*星空文庫

プロット「未定」

たかなみ なと 作

近い内に、以前の『プロット「不透明な空間(仮題)」』に転記しようと思います。

日本語で文章を書き、外国語を勉強していて、
ふと、次のような現実の事件を思い出しました。

上司から「小学生のような文章を書くな。」と執拗に叱責を受けたために、
その部下は自殺してしまったという事件です。

これは日本で発生した事件であり、その当事者は全て日本人であり、
使用していた言語は日本語です。

何故、この様な事件が起こるのでしょうか?
上からの命令か唆しがあったのでしょうか?

800字くらいのプロットを書ければと思います。

プロットの原型は次のようなストーリーです。


1)
Aは最難関の国立大学であるB大学を卒業後、
一流総合商社であるC社に入社した。
コンプライアンスが良く整い、また実践されている素晴らしい企業である。
本社での配属・勤務が決まり、3年間、ある食材の輸入業務に携わった。

大学時代、及び卒業以降も勉強を続けている
ある外国語の能力が評価され、
Aは2年間、大陸内部のある地域において、その食材輸入業務に携わることになった。
その地域では、複数の少数民族の人達が生活し、複数の言語が使用されている。
その国の共通語、その民族の母国語、英語、近隣の民族とより良く意思疎通を図るための
その民族の言語、ある人間が個人的に興味を持っている言語。
住民の中には、5つ6つの言語を習得しようと努力する者もいた。
しかし、母国語以外の言葉は上手く使えない者も多くいた。
意思疎通が上手く行えない事に起因するトラブルもあったが、
それでもその地域の住民達は、皆、毎日を仲良く暮らしていた。

2)
2年間の大陸内部での業務を終了し、Aは帰国した。
ある日、Aは大学時代の友人Dから、同じく大学時代の友人Eが亡くなったという話を聞いた。
Eの死は、自殺ということであった。
Eは職場の上司から「小学生のような文章を書くな。」と執拗に叱責され続けた結果、
心に異常を来たし、自殺してしまったのであった。
この事件の当事者は全て日本人であり、使用していた言語は日本語である。

Eは最難関の国立大学を卒業していること、論文等のように文章の創作には一定の様式があること、
これらのことを考えると、Aには、Eが小学生のような文章を書くとは、とても信じられなかった。

(言語習得の難しさと、文章表現の難しさについて。)

3)
数日後、Aは母校であるF高校吹奏楽部へ、
定期演奏会のための練習を聴きに行った。
Aは高校生の時、吹奏楽部に所属していた。
練習の終了後、Aは男子部員Gから次のような
相談を持ち掛けられた。

ある日、Gは練習の開始前に部室の隅で、ある
文章を読み、考えていた。その内容は、
カトリック教会のある教皇の説教・祈りの文章で、
苦難を移ろい行く人達(旅人達)の中においてこそ、
最も大切な徳である希望は光り輝くという
ものだった。
この世の全ての人々に向けられたとても平易な文章だった。
Gは、森鴎外の史伝・渋江抽斎の第一章の文章に通じる
内容があると感じた。教皇のその文章の一部を、
Gは手書きで原稿用紙に書き写し、読んでいたのだった。
その文章が好きだからである。
次の定期演奏会で取り上げるキリスト教を
テーマにした吹奏楽オリジナル曲の主題に通じる
ものがあるからである。

その様なGのところに、一人の三十代半ばの
男性Hが近づき、「作文の練習かい?」と
一言だけ言って原稿用紙を取り上げ、それを
読んだ。Hは、吹奏楽部が製作するDVDの件で
、ある大手音楽製作会社から来ている人間であった。
読み終えた後、HはGに向かって次のように言った。

「文章があまりにも幼すぎる。論理の展開も
不明瞭だ。書き直す方がいい。」

こう言ってHはその場を離れた。
全て、Hの一方的な早合点と誤りである。

GはHの誤りを訂正しようかと思ったが、
ずっと年上の人間にそうする事は、何故か気が引けた。
しかし、あまりにも悔しく、またHに対して情けなくもあった。
Gは涙が出そうになった。

『プロット「未定」』

『プロット「未定」』 たかなみ なと 作

  • 小説
  • 掌編
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2018-06-10
CC BY

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