建歴(1210)の頃の奇譚。 京は鴨川の河原に懐に犬の屍を入れている若い男のことが噂になった。 だが、実際はそれは犬ではなく美しい黒髪の残る髑髏なのだった。 何故、男はそれを犬と言い張り、片時も離さず胸に抱いているのか? 訪ねて行った高僧に男が語る己とその髑髏の摩訶不思議な因縁……
裕福ではないけれど笑いと涙に満ち溢れ、貧乏を脱出しようと足掻きながら秀太郎と麗子は貧乏ならでわの楽しみ方を味わっている。 家族を舞台にした実話ををもとに描かれた喜劇でもあり悲劇でもあり、それは捉える見方次第で変わる物語です。
『僕』と『彼女』の短い愛の話。 『彼女』は永久(トワ)の本質を知っている。『僕』は彼女を失ってそれを知る。物理的な時間とは無関係のもの。胸の奥のほうでうずくもの。それでも確かにそこにあるもの。 『僕』は永久の愛と悲しみとともに生きていく。とな。
女子高生の佐藤七海はある日異世界に居た…灰色姫と呼ばれる愛らしい少女になって。灰色姫の魂が弱々しく七海に話しかけた。彼女は継母と義姉にいびられる日々に涙していた。挙句にとんでもない男と金で婚姻させようなどと。物語では弱々しく嘆くヒロインだが、現代の乙女は逞しい、七海と灰色姫は家出をすることになった。箱の中の世界から外の世界で生きていくヒロイン冒険物―― この話はハッピーエンドになります。星空文庫にて同時掲載。
高校生のアキは、突然年上の女性ユウコに声を掛けられ、退屈しのぎに付き合い始める。初めは、ユウコの体だけが目的だったが、やがて彼女自身に惹かれ始める。しかし、ユウコにはアキに秘密にしている思いがあった。雨に濡れた二人の関係は、潤んだ思いを抱えたままどうなっていくのだろうか……。