夏は二度と現れない

雨宮吾子

 蝉が鳴きやむのと
 夏が終わるのとは同時で
 人はそこに一つの終末を見る

 人はどうして次の夏があることを知っているのだろう
 いつからそのことを知っていたのだろう
 秋を経て冬が来たりて春も過ぎた先に
 どうして夏が待っていると自信を持って言えるのだろう

 あなたはどうして次の夏があることを知っているのだろう
 いつからそのことを知っていたのだろう
 母や父から教えてもらったのか
 それとも見知らぬ誰かから

 私は次の夏がないことを知っている
 一度死んだものが蘇るはずもないのだから
 ところで海の果ては滝になって落ちていくだけ
 私の世界ではそうなっているのだから
 だから夏は二度と現れない
 もしももう一度夏がやって来たなら
 そのときは安心して私を忘れてほしい
 私は舞台から押し出されて消えているから

夏は二度と現れない

夏は二度と現れない

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
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