割れた鏡の遺言


ー悲痛ー

それだけが、うつくしいと、
呟く、正直な、鏡は、

先刻、

割られました、ね、

気持ちのいい午後を、
ただの息苦しさに紛れさせ、

私は、何度も笑ったり、顔を上げたり、しなければ、いけませんでした

「せいかつ」

これ、

これ、ですよ、ね、

灰色の空間に投げ出されて
私は、うまく動けない、世界で、
動く、フリを、しなければ、いけない

聞こえないはずの言葉が
心臓を突き刺すのは、

私の、弱さ、です、

(それは便利な言葉ですが)

言葉が見つからないまま、
歪に笑うときは、
うまく呼吸ができないとき、です、

あなたの顔を思い浮かべます、
あなたのことばと、こえ、だけを、
たより、に、してみます、

より、センシティブに、なってしまった、わたしは、誰に向かって笑えばいいのか、わかりません、わかりません、

何度も手に取った、劔は、次の、瞬間、あまりにも、簡単に、砂に、灰に、なっていきます、

上手に、笑えないですね、

あなたのこと、思い出してみます、

あなたのこと、それすら、滑り落ちる、そうしたら、うまく、息が出来ませんね、

水底に沈みたくても、陸でしか、生きられない、そういう、生き物だから、うまく、いかないですね、

せめて、落ち葉の中にぐらい、安らげる所があるのなら、よかったです、

星占いが1位でも、世界は相変わらず暗いままですね、星占いが、照らすのは、私ではないのでしょう、

言葉は、滑り落ちて、ずっと落ちて、
そのまま、眠れる筈です、

朦朧として、崩れて、私は、歪なまま、隣人に、微笑む、

それで、パンを買っている、

ほら、

それが、きっと、

にんげん、なんでしょう?

割れた鏡の遺言

割れた鏡の遺言

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-01-02

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