時計
この作品のお題は【時計】です。
すれ違う定めのような何かについて。
僕らはすれ違うことの方が多い。何度も、何度も。
でも、この世には一度の邂逅もく終わってしまう命もある。それを思えば、もしかしたら、私たちは幸せなのかもしれない。
僕は彼女を追いかける。とても活動的な彼女は、僕の巡る何歩も先を行って、沃野を切り開く。
彼は私を待っている。とても泰然とした彼は、私のように浮足立たず、構えて大地を踏みしめている。
僕が朝焼けに微睡むときも、白日に目を細めるときも、夕映えの空に息をつくときも、彼女はひと時も休まず世界を飛び回る。
私がわき目も降らず街々を行き交うとき、彼は立ち止まってゆっくりと、大勢の人々に微笑む。
僕らは正反対のように見えるかもしれない。
私たちは同じ方向に進みながら、足並みを揃えることはない。
でも、僕の彼女への憧れは止まらない。
私の彼への尊敬は止むことがない。
そうと決められたときから、僕らは支え合い、運命を呪いながら、夢見ている。
例え、日に二十四度の口づけを交わせたとしても、共に過ごせるのはわずかだけ。
いつか隣同士歩めるときを思って、微かに見える地平線のその先を目指す。
いつか互いの手を取って、笑い合えるときを思って、私たちは歩み続ける。
君とある、未来へ。
時計