【連載】幻の漱石タワー

万田 竜人(まんだ りゅうじん)

【序】

昔(2006年)放送大学において「私にとっての生涯学習」という対面授業を受講、
お茶の水女子大学の三輪健司教授と西原講師から・・・

「加齢に伴って、文筆活動などの面では、能力が伸長すること」もあるとお聞き
して意を強くしたことがある。

対面授業ではテキスト「生涯学習と自己実現」の著者でもある三輪健司お茶の水
女子大学教授から総論が語られ、西原講師からはグループ・ディスカッションの
ガイダンスに沿って実体験的な授業が行われた。

実体験的な授業では 「川をテーマ」にして、各自、絵を描き、それぞれの物語
を自ら構成、私は、この過程において 「吊り橋理論」を自ら構築したことから、
小説の執筆を日々の日課として開始した。
(この詳報については 『万田ワールドへようこそ:006』 に記した)

そして、今回、今年の4月から放送大学のオンライン授業「生涯学習について」
を受講することになり、2006年に受講の際の忘備録的な受講ノートを探して
いたところ、当時、執筆して新風舎に応募した小説のコピーを見付けた。

そこで、読み返してみたところ、当時の記憶が蘇ってきて、自分でも面白いなと
思う頁も散見され、あらためて推敲、星空文庫に投稿してみることにした。

その後、新風舎は、自費出版の際の詐欺疑いなどが発露したことから2010年
に破産に到っている。

当時(2006年)私の応募作品も優秀作なので、自費出版を軸にして共同出版して
みないかと誘われたが、我が家の廊下に売れない本を積み上げて埃りを被る光景
を想像して取り止めることにした。

(さて、当時の原稿をあらためて、推敲してみることにする)



【はじめに】

この作品は 「ドキュメンタリー」 である。

新風舎の主催する出版賞に触発されて小説家を目指した私のドキュメンタリー小説
は「イイものを書こうなどと思わないで欲しい」という新風舎の甘言に乗せられて
取り組んだ小説家への挑戦であったが、現実は、けっして甘くはなかった。

当時は、私の弟(7歳年下)と同年代の「団塊の世代」が続々と定年を迎える時期
でもあったので、小説家を目指して新風舎などへの作品応募も急増するのだろうな
などと想像しながらの応募であった。

そのような思いのなかで、このドキュメンタリー作品は、幕を挙げることになる。

当時、新風舎から優秀作であるとの講評から自費出版を軸に共同出版を勧められた
ものの、自宅の廊下に自費出版本が埃を被って積みあがる光景を想像して自費出版
への思いを断ち切ったことは、前述の通りである。



第一章

001 東京圏という生活エリアで暮らした六年間と云う歳月

今、眼前の東京・池袋と云う大都会の夜景の中に浮かんだ、一つひとつの燈火から、
人々の息遣いの様なものを感じ取ったのは、私だけだろうか?

私は、定年後、都内でコンサルタント業を営むことを考え、やはり都内に勤務する
家内との意気投合で、在住の埼玉県入間市からの距離感を考え、我が家の玄関口と
して、池袋のサンシャイン地区にセカンドハウスを購入した。

これによって、私は、顧客の多くが活躍する東京都内へのアクセスが俊敏になる上、
学び舎である放送大学の文京学習センターにも徒歩で通える利便性を確保した。

家内にとっての好都合は、商社系の管理職にあって、夕刻の報告会の後で急遽対策
会議が必要になるケースも多く池袋にワンルームとはいえども突発的に停泊や休息
出来る場所が確保されていることは心強い。

大袈裟な表現をすれば「ダ・サイタマ・トーキョー・圏人」にとって池袋に玄関口
を用意出来れば西武池袋線は奥座敷の入間に向けての渡り廊下の様な存在となる。

ここで、ダ・サイタマの 「ダ・は・打」 打てば響くの埼玉県人、昔の武蔵国の
存在感で考えれば、埼玉も・東京も・同じ武蔵国の隣村であった。

そして、群馬県で生まれた私は、成人期には東京の武蔵野の地で企業人として働き、
定年後は埼玉県に住居を構えて 「Jターン」という移住を成し、セカンドハウス
を東京・池袋に構えての生活なので 「東京圏人」という存在となった。

このタワーマンションのワンルーム購入は、即断即決の衝動買い的な購入であった。

当時、定年後の私のコンサルタント業も順調に稼働、家内も多忙な日々であったが、
週末の奥多摩や秩父方面へのドライブは、二人+ワン(飼い犬のシェリー)で欠か
さず出掛けていた。

あの日は、食後、二人で新聞を観ていて読売新聞の朝刊の広告にタワーマンション
の販売案内を見付けた(二人にとってなにげに潜在的なニーズがあったので)当日
は、休日のドライブはやめて、池袋まで電車で販売現地に向かった。

当日は「なんとなく観てみるか?」程度の気持ちで出掛けたのだがモデルルームの
コンセプトが大いに気に入った。特に、家内にとっては、元々あった潜在ニーズに
合致した点があるらしく、私にも賛同出来る点があったので・・・

二人して 「購入するとしたら、どの部屋?」 の選定モードに突入していった。

ここまで来ると、最早、ストップモードは機能しない。二人で選んだ部屋が、また
また・お気に入りモードで、ここで営業マンからの一言・・・

「是非とも夜景の素晴らしさも確認してみて下さい」と、云われて長居することに。

この夜景の素晴らしさを確認した二人は、即断即決で「購入を決め」即購入手続き。

今までで 「一番高額な衝動買い?」 と、なった。

二人にとってのお気に入りの夜景を観る機会は出来るだけ・意識的に設けた・・・

今、眼前の東京・池袋と云う大都会の夜景の中に、浮かんだ、一つ・ひとつの燈火
から、人々の息遣いのようなものを感じ取るのは、私だけだろうか?
(これは冒頭の一文でもあるが、いつも夜景を観る度に感じる、私の思いである)

そして、この夜景の中に夏目漱石の息遣いが伝わってくるような「漱石タワー」を
建てたいと考えたのは、おそらく、私だけの思いであろう。

~ それは、新しい概念の東京圏人としての思いであったのかもしれない? ~

(続 く)

【連載】幻の漱石タワー

【連載】幻の漱石タワー

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-04-06

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