しにがみゆうびん

ひよこの詩


生きていけない、ひよこ、より、
強くて逞しい、雄鶏を、育てる

合理的、だった

生きていけない、ひよこ、は、
みにくい、あひるの子、に、出会った、けど、

ひよこ、には、あひるの子、の、
未来が、見えて、いたから、ともだち、の、フリだけ、してた

そんな、自分を、汚いって、気付いて、しまった、

気付いてしまった、ひよこは、

本当に、生きていけなくなった、

生きていけない、まま、ひよこは、
今日も、歩いている、
雄鶏の影を踏まないように、

病牀、光年

黄色い風船が飛んでいる
ぼうやの手から離された
頼りなく美しい風船が
青い空に吸い込まれていく

わたしの目は病牀を出られずに
風景はいつも古い映画だった

寒さが突き刺さる
皮膚の中にいる

枯渇した生命体
機械仕掛けの胎動は
わたし自身の信号だった

黄色い風船が飛んでいる

風景を見ているわたし、
時代不明、月日不明、曜日不明、
天気不明、現在地不明、氏名不明、

枯渇したわたし、
機械仕掛けの脈拍、
信号は誰にも届かない

しにがみゆうびん


ぼくのくうはくを封筒に入れたなら、一体いくらで、君の元に届きますか?

しにがみゆうびん

ぼくはいつも、あの白い郵便屋さんを見かけている

ゾンビみたいなぼくのこと

たまに郵便物と間違えるみたい

ぼくはやっとのことで「ちがうよ」を言えている

ちがうよ、を聞いた、しにがみゆうびん

ぼうしをあげて、おじぎする

ていねいで、やさしい、しぐさ

ぼくは、青い空の下で、白い郵便屋さんを見送った

いそがしそうに、ゆっくり、あるく、

しにがみの郵便屋さん

ぼくは、白く光る郵便屋さんを、思うと、すこし、くるしくなるようになった

それは、いやなこと、じゃなかった

花を見つけて封筒に入れたら、一体いくらで、君の元に届きますか?

しにがみゆうびん

しにがみゆうびん

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-11-03

Copyrighted
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  1. ひよこの詩
  2. 病牀、光年
  3. しにがみゆうびん