現在の症状(2)

 脳卒中後遺症に感情失禁がよく見られる。脳神経細胞が障害されたためだ。
私の場合も「泣き上戸」、「笑い上戸」という程ひどくはないが感情コントロールの糸が緩んで来た。これも、加齢、或はALSによって脳神経細胞が障害されて来たためだと思う。
 2年前になるが、「マッチ売りの少女」の絵本を孫娘に読んで聞かせていた時に涙が出てきて声がつまり、さきを続けることが出来なくなってしまった。おかしい、こんな事は今まで無かったのにと、気を取り直して再度やってみたが、同じ結果だった。孫は怪訝な顔で私を覗きこんでいたが、仕方がない、とても可哀想な話だから読めなくなってしまったと訳を言って朗読は中止した。その後も妻と話をしている最中にこの症状が出る事がある。でも、人に迷惑をかけていないから取りあえずは安心だ。
 もう一つ困ったことがある。こっちは人に迷惑をかける事があるから要注意。それは不用意に噴出し笑いが出てしまう事である。
週に一度ほど息子家族が来て食事を共にするが、可愛い孫娘は口が良く回って話や仕草が面白く、私は楽しみにしている。食べながらパパやママとのやり取りを聞いていると、私はつい「プッ」と噴出してしまう。笑いをこらえようとすると、余計に「プーッ」となる。その結果、口から食べものが飛び出してテーブルを汚してしまう。だから私はみんなと一緒に食べたいけれど、時間をずらして一人で食事を済まそうとする。落ち着いて、気持を集中させて食べると噴出し笑いも誤嚥(咳とクシャミがひどく出る)も防げるからだ。でも、パパもママもマゴも「かまわないからみんなで一緒に食べよう。なんでもないから」と言ってくれるし、妻も「そうしたら」と勧めてくれる。私は「ありがとう」と感謝し、食事補助器具を腕につけて席に着くが、「これは大変なことになったぞ」と内心は嬉しいやら緊張するやらである。
 私はこれまで感情のコントロールが乱れることは飲酒時にたまに有ったが、それ以外には殆ど無かった。
ところが先日の診察の時に主治医の前で思い出し笑いをやってしまったのだ。すぐに失礼を詫びたが、すると先生は「ALSの症状として表れることがある」と話してくれた。
 今のところ私の「泣き」、「笑い」の感情失禁は頻回でなく、程度も軽いものだ。脳神経細胞の病変がもっと進めばどうなるか分からないが、息子達は「怒り上戸でなくて良かった」と安堵している。私も「怒るまい」と自制心が働くから、まだ正常な細胞が残っていると思いたい。私には怒って孫を恐がらせたり、妻を悲しませたりすることなど出来ないのだ。
 1018/12/15

現在の症状(2)