末広亭柏倉恭三

末広亭柏倉恭三

前世は石でした。

草を枕に
夜露を褥に
煌く星を肌掛けに

《 Requiem #2 》 イカロスへの贈り物

《 Requiem #2 》 イカロスへの贈り物

蒼鉛色の空から落ちてくるみぞれ雪が、バス停に待つ人々の傘と、我が主の帽子と肩を容赦なく濡らす。 街灯は、色とりどりの傘の花の中で、濡羽色になった帽子のつばに眼差しを隠す主を舞台の主役のように青白く照らし、そこへみぞれ雪が冷たく重く、降り積もる。 降る雪の音は聞こえず、行き交う車と人々が氷混じりの泥水を踏み潰し跳ね上げる音が、主の口元を石のように硬く閉ざさせる。

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PRIVATE STORY《 Requiem #5 》 天涯のタルタロス

PRIVATE STORY《 Requiem #5 》 天涯のタルタロス

主よ。共に参ろう。地の底から天の果てまで。

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眼

目だけを動かして、薄明るいほうを見てみた。 するとそこに、「眼」があった。

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夏休みの思い出

夏休みの思い出

寝る段となり、伯母さんが「今夜はおばちゃんと寝ようね」と、仏間に布団を敷いていたのですが、その布団の敷き方に違和感を覚えました。足がお仏壇に向くように布団を敷いているのです。 お仏壇に足を向けて寝てはいけないことを知っていた僕は、伯母さんにそのことを言いましたが、伯母さんは何を気にするでもなく「いいのいいいの、大丈夫」というようなことを言うのです。伯母さんがそう言うなら僕が気にすることではないのだろうと思いながらも、何とは無しに不安を感じつつ、布団に入りました。

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おかえりなさい

あれ、おかしいなって。 もう夜九時過ぎなのに誰だろって、思ったそうなんです。 夜勤の仕事は二人一組なんで、相方さんに声を掛けました。 「今、車が入って来た音、聞こえなかった?」って。 相方さんも、確かに聞こえたって、そう言うわけです。 妻は書き物の続きをして、他の仕事が一段落した相方さんが、階下の玄関に見に行ったんです。

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オバケ

オバケ

私は、ある事を思い出した。 小さい子には、大人には見えないものが見える。それは、成長するにつれて見えなくなっていく。 そして見えないものの大体は消えていく。しかし、絶対にやってはいけないことがある。

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風の名前 その一

風の名前 その一

古より鎮守神として村人や旅人たちを護る存在だった、精霊・少女風(しょうじょふう)。 しかし現代の少女風は社に閉じ込められ、その意識は怨念の塊でしかなかった。 少女風を助けられるのはこの世に一人しかいない。 そして強い風の吹くある日、烏の啼き声と共に、下駄の音が鳴り響く。

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《 Requiem #4 》 カロンの船灯

《 Requiem #4 》 カロンの船灯

私は、希望という字をボディに彫られただけの、火を点ける道具にすぎない。 名前には意味など無く、単なる煙草会社の懸賞でしかないのだ。

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雪の面影

雪の面影

彼女を初めて知ったのは、高校一年生の時です。 ただし、同じクラスだから顔と名前だけは一致する、そんな程度の、言葉もほとんど交わすことのない間柄でした。

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《 Requiem #3 》 オルフェウスの恋歌

《 Requiem #3 》 オルフェウスの恋歌

だから我が主よ。 お願いだからやめてくれ。 それに火を点けてはいけない。 私の炎をそんなことに使ってはいけない。 私は、あなたの愛した奥方の存在した証を燃やす為に、あなたに仕えたのではない。 私は、希望の灯りを点す物なのだ。 あなたは、希望の火を点す者なのだ。 だから、それだけはやめてくれ。 お願いだからやめてくれ……。

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