サンタ
サンタはその夜
ある少年のうちにいきました。
少年はまだおきていたので
「君は何がほしい?」
と彼にききました。
「うん、ぼくね、パパがほしいの」
少年はサンタを見つめてそっと答えました。
「パパがね、ぼくに、ママのこと守ってあげなさいっていったから、ぼく、ママのこといつもたいせつにしてるんだけど。ママはぼくがいるだけじゃたぶんダメなんだ。いつも明るくふるまってるけど。本当はパパがいなくて寂しいんだ。ぼくは、そう思うよ」
まるい瞳がまぶしくて、サンタはすこし目を細めました。
「そう。じゃ君がママにパパを紹介してあげるといい」
「でもそれじゃ、死んだパパが怒らないかな? パパはママのこと、とてもすきだったんだ」
「君のパパはそんなに心のせまい人なのかい?」
サンタがすこし笑うので
「そんなこと、ないけど……」
少年はすこし困っています。
「死んだ人は生きてる人に何もしてあげることができない。ただ、生きてる人が笑って、しあわせでいてくれるのを願って、ずっと見守っているんだよ」
サンタはやさしく微笑むと、していた手袋をはずしました。
「君がいいと思う人を見つけて、ママに会わせてあげなさい。君とママのことを一番に考えてくれる、心のやさしい人をね」
そういって、大きな手のひらで少年の手をそっと包んでくれました。
「うん、わかった」
少年はこくんとうなずいて約束しました。
サンタの手のひらはとてもあたたかかったのです。
「じゃあ、おやすみ」
少年がきゅっと抱きつくので、サンタもそっと少年を抱きしめました。
眠りにつくまで見守って、やわらかい髪をなでてやると
少年の母の部屋へいって
彼女のほおにお別れの
最後のキスをして
そっと帰っていきました。
サンタ