『遠野物語』は、柳田国男が明治四十三年(1910年)に発表した、岩手県遠野地方に伝わる逸話、伝承などを記した説話集。 「遠野(遠野郷)」とは、狭義には明治の町村制下にあった遠野・松崎・綾織・土淵・附馬牛・上郷の各地域を指す。しかし広義には、上閉伊郡宮守村、釜石市橋野町、上閉伊郡大槌町、下閉伊郡川井村といった隣接地域も含まれ、物語にはこれらの地で起きた出来事も数多く取り上げられている。その内容は、天狗・河童・座敷童子といった妖怪譚から、山人・マヨヒガ・神隠し・臨死体験、さらには神への信仰や年中行事・風習に至るまで、極めて多岐に渡る。