辞世の歌

楽しげに移る季節は頬を打った
ああ痛いとうずくまる暇も無く時は流れた
今までよりこれからを大切にしたから
いつまでも続くと僕は想っていたんだ

もう嫌だと目を塞いで逃げるほど
弱さに気付いて自分を嫌いになった
ただ何かに当たることもしないで
独りでに涙を流して僕は自分を傷付けたんだ

君に名前を呼ばれて風は止んだ
どっちつかずな世界で生きる僕は
幸せになれと今も時折 呟いていた
君と離れたことで再び風は吹いた
そっぽを向いた世界で生きる君は
歪な瞳のまま今も僕を睨んでいた

寂しげに映る写真はとうに捨てた
ああ会いたいと憂鬱になる暇も無く歳を重ねた
最近は何故か心臓に動悸が走るから
もうじき死ぬと僕は予感していたんだ

あと幾つ 目を瞑って眠ったら
全てが消えて自分を消せるのか
だだをこねたり拗ねることもしないで
独りでに涙を流して僕は自分を見殺すんだ

君に偶然 出会えて雨は止んだ
どっちつかずな世界で生きる僕は
あの頃に戻りたいと今更空に呟いていた
君と別れたことで再び雨は降った
そっぽを向いた世界で生きる君は
命が満たされたまま今も人生を生きていた

辞世の歌

辞世の歌

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-06-14

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