春の歌

春の歌

ひさかたの都は梅も咲かねども
奄美の島は赤き花咲く

雨雲の流れる空と瀬の音と
春風の中泳ぐ島花

(百草園)
われ知らず梅のにほひに誘はれて
のぼる坂道鳥の声聴く

(上野公園)
青空にからす一声鳩は散り
人はギターに足をとどめぬ

春の夜のしめりけぬくきたむしばの
毛皮の隙から覗く白肌

たんぽぽやわが足元に咲ける花
小さきその身を寄するごとくに

春あらし雨風打ちつけ花散らす
おのが定めに泣き狂ひけり

パンジーにつつじすずらんひやしんす
ひとり枯れたるままのあじさゐ

はなみずき校庭の隅植ゑられし
幼き恋を思ひだすかな

空高し軒端のこぶしつつじらん
猫の横切る道の木漏れ日

折からの重なる雲に黒揚羽
憩ふ枯れ木は春に朽ちつつ

たんぽぽの綿毛を吹けば花の香に
むせぶ憂ひは春に耐えざり

今日もまたあまた死にける世の中に
浄土示せる宵の明星

四十雀飛行機と声競ひしや
鳴けよ体は小粒なりとも

おくつきに手向けし花に蝶々の
とまりて香の煙さやけし

雪溶けて花散り君は居らずとも
おのが心に手を合せつつ

春の歌

春の歌

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-03-17

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