砕く
宝石を砕くみたいにできあがった、ぼくだったものが、心臓を探しあてて、いま、ここに、ある。人類になみだを捧げても、天才にはほどとおい、ぼくはそんな、ぬいぐるみみたいな、かなしさが、ほしかった。果てないものが、からだのなかからやってきて、ぼくを燃やそうとして、まるで、うみ。
夜について、はなすことになった。とくべつではなくても、神様に祈るみたいな安寧を、ぼくたちはしんじていて、そのことばには、あまいような香りがありました。こころのなかに、真珠が落ちてきて、きれいだね、と、つぶやけないまま、破裂してしまう。そんな、ゆめみたいなものだよ。きっと、きれいなゆめだよ。きっと。
愛されることがこわかった、ぼくのこれは、いつかは溶けてしまうものだとおもっていた。分子もべつべつになって、いつか世界じゅうで、ぼくは生きることになるとおもっていた。
ぼくは、ただ、砕けた。
美しくなれば、あまくなれば、やわらかくなれば、ぼくはずっと、ひとつだったかもしれない、とか、なんどもおもって、燃えそうになった、しゅんかん、また、ここにもどってくる。あんしんしたかった。あんしんして、なくなっていかないものと、同化することを、かんがえていたよ、この、うみで。
砕く