末広亭柏倉恭三

末広亭柏倉恭三

PRIVATE STORY 《 Requiem #1 》 プロメテウスの弟

PRIVATE STORY 《 Requiem #1 》 プロメテウスの弟

私の名は希望。 希望の灯りを点す物だ。 私は、ゴールドブラッシュに仕上げられたケースの横に、大きくHOPEと名を刻み、その傍らに弓矢のレリーフを埋め込まれた、誇りあるZIPPO社のオイルライターだ。

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滝

先輩は何故あんなに離れたところに立ってこちらを見ているのだろう。 表情も、何とはなしに、暗い。 私は水中眼鏡を付け、服を着たまま、滝壺に入り、浅いところで水温に身体を慣らした。 そして、いざ潜ると、妙な感覚は更にその疼きを増した。

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織姫星

織姫星

私はすっかり年を取ってしまいました。 去年の春には、おばあちゃんなんて呼ばれるようになって……。 そんな私と違って、彼女はあの頃の少女のままでしょうか。 そしてこの夏、あの交差点に行けば、また彼女に会えるのでしょうか……。

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沼

林道は相変わらず両脇に草が生い茂っている。 車高の低いセダンだと視界を狭められているようで、走るのが怖かった。 しかし今回の車は車高も、もちろん視線も高く、まだ薄暗い今時間でも景色を広く見渡せて怖さは無い。 怖さは無いのだが……私は今、何かを思い出しかけている。

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月の沙漠

月の沙漠

妻の三回忌が終わった。 親戚たちが帰ってから、妻との思い出の河原へ行った。 少しだけ昼寝でもしようと思ったのだ。 その時に、不思議な夢……夢だったと思う。 妻に会えたのだ。

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