家庭の幸せ

 「サザエさん」といえば誰でも知っている漫画である。サザエさんの家族は敬称略で磯野波平(父)、フネ(母)、サザエ(主人公)、マスオ(夫)、タラオ(子)、カツオ(弟)、ワカメ(妹)。全員一緒に住んでいる。WHO(世界保健機関)の健康の定義に「身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱がないことではない」とあるが、磯野家はこれに当てはまる理想的な家族だ。
私はこの漫画のファンである。みんな善良で明るくユーモラスな人達だ。そそっかしいサザエさんやいたずら好きで勉強嫌いなカツオもいる。マスオさんは温厚だし、ワカメは誰からも愛される。彼らの大家族形態は核家族が一般的な現代では特別となったが、私はほのぼのとした磯野家に「家庭の幸せ」を感じて羨ましく思う。
 なぜ私はそう思うのか。福沢諭吉の名言に「世の中で一番みにくい事は他人の生活をうらやむ事です」とあるのは知っているが、それを脇において、今の自分を比べてみた。
先ず私は病人、要介護、無職、後期高齢者(誰がつけたか気にいらない)で釣りや旅行にも行けなくなった。妻は私が病気になってから専業介護人である。彼女は夫唱婦随から解かれたけれども自由が少なくなって気の毒である。息子達はWHOの健康の定義に合致していると思うが、二人きりの私と妻はたまにしか孫の顔を見ることが出来ない。これもタラちゃんがいつも家にいる波平さん、フネさんとの違いだ。
一致しない点がいくつかあるのは仕方がないとして、私が磯野家を羨ましく思う決定的な理由がある。それはサザエさんの家族は何十年経っても齢をとらないことだ。そして、楽しい生活をずっと継続している。
 私は自分の人生のページをめくってみた。すると過去には今と違って良い時期が何回かあった。来年はその中から一番良いのを選んでタイムスリップしたい。そこに戻って時間を止め、いつまでも齢をとらずに楽しく暮らそう。
たちまち、「ワハハ、うまくいくものか、他人をうらやむと惨めになるだけだからやめなさい」と鬼に笑われて我に返った。私はタイムスリップとフェニックスの望みを諦めて、「幸せは気の持ちよう」と気をとり戻そうとした。
すると、「それでいいのだ。今からでも遅くはない。あんたにも心地よい家庭はつくれるさ」と、こんどは賢人たちが私の弱い心をケアし、励ましてくれた。
  ・人間を変えるものは環境ではなく、人間自身の内なる力なのです(ヘレン・ケラー)
  ・つまるところ、大切なのは何年生きたのかではなく その年月をどうやって生きてきたのかである(リンカーン)
  ・世の中で一番美しい事は、全ての物に愛情を持つ事です(福沢諭吉)     
  ・ いつまで一緒にいられるか分からないということをしっかり心にとめてお互い大切にしよう(ジョシュア・リーブマン、アメリカの作家)
  ・幸いなるかな 心の貧しき人 天国はかれらのものである(マタイ伝)
今更私に出来るかどうか・・・、でも、兎も角これらの言葉を心の糧として残りの時間を生きていこうと思う。 2017/12/16

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