黒と赤

蜆川無溟(仮名)

詩を書きたい
思い切り痛みの(ともな)
詩を書きたい
読む人間が痛むほどの
詩を書きたい
だから僕は思いついた
一行書くごとに
僕は体のどこかを
カッターで切る
そうやって詩を書いてみる
さあ、始めよう

心に闇が咲く
まずは、左手首をザク、
黒の記憶の痛み
次に、右手首をザク、
心の痛みを
左手の甲を、ザク、
血の色で満たして
右手の甲を、ザク、
ああ、痛いねぇ
左の腕を、ザク、
かわいそうに
右の腕を、ザク、
そうやって痛まないと
左の(もも)を、ザク、
生きられないんだねぇ
右の腿を、ザク、
もう血だらけなのに
左の(すね)を、ザク、
まだ傷つくのかい
右の脛を、ザク、
君は罰を受けたいんだね
左の足首を、ザク、
生まれて来たことの罰を
右の足首を、ザク、
いっぱいしようねぇ
左の肩を、ザク、
気持ちいいでしょ
右の肩を、ザク、
死にたいね、ああ
左の肋骨を、ザク、
生きたいね、ああ
右の肋骨を、ザク、
皆見捨ててほしい
左の腹筋を、ザク、
誰か助けてよ
右の腹筋を、ザク、
愛されたくない
左の胸を、ザク、
愛されたいよ
右の胸を、ザク、
ああ今僕は生きてるよ
左の頬を、ザク、
ああ僕は今、生きてるよ
右の頬を、ザク、
体中泣きながら
左の首筋を、ザク、
それでも生きてるよ
右の首筋を、ザク、
はい、おわり

心臓を、ザク。

黒と赤

黒と赤

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青年向け
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