崩落する画廊

御伽噺の印


カレンダーが俯いている
赤い印は、とても悲しかった

鏡に映る、明日の出来事

白雪姫は、生きながらえる

誰かが不幸になっていても、
それは、御伽噺に、
何の爪痕も残さなかった

混濁した景色を思い出す
赤い印が揺れている

蝶番の夢


この世界が、すっかり、暮れる頃に、わたしは、蝶を見ていた、大きな蝶が、怖かった、

シャボン玉が弾けている、
子どもが泣いている、わたしには、世界は広過ぎて、もう少し壁が欲しかった、

開けっ放しの扉から出入りするのは、
灰色になった記憶たちだけで、新しいものはひとつも無かった

わたしは、それを、喪失だなんて、
呼ばない

崩落する画廊


君の描いた絵と君の人生は、
あまりに美しくて、いけなかった

買いたい、と申し出る

君は、ゆっくり、首を振る

杖を、ついた老人が、君に向かって怒鳴りつける、

君は、ゆっくり微笑んだ

君の、全てが、もはや、過ぎ去っていた、せめて、絵を買おう、君が、持って、死んでしまおうとする、君の、絵を、買おう

君はその場からいなくなる

君は、全てが、過ぎ去って、あとは、君が、去っていく、それだけだった、それが、仕事みたいに、去っていく、

泣き出す私に、
君は残酷なぐらい優しかった

報われない、ヒマワリと、
許されない、夕暮れは、

曇天だけが、傘であり、
雨雲だけが、心臓だった、

そろそろ許して欲しかった
そろそろ愛して欲しかった

傘すら許されない人生だった
せめて、濡れるなら、骨まで、と、願うことすら、忌み嫌われて、

微笑みは、過ぎて、日々は、傷だらけだった、表層は、痣だらけだった、もはや、雪の日に、天日干しするしか、なかった

絵は、売れない
喪失は、売れる

困り果てて、貯金箱を割ったけど、壊れた貯金箱が、あまりに、可哀想で、やっぱり、私は、泣き出した、

君は、喪失を売り捌く

崩落する画廊

崩落する画廊

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-10-28

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  1. 御伽噺の印
  2. 蝶番の夢
  3. 崩落する画廊