加太の瀬戸にて

眼下の潮は

茅渟の海より太平洋へと

島の狭間を滔々と流れ

頭上を 舞う鳶の群れは

次第に雲の高みにまで達し

赤き夕陽は遥か彼方に霞む

四国の峰々へと沈みゆく



積もりし日々の憂いを離れんと

山上の露天の湯に身を投ずれば

幾筋もの湯煙は初冬の風に煽られ

天に輝くオリオンの膝元へと舞い上がり

漁火は見えず月細くして海は暗し



まだ暗き暁の湯より港を見下ろせば

僚船の灯は途切れることなく沖へと続き

洋上一面に広がりゆくその光景は真に

星降りて水面に浮き輝く神の世の如し



白々と明くる夜に漁火は星の影と消え

波間に白き花弁の如き舟影が姿を現す

我ともに露天の人影は儚く去り行けども

天地自然の美は永遠に訪れし人々を魅了せん

加太の瀬戸にて

加太の瀬戸にて

短歌に続き、最近訪れた和歌山県加太の印象を 詩にしてみました。

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-12-24

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