誕生日


言葉を拾い忘れたまま
出掛けてしまった今日

シンクに落ちた言葉は
排水口に流されましたか?

青いマフラーが見つからなくて
偽物の毛皮を身につけた知らない女の子のこと

わたしは、上手に嫌いになれなかった

ずっと仲良くしたかった子に
楽しい話が出来なくなって
みんなで盛り上がれる恋の話を
捨てちゃったまま
連絡しなくなったから
終わったって、ことなんだと思う

相手から連絡が来なければ
その子の友達一覧に私はいても
きっとその子の世界の
登場人物一覧から私は消えている

そういうのがどうでもよくなるぐらい
今朝は空が荒れ果てて
風が強くて
雷がビカビカしているから
どうでもいい、
濡れてく足と肩と
壊れた傘以外、
どうでもいい、

看板の名前を覚えられないまま
思い出があまりにあっけなかったこと

通り過ぎてきた人たちの仲間入りを、
今日、思い出は、果たしたんだ

おめでとう、
私にとって、
それは傷つくことじゃなくなった

おめでとう、
もう、強がりなんて必要なくなった

おめでとう、
それは、
どうでも、いい、こと、に、
なれたんだ

誕生日

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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-11-25

Copyrighted
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