君知るや緑衣の国(新兵さんの地味~な?訓練の物語り)

               1 部隊編成

 沸き上がるような虫の音だ。
月もなく、闇の向こうに富士は見えない。
野営用6人幕舎の簡易ベッドに転がりながら、ボソボソと私語する。
「レンジャーじゃねえの? 方針がかわって、志願制やめちゃったとか」
周りがうなづく。
レィンジャー課程ならありそうなことだ。
 
 ここにいる大多数の2等陸士たちは、基本、4月に入隊して6ヶ月の基礎教育期間を終えると、通常は各駐屯地・各種部隊に配属される。
新兵でもどこに行きたいかは第三希望まで要望できるから、そうそう驚くような配置はされない。
だが、彼らは違っていた。
200名ほど集められた講堂で、指導教官長がニコニコと、
「喜べ、諸君らは学力・体力・習熟度・健康状態においてきわめて優良である。よって、さらなる教育を課すことにする」
とだけ言った。

 「質問はないか?」
とは問われない。
それでも陸自入りして半年になる彼らは、
「?????」
で、充満するアタマを、瞬時に切りかえる術を習得しているつもりだ。

 だが、仲間同士になるとやっぱり気になる。
「米軍のネイヴィ・シールズの踏襲かもよ。近代戦は軍自体が特殊部隊化してる。戦場慣れしているアメリカ軍のやり口を、世界中がマネしてるんだ」
ささやいたこの言葉に、他の5人が瞬間的にいやな顔をする。
麒麟生昂(きりおいたかし)。
高卒の2等陸士ばかりの班の中で、彼だけが『3等陸尉(少尉)』の階級章をつけている。
防衛大学校(いわゆる予科練)から幹部候補生学校のコースだから、ペーペー新兵であっても最初から士官だ。

 それでもなにかを象徴するかのように、麒麟生(きりおい)は入口近い床の寝袋に寝ている。
6人用テントには簡易ベッドは4台しか持ち込めない。
じゃんけんでベッドを勝ち取った4人は、遠慮なく3等陸尉を見降ろしてくる。

 「シールズなんか出すなよ! 一般人か?」
加藤清騎(かとうせいき)2等陸士が露骨に口をゆがめる。
「そうだよ、日本にだってちゃんと特殊作戦群はある。な~に言ってんのぉ?」
吉本弘行(よしもとひろゆき)2等陸士も尻馬に乗る。
今のうちに言いたいことを言っておこう、そんな意識が見えかくれするのだ。

 「特殊部隊とかクサすぎ。知りもしねえでウゼエってんだよっ、麒麟生はっ。だまってろやっ!」
加藤の声が高くなる。
周りが「しっ」と言ったとたん、彼は簡易ベッドごと吹っ飛んだ。
だれかが戦闘長靴で、外から蹴りあげたのだ。

 「腕立てぇっ、200っ」
怒声と共に幕舎の入口が引きむしられる。
はじかれたように全員が死に物狂いで暗闇に出る。
まだ9月なのに冷たく湿った夜露の大地に両手をついて、全身を上下させる。

 「199、200、終了!寝ろっ」
それだけ言って、鬼軍曹はさっさと消えていく。
就寝後の私語は厳禁だ。
テントは別だが、6人のひと班ごとに教官が1人つくから油断はできない。
30以上ある野戦幕舎のあちこちでライトがちらつき、同様の怒声が響いていた。


              2 新兵走破訓練

 
 今頃の日の出時間は0520(まるごーふたまる=5;20))くらいだから、0400(まるよんまるまる)では真っ暗だ。
ラッパ手資格を持つ教官の、みごとな起床ラッパで整列する。
人員報告のあと、腹筋・腕立てがある。
「きのうでおまえらのお客様扱いは終わりだ。今夜からベッドはない」
朝の訓示の冷酷な宣言には、だれもが気が滅入る。

 「朝メシは、ほら、あそこだ。総員全速ぅ~、突貫っ!」
指さされたトラックめがけて、全力でバラバラと駆け寄る。
目測、200メートルはあるだろうが、陸自は常に走るのだ。
到着するや否や、配布係の前に並ぶ。
レトルトのコンバット・レーション(野戦食)だ。
無煙ヒータで温めたアツアツなら、まあまあイケる。

 食後は早々に幕舎を撤収する。
たったひと晩の恩恵が、やけに名残惜しい。
総重量50キロのテントをきれいに収納袋に収め、指定場所に積み上げていく。
周りは雨に備えて掘り下げてあったから、それを埋め戻してもとどおりにした。

 次いで戦闘装着セットを着用し、米国製M4カービン・アサルトライフルを手にする。
これは銃身の短い騎兵銃で、取り回しがよく軽い。
その半面、銃身は過熱しやすく、模擬戦闘での部品欠落は少ないものの全体に脆弱だ。
改良の余地のささやかれる銃なのに、なぜか特殊作戦群で採用されている。
だから、彼らもやはりその系列なのだ。

背嚢に各自シングル天幕と寝袋を背負う。
4,5キロの防弾チョッキがちょっとじゃまだ。

 ハイポートという銃を掲げて保持する姿勢のまま、どこかに進軍する。
胸に抱える陸自方式でなく、アメリカ軍のように両腕を真上に伸ばすバンザイ形式だ。
足慣らしののち、そのまま駆け足に移行する。
1キロ走って2キロ歩き、また1キロのランニング、これが数セット続く。
歩きの時は腕を下げてよいし、保持するM4も約2,7キロと、従来の89式よりはるかに軽い。
 
 それでもキツイから、陸自方式なら、保持のコツやズルのしかたは研究し尽くされている。
だが、米軍方式はそれができない。
引率の訓練教官の底意地の悪さ、いや、的確な鍛錬意識にはこれからも泣かされるのだろう。

 「声だせぇ、声。松井2等陸士ぃっ」
ここは教官でも、略して2士とは呼称しない。
命令されて、松井義明(まついよしあき)が必死の声をふりしぼる。
 
「ひ、一人はぁっ」
全員が続く。
「一人はぁ」

 「みんなのためにっ」
「みんなのために」
「みんなはぁっ」
「みんなはぁ」
「一人のためにっ」
「一人のために」

 疲れで体が左右に振れるようになると、背嚢にじゃまされてバランスがくずれ、足が上がらなくなってくる。
基礎教育訓練では、いつも背嚢は除外されていたのに、今はフル装備だ。
周りの班からも断末魔のような声出しが響きわたる。
だれかが荒い砂まじりの砂利道にすっ転んだ。
教官がすかさず尻を蹴る。
こんな暴行も、今まではなかった。

 「バカっ、いつまで地面と仲良くしてるっ?加藤2等陸士ぃっ、声っ」
転んだのは加藤らしかった。

 「こんじょおぉ~っ」
「根性ぉ~っ」
「ぜんしぃぃん~」
「前進~っ」
「くそったれぇぇぇっ」
「くそったれぇぇぇぇぇぇ~っ」
「きょおかぁ~ん」
「教官んんんん~っ」
加藤はとび蹴りされ、頭から砂利に突っ込んでいった。


               3 脱柵する者


 夜もゆっくり寝てはいられない。
2人づつ交代で歩哨訓練だ。
異分子扱いなのか、みんなが麒麟生3等陸尉とは組みたがらないから、くじでバディ(相棒)と時間帯を決める。
2200~2400は、吉本弘行(よしもとひろゆき)と、小柄ではしっこい黒田由樹(くろだよしき)の組。
0200まではなんと、加藤清騎(かとうせいき)と麒麟生昂(きりおいたかし)の険悪組。
最後の起床までが、松井義明(まついよしあき)とちょっと変人の柳瀬亮(やなせりょう)になった。
「ったくう、防大とペアかよ。運がねえぇっ」
加藤が遠慮なくグチった。

 真ん中の組はおちおち寝られないのがつらい。
それでもお互い、張りあうように交代に向かう。
 
 「だれか?」
誰何は黒田の声だ。
「加藤2等陸士だ。お疲れ」
「服務中異常なしっ」
吉本があんがいマジメに返してくる。
「配置任務完了」
中隊本部に無線を送った。

 しばらくはタコつぼの中から前後に別れて警戒していたが、気配がないので加藤が斥候に出た。
空は曇って白っぽく、風はない。
 
 何か足音がする。
敵役の教官にしてはやけに安易だ。
麒麟生3尉はM4を腰だめにする。
なんとなくあわてているような孤独な気配が、すぐそばを抜けようとする。

 「だれかっ」
「うひゃっ」
相手が仰天する。
「見逃してくれっ、黙っててくれっ」
いきなり哀願するのは、顔も知らないどこかの班員だ。
「まさか、脱柵(脱走)?」
状況だけにピンとくる。
「見なかったことにしてくれっ。そこ、その先がもう道路なんだ。頼む、助けてくれ」
「恥を知れ。2日で脱走か?」
「こんな訓練なんかクソだ。整備につきたかったんだよ。きのうだって、今日だって教官に頼んだ。取り合ってくれない。もう少し頑張れって言うだけだ。ダメなんだよ、もう、ダメなんだっ」
「落ちつけよ。おれたち200人は選ばれたんだ。名誉じゃないか。短気を起こすな、な?」
「ちょっ、名誉って? 整備が夢だったんだよっ、ここで金ためりゃ、将来シャバで会社つくれたのに。どけよっ」

 「だれとしゃべってんだ?」
いきなり、加藤の声がした。
「だれだよ?この人?」

 「うざいっ」
相手はダッシュですり抜けようとする。
「やめろ、ほんとにやめろ。絶対捕まる。損だよっ」
麒麟生が素早く退路を断つ。
加藤がはは~ん、という顔をする。

 「おまえら、うるせえぞっ。30メートル先からでも聞こえる。どうした?」
声とともに池谷孝司(いけやこうじ)1曹が現れた。
教官まで来ては万事休す。
「はい、敵らしきものを追跡中、道に迷ったそうです」
とっさに麒麟生が返事をする。
「ふ~ん、相違ないか? どこの班だ?」
「…幸田班です」
そいつがぼそぼとそ答える。

 「ああ~? 幸田班のやつがなんでこんなところに?」
1曹が不思議そうに首をかしげる。
麒麟生(きりおい)が助け船を出そうと口をうごかす。

 「こいつ、脱柵ですよ」
加藤がいともたやすく真相をバラした。
「ちがうっ。加藤っ、口を出すなっ。おまえは何も知らないっ」
気色ばむ麒麟生に、加藤も負けじとけんか腰になる。
「ウソつくなよっ、じゃ、なんでこいつがここにいるんだ? あ?」
「おれたちはチームだ。道に迷っただけのやつを、安易に脱柵と言うなっ」
「それが大ウソだってんだろっ」
つかみかかろうとするのを、池谷1曹が引き離す。

 「麒麟生3等陸尉。おれをだまそうとしてもムダだ。それでは教官はつとまらんワ。きをつけぇ、歯ぁ食いしばれっ」
不動の姿勢で両こぶしを握りしめた麒麟生の頬がパンッと鳴る。
「正直に言え、幸田班のきさまぁっ、名前はっ?」
「あ、あ荒木、荒木正則(あらきまさのり)2等陸士です」
「脱柵か? 脱柵未遂だな」
「……はい」
「間違いないな?」
「はいっ」

 「へっ、な~にがチームだよ、ドラマの見すぎ」
連行していく教官を見送って、加藤が嘲笑する。
「麒麟生3尉は大ウソつきだったんですねぇ、あ~、やだやだ。そんな人が将来、上官か。陸自も堕ちたもんッスよ」
「さっきのやつは整備に行きたい希望があったんだ。望みがかなえられなくて、ちょっとヤケ起こしただけだ。脱柵は懲罰がきびしい。かばってやってもいいはずだよ」
「あのねぇ、勝手に規則をゆがめないで欲しいなぁ。規則ってのは守るためにある。そんなことも習わなかったんだ。防大さんは」
交代時間が来たらしく、松井義明と柳瀬亮がやってくるのが見えた。
「服務中、異常おおありっ」
加藤が怒鳴った。



               4 渡河訓練


 ♪君知るや緑衣の国 我ら今街を離れ
 誓い立て国を守る  胸に溢る熱き誠

 ♪君知るや我が想いを 我ら今切に願う
 永久なれよこの祖国よ 日の本に幸多かれ

 ♪君知るや緑衣の国 君の愛今信じて
 死すらも我恐れじ  身を捧ぐ心新たに

 
 防衛大時代に、飲み会なんかでよく歌った愛唱歌だ。
麒麟生昂(きりおいたかし)3等陸尉は時々、これを所在なく口づさむ。

 昨今の国際情勢に危機感を持ち、日本国を守りたい一心に加えて、仲間が欲しい希望もあった。
夢を持って防大を出て、幹部候補生学校を卒業したものの、将来部下になる班の連中とはギクシャクしている。
教官たちも時々、ワザとけしかけるところを見ると、幹部となる陸尉に、強いリーダー・シップを課しているのだ。
士・卒平等の訓練は、それが目的らしかった。
200名の中に10パーセントほど士官を混ぜてあるので、だいたい察しがつく。

 あいにくの雨模様の今日は、フル装備での渡河訓練だ。
しかも、体力を消耗するハーフマラソンの後なのがニクイ。
びしょぬれになっても災害用の風呂棟が待機しているから、どろまみれで異臭プンプンの彼らもやっと清潔になれる。
おっそろしいことに睡眠は4時間を切り、たっぷり2週間はシャワーすらあびていない。
 
 訓練池のあるこのあたりは『安達ヶ原』といい、地図にも地名がある。
鬼婆で有名な安達ヶ原ではなく、その昔『安達』という隊員が遭難死した場所だ。
冬のさなか、地雷埋設(生理現象で隊を離れる)の帰り、あやまってこの訓練池に落ち、上がれぬまま凍死した。
渡河しようとすると、そいつがしがみついて来るとかで、姿が見えたり声を聞いた者もいる。

 「きんも。抱きつかれてホモったらどうしよ」
吉本がひょうきんな顔を曇らせる。
「ガセにきまってんじゃん。教官が作ったウソっぱち。こんなんフツーの30メートルプールだよ」
加藤はびくともしない。

 水は緑色に濁り、周りのコンクリは青苔でヌルヌルだ。
水中にフロッグメンが4人待機し、取り囲んだ教官が救助用の鉄熊手を持っているのは危険な訓練の証拠だ。
「池谷班、入りますっ」
「川村班、入りますっ」
「佐野班、入りますっ」
班名を名乗り、3班づつ入水する。
9月半ばでも水温は気温よりだいぶ低い。
早く訓練を終え、風呂につかりたいからだれもが必死だ。
ところがしょっぱなから足がつかない。
ふちをつかもうとする手は教官がもぎはなす。
溺れる者は浮草をもつかむが、関係なくブクブクと沈む。

 「底、蹴れっ。底~」
「潜水していけっ」
周りの教官から指示が飛ぶ。
基礎訓練中に水泳はさんざんやったが、フル装備では勝手がちがう。
底はズルズルとすべり、アオミドロだらけの水をいやでも飲んでしまう。

 非力な者、背の低い者は最初から不利だ。
池谷班ではチビの黒田が真っ先に溺れてくる。
今日のバディの吉本がM4を持ってやったりして助ける。
「早くしろっ、ゴール近くは足がつくぞっ」
加藤はどなりながら、自分だけ行ってしまう。
「バカっ、助けろっ」
松井が黒田の背嚢を受け持って叫ぶ。
が、彼も限界だ。
麒麟生が2人を支えるも、今度は自分が溺れる。
加藤のバディの柳瀬が戻ってきて松井を支えた。

 「脱落かぁ~?」
教官が鉄熊手を伸ばしてくる。
浅いところまで引きずられれば失格だ。
「ま、まだっ、わぷっ、うげっ」
黒田が根性で踏ん張った。


               5 チームの仲間


 思わずだれもが深呼吸する。
半月ぶりの石鹸の香りが別世界のようにさわやかだ。
だが、黒田由樹は機嫌が悪い。
「加藤、おまえ何だよ。仲間置いてくのかよ?」
「そ~だよ、柳瀬だって戻ったんだから、おめえも来るべきだろ?」
堅物の松井義明が黒田の肩を持つ。

 「バ~カ、モタついてるクロが悪い。実戦であんなとこで溺れててみろ、敵の集中砲火だぜ。だからおれは、おまえなんか見捨てて先に行ったんだ。動けるやつは進軍すべき。助けるのはおまえらでやれ」
加藤清騎は平然と胸を張る。
「おれたちはチームだろ。バディを見捨てるな。加藤みたいなヤツはしまいに自分も見捨てられるぜ。そんときにチームだろ、なんて言うなよっ」
「チーム、チームってウザすぎっ。じゃあ、溺れたチビクロはいいのかよぉ~? チームに迷惑かけたのに偉そうな口きくなっ」
「なんだとっ」
黒田がむしゃぶりついた。
チビクロがだいぶ効いたらしい。
みんながいっせいに引き離す。
「やめてぇな。暴力はご法度でっちゃるら」
加藤と仲のいい吉本弘行がお茶らける。

 「やっぱり、加藤が悪いよ」
麒麟生昂(きりおいたかし)が言う。
反発喰らうだけだから、放っておこうと思うものの、年上だけについつい口が出てしまう。
「勝手に進軍するのはいい。だけど、援護する者がいなけりゃ、結局イヌ死にだ。加藤は自分を助ける者は味方しかいないってことを肝に銘じたほうがいいよ」

「うるせえってんだよっ、だれもおめえの意見なんかきいてねぇワ。ホント、こいつキライ。いちいち口出し。戦場で後ろからタマが飛んでくる士官って、こういうヤツなんだろ~な。ったく。便所、行ってくるっ」
正論に勝てない加藤は、トイレにかこつけて話から逃げた。

 「う~、まだ体全体が具合悪いワ。変なもんも見ちゃったし。溺れるって怖えぇ」
「え? なんか見た?」
黒田に吉本が聞く。
「うん、白い顔に白い手。目がさ、白~く濁って飛び出してんの。あれ、腐ってんだな」
「…うげぇ…」
「…おれも見たよ」
ボソっとした柳瀬亮の声に、吉本は本気で飛び上がった。
「ほんとっ?」
「おれ、クロを助けにもどったじゃん。真っ白い手が伸びてきてさ、松井かと思ったんよ。したら、松井は必死でイヌかきしてる。じゃあ、だれの手? って」
「……」
「ウワサ、本当だったんだ」

 「びゃははっ、その手つかんでたら、おめえ、もろ掘られてたぜっ。超絶コワッ」
うそ寒い空気をものともしないのは、やっぱり加藤だ。
「いいこと教えてやろ~かぁ? さ来週、レンジャーを追尾する訓練がある。なんと、樹海でだ。自殺死体発見も兼ねてるな」
「あっちゃぁ、もう、発狂しそう…」
黒田が頭を抱える。
「いや、雨かと思ったら、木の上からウジがポト~リ、ポトリ。これが樹海の現実だってさ」
ウソかほんとか、加藤の追い打ちに全員の顔がこわばっていた。



      
         6 レィンジャー追尾訓練-1(初日)


 樹海訓練の日がきた。
これを北ヤマ籠りといい、夜明け前の真っ暗な中で訓示をうける。
「いいか、諸君らが追尾するレンジャー(富士訓練センター対抗部隊教官)はサバイバルのプロだ。身体能力も格段に高い。肺活量だけをみても、7,300CCを越える。これはア~と発声するだけで窓ガラスが飛散する。そんな連中が諸君を迎撃するのだ。くれぐれも慎重に冷静に事故無く、この遊撃・潜伏・撃破訓練を終了することを期待する」
うぇぇぇ~~というようなどよめきが広がる。

 「化け物かよ、うれしくてションベンちびるワ。霊より怖い」
さすがの加藤も暗くなる。

 「G=目標を設定せよ
  R=現状を認識せよ
  O=方法選択肢は的確か
  L=強固な意志を維持せよ」
教官の声に続いて、全員が腹の底から復唱する。
これでなんとなく覚悟がきまってくるのが不思議だ。

 「さぁ、おまえら、教わったことを総動員してガンバレ。この作戦で、おまえらの適正が赤裸々になる。ま、脱落せんようにな。終わったら、おまえらが泣いて喜ぶヘリボンに飛び降り(パラシュート降下)、キリング・ハウス(戦闘用市街)なんかが待ってるぞ」
陣容検査(主に食料を隠し持っていないかの検査)をクリアし、教官に変なふうにはげまされて、全員が地図とコンパスを受け取る。
コンバット・レーションは1日分(3食)だ。
これで7日をしのぐ。

 「あ、そうそう、レンジャーには捕縛されるなよ。一晩中、裸踊りをさせられる。写メも撮られるぞ」
教官は真顔で怖ろしいことを言う。
「え? 裸踊りですか?」
加藤2等陸士が不安げに訊ねる。
10月はじめでも、北ヤマ籠りは寒いのだ。
「そうだ、裸踊り。先っちょにちょっとタバコでも押しつけりゃ、もう、踊る、踊る」
全員が無言で内股になっていた。

 最初はそのへんの森林公園のような道が続く。
陰惨な樹海の感じはあまりなく、オリエンテーリング気分だ。
突然、パラパラとペイント弾の音が響く。
これは近接射撃戦闘弾で、「バトラー(レーザー射撃訓練装置)」のような騒々しさはない。
昔は専用の模擬銃だったが、今はM4装着で、より実戦に近い。
薬莢もバゲットに吐き出され、拾い集める必要がないので人気だ。

 近い。
全員が一瞬で、くぼ地・立木の根・やぶ陰などに散った。
敵の待ち伏せだ。
目標は隣の班か?
しばらく抗戦の音が聞こえ、やがてし~んとなって気配が消えた。
これでは先が思いやられる。

 「ぅぎゃっ」
変な声が聞こえた。
吉本2等陸士が女みたいな横座りになりながら、自分が元いた地面を指さしている。
落葉の中に汚い布切れがわだかまり、すえたような独特の悪臭が残っていた。
「骨だな、人骨。薬もある。自殺者だ」
加藤は冷静だ。
「こんなところに? 観光客だって来そうじゃん。ったく、最悪だよ。骨にダイブしちった」
「みんな案外、遊歩道の近くてやるらしいよ。奥まで行くのが怖いのと、早く見つけてほしいのもあるって。でも、ヨシ。腐乱でなくてよかったじゃん」
松井がなぐさめる。

 「本部に連絡だ。位置をできるだけ伝えよう」
麒麟生3尉の言葉に、加藤が反発する。
「やめろ、交信でレンジャーが来る」
「しゃぁねえべ。仏さん見っけちゃ。加藤だって呪われるのヤだろ?」
「ま~つぅ~い~。やめろって言ってんだろぉっ。よけいなことすんなっ」
みんなの推薦で班長になった松井義明は、無線機を持っている。
それを吉本がひったくってパスする。
敏捷な黒田が受け、
「あ~。こちら池谷班。白骨遺体1体発見。自殺者の模様。遊歩道に近く座標は…」
と、報告した。

 全員がダッシュで遊歩道入口まで戻る。
レィンジャーを巻くためだ。
だから、あんがい距離を延ばせないままに日が暮れていた。


               7 レィンジャー追尾訓練-2(2日目)

 
 周りはジメジメした植生が広がって藪が多く、いよいよ樹海の感じだ。
鳥は鳥目で、夜は飛ばないなんてウソっぱちで、何やら頭上を飛び交うやら、空の高みをギャーギャー鳴き渡るやで薄気味悪い。
樹海の奥に向けてV字型に場を占めた。

 天幕・寝袋すらなく、ポンチョにくるまって、2人づつバディ(相棒)を組む。
いつもどおりのくじ引きで、Vの左は加藤清騎と柳瀬亮。
真ん中は黒田由樹と松井義明。
右翼は吉本弘行と麒麟生昂(きりおいたかし)だ。

 溶岩台地は足場が悪い。
全員一致で、夜間行動は差し止めた。
それでもレィンジャーたちは斥候を出しているのだろうか?
真っ暗な真夜中に、奇妙な光がいくつもフラフラするのを見た。
「でも、なんでライト? レンジャーは暗視ゴーグル持ってるじゃん」
吉本の疑問に総毛立って、とても寝るどころではない。
薄明るくなるや否や、即、V型陣形のまま行動を開始する。

 「やっべぇ。足元、ここ、抜けてるぞ。足首やられる」
「いっくら山手線の内側くらいしかないっつっても、ケガしたら追尾どころじゃないぜ。松井、無線失くすなよ。命綱だ」
言われなくてもマジメっ子の松井班長は、トランシーバを大事そうに抱いている。

このあたりは杉や樅などの針葉樹が多いから、文字通り昼なお暗い。
立ち枯れの木々にはサルオガセが下がり、地面はコケですべる。
穴やガケのような起伏もけっこうあって、体力と神経をすりへらす。
白骨で手間取った分だけ、急がなくてはならない。
 
 「元気なうちに距離稼ごうぜ。こっから樹海抜けて12時方向にレンジャー拠点があるはず。距離は約41キロ」
「近いな、残り5日じゃ楽勝だ。だけど、12時の方向って正面突破かよ」
「腹へった。飯食おうぜ。目ぇ回ってきた」
糧食温存のため、出発時の朝飯以来、食ったのは道々採取したノビルとオオバコだけだ。
ソーセージ缶のつゆで煮込んだが、美味くはない。

 「ダメだ、夜まで待て」
麒麟生が断定的に言う。
「オジさんはだまってろっつうの。飯抜きじゃ動けなくなるぜ。背嚢だけだって30キロある」
加藤は不満だ。
「レンジャーから情報収集してあるんだ。飯は全員が決まった時間に一斉に食う。そして最後の飯は一斉に食いつくす、米粒一つも残してはいけない。残すとそれが争いのもとになるそうだよ」
「バッカみてえ。そんなことでレンジャーがケンカなんかするか? ガセだよっ」

 パキッと何かの音がする。
全員がM4を構えて潜伏する。
レィンジャーか、他班か?

 「タタンッ」
柳瀬亮の発砲に、全員が本能的に一斉射撃する。
ペイント弾が飛び散り、あたりを汚した。
「撃ち方やめっ。ムダ弾撃つなっ」
松井2等陸士が叫んだ。
「だれかいたのか?」
「人っぽいものがいた。確認してないけど、絶対にいた」
柳瀬2等陸士は顔色を変えている。
「ふ~ん?レンジャーだったら反撃してくるよな。な~にビビってんだ? これだからオタクはぁ」
加藤は容赦ない。
変人柳瀬はいわゆる軍ヲタで、最初のころうっかり知識をひけらかして、加藤清騎にコテンコテンにバカにされた。
加藤はそういう頭でっかちが大嫌いなのだ。

 「他班でもなさそうだお」
「イヌ畜生じゃね? 野犬は害獣だから、撃ち捕っていいんだ」
「あ~、腹へった。バカイヌでもいいから食いてえ」
 
 「しっ、ほんとに何かいる」
黒田由樹がささやく。
息詰まる緊張。
固まっていてはまずい。
音を消して、ジリジリV字陣形を拡散する。
「ちょ、加藤っ、待てっ。うっわっ」
柳瀬の押し殺した声が聞こえて、断ち切れたようにやんだ。

 なにかが去っていく藪こぎの気配がし、そのまま静かになった。
「おれだ」
V字の右翼に加藤が這い寄ってきた。
「見たぞ、レンジャーだ。斥候だよ。すげえ素早い」
「柳瀬は?」
吉本弘行の言葉に加藤ははじめて後ろを振り返った。
「あれ? いねえワ」
「いねえワじゃないだろ?」
「拉致られた?」
松井も不安そうだ。

 「また、バディ見捨てたのかよ、加藤っ」
黒田がなじった。
「って、ついてこねえのが悪いだろ。おれはちゃんと敵を確認したんだ」
「撃てばよかった」
「バ~カ、やたらに撃つとおれの場所を知られるだけだ。柳瀬が拉致られたとしたら、柳瀬の自己責任だワ」

 「柳瀬は奪還しなきゃ」
松井2等陸士の声に麒麟生3尉が答える。
「それだよ、特殊部隊は高度戦闘だけじゃない。人質奪還も使命なんだ。だから、レンジャーはおれたちを簡単に殲滅できたのにワザと人質をとった。奪い返せなければ絶対ペナルティがあるはず」
「でも、守りかためてるとこにノヘノヘ行くって、アフォだよな」
吉本の言葉が何かを示唆していた。


               8 レィンジャー追尾訓練-3(捕虜)


 「ほ、本物の富士訓練センターのかたですね? あこがれてますっ」
柳瀬亮は心から感嘆した声を張り上げる。
口をふさがれ、クマみたいなバカ力で、多分80メートルほどを引きずられた。
場所を特定しようにも樹海の中では、もう、どこがどこだかわからない。
相手は2人で、本拠から遊撃してきたらしい。

 「あ、人質の作法は存じています。教官より告知がありました」
いきなり、自分から脱ぎ始める変人柳瀬に、さすがのレィンジャーもあきれかえった目を向ける。
「たばこ使わなくても、あの、ボク、踊りますんで」

 「ちかごろはキチの入隊が多いな。日本はどうなっちゃうのかな?」
彼らは苦虫をかみつぶして、定石どおりに胴体を木にくくり付ける。
両手を水平に上げさせて2,5リットルの焼酎を1つづつ持たせた。
人間カカシの完成だ。

 「あっ、亀甲縛りですか? 感じるであります。だから歌いますっ。♪2人でドアを閉めてぇ~っ、2人で名前消して~ぇっ。これ、母親が好きなんっす。♪2人でぇ~」
狂ったような大声は、声の通りにくい樹海で、班の連中に聞かせようとしているのだ。
2人で~を執拗に繰り返すのはレィンジャーの人数だ。

 「ぷっ、あんがいリコウかもな」
地形を利用して、すばやくトラップを仕掛ける。
ベトナム戦争でおなじみの、落とし穴や足がらみなどの簡単なものだが、カムフラージュがすばらしい。
それで新兵たちは引っかかってしまうのだ。
 
 柳瀬2等陸士はあこがれのレィンジャーの前では、できるかぎり自分の体力と精神力を誇示したい。
それでも両腕は限界だ。
必死にふんばるも腕が下がってしまう。
「おらぁっ、カカシになっとらんっ」
叱られて、ご期待に添おうと思うのだが、すでに筋肉が言うことを聞かない。
「ほ、捕虜虐待であります。戦時国際法違反ですっ。う、う訴えるであります。謝罪ニダ、賠償ニダっす」
「っるせえぇぇぇっ」
怒声に耳がキーンとする。
「バ~カッ、ムダに知識があるようだが、実戦で戦時国際法など通用しない地域に行ったらど~する。その日のためにおれたちが鍛えてやるワ、腕、あげえっ」
あまりの辛さに、柳瀬亮はグシグシと泣きだした。

 
 樹海は夕方が早いから、2時間ほどで日が暮れる。
「なんだ、夜陰に乗じてか?」
「教科書どおりじゃ、芸がねえな」
レィンジャーはそんなことを言いながら、どこかに消えた。
柳瀬はさっそく腕を下ろし、ついでにその場で小便をした。
のんきな行動に見えるが、水のないこのあたりには熊はいない。
当面の恐怖はレィンジャーだけなのだ。
手首、両腕肩から、胸や背、腰にかけて、上体は鉄板を入れたようにパンパンだ。

「おまえ、人望ねえんだな。班はおまえを見捨てたようだ。もうだれもおらん」
もどってくるなり2人に酷知されて、柳瀬は今度こそ、本気でワンワン泣き出した。
たぶん、加藤清騎が置き去りの首謀者だ。
それに班のみんなが従ったのかと思うと、心に穴が開いたように寂しかった。


              9 レィンジャー追尾訓練-4(襲撃)


 3日目は広葉樹林帯に出た。
「班、停止~」
麒麟生昂(きりおいたかし)が声をかける。
「っちょ、何だよっ」
加藤清騎(かとうせいき)がいつもどおり、口をとがらす。
「周りを見ろ、食い物があるだろ」
「あっ、これ、ムカゴ」
松井義明(まついよしあき)が目ざとく見つける。
「ほんとだ。カトはおベンキョ、ちゃ~んとしなかったの? 教わったやん」
吉本弘行(よしもとひろゆき)は、もう、夢中で手を出している。

 「規律を乱すな。前後に1人づつ見張りを立てる。加藤、前を頼む。おれは後ろ見るから」
麒麟生が言う。
「ふざけるなっつうのっ。なんでおれが。松井が班長だろ、松井やれよ」
「あ? うん」
松井は責任感からか、すなおに警戒の任につく。
それでもいくらもたたないうちに、そんなことはそっちのけで木々につるを伸ばすムカゴをむしり、地に落ちた粒をあさっている。
これでは何の役にも立たないが、とにかく全員が飢えているのだ。

 「じゃ、おれの分はあとでわけてくれよな」
麒麟生とて、のどから手が出るほど食いたい。
それでもみんなに言って、あたりを警戒する。
こんなときにレィンジャーに襲われれば、全員ひとたまりもなく全滅して脱落だ。
『意馬心猿』で、狂奔する馬とさわぎたてる猿は御し難いというが、腹の減った人間も度し難い。

 声がしはじめたのは、他班の連中もここを見つけたに違いない。
いやな予感がする。
食える野草の群生しているこの場所を、レィンジャーたちが知らないわけはない。
みんな、そんな想像力すら失っているのだ。
「ったくう、ざけんなっ。おれたちが先に見つけたんだぞ。出ていけっ」
加藤が止める間もなく、大声を張り上げる。
「しっ、ワメくなっ」
制するも、他班も黙っていない。
「独り占めする気かよっ」
「どこの班だぁ?おまえらぁ、後も先もねえだろっ」
怒声が飛び交う。
「いいっ、もう、離れろっ」
松井も危機を感じたらしく、今日のバディの吉本を引っ張る。

 「パン、パパパ、パン」
来た。
あるていどの時間的猶予は、新兵たちが多少なりともムカゴを堪能するヒマをくれたのか?
安全装置をはずして伏せた耳元を、ペイント弾がかすめる。
木々を透かし見ると、踊るように手足をふりまわしたり、飛び上がったりしている人影がいる。
もちろんレィンジャーの誘いだ。
「やたらに撃つな」
麒麟生がバディの黒田にささやく。
「わかってる。おれたちの場所を特定したいんだ」
黒田2等陸士も冷静だ。
レィンジャーは100発100中だが、新兵はそうじゃない。
敵はわざとスキを見せて、狩りだそうとしているのだ。
全員が息を殺して平グモのように遮蔽物にへばりつく。
それでも悔しいから、時折、未熟な反撃を返す。

 「よ~し、死体はこっちに来い」
命令された時には、池谷班は松井義明(まついよしあき)がペイント弾を浴びていた。
死体はすぐに連行される。
彼らには別の厳しい訓練が課せられるのだ。


               10 レィンジャー追尾訓練-5(4日目)



 朝から雨が降っている。
戦闘雨具を着込んで、うそ寒い富士の裾野を進んでいく。
これからはレィンジャー基地まで、ずっと登りが続くのだ。
4人になった彼らは加藤・吉本、黒田・麒麟生でバディを組んだ。

 吉本弘行(よしもとひろゆき)が蒼い顔で、さっきから胃液を吐いている。
昨日までは時折、「スマホ見てえ」「ガシガシのステーキ食いてえ」と無い物ねだりをしていたのだが、もう、空腹が限界を超えたのだ。
麒麟生昂(きりおいたかし)が、最後のレーションについている金平糖をしゃぶることを全員に許可した。
彼は黒田由樹(くろだよしき)から強力に推されて、今は班長になっている。
雨にぬれて体温が下がれば、吉本はさらに重篤になる。
そうなれば離脱も視野に入ってくる。
それだけは避けたかった。

 進軍を続けながら、小さな粒を少しづつ時間をかけて口に運ぶ。
が、飢えた体からの性急な要求でガリガリと噛み砕き、吉本はそれすら吐いてしまう。
「おい、横穴がある。ヨシを休ませよう」
黒田が提案した。
周りは奇勝『鬼押し出し』に似た大量の溶岩流の跡で、ガスが抜けた大小の穴だらけだ。
地下は空洞が多く、うっかりすると崩れる。
あんまり長居はしたくない場所だ。
横穴も1人がやっと程度の小さなものだが、とにかく座らせ、雨水を防ぐために岩にポンチョをかけた。
「気持ち悪い。寒い」
吉本2等陸士はガクガク震えながら、それしか言わない。
それでも、
「離脱するか?」
の加藤清騎(かとうせいき)の声には強く首を振って拒否する。

 「ヨシ、これをちょっとずつツバと一緒に飲み込むといい。甘い唾液って感じで、ゆ~くり。それなら吐かない」
麒麟生が自分の乾パン用のアンズジャムを渡す。
ほんの少しだけ封が切ってあって、口に含むとほのかに甘酸っぱい。

 「柳瀬は初期の段階で救出すべきだったな。もう、松井はいねえし、おれたちはボロボロだし」
黒田が悔やむ。
「そうだな。でも、相手はレンジャーだ。手ぐすね引いてるところに突っ込んでも、全滅ってこともあるよ。とにかく班はまだ4人残ってる。どんな状況でも最善を尽くそう」
麒麟生の言葉に黒田はうなずき、加藤はそっぽを向いた。

 夕方になって雨がやみ、気温が少し上がって霧が出てきた。
彼らは最後の糧食を口にし、腰の水筒からハイドレーション(チューブを使った吸い飲み)でのどを潤した。
水筒には今日の雨水をたっぷりためてある。
吉本は少し元気を取りもどし、飴をなめるように乾パンをしゃぶっている。
 



               11 人間というもの


5日目の朝が明けていた。
今日の天気はよさそうだ。
「ヨシ、具合どう? レンジャー拠点まで16~7キロだけど」
班長の麒麟生3尉の言葉に吉本はうなづく。
「うん。…足手まといかもだけど、おれ、がんばりたい。ここまで来てリタイヤはいやだよ」
「だよなぁ~。今日はおれがバディ組むよ。渡河訓練のときはM4持ってもらったし。おまえくらい、引きずってでも連れてく」
黒田がかえって元気になって言い切る。
なごやかな空気が流れたのに、加藤は硬い表情のままだ。
そういえば昨日から不機嫌というか、なんとなくイヤなオーラを醸して口数が少ない。
まぁ、空腹のせいだろうが、彼はムカゴでもノビルでも人一倍むしって食っているのだ。

 「おい、ヨシ。おまえ、脱落しろっ」
突然の加藤の冷酷な言葉に吉本が絶句する。
「えっ? そんな…」
「うぜえんだよっ。弱虫はいらねえっ。麒麟生、さっさと中隊に連絡だっ」
叩きつけるように怒鳴る。
同時に、信じられない行動に出た。
吉本弘行を荒々しく突き飛ばし、背嚢に手をかけると糧食のレトルト・バンバーグを引きずり出す。
具合の悪い吉本は昨晩それを食えず、必然的に残っていたのだ。
加藤の瞳孔は別人のように縮み、狂気じみた異様な目つきで3人をねめつける。

 「カト、それをやっちゃダメだっ」
麒麟生(きりおい)がにじり寄る。
「な、カト。これはヨシの食いものだ。おまえのじゃない」
「おめえはやっぱ人間のクズだなっ、あ? 加藤っ」
黒田由樹(くろだよしき)の嫌悪の声に加藤はわずかに怯んだ。
4、5秒の間、事態は好転するかに思えた。

 「うじゃああああぁぁっ」
加藤清騎が絶叫した。
うぜえと言ったつもりらしかったが、言葉は異様な雄たけびだった。
シャッ。
金属のふれる軽くて緊張的な音が聞こえた。
私物の飛び出しナイフで、藪を払ったり、箸をつくるに必需品で、だれもが身近に持っている。
「痛い目みてえかっ」
錯乱で目をぎらつかせ、手近な麒麟生にとびかかる。
ギシシシッ。
足もとが不気味にきしんだ。
バランスを失う2人をささえようと、黒田が果敢にむしゃぶりつく。
さらなる荷重だ。
一瞬ののち、地面を踏み抜くガラガラという音とともに、3人はもみ合いながら奈落に転げ落ちていった。


               12 守るべきものは



 「ちょっ、だ、だいじょぶ?」
落下を免れた吉本があわてて這い寄る。
穴は幅2メートルくらいで最長部は3メートルを越える。
深さも同じくらいだが、さらに下に空洞があるらしい。
下のもろい地面からは、ガガ、ザザザーと絶え間なく土砂くずれの音がしている。
3人は落ちた順番に折り重なっていて、加藤が一番下、麒麟生がその上、黒田は2人がクッションになって無事らしい。

 「痛ってえぇ…」
加藤が痛がって、少し転げまわる。
右手首をひどくくじき、ヘルメットの後ろ首を岩角にぶつけて、かなり切っていた。
幸いにして傷は浅い。
黒田がすばやくバンダナを取り出して、傷口を覆ってやる。
これは三角巾代わりになるのだ。

 「クロは大丈夫? おれ、ションベンちびったみたい。なんか体がしびれて感覚ねえワ」
麒麟生が言いながら、うっとおしそうに防弾チョッキを脱ぎ捨てる。
落ちる時、黒田がとっさにひっぱったので、顔のあたりまでずり上がっていたのだ。
「オジさんはきったねえな」
加藤が毒づく。
だが、これは元気な証拠だ。
安堵の笑みが4人に広がった。

 黒田がそうっと立ちあがって、周りを見回す。
「おれは上がれるけど、麒麟生はどう? カトは脱落だな」
「うん、カトは悔しいだろうけど、破傷風や敗血症が怖いからな。…早く連絡したほうがいいな」
無線を取り出し、少しでも感度を上げようと立ち上がる。
そのとたん、彼は一瞬激しくせき込んだ。
目もくらむような痛みで自然にうめき声が漏れ、それを抑えようとすると体がガクガクと震えた。

「え? そのシミ、ションベンじゃねえんじゃね?」
上から吉本が不安そうな声を投げかける。
黒田がすばやく手を伸ばしてきた。
身をよじって払いのけるが、クロははしっこいのだ。
「…!!」
目を見張って麒麟生を見、すぐに加藤に向きなおった。
「これ、見ろ。おまえ、仲間をやるってなんだよおぉぉっ」
真赤な掌を突き付けながら激しい怒声になり、そのはずみでまた土砂が崩れた。

 「え? い、いや、おれじゃないっ。おれはなにもして…」
とっさに返事をしながら、加藤清騎は鮮やかに思い出していた。
落ちる時、とっさにナイフを立てるように、外側に向けた。
刃は間違っても自分側には向けない。
これは本能で、抜き身を持つ者はだれもがそうする。
万が一にも自分を傷付けないためにだ。
だが、ナイフを握ったまま手首をくじいた時の、刃先から伝わったあのなんとも言えない感触は、甦ったら最後拭えない。

 「あ…あ…。おれ…。刺し…。…い、いや、ちがうっ。麒麟生がおれの上に落ちたのが悪いっ。」
「ほれ、見ろっ。犯罪者っ。傷害だぞっ」
「偶然だっ。ク、ク、クロにだって責任があるぜ。おまえがチョッキ、引っ張ったからズレたんだ。よけいなとしなきゃ、こんなことにはならなかったっ。と、とにかく、おれはわざとじゃないっ」
「加藤が悪いっ。トチ狂って、ナイフなんか出すからだぁっ」
吉本弘行も上から激しく怒鳴ってくる。
仲の良かった彼の叱責に、加藤は動揺のあまり言葉を失って沈黙した。


               13 守るべきものは-2



 「加藤は悪くない。本当だ。カトの上に落ちたおれにも、責任の半分はあるよ」
「んなわけ、ねーだろっ。とにかく傷見せろ。本部連絡だ」
性急な黒田に麒麟生は渋った。
「いや、たいしたことないんだ。それより、おれの頼みをきいてくれ」
「見~せ~ろっ。見せれば聞いてやる」
「クロの言う通りだよ。早くっ。カトだって医官が必要だし。早く、早くっ」
吉本も地面を叩かんばかりに、せっついてくる。
「ホントに頼みだけは聞いてくれよな」
麒麟生はそれだけを繰り返して戦闘服をまくり上げた。

 「…う~ん」
「……」
「……」
だれも口を利かなかった。
実際のところ、医学的知識の薄い彼らにはわからないのだ。
ナイフを握った手首が麒麟生と黒田の体重にくじかれて刃先が動いていなければいいのだが、外から見ただけでは判別がつかない。
胸骨の左側では肝臓や肺、悪くしたら心臓が危ないが、出血が思ったより少ないのは、横隔膜が傷ついただけなのだろうか。

 「とにかく、無線貸せっ」
黒田がわめいて取り上げようとする。
麒麟生は腕を地面にそわせてそれを拒んだ。
下にはさらなる空洞が口を開けている。
「約束だ、話を聞いてくれ。でないと無線は落すっ」
思いのほか激しい拒否に、黒田は気おされてうなづいた。
「じゃ、言って…」

 「話は2つある。ひとつ目は、おれたちはレーションを分けようとしたってコト。そんで加藤が箸をつくろうとナイフを取り出した。その時に地面がくずれたんだ。間の悪い偶然で隠れた空洞の上にいたからだ」
「はぁ?なんだよっ、その作り話っ」
否定の声を上げたのは、なんと加藤清騎だった。
「そんなの事実じゃねえっ。ヨシが言うようにおれ、トチ狂ったんだ。…今考えりゃ、落ちなくても本気で刺したかもしんね。それが真相だ。やったことはやったことだ。へんにかばうなっ」
「そうだよ。ナイフ取り出した時点で加藤が悪いっ。警務隊の案件だ。かばう麒麟生がおかしい。おれたちはみんな見てたんだ」
「そうそう。話でっちあげても、すぐにバレるだけ」
だれもが鼻先で嗤った。

 「違うんだよ。それじゃ、ダメなんだ。これは世間的に見たら自衛隊の不祥事なんだよっ。訓練の途中で、私物の刃物振り回して刃傷沙汰。しかも食い物でさ。世間の人は飢えるということが、どれほどつらく苦しいことか知らないんだ。そのくせ批判する。自衛隊員は何やってるって。幹部の責任問題になる。おれたちはたぶん、特殊作戦群の1期生なんだ。こんなことで、せっかく構築された作戦群に傷をつけるのか?」
加藤は首を振った。
「麒麟生、事実は変えないほうがいい。バレたらもっと悪い結果になる。すべてはおれが悪いんだ。きちんと謝罪して罪を償ったほうが、おれ自身、スッキリする。傷害で刑務所でもどこでも行く。うそつきや卑怯者にはなりたくない」
冷静になれば、彼も事実をゆがめるような人間ではなかった。
「そゆこと。加藤はやったことの責任はきちんと取る。これ、常識ね」
単純な吉本が言えば、
「そう、作戦群のことまで心配したってしゃあねえべ。2番目の話。早く」
黒田は先を促した。


               14 守るべきものは-3



 「なぜ、わからないっ?」
麒麟生昂(きりおいたかし)が声を振り絞った。
またしてもせき込んだが、彼は顔をゆがめながらも続けた。
「ダメなんだ。事実を言ったらおしまいなんだよっ。教官の池谷1曹にも迷惑がかかる。あんないい人が降格か、作戦群を追われる。あの人は陸自幹部として、もっと上層に行くべき人だ。ほら、カトも知ってるだろ、脱柵の荒木ってやつ。池谷1曹はかばい通して整備に回したんだ。荒木は狂ったみたいに喜んでた。1曹は人の使い方を知ってる人だ。絶対、必要な人なんだよ」
少しの間、沈黙があった。
「いや、やっぱり、イヤだ」
加藤が口ごもりながら言った。
「池谷教官には申し訳ない。だけど、本当のことを言わなければ、おれはお咎めなしになる。結果的におれは罪を逃れたことになる。それじゃイヤなんだ。クロもヨシも真相を知ってる。もちろん、おれ自身も。だから、自衛隊にいる限り、やっぱり卑怯者になる。だったら、免職になったほうがスッキリする。おれはおれの思いどおりにする。ウソついて一生、グジグジすんのはイヤだ」 

 「か~と~う、なぜわからない? おまえは本当に自分のことばかりだな」
麒麟生が初めて、非難を口にした。
「事実を曲げてでも、守らなければならない人や組織はあるんだよ。社会的影響を考えろ。自衛隊は今、やっと社会に認知された。先輩達の長い努力の結果だ。それでも批判はまだまだある。そいつらに自らネタを与えてはいけない。カトは箸を作ろうとしたんだ。おれのケガは魔が差しただけ。事故だよ」

 「もう、いいっ。加藤が自分で罪償うってんだから、好きにさせろっ」
黒田がイラつく。
「だけど、よ~く考えたら麒麟生が正論だぜ。あったりめえだろぉ、罪もない教官や組織にまで迷惑掛けて、自分だけ償うからスッキリ~って。きたねえワ。とばっちり受ける人のことも考えろっ」
「カトは自分に酔ってるだけ。ボクちゃん、ホントのこと言いましたっ、ウソはついてませんって。それはわかる。カトは責任逃れしたくないんだ。でも、後先考えればやっぱりそれじゃダメなんだ。おれは証言求められたら麒麟生の話をしゃべるよ。カトは箸を作ろうとしてましたって」
吉本の言葉に加藤が目を見張った。
なにか反論しようとするのを、黒田がさえぎった。
 「な、マトモに考えりゃ、そういうことだ。加藤。おめえはサヨか? よっぼど自衛隊と教官に恨みがあるみてえだが、組織撹乱はさせねえぜ。さぁ、おめえが今、ここで無線連絡をしろ。言うことはけが人の有無と麒麟生の言った話だ。よけいなことちょっとでも言ってみろ。おれがここから突き落とす。下はまだ大分深いみてえだから、石でも落としてやりゃいいぐあいに埋まっちまうぜ」
「おれもクロに加勢する。もう、カトとはツレじゃない」

 加藤清騎の返事はなかった。
彼はいつの間にかきちんと正座して2人の言葉を聞いていた。
激昂して血走った眼の色が、大分静まったのが見えた。
「…よ~し、やっとわかったか。ったく手間かけさせるぜ」
黒田がやっと態度をやわらげた。
加藤はコンパスと地図を取り出し、慎重に座標を計出してから、麒麟生昂の言葉をそのまま報告した。
「了解。医務官をさしむける。がんばれ」
無線の声に、全員が胸をなでおろして脱力した。

 「で、2つ目は?」
「うん」
と答えて、麒麟生はまたせき込んだ。
不安材料だったが、救助が来る今は、本人すら頓着しない。
彼だけでなく全員が気力と体力を回復したかのように高揚している。
「黒田と吉本は進軍してくれ。戦場なら、みんなそうする。訓練は実戦を想定してこそ意味がある。できれば柳瀬も救出してやってよ」
「そうだな。おれやヨシがここにいても、クソ役に立たんし。レンジャー旗でも奪って、ポイント上げるか」
「うん、行こう。クロにはおれのレーション分けるよ」
吉本弘行もかなり元気な声を出してくる。
「え?いらんワ」
「いや、もらってぇよ。いきなり全部食ったら、おれ、腹こわす。クロだって、ばっちいバディはいやだろ」
黒田はケタケタ笑ってトランシーバを受け取り、慎重に崩落を登って行った。
「じゃ、麒麟生3尉、またお会いしましょう。加藤もな。グッドラック」
「頼んだぞ、黒田・吉本2等陸士」
お互いが自然に本来の階級を口にし、挙手の礼で別れを告げた。


               15 加藤のその後



 「カト、だいじょうぶ? 首んところの血もだけど、手首、すごい腫れたな。…痛いだろ。骨折してないといいけど」
麒麟生の言葉に、加藤は笑顔になる。
「へーき。おれ、血が止まりやすいタチなんだ。おまえこそ痛いだろ。救助はラペリング(懸垂下降)で来るっつうから、もう少しがんばってくれ」
互いにいたわりあいながら、少しづつ時間がたっていく。
戦闘顔料(ドーラン)でわかりにくいが、しばらくすると麒麟生昂のようすがどうもおかしい。
呼吸困難を起こしたらしく、時折、空気を求めてのたうちまわり始めた。
容体の急変は、悪くすると最悪の事態を招く。
加藤がとっさの機転で備品の呼子(よぶこ)を吹き鳴らす。
が、周囲にはもう、だれもいないらしく何の反応もない。

 「だいじょぶか? おまえ、やばいんちゃう? ああ、おれ、やっぱ正直にしゃべりてえっ。スッキリしてええぇっ」
加藤は後悔と責任感から、思わず、また蒸し返す。
「…なん、だって?」
麒麟生が異様な声をしぼりだした。
別人のようにかすれている。
眼の色にも戦慄するような何かがあった。
「加藤、おまえ…こんなこと、して、おれが恨んで、ない、と? おれにだって、未来に希望も…目…標、も、あった。おまえを、呪ってやるよ。おまえ、の、始末は、おれ自身…が、つける。いい、か。む、虫歯いっぽん痛んで…も、おれの、霊障、だと、お…思え」
「わかってる、わかってるよ」
「真相、は…隠し、通せ。そ、それも、おまえの罰、だ。罰から…、に、逃げる、な」
麒麟生昂はとぎれとぎれに、やっとのことでそれだけを言った。
これ以降、彼が口をきくことはなかった。
苦痛に歯を食いしばるギリギリという音が聞こえた。
加藤清騎は呼吸を楽にしてやるために、装備を外して衣服をゆるめ、気道を確保した。
麒麟生の手足はもう冷たかったが、胸のあたりはまだ温かかった。

 CH‐47(チヌーク)のローター音が上空にせまりつつあった。
「来た。助け来た。がんばれっ」
加藤の喜色を含んだ声に反応はなかった。
見開いたままの麒麟生の目が、最後の苦悶にギラギラと輝くのが見えた。

 ラペリング・ロープが下りてきたとき、加藤はそのまぶたを閉じてやろうと努力していた。
だが、それはできなかった。
彼は、この世に強い思いを残してこと切れた者の目は閉じることがなく、唯一、家族だけが果たせるという話を思い出した。

 霊障はなかった。
加藤清騎をはじめ、黒田由樹、吉本弘行の3人は、一貫して麒麟生昂の言葉を反復しつづけたのだ。
処分者は1人も出ず、自衛隊も非難対象にはならなかった。
加藤は考え深い性格に変わり、強靭で沈着、厳格だが人情のわかる自衛官として成長していった。
努力を惜しまず、人の嫌がることを率先してやった。
その誠意をバカにし、笑うものもいたが、彼は意に介さなかった。
加藤にとって、陸自の職務は大きな喜びであり、しだいに増えていく部下の教育こそ、唯一の関心事だった。
そしてついに、たたき上げとして伝説的な「1等陸佐(大佐)」にまで昇りつめたのだ。

 彼は地位が上がれば上がるほど、謙虚になった。 
陸自に残ったり、それぞれの道に進んだりした4人の班員たちとは、長く篤い友情を保ちづづけ、2等陸尉で退職した池谷孝司(いけやこうじ)教官とも生涯交流を持ち、上司に仕える忠実な部下の態度をくずさなかった。
 
 錯乱し、他人を傷つけるに到った教練の苦い飢えの教訓は、夢わすれることがなかった。
彼は60歳定年で職を去ったが、自家用車に差し入れを満載しての演習地詣では止むことがなかった。
とくに暑い夏、アイスクリームを山のように詰め込んだクーラー・ボックスを隊員にかつがせ、自分もその一つを持って、楽しげにやってくるすがたは、真夏のサンタクロースそのままだったという。

 「麒麟生3尉がさ、えらく出世しているんだ。総合幕僚長だよ。親しく話しかけてくれるんだけど、目が覚めると忘れてる。おれもダメな部下だなぁ。あっちに逝ったらちゃんと聞けるかな?」
ニコニコと、彼はそんな話をするようになった。
そして、またまた演習地詣での計画を立てつつ、67歳の生涯を終えた。
無痛性心筋梗塞だった。

君知るや緑衣の国(新兵さんの地味~な?訓練の物語り)

君知るや緑衣の国(新兵さんの地味~な?訓練の物語り)

テーマは2つあります。 1)訓練に明け暮れる青春を選ぶ者たちもいる 2)人や組織を守るために、真実を曲げなければならないこともある ・・・末尾は書いてて涙でちゃってさ、何かに取りつかれてるかも。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 冒険
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-01-27

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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