事場は 小学校に 似た残酷さ

自ら 死んだ者を 救ふため へヴンもヘルも 失くしました

礼賛の 形をかりた 批判かな

私のかみさま

糸の切れた 凧のような 人生だ 凧はようやく 自由になれた

生れ落ち すべては始まってしまった 師走の馬屋 清しこの夜

一生の 傷がついたと 思ったの 子どもは親を 超えてゆくもの

あらうみに 迷ひし舟も 憩ひなむ 月と風と 波のしじまに

冬の田に 胸ふくらます 雀の子 騒がしかりし 落穂拾いよ

人知れず 家を出ずれば 如月の 藍より赤へ 明けわたす空

内からの 新芽萌え出づるに及びて 旧き枯れ葉 やすらかに落つ

わたくしを 助けたまひし あの方は 罪びとなれど 私のかみさま

その光 浴びんがために 闇を()け 自ら選ぶ 新しき朝

指の長い あなたのために ある楽器 あなたにひかれ 思いを話す

消えぬことのは

貧しくて 心苦しき やうなれど 縁あれかし 天の客人

幼子は 大きくなりぬ 甘えつつ 与えし親に 抗うほどに

集に載る 誉れなけれど この夜に ささやきかはし 消えぬことのは

殺すもの 殺されるもの 解き放て オリーブの木々 生い茂るとき

パンプスを 残さず帰る シンデレラ 仕事のくにの 王子を逃れ

女の子 助けてくれて ありがとう よみ人しらず よめてありがとう

万葉の うたはおおらか 平安の うたはわるい子 夜更かしをして

人のため つづられし詩の 美しさ ぽんぽんぽんぽん ことのはつもる

歯ぎしりに マウスピースを 作りたる 夜のボクサー 誰とたたかう

無心に はたらけどどこか ぬけてをり のどかな女 あひする男

必死の娘

永遠を おそるるなかれ 暗闇を いとひしこころ 失はれをり

疲れ果て 機嫌の悪い ふた親を 笑わせようと 必死の娘

OSを 変えれば家の 変るごと フォルダ一つで 浪漫飛行へ

いつからか 死の訪れの なくなりて 死におもむかねば ならなくなりぬ

春霞 立つに変るや 海こへて ただよひきたる 汚染物質

ありがとう 私に孫は いないのよ 若き詐欺師の あやまりて切る

血のみそぎ 受けし我が子と 出会うかな 産声あげて 我とわかるる

この傷が 目に入らぬか 印籠を 取り出すごとく 悲しみ見せじ

願わくは 雪のうちにて 冬死なむ 光も音も 眠れる夜に

太陽も 公転すらし ねぢをまき 進みつづけむ 宇宙時計

滅びゆく町

波音に 和する祈りの みちゆかむ 天つ空まで 海の底まで

さきちるは ことわりなれど 梅の花 春先駆けし 馬のはなむけ

とみ栄え 人を売買 する都 美しいまま 滅びゆく町

いつの日か 我もかへらむ この星を つくりそめたる 白きガスの火

銀河より 去らぬ定めの 別れにも 君がみ声の 聞えぬぞ憂き

多き水 多き肥料に 傷むかな すぎたる愛の 及ばざるごと

囚われし 女ほほ笑みて 礼をいふ やっとゆっくり 休めそうです

天国の 門たたきたる ともがらに 波うちかけよ 朝焼けの海

この星は わたしのおはか 見習いの 魔法使いと 天使の寝床

色さめし 細き糸なる 銀の髪 はえそろふ日の いかに老いぬらむ

雪降りて 戦やみたる 神の土地

雨中の桜

沿線に 雨中の桜 咲きにけり 昔かなえし 夢を数えつ

思ふどち 高き(きざはし) 上りあへば 月へと続く 夜桜の宴

アニメから 卒業する日 君は立つ 世界を守る 使命を終へて

あなたが 罪を犯しそうになったら 何度でも 私が止める

自分など なくても今日は 変りなく 回ると知って 少し楽になる

忘れ果て 生れ変りし 君と会ふ はじめまして 罪とは別れ

雨宿り 君に会ふたび すれ違い キスだけするの やめてくれない

打つ雨に 心残りの 落されぬ 花と別れし 新緑の頃

金属を 曲げたるのみで 響きたる 神の楽器 夕さり吹けば

急ぐ子を 腹に守りて 運ぶてふ 銀のくちなは 地下ひた走る

「思ったより 多くの人が 見ています」

たけき夢 我身をしばる 呪ひかな 諦めきれず 人はふりゆく

たえまなく 天より落つる 雪時計 つもりし時の 二度と戻らず

どぢをして 多くの人を 笑はせむ 笑はれながら 人を助けむ

君とねる 約束をした 丘の上 雲は流れ 星の煌めく

「思ったより 多くの人が 見ています」 利用規則の やさしい言葉

脈拍を 上げれば楽し 脈拍を 下げれば悲し うたになるらし

感情は 残っているの 最期まで 私にふれて 笑ってほしい

物語に 生まれし人よ 末永く 幸せであれ 仲間とともに

うたのため はこぶ筆先 墨の香に こころをどりて いにしへしのぶ

くらやみに ただ手さぐりの 恋をして 目を覚ますたび ため息つきぬ

僕の彼女を見つけて下さい

人生に 練習はなし もう一度 リプレイもなし 本番だけね

連れ去られ 薬入れられ 戦場へ 悪魔といふなら 人こそ悪魔よ

あたたかく 私を守る 悪の闇 正義の光に 倒されないで

ばかだなあ また落ちてきて しまったの 上げてやるから もう来ないでね

カワサキの 黒いバイクに 乗っている 僕の彼女を 見つけて下さい

生きるとは 同じ時間を 過ごすこと 愛は行為 愛は微笑み

ひとりして 亡くなる人の 傍らに 祈りて看取る 女のありき

ひとはみな どこか欠けて いるような 欠片同士で つながっている

こどもは 愛を食べるの 腹いっぱい 愛を食べて 大きくなるの

古い団地に風吹き渡る

太陽に 星の宴は かき消され 瞬きだけが 瞼に残る

これといふ 望みもないが この星が 豊かであれば よいと思ふ

制服で 新幹線に 飛び乗った 少女は家出か 仕事か旅か

こうやって 死への悼みを 取り戻す 記憶を起こせ 記録に残せ

一日中 風に揺られていました 洗濯物の 気持ちになって

あのとき 心にぽっかり あいた穴 吹き抜ける風 今は涼しく

彼方より 母なる海へ 還らむと 急ぐ雨音 空恐ろしく

丘の上 空はこんなに 美しく 古い団地に 風吹き渡る

つきあいは あっさりでいいと 教わって 心がすこし 楽になります

ありがとう まわりみちでも がんばれる 最初にあえた 君がいたから

同じ価値を持った日

四階の 壁よぢのぼる ヤモリの子 私と出会い 互いに逃げる

電源を 切るに切れない 夜の虫 今日は何時に 寝られるだろう

手錠を かけられたまま 離れてく 罪を犯した 男と女

風かよふ わが家に集ひ 語りあひて みなで食べれば やっぱり美味い

父親の 思春期課題の 再燃と 中年の危機 同時に来ます

太陽の 光あつめた ランタンを 魔法みたいに 持ち歩きたい

本番の 犠牲になる 日常でなく すべては同じ 価値を持った日

できるとき できることを できるだけ ひとりひとりを たどりに行こう

血の巡り 私のまちに とりもどす ソーシャルファイナンス動きだす

私おつぼね

知らぬ間に また増えている 君の嫁 片づけている 私おつぼね

童顔を 酒とたばこで いぶしつつ きつい目元は 変ってないね

うろこ雲 美しいまま 列をなし 夕焼け空に 溶けていった

うそつきは 恋のはじまり 大切な あなたをおいて きてしまった

うちの子も いいんですかと おかあさん そんなあなたと 入りたいんです

大勢の 人の手に自由をゆだね なすがままに させておく君

何気なく 流す涙も 染められて 真っ赤な秋に 遊ばれている

生きていると 言い切るほどの 気負いもなく 生かされている しあわせの国

私の 一番すきな 短編は いつも集の 題にならない

安定と 平和こそ稀であるらしい 停滞しつつ ざわつく世界

三十五歳無職の語る未来

みそ汁の おかわりはないんだよねと きく痩せた子の あまりに悲しく

養って もらうだけでなく 働いて ともに生き抜くための契約

需要ある 業界に飛び込んでゆく 自分にやれる ことをやるため

私では 逆立ちしても 父祖の代の 苦労に到底 及ばぬと知る

ありがたく 甘い香りに 包まれて そのまま天に 召されそうな日

不可能と 思われていた ニーズを 実現させていく新しさ

三十五歳無職の語る未来を さえぎらず聴く 梅田構内

永代の 供養を頼む 寺の子は 父僧と喧嘩して家出中

終ったと 思ってたけど まだ何も はじめてなかった ことに気づく

「戦争は 政治の敗北だと思え」

抱きしめて 眠ったはずが 朝になると 跡形もなく 消えている君

夜更かしを 満喫しての 朝寝坊 二度寝の夢に しくものぞなき

制服の 戦士もいいが この頃は 世界を変える 大人が見たい

一度は 人に買われた 本たちも 背を向け次の 主を探す

高校の 先生に夢で 会いました 先生ありがとう 先生お元気で

秋風は 息するように キスをして 私の隣 通り過ぎてく

「生んでくれと 頼んだ覚えは無い」などと 反抗しながら 甘えていた

消費者も 世界の未来 変えていく サステナビリティ インベストメント

あなたは 短編のような 詩を書いて 哀しいことを 哀しいままに

「戦争は 政治の敗北だと思え」 軍人たちの 歌がきこえる

順調に忘れられていく

結婚後 覚えた趣味は おしなべて 君がいないと つまらない趣味

誕生は たぶんベストの 尽くしあい 母も全力 子も全力

こころから 尽くせる主 見つけた日 夢をもつより 幸せかもね

習い事は ひとつかふたつ ごはんは お腹いっぱい 提供したい

静謐な 湖水の心地 私は 私でしかないという気持ち

「あなたなら きっと大丈夫だと思う」 保証はないけど 確信があり

尽しても 順調に忘れられていく そんな幸せな 母になれたら

おしよせる 不調の波に 子の無事を ただ祈る日々 明けては暮れる

愛し子よ 力のかぎり 長く生き 二十二世紀の はじまりを見よ

ひかる十字架

ふと鏡 のぞいてみると 老けたかな 使い込まれた 笑顔があるね

お母さん 人はしんだら どうなるの みんな思い出に 変るんだよ

天変地異 神さまだって 奪えない 私の中に 身につけたもの

親は子の 犠牲にならず 子は親の 犠牲にならぬ 世の中がいい

私には やりたいことが 何もない 夢に縛られぬ 自由もあるか

うちゅうに ひるはあるの うちゅうに よるはあるの あさはあるの

ひとりの男をひとりの女が独占するなんて もったいないね

男の子は 本当にゲームが 好きだねえ いつも何かと 戦ってるね

いろんなひとがいろんなことをいうね 「本当かな?」よくかんがえてみてね

ひこうきは ひかる十字架 輝いて 時代の空へ 吸い込まれてく

われない器

ぼくたちは 裸で愛を 語りあう 美がすべてを 支配する場所で

電脳の 中へ行きたい 肉体の 殻を脱ぎ捨て 楽に生きたい

比類なき 絶対的の 権力の もたらす平和 あるものと知る

遺伝子は 必要ないの この世界に あなたの意思を 遺しなさい

所有には 管理が伴う 所有には 愛と憂いと 刺激が伴う

愛している どこで何をしていても 誰といても 愛している

子がぐずり ぐずりやまずに 母も泣く 神経質な 泣き虫母子

敵でなく 味方になろう 母と子と チームになって 協力しよう

赤ちゃんは いつか泣き止む 泣き顔も 笑顔もいつか 思い出になる

病院の 冷めた食事が 好きでした われない器に 薄味おかず

愛は諦め

ふしぎだね みんな赤ちゃんだったのに 昔を誰も 覚えていない

幸せは つねに足もとに 咲いていて 気をつけないと ふんじゃうんだよ

死なないで 時を止めないで 周りの人の可能性を止めないで

子育ては 責任重く 手探りで どの仕事より 難易度高い

泣くたびに 抱いてあやして 午前二時 愛は諦めに 少し似ている

この敵は 昔の仲間 戦って 猛るたましい 鎮めてあげる

何かを するより先に 今ここに ここにいることに 集中してみる

天国で 大型バイクに 乗るんだよ 幸せそうな 君の微笑み

天国で 楽しそうに 仕事する 君の姿を 夢に見ました

赤ちゃんが 寝ている間に 泣きましょう 起きてる間は 笑いましょう

私を見つけて下さい

正幸(まさゆき)の 名を書くことが へっていく 彼はたしかに ここにいました

君の死に 悲しみゲージ 振り切れて 滑稽ですらあると思った

天国でも 私を見つけて下さい また私を 見つけて下さい

お土産の クッキーの箱 ひしゃげてた 痛かったね 今までありがとう

あなたの 帰る場所は もうここでは ないと分かった 遺品整理

人をひかず 人にひかれず 胸を打ち 微笑んだまま 亡くなった君

夕暮れに 君が最後に 見たものが 明日への希望で ありますように

友だちと お仕事格差 できてたの 君にも名刺 持たせたかった

自転車で 婚姻届 出しに行く 2006年7月8日

争いを とめる側に なりたくて やさしい君が 大好きでした

日々のうた2

日々のうた2

  • 韻文詩
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-13

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. このおもひ 言葉にせむ
  2. こんな血は ここで絶やして しまおうね
  3. 浮世テトリス
  4. 歌はうたかた
  5. 死してなほ 幸せなれ
  6. 眠れぬ夜の羊飼ひ
  7. 花の咲きたる牢獄
  8. 歌で世界は救えるものか
  9. たえることなく 友だちで
  10. 我は鬱の子
  11. 明日はまた 敵に戻ろう
  12. 都はこにわ
  13. 我が身を熔かす焔
  14. 君の描く 二次元嫁は美しい
  15. 陸の金魚
  16. 命の水輪
  17. 地獄で会いたい
  18. 鎖につながれて育った子ゾウ
  19. 私のかみさま
  20. 消えぬことのは
  21. 必死の娘
  22. 滅びゆく町
  23. 雨中の桜
  24. 「思ったより 多くの人が 見ています」
  25. 僕の彼女を見つけて下さい
  26. 古い団地に風吹き渡る
  27. 同じ価値を持った日
  28. 私おつぼね
  29. 三十五歳無職の語る未来
  30. 「戦争は 政治の敗北だと思え」
  31. 順調に忘れられていく
  32. ひかる十字架
  33. われない器
  34. 愛は諦め
  35. 私を見つけて下さい