鯨笛・赤色の呪い

体を切り刻む激痛の中で、遠く響く鯨の声を聴いたんだ。血潮が沸騰していた。僕は世界と出会ったのだ。そしてゼロへと回帰する。有と無。全てが交差する消失点へと向かって、僕は進まずに進む。そこにある。既にある自分を見て、それはもう太陽だったのだ。僕はまた、鯨の声を聴く。世界の声を聴く。神の声を聴く。世界の声は、僕の魂の叫びだった。どこでもない場所だった。

(くじら)は歌う
その低い
笛の音を()いた
心臓(しんぞう)を揺るがす鼓動(こどう)
(たましい)(こお)らせる呼び声
神から与えられた僕は
その時に、zeroを知ったのだ

赤色(せきしょく)(のろ)
それは永遠(えいえん)
悪臭(あくしゅう)のように染み付いた
神から与えられた
もう一つのgift
Zeroを知るための代償(だいしょう)
詩人となるための、契約(けいやく)
だから僕は、死んで生きるのだ

()ちろ、地動説(ちどうせつ)(ほろ)びた
鯨の歌を聴け
時は(すで)()
(なぎ)は新しき夜のよう
夕闇(ゆうやみ)(はら)
一瞬の(ひらめ)きのために歌え!

遠雷(えんらい)、人を()て!
光線(こうせん)(しん)(つらぬ)け!
激痛(げきつう)存在(そんざい)()らえ!
奔流(ほんりゅう)()()えよ!

鯨笛(げいてき)、鯨笛!
全方(ぜんほう)より、僕を殺しきれ!
円転(えんてん)、円転!
永久(とわ)にめぐりゆけ、天体(てんたい)

(せい)を受けし処女(しょじょ)なる僕よ!
今こそ、燃え上がるのだ!
灰となれ、灰の王となれ!
僕こそが、世界を知る!
僕こそが!
僕こそが!

神よ、赤色の呪いで
僕を殺してくれ!
何度でも、何度でも!
僕を燃やしてくれ!

(まわ)れ、(めぐ)れ!
()(つぶ)せ、魂よ!
魂の(さけ)びよ!
その(ひび)く、鯨笛よ!
生命の(もろ)さよ!
僕よ!
僕の詩よ!
今こそ、永劫(えいごう)(きら)めく、
太陽となれ!

鯨笛・赤色の呪い

読んでくれてありがとう。詩のために死んでくれ。

鯨笛・赤色の呪い

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-08-24

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