ブラックジョーク系の掌編を章ごとに一話ずつアップしていきます。 どこから読んでもかまいません。作風としては基本投げっぱなしなので 根を詰めずにお読みいただければ、と。
隣県に所要があって、榊原は車を走らせていた。台風が接近して高速が通行止めになったため、普段めったに利用しない山越えのルートを通ることにした。雨はまだ小降りだが、徐々に風が強まっている。本降りになってしまう前に、なんとか山道を抜けようと…
一般的な商社に勤める32歳独身、浅田雄一。好きな食べ物はゴーヤチャンプルー。平日は忙しく働き、有能な人材として上司からも部下からも信頼され、休日は適度に酒を嗜みながら趣味の読書をする。落ち着いた性格で顔立ちも整った彼は、馴染みの居酒屋の娘に密かな想いを寄せているもののその自覚はない。周りから見ればお似合いの二人で、仲の良い互いの両親もあわよくば結婚を…と願っているもののなかなか進展を見せない。そんな平凡な男にある日、次々と悲劇が襲いかかる…!
ドアをノックすると、間違えようもない和美さんの声で、「どうぞ」の返事。 中に入ると別世界だった。これが病室かと思うほど、華やかな彩りであふれてる。お部屋の香水を持ち込んだのだろう、匂いまで違う。その環境で、おねえさんは嬉々として僕を迎えてくれた。 「よかった、生きてた」と「生きててよかった」、二つの思いを同時に味わった瞬間だ。