日々のうた3

未亡人

この海で朝は浜辺のゴミ拾い 夜は二人で星を見るんだ

思いきりアホできたのが懐かしい 私のダンスでまた笑ってよ

愛さない愛します愛す愛すとき 愛せば愛せ君を愛そう

へんてこで失敗ばかりするけれど こんな自分がけっこう好きさ

別れたのは出会った証拠 死んだのは命をかけて生きてた証拠

未亡人思えばすごい呼び名だなあ まだ死なないよ娘もいるし

ポーンからクイーンになり君のこと 縦横無尽に守ってみたい

好きなのは時間忘れてもくもくと 作業した後見える夕焼け

風にゆれ君のとなりで空を見る 僕は光合成をしていた

夏は思い出

「先生、石器時代から数えて ぼくら何代目くらいですか?」

ぽよんぽよん叩くと君が笑うので 腹の脂肪はそのままにします

ぼくは今日花火になって君のこと 笑顔にしたら消えてしまおう

「おいしいね」「あつい」「つかれた」「……ありがとう」「ああ、きれいだね」 夏は思い出

「かき氷専門店があるらしい」 ちょっとざわつくラムネとわたがし

敷物を車の上に干してたら 30分で乾くよ猛暑

友達とはしゃいでいても君のこと 目で追っている真夏の夜店

日に焼けて男前になる君と 次第に女子力を上げる僕

あれは恋だったのかなあ尾を引いて 燃えながら降る流星の群れ

君が好きだよ

昨日見たおかしな夢の内容を きかせてくれる君が好きだよ

天国のご先祖さまも大移動 たまには顔を見に来てやるか

舞い込んだ小鳥を皆で逃がそうと 一丸となる二限の数学

日に焼けた君の目は黒く輝いて 夢への道を歩み始める

チョコチップクッキーうまい チョコチップクッキーうまい 涙で苦い

障子まで破って食べちゃう子のために お菓子の家にリフォームしたい

乱暴で孤立していたじいちゃんを 甘えん坊にした認知症

どうせなら2100年見れるよう ゆっくりいきなと娘を寝かす

お盆明けくらげも増えてないみたい 風さわやかな秋の海です

動物だもの

疲れてるときほど君の夢を見る 助けに来てくれてありがとう

大泣きのたび「私何かしたかな?」「病気かな?」とびびる母です

ひい孫が歩けるようになったころ ひいばあちゃんが歩けなくなり

十代の時が一番つらかった 頑張ったねと言ってあげたい

逃げるのと休むのがとても大切ね にんげんだって動物だもの

手入れなどほとんどしない荒れ庭で 蝶々たちは恋をしていた

ほっぺたに赤い涙を浮かべてる ピエロをうまく笑えなくて

ルシファーはどうして堕天したんだろ 検索窓にきいてみる午後

昨日までこれでうまくいったのに…… この世と子供は諸行無常

業界で愛用される何か

鈴虫でにぎわっている庭の隅 つくつく法師の抜け殻ひとつ

ぼくたちの言うことを疑う子たちが 未来を創ってくれる気がする

しあわせが歩いてくるよニコニコと 最近覚えたあんよがじょうず

クロアゲハ美しい羽休めてる 供を連れない女王みたい

親ってさ、ぜんぜん強くないんだね 自殺のニュースがこんなに悲しい

君と手をつないで走ったあの頃が 自分史上で一番好きだ

村じゅうが田畑を売り払ったので ばあちゃんちはニュータウンになった

世間では無名だけれど業界で 愛用される何かになりたい

二つあるものの一つが無くなると 気になるようになってしまった

マンガに出てくる人

ぼくの背で眠る彼女はあたたかく ずっとこうしていようと思った

更新がいつまでたっても終わらない パソコン君は持ち主に似て

君とぼく相性ピッタリだったので そこは信じる四柱推命

適切な距離をおければたいていの 事故は防げるみたいね人も

私ってマンガに出てくる人みたい いっつも同じような服着てる

敵に子を託した思い 敵の子を育てた心 戦乱の世に

割れにくいプラスチックの皿が好き ひとも自分も傷つけないよ

「そのままで大丈夫」っていわれると むしょうに何かはじめたくなる

「預けると寂しがるから」なんて嘘 寂しいのは私のほうだった

君は風になっちゃった

母親に子供が合わせてくれている そんな気がした今日のこそだて

公園でいっしょに遊んでいるときが 一番楽しい晴れの日続け

いつまでもあると思うな子どもらと 話せる時間すごせる時間

またひとつ大人になったということさ 見えないとこで出す赤い舌

死に向かう旅の途中に美しい 景色と美味いものがあればいい

のんびりと君の帰りを待っていた 平和な日々をふと思い出す

大人だって踊りたいし歌いたい 走り回って叫びたいのさ

わたしたちどこに住んでも一緒だね 君は風になっちゃったから

今日も誰かが生まれています

すぐ怒りすぐに忘れて笑ってる だんだん親に似てきたみたい

病棟にハッピーバースデーの文字 今日も誰かが生まれています

少しずつ離れていくのわかるから 小言をやめて君を見ていた

手のひらに収まる薄い箱の中 たしかに僕ら生きていました

アナログな僕らもAIでできている 押し合いへし合い傷のなめあい

悩みごとあると手仕事はかどって スヌードふたつ編めど決まらず

君と観たアニメが再放送してる 懐かしいねお正月は

窓からの眺めで部屋を決めていた 君に倣って引っ越す二月

生暖かい雨

大雪で除雪作業が追いつかず トンネル抜けられないのも雪国

「いいね」より「わかる」ボタンがほしくなる しんどいことにも共感したい

雪解けるせせらぎの音 鳥たちの弾む歌声 春はすぐそこ

バレンタインチョコレートより雪融かす 生暖かい雨を下さい

総回診みたいになっても大丈夫 路上教習応援します

友達がすぐできなくてもまあいいか 子供同士で楽しむ広場

生きているうちから千の風になって 心は春の野を駆けめぐる

イヤイヤ期君は忘れてしまうかな 怒鳴った母も忘れておくれ

落とし物君が渡してくれるもの 入れとくためにパーカーを着る

三十六の朝

書いたメモ忘れたけれど書いたこと 自体は覚えてるような人生

流行に乗ってないけど気にしない センスはないが好みはあるの

ハッピーエンドに胸が締めつけられる 疑い深くなってしまった

顔の良い妹ばかり可愛がる 父親を見て胸が痛んだ

忙しい田舎の共働き夫婦 海も山もそこにあるだけ

ぼくたちも二次元世界の住人さ 勇者が現れるのを待ってる

抱きしめてふれあうだけで満たされた 昔むかしの愛をさがして

「ここからは入ってこないで」 怒りって境界線を示してるだけ

私をいじめてた子と和解する 夢を見た三十六の朝

すべてゆだねてしまいたい午後

仕事なら金になるけど学校は 休んでいきなつらいだけなら

架空でも素敵な家族は描けなくて 家族みたいな他人を描く

母親の言うことなんてききません そういうところたまらなく好き

生まれてはじめて自分を売りに行き 売れ残っちゃう就職活動

キャラたちの名前からいつも考える 彼らは話し、動き始める

親しげな会話をきいていたかった 読むのも書くのもそれだけのため

つらかったねと言ってくれる人に すべてゆだねてしまいたい午後

あなたはいつも私を受け入れて 笑顔をくれた恩人でした

吸わない人への配慮を忘れずに たばこを吸う人が好きなのです

星形のアクリルビーズ

この星に雨が降っても向こうでは 大丈夫だよふたりは会える

こんなにも降ることないのに こんなにもすべてを流すことはないのに

颯爽と私を抜いたアウディが 警察に呼び止められて夏

カッとなり我を忘れて怒鳴ったら 一番嫌いな人に似ていた

君のことぎゅっと抱きしめ「ありがとう」 いつか「さよなら」言えますように

星形のアクリルビーズ日に透かし 君はさけんだ「きらきらしてる!」

少年に一輪の花手渡され 君はしおれるまで握ってた

置いとくとたまに誰か見てくれる 今朝とれた歌セルフサービス

子育てを手伝えぬまま祖父になる 父の助言の使えないこと

世界はやがてオレのもの!

汚しても壊しても別にいいけれど 自分で片づけてって思うの

0と1で進む世界が 0を1に変えたと思う ここが好きだよ

夏の夜ファミマでスイカバーを買い 君と乾杯して食べている

ランドセルという鎧を脱いで 小さな戦士たちは羽をのばした

気持ち悪がられない程度に伝えたい 「すごく感動しました」って

子どもらは瞬時に嘘を見抜いたが 親を気遣いだまされたふり

世界はやがてオレのもの! バイキンマンはこの世界を愛していた

砂浜で君と夕日とたわむれる イメトレだけはしてるんやけど

「ワタシヲスクッテクダサイ」 メロンソーダ海上カラSOSアリ

秘密のメッセージ

ゆるふわの彼女が選ぶ鬼モード 笑顔ではしゃぐ太鼓の達人

「がっこうにいきたくないな……」いいんだよ ゆっくり休んで相談しよう

「帰りたくない」と泣く泣く手を振った 夏の思い出来年もおいで

宿題をやらずに平気な顔してる 教え子は少し大人になって

折り紙の裏に秘密のメッセージ 君の鶴だけ見舞じゃなかった

ラピュタ王ムスカ大佐の気分です 走る子を追う大股の僕

雑草を抜いてひげ根を見てみたら 毛細血管私と同じ

ハロウィンの準備を始めている売り場 今年も三分の二が終わった

浴衣ってパジャマのような気がしてさ 外に着ていく勇気がないの

夜更かしの世界選手権2歳児の部

夜更かしの世界選手権2歳児の部があったら君を推薦する

君といるとあっという間に一週間 一か月一年たつのです

二回目の命日がきて思うこと あの年はもっと暑かったね

最初から満ちても欠けてもいなかった 永遠にすれ違っていただけ

その羽で気の向くままに飛べばいい 海を渡る蝶もいるのだから

あなたに倒されることだけを夢見て強くなった 哀れな獣

好きだったオモチャもじきに飽きていく 残酷なほど後腐れなく

流行の曲が流れる店内で 来るはずのない人を待ってた

欲望を正当化してこの夜に 愛があったと思いたいだけ

永遠の愛じゃなくても

ずるいなあ優しかった思い出だけが とわに残るよ歳もとらずに

黙って急にいなくならないで 探してしまうから 忘れられずに

永遠の愛じゃなくても一晩の 安らぎをただ重ねられたら

お互いに伴侶の話などをして 恋でないこと確かめている

一回りするからわかりにくいけど 昨日も今日も二度とは来ない

白黒をつけずに一度受け流す 「そうなんだ」ってうなずきながら

私には始まりだけど あなたには終りなんだね 昨日のことは

とりあえず潰れないこと焦らずに どうにかなるさと笑っていたい

うちの子に数限りなく許されて 私は親をやっていられる

子どもの時間

子は足で親は靴かもしれません 変わる必要があるのは私

恋愛と呼ぶにはもったいないような 距離と空気感の二人が好き

子どもには子どもの時間流れてる 24時間以上の何か

恋愛も周回遅れの僕のこと そんな優しく応援しないで

ラスボスを倒した人がラスボスに されちゃいそうな職場でして

体重が急に増えたら黄信号 急に減ったら赤信号です

文壇に「これは小説ではない」と 言われた人の小説が好き

「兄さんのすすめる(かた)ならもらいませう」 旧家の庭に咲く冬の花

ソリに乗らないサンタ

アンパンマンみたいなほうれい線が 濃く現れる冬の朝です

晴れた日に何の予定も入れないで 日向ぼっこから始める贅沢

おひさまみたいなあなたのぬくもりに 私の心はとかされました

失敗をカウントするのやめました ごめんなさいして次に行きます

「死にたい」と言ってるうちはまだマシで 「今までありがとう」が危ないと

遺体にもキスをしていた 心臓が止まったくらいじゃ愛は消えない

この星ではちりあくたすら輝いて 空からそっと降ってくるのね

クリスマス働くすべての人たちが ソリに乗らないサンタなのです

君を愛しているのだから

「あおむしがちょうちょになっちゃった」といって 君はえんえん泣いていました

狭いコタツいっぱいにごちそうを並べて 君と祝う新年

男とか女とかもういいのです 君を愛しているのだから

懐を気にせずガチャを回したい 大人にもお年玉を下さい

通りすがりの主人公を少しだけ 助けるモブの一人になりたい

源氏物語みたいですね 似た人を探して 埋まらぬ心

「まっ白な雪で汚れちゃった」という 君の感性に目をみはる朝

唇と長い指先行き来する セブンスターになりたい夜だ

「お母さんがいい」と言われ誰よりも 愛されたこと忘れないよ

アカウントひっそり消して

暑い日も寒い日も猛吹雪の日も 外で働く人のいること

「出張でちょっと月まで行ってきます」 そんな時代に生きてみたいな

自分にもおいしいチョコをあげませう 日頃の愛と感謝をこめて

童謡の悲しい歌詞を子どもには 伝えられずに歌うハミング

次こそは春に花咲く植物に 生まれるような徳を積みたい

失敗を取り戻そうと マイナスをゼロにしようとつのる執着

あったかい缶コーヒー1本ほどの たばこ一服ほどの幸せ

愛なんて圧倒的な寝不足の 前には何の役にも立たぬ

アカウントひっそり消して荷が下りて いなくなるのはこんなに簡単

ラッキーだった

十年落ち中古車を買う 修復歴事故歴無しの縁起の良さも

学校に行っても行かなくてもいいと 言えるような仕事がしたい

こんなにも怒りんぼうになるなんて 思わなかった親になるまで

日本から人が静かに減ってゆく 母校の規模も小さくなった

ゴールデンウィーク前にきといてよ… 自動車税の納付通知書

うちの子の最推しがアンパンマンから きかんしゃトーマスに変わった日

ひどいこと言われても「気の毒な人」と 受け流せるスキルを手に入れた!

良かったなラッキーだったと捉えてく 黒を白へと裏返すように

うなだれて咲く花はなし小さくとも 我こそはとふ気概で咲けり

中高年よ嘘はやめよう

卑怯な大人ばかりで恥ずかしい 中高年よ嘘はやめよう

こうやって必死に生きていることも 上から見たらお遊戯かしら

よりかかるほうも気を遣っている 椅子は背もたれなしが好きだよ

こども園笑顔でバイバイしてくれて ありがとう母も今日を生きます

育て上げ介護知らずで死んでゆく そういうものに私はなりたい

割れにくいシャボン玉液の配合を メモして少し親力を上げ

英雄を志す君が一番の 怪獣である楽しいわが家

生き残ることに必死な猛暑です 32℃の夏が懐かしい

安全に外で遊べぬ夏休み 子どもはどこに行けばいいのか……

プラレールにも逃げたい日はある

アンパンチも何度もやればオーバーキル 力加減を学べわが子よ…

混んでるとわかっていても子連れには 行かねばならぬ行楽がある…

脱線し道なき道を行く列車 プラレールにも逃げたい日はある

今までの記憶をすべて失くしたら 生まれ変われるのかしら、なんて

三連休終われば財布スカスカで 親はヘトヘト子どもニコニコ

大統領! くらいの人にも代わりはいるから休んで大丈夫。

年齢を重ねるほどに 自分は何も知らないと気づかされる

もっともっと優しくすればよかったと 後悔しないために今がある

簡単に治らぬことで 傷の重さを証明しようとしてた

生き様が顔に出てくるお年頃

好きなだけ時計の針を巻き戻し 思い出話に浸る年末

いつまでも空いている部屋 釣りかしら? 運命かしらなどと考え

プリキュアを買わされため息ついてたら ライダーはもっとえげつなかった

母親も電源切って休みたい 「営業時間外」って言いたい

「僕を見て」「私を褒めて」「いいねして」 なんで必死になっちゃうんだろう

情熱がなくなったのは満足か 敗北か飽和か卒業か

生き様が顔に出てくるお年頃 眉間のしわを必死に伸ばす

「いろいろあったけど今は幸せ」 そんなふうに生きたいもんです

砂山を作って壊され作っては また壊されて今日も子育て

日々のうた3

日々のうた3

  • 韻文詩
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-13

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 未亡人
  2. 夏は思い出
  3. 君が好きだよ
  4. 動物だもの
  5. 業界で愛用される何か
  6. マンガに出てくる人
  7. 君は風になっちゃった
  8. 今日も誰かが生まれています
  9. 生暖かい雨
  10. 三十六の朝
  11. すべてゆだねてしまいたい午後
  12. 星形のアクリルビーズ
  13. 世界はやがてオレのもの!
  14. 秘密のメッセージ
  15. 夜更かしの世界選手権2歳児の部
  16. 永遠の愛じゃなくても
  17. 子どもの時間
  18. ソリに乗らないサンタ
  19. 君を愛しているのだから
  20. アカウントひっそり消して
  21. ラッキーだった
  22. 中高年よ嘘はやめよう
  23. プラレールにも逃げたい日はある
  24. 生き様が顔に出てくるお年頃